こんにちは、ピッコです。
「邪魔者に転生してしまいました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

41話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 曖昧な駆け引き③
しかし、そんな心配をよそに、結果的にはすべてが原作通りに進んでいるようだ。
ディアナは皇太子にも、第二皇子にも出会っているらしい。
しかも、彼女にはしっかりとした支援者である皇后の後ろ盾まである。
なぜか、それが少し怖く感じられた。
『これがまさに……原作の力?』
前世のように主要人物や一族の一つでも失われるような大事故が起こらない限り、どうしてこうも原作通りに流れていくのかと思った。
しかし、ただ呆れて怖がるだけのことでもなかった。
言い換えれば、主要な流れさえ妨げなければ、その下の些細なことは私がどうしても関係ないということだから。
『むしろ幸運だわ。』
どうせ私は公爵家と関係すること以外に関わるつもりはなかったし。
私が金を王様のように散財し、たまにディアナを少しからかうぐらいは許されるということじゃない?
「立派だわ。それじゃ、頑張って!」
疑問が解けた私はざっくりと返事をしてやった。
そしてエドウィンにもう行こうと言おうとしたその瞬間。
「ベルチェ、あなたどうして皇太子殿下の宮から出てきたの?」
なぜかディアナが会話を続けてきた。
まだ皇太子の宮殿の外観の全貌を見ていないので、気になるのも無理はない。
「皇太子さまがお呼びになったの。」
素直に答えると、紫がかった瞳が驚きで揺れた。
「皇太子さまが……あなたを?」
「うん。」
「どうして?」
「子ども起業コンテストで1位を取ったから!」
私はさっきのディアナのように胸を張って堂々と答えた。
するとディアナの表情がかすかに揺らいだ。
対面している私にしか分からないほど、ごくわずかに。
「ベルジェ、あなたが……?」
「え あの1位ってあなたなの?」
そのとき、第二皇子がひょいとディアナと私の間に割って入ってきた。
「もちろんガラゴスの商団主の息子だと思ってたのに……」
彼は疑わしげな目つきで私を見下ろした。
『この時すでに知ってたのね。アドルフ・ガラゴスを。』
転生の事実に胸がドキリとした。
それでも女主人との会話で、なんとか気を取り直していたのだろう。
再び出会った第二皇子は思っていたより怖くも恐ろしくもなかった。
ディアナと同じくらいの小柄な背丈。
そしてエドウィンよりずっと華奢な体つきは、過去の幻想から早く抜け出す手助けとなった。
どれだけ彼の身分が私より高くて、狂ったサイコパスとして知られているとしても、今の彼は私と同じく小さくて身分の低い、ただの8歳の子猫にすぎない。
そのうえ精神年齢はこっちの方がはるかに高い。
『十分に渡り合える。』
確信ではなかったが、自然とそう答える気持ちになった。
何も言わずにぽかんと見ていると、第二皇子が顔をしかめた。
「おい、なんで返事がないんだ?」
「殿下、はっきりとおっしゃってください……」
明らかに口止めしようとするシビアな一言に、エドウィンが再び私の前に出てきた。
彼の後ろに隠れるのはもう慣れていた。
私はエドウィンの服の裾をぎゅっと掴んで叫んだ。
「私は、平民と口を利かない人とは話しません!」
「えっ?」
当然、第二皇子の顔には瞬時に戸惑いが広がった。
「ふざけてるの?そんなのどこにある?」
「なんでですか?皇子様だって平民とは話さないって言ってたじゃないですか。」
「君と僕が一緒だと思ってるの?僕は王族なんだけど?そんなやつに返す言葉なんて……この猫、マジで!」
「エレア帝国法第1条第1項!王宮と皇族はこの国と国民を守る義務がある!」
私は目を見開いて、私に向かってくるその男に一歩も引かずに叫んだ。
「殿下、今法律違反中ですよ?それから、その話、教皇様にすべて伝えますから!」
「こ、これは……!」
私がこんなにも堂々と反撃するとは思っていなかったのか、第二皇子は私の言葉に激怒しながらも、どこか明らかに動揺した様子だった。
「ふん!行こう、エドウィン!」
私はそんな彼を軽く嘲笑って、エドウィンの袖を掴んで引っ張った。
「おい、ちょっと待て!わかった、取り下げる!平民と話すのは取り下げればいいんだろ!」
だが、まだ一歩も歩き出す前に、彼が慌てて私の前に立ちはだかった。
「お前に聞きたいことがあるんだ。」
「……?」
私は止まって第二皇子を見上げた。
『聞きたいこと?』
今日初めて会った相手に、あれこれ聞いたり言ったりすることがあるのか?
私はまばたきをしていると、あいつは私の方に身をかがめ、こっそりとささやいた。
「あるじゃん。お母様から聞いたよ。」
「……」
「おまえが俺の兄貴を助けたんだって?」
私はその言葉にぴたりと凍りついた。
まだ幼いとはいえ、第二皇子もまた継承権を持つ皇族だ。
当然、私の正体が皇太子を亡き者にするための駒だと知っている可能性は高いと考えていた。
だけど、まさかこんな風に他人の前で、それも皇太子の宮でその言葉を口にするとは思っていなかった。
下手をすれば皇太子を暗殺しようとした計画の一環ではないかと疑われかねない。
私が言葉を詰まらせている間に、第二皇子はくすっと笑って言葉を続けた。
「そこで生きて戻ってきたおじさんたちが言ってたんだ。急に悪霊に取り憑かれたような熊の人形が現れて、自分たちを蹴散らしたって。」
「……それ?」
彼の視線は私の胸に抱かれているクマのぬいぐるみに向けられていた。
澄んだ緑色の瞳が上をかすめて通るのを感じ、私はクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめてうなずいた。
「……はい。」
「やっぱり、そうだと思った!」
彼は快活に笑った。
その様子に背筋がゾクッとした。
どんなに冷静な性格だとしても、どうして血のつながった兄弟が死んだ事件を前にして、あんなふうに穏やかに笑えるのだろうか。
私はまだ半分しか癒えていない皇太子の体が気がかりで、すべてを治しきれなかったことを悔やんでいたのに……。
「ねえ。僕にも一度だけ見せてくれない?」
第二皇子が目を輝かせながら私に尋ねた。
まだ子どもだから、十分に対等に扱えると考えていたようだった。
考えがすっと消えた気がした。
あいつは餅の端からムシャムシャ食べていた。
幼いのに、どうしてこんなに性格がゴミなんだろう?
こんな奴にわざわざ礼儀を尽くす必要があるだろうか。
「見せてあげることはできるけど……」
私は口元にほのかな笑みを浮かべ、彼の目をまっすぐ見つめた。
「特におすすめはしませんけど。」
「なんで?」
「出来損ないは、本当に死にますから。」
第二皇子はその言葉に、やや面食らった表情を見せた。
あいつは一拍遅れて反応した。
「……何?」
「まだ生きてる人たちは、ただ命令に従っただけで、死ななかったみたいですね。」
そう言いながら、私はできるだけ意地悪く笑った。
「出来損ないだからみんな死んだと思ってたのに……残念!うふっ。」
私はにっこり笑いながら第二皇子をじっと見つめた。
「そ、それは一体……。」
唇を半開きにしていた第二皇子は、なぜか少し青ざめた顔で口を閉じた。
どんなに本質的にクズみたいな奴でも、“死”は怖いもののようだ。
『それに、まだ子どもだしな。』
前世のように成長した姿で向き合っていたら、彼はむしろ面白がって私からクマのぬいぐるみを奪おうとしただろう。
そして私を利用してクマのぬいぐるみをひどく踏みにじっていたに違いない。
『その前に、あの子にクマのぬいぐるみに対する恐怖を植え付けておかないと。』
私はうろたえる第二皇子に、胸に抱いていたクマのぬいぐるみをそっと差し出して見せた。
「それでも大丈夫なら、今お見せしてもよろしいですか?」
第二皇子はうろたえながらおずおずと後ろに下がった。
「え? あ、いや。大丈夫……。」
「ゴムゴムどり!暗殺モードに変身……!」
「ちょ、やめなってば!やめろって!」
バシッ!
あいつは私が持っていたクマのぬいぐるみを、いきなり勢いよく叩いた。
「わっ!ゴムゴムどり!」
その衝撃で手から離れたゴムゴムどりが床に転がった。
「うわあっ!」
落ちたぬいぐるみの腕がちょうど第二皇子の足に当たって、彼は驚いて後ずさった。
「やめろってば!はやく、変身解除してよ!はやく!」
「まだ変身してないのに……」
私は笑いをこらえながら、わざと大げさに振る舞った。
ゴムゴムどりとぬいぐるみの間には、ある微妙なギミックがあって、それを知らないと仕組みがわからないのだ。
「な、なんだよ!変身してなかったのかよ?!うわ、びっくりした!」
「そんな叩き方したら変身しちゃいますよ~」
「うわっ!」
私の言葉に、クマのぬいぐるみを蹴飛ばそうとしていた第二皇子が、ぴたりと動きを止めた。
ゆっくりと足を下ろす彼を見て、私はにっこり笑った。
「よかったですね、皇子様!私は殺人犯になりたくありませんでしたから……」
「な、なにを……」
私の言葉に第二皇子がビクリと肩をすくめ、私を見た。
驚愕と恐怖が入り混じった顔は見慣れたものだった。
牢獄の中で、いつも私が彼を見つめたときに浮かべていた表情だ。
『違う。まだ足りない。』
私が経験したことに比べれば、これは子供の遊びにもならない。
恐怖と怯えが薄れると、残ったのは怒りと対抗心だけ。
私は彼をじっと見つめ、最後まで余裕ある笑みを失わなかった。
「そうですね。もし後ででも見たくなったら、仰ってください! 特別にこのクマさんにお願いして――」
「……ディアナ!早く行こう、早く!」
その瞬間、あいつが私の言葉を遮り、ディアナの手首をぐいっとつかんだ。
「こっそり抜け出したんだ、誰かに見つかったら大変なんだぞ!お前のせいでここまで来たんだからな!」
そう言って、エドウィンを押しのけて何の挨拶もなく立ち去っていった。
私にぶつかったときに痛めたのか、あいつの耳の先が真っ赤になっていた。
「え、あの……!お、お怒りを……陛下、少しだけ落ち着いて……!」
呆然と立ち尽くしていたディアナは、慌ててその手に引かれて連れ去られた。
そんな二人を、私は少し呆れたように見送った。
「……!」
そのとき、私は一瞬、妙な光景に気づいた。
緊張した様子で歩いていく第二皇子の体に目をやると、彼の身体の中に――漆黒の紫光がうごめいていた。
『あれは……いったい……』
頭、腕、脚、体全体――。
第二皇子の姿が目に入らないほど、全身が紫色に染まっていた。
全ての生命を通して、これほどまでに露骨な気配に覆われた人間は見たことがなかった。
「ひっ……!」
思わず凍りつき、両手で目をこすってもう一度見直した。
パッ!
まるで嘘のように、第二皇子の体を覆っていた紫の光が消えた。
「えっ……?」
私はやや呆然とした顔で離れていく第二皇子とディアナを見つめた。
『見間違い……だった?』
しかし慌てるにはまだ早い。
以前見たディアナの治癒力が気になっていたからだ。
彼女の手から放たれた紫の治癒の光。
黄色から紫に変わった光の粒――。
そして前世でバレルロッテ侯爵家の跡取りと手を取り合っていた第二皇子。
『……もう一度、神殿へ行かないと。』
あの怪しい紫色の光が一体何なのか、確かめる必要があると感じた。
『それまでに皇太子がディアナの治癒を受けなければいいけど……。』
きっとそんなことは起きないだろう。
皇太子は治癒力に優れていると知られており、ディアナの善意を拒む理由もないし、実際そのほうが原作通りに物語が進むともいえる。
『仕方ない。ディアナがジョシュアや他の公爵家の人々を治癒しなかっただけでも満足しよう。』
気がつけば、私はとうに姿を消したディアナの背中を見つめながら、少し寂しく考えていた。
そのときだった。
「ベルジェ。」
名前を呼ぶ声に、私はハッと驚いて振り返った。
すると、エドウィンが落ちていた私のクマのぬいぐるみを拾い上げた。
「はい。」
「えっ……あ、ありがとう、エドウィン。」
私はクマのぬいぐるみをしっかりと抱きしめた。
私のせいで散々な目に遭った気がして気がかりだった。
申し訳ない気持ちでぬいぐるみの体についたホコリをポンポンとはたいていると、不意にエドウィンがそんな私をじっと見つめながら、ぽつりと言った。
「それでも、どこも僕より心配することがなくてよかった。」
「ん?なにが?」
「君のことだよ。」
エドウィンがふっと笑って、第二皇子とディアナが去っていった方向を見やった。
「例の性格の悪いあいつを、声も出せないくらい恥をかかせてやったじゃないか。」
「……ああ……。」
彼の言いたいことを理解した私は、遅れて自分が第二皇子を打ち負かしていたことに気づいた。
私は2皇子が去った方向にちらりと視線をやった。
「ふん、なんでもないことでイライラして!」
「俺がいるときだけそうなんだ。あいつ、性格よくないからな。」
性格が悪いという言葉には、私もだいぶ共感した。
「うん、わかった!」
無理に答えると、エドウィンは面白がったように表情を緩めた。
「皇太子の悪口を言うときは口を塞ごうとしてたけど……2皇子は大丈夫?」
「そ、それは……ここは皇太子の宮だから……」
「そっか。」
私の戸惑いに、エドウィンは何かを悟ったように肩をすくめた。
「わかった。宮の外に出てから悪口を言おう。」
「うん!いいね!」
馬車のある宮殿の入口までの道のりは、子どもたちの私は歩幅でかなり離されていた。
しかし見た目はそうでも、私は立派な大人なので、自分の足でしっかり歩いていた。
回廊を抜けてきれいに掃除された道を歩いていると、エドウィンがふと思い出したように口を開いた。
「でも、皇太子を助けたってどういうこと?」
「そ、それは……。」
『ああ。うやむやに済んだと思ってたのに。』
どうやら公爵様に似ているからか、彼は抜け目なく几帳面で記憶力が良かった。
私は深くため息をつき、その日何があったのかを簡単に説明した。
手紙を持っていたエドウィンは苦々しい顔をした。
「君……そんな危険なことがあったのなら、言ってくれなきゃ!」
「そ、それが、本当に大したことじゃなかったの!皇太子様はもうほとんど意識もなかったし、私はただクマのぬいぐるみを連れて治療台に連れていっただけだよ?」
当然ながら適当な嘘をついた。
真実をすべて話したら、エドウィンは公爵様にまであっさり話してしまうのは明らかだ。
神殿にも行かなきゃならないし、事業もやらなきゃならないし、今後も外出することが山のようにあるのに、その度に面倒になるのは避けたい。
「はあ……」
私の必死な言い訳に、エドウィンはようやく納得したようだった。
彼は深いため息とともに頷いた。
「今後、外出する用事があれば、父上か俺に必ず先に言うこと。」
「でも……二人とも忙しいじゃん。」
「二人のうちどちらかはどうにか時間を作って付き添うよ。ゴムゴムトリ(魔法道具)だけを信じて、勝手に出歩くのは禁止だ。」
「一人じゃないよ。ターラもいるし。」
「ターラはお前の保護者じゃない。」
そう返事したエドウィンは懐から書類を取り出して、私の目の前に差し出した。
見るからに厄介そうな紙だった。
彼の〈保護者任命書〉だ。
「ここ見て。君の保護者は僕と父さんになってるだろ……」
「わかったよ!言えばいいじゃん!」
自分の名前が書かれた部分をしっかりと指さして話すエドウィンの様子に、私は本気で彼の望む返事をしてあげた。
『なんだこりゃ!早く大きくならなきゃ!』
高貴な栄養剤をかき集めてでも、早く成長促進の薬をもらわなきゃ!
望んだ答えを得たエドウィンは紙を折りたたんでしまいながら、最後まで小言を言い続けた。
「せめて全部執事を通して買うとかして。勝手に出かけて買い物して、どこでぶつかって怪我でもしたらどうするの?」
「ちっ。僕は赤ちゃんじゃないよ!子どもじゃないって!」
「うん、君は大人だよ。いい?」
「チッ……!」
自分の言葉がすべて正しいという感じの無愛想な態度に、苛立ちがこみ上げた。
でも、怒ることもできなかった。
エドウィンは私の前に背を向けて、すっとしゃがみ込んだ。
「おいで。」
「え?」
私は彼の突然の行動に戸惑った。
「どうしたの?」
「お前、今ほとんど歩けてない。足が痛いのか、よく考えてみろ。」
その言葉に私は慌てた。
『え、どうして分かったの?』
足が痛くて少しゆっくり歩いていたのが、すっかりバレたようだった。
「大丈夫だよ。ぜんぜん痛くないから……」
「俺たち、まだ皇太子の宮殿を出ていないんだ。このペースだと、家に着くころにはもう夕方になってる。」
彼の言うとおり、すでにかなりの時間が経っていたが、私たちはまだ皇太子の宮殿の敷地内にいた。
赤らんだエドウィンの耳元には、ほんのりと赤みが差していた。
「ただおぶって。どうせ毎朝お前の重さの石袋を背負って走ってるんだから。」
口ごもっていた私を察したのか、エドウィンがもう一度優しく言った。
「……わかった。」
私は負けたふりをして彼の背中に乗った。
毎朝体力トレーニングをしているという話は嘘ではないようで、エドウィンはクマのぬいぐるみと私を背負っても力強く歩いた。
『たった4歳差なのに……どうしてエドウィンはこんなに私より大人っぽく見えるの?』
私はぽかんとしたまま床を興味深く見下ろした。その間にエドウィンの背がさらに伸びた気がした。
確かにふらふらしながら一緒に歩くより、エドウィン一人で歩いた方がずっと早かった。
私たちはいつの間にかすべての回廊を抜け、皇太子宮の前庭に入っているところだった。
少し離れた場所からやってきた公爵家の馬車が視界に入ってきた。
「……あのね、エドウィン。」
私はなんとなく焦る気持ちで、ためらいながら口を開いた。
今言わなければ、永遠に言い出せない気がした。
なぜなら、エドウィンも結局は攻略対象の一人なのだから……。
「どこか痛くなったら……私が治してあげるから、ディアナの治癒は受けないで。」
「……」
「わかった?」
「うん。怪我しないようにするよ。」
心配をよそに、エドウィンはあっさりと肯定してくれた。
「俺は、正当性のない敵に対しては、命を取ったりはしない。どうせ命乞いされるなら、逃走を助けるぐらいの手は打っておくよ。」
誰かを牽制するようにも聞こえる言葉に、なぜか気持ちは晴れる。
それでも「わかった」と言ってくれたその言葉は、何より安心できた。
おかげで不安で騒いでいた胸のざわつきが、少し静まった。
「……えへへ。」
気分が良くなった私はエドウィンの首にぎゅっとしがみついた。
だが、馬車に着く前に落ちてしまったことは――秘密ではない。










