こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

100話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 親友との再会⑤
私が目を大きく見開くと、彼は穏やかに微笑み、私の視線に合わせて身を低くした。
「初めまして、私は……。」
「まあ、バートン男爵なのですね。」
ネリア・ジャルダンが優雅に扇を広げ、私の前に立ちはだかった。
「あら、お久しぶりですね、ジャルダン夫人。でも私はお嬢様に……。」
「時間はたっぷりあるのですから、そんなに急ぐことはありませんよ。」
ネリア・ジャルダンが身を低くしながら、彼の肩を軽く叩いた。
「今回、私の夫が事業の件について改めて話をしたいと言っていましたが……。」
にっこりと微笑んだ彼女が、まさに素晴らしい話術で私を見つめていた貴族を釣り上げると、あっけなく離れていった。
ちらっと、寂しげに私を見ながらウィンクをした彼女は、名残惜しそうな態度を見せつつ、男爵とともに離れていった。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
その後も、名前も知らない貴族たちが私に積極的に近づいてきて自己紹介を始めたりした。
そして、そのたびにエタムたちは待っていたかのように順番に彼らを一人ずつ釣り上げていった。
それを見て、彼らは自然と私から離れ、警戒し始めた。
『なぜ……、辺境と直系の者たちが全員出席しているのか分かった。』
それにしても、なぜ馬車が十台以上も動いたのか気になる。
まるで一対一のお見合いではなく、みんなが自然と私の代わりに貴族たちを引き寄せてくれるようで、正直驚いた。
『みんな、私に会おうと必死だったのか……。』
すでに絶滅したとされる幻想の生物「ドラゴン」だと分かれば、興味を持つのも当然かもしれない。
おそらく、最初に近づいた貴族がきっかけを作ったことで、皆が勇気を出す流れになったのだろう。
『助かった。』
もし一人だったら、きっと圧倒されていただろう。
「誰かに見守られているということ、家族というつながりがあるということは、こういう気分だったのか。」
『それなら、少し隠れている方がいいのかな?』
そう考えながら、周囲をそわそわと見回した。
どこからか鋭い視線を感じた。
それが肌に触れるだけでも、ひどく不快になるような視線が。
『…誰?』
視線の発信源を探し、辺りを見回すと、見知らぬ男が貴婦人と一緒に宴会場の入り口付近で私を見つめていた。
かなりすっきりとした顔立ちの男だったが、遠くてよく見えなかったものの、目つきが少し鋭いのが分かる。
私と男の視線が空中で交差した。
男はまるで待っていたかのように手を伸ばし、私に差し出した。
まるで近づいてくるかのように。
その理由も分からない行動に、不快感と疑念が入り混じり、思わず眉をひそめた。
「ご主人様。」
馴染みのある声とともに、視界が遮られた。
最初に目に入ったのは真っ白な衣服、そして、その奥に広がる青い瞳だった。
「ルシリオン……?」
「はい、お久しぶりです、ご主人様。」
私の視線を遮ったルシリオンが片膝をついた。
宴会場にはこれほど多くの人がいるのに、誰も何も言わない。
いや、むしろ周囲からひそひそと囁く声が聞こえた。
「あの子、今回の大神官になったって言ってた子じゃない?」
「詐欺を働いて大神官になったっていう候補生のこと?」
「前の大神官は混乱してたよね。しかも大量の人員を全員解任して、たった2週間で既存の神官の30%を粛清したとか…」
「それなのに、なぜエタム家の令嬢に跪いて…」
ひそひそと囁かれる声が次々と耳に飛び込んできた。
顔が真っ赤に染まるほどの気まずさに、思わずルシリオンの肩を掴んだ。
「起きて、ルシ。」
「はい。」
さっと微笑んだルシリオンは、涼しげに立ち上がり、私の隣に立った。
すると今度は、ルシリオンの後ろからリヒャルトが頬を膨らませながら顔を覗かせた。
「ベンベン!」
「リヒャルト?」
リヒャルトは少し疲れたような顔で、私に近づいてきた。
「そのままにしてごめん……。あの人形、本当に作るのが大変だったのに、腕と脚が消えちゃって……。でも、まだ私の力では元に戻すことができないんだ。」
リヒャルトは、自分のしたことがとても気まずかったのか、口ごもりながら言った。
「人形より君のほうが大切だから。」
リヒャルトは慎重に、壊れてしまった人形を私に差し出した。
「君にあげたくて作ったんだ。」
私は震える手で、見たこともない自分のヘアスタイルをした人形を受け取った。
すると、リヒャルトは私を見て笑った。
「ありがとう。でも、家は大丈夫……?」
「……うん。」
もしかして、無事ではないのかもしれない、という不安が頭をよぎった。
彼が体を低くし、冷静な表情で問いかける様子に、私は口を閉ざした。
「何でもないわ。あなたも変なこと言わないで。」
うまく誤魔化そうとした。
「惜しいな。」
リヒャルトは肩をすくめ、少し微笑みながら口を引き結んだ。
「おい、お前たちは体だけ借りて楽しんでるのか。ルシリオン、お前は俺が招待したのに、挨拶もしに来ないとはどういうことだ?」
「ええと、いらっしゃるとは思わなくて……。」
「……恩知らずな奴め。」
私が返答に困っている間に、今度は皇子まで会話に加わっていた。
王族の周りに集まっていた友人たちを見て、なんだか嬉しくなった。
「やはり皆あのドラゴンを……。」
「現エタム家主でさえ、あのドラゴンには恐れをなしていると言うじゃないですか。我々も早めに手を打たないと……。」
「でも、ドラゴンの血と粘液を飲めば永遠の命を得られるって本当なんでしょうか……?」
立て続けに聞こえてくる不吉な話に、反射的に体が震えた。
聴力が良くなってから、あまり聞きたくない話まで耳に入るようになってしまった。
「そろそろ私たちはここにいる必要がないように思えるが、どうだい? しばらくお茶でも飲みに行かないか?」
私の表情が暗くなっていくのを見たのか、エノシュははっきりと私を見つめながら促した。
彼は、おそらく私がこの場を離れたいと思っていることに気づいたのだろう。
「いいよ。」
「私も行ってもいいですか、ご主人様?」
「バンバンも、私も。」
「お前が行くなら、私も行かなくちゃね。」
私が言い終わると、ルシリオン、リヒャルト、そしていつの間にか合流していたリリアンが次々に答えた。
「……なんだか妙な集まりができあがった気がするけど。」
エノシュが少し震える声で言った。
「とはいえ、彼らは皆、将来大きな役割を果たすであろう有力な候補者たちだった。」
いつも周辺にいた私が、今はその中心にいるという事実が少し信じられなかった。
「だからなのだろうか?」
ふと、先ほど私を見つめ、手まで触れてきた誰かの不快な視線を思い出した。
気まずそうにしながらも、そこまで見知らぬ感じではない、妙な雰囲気の男性が、まるで鼓膜に焼き付くように、長い間記憶の中に残っていた。
・
・
・
「どうだった?」
「ああ、久しぶりですね。やはり上流階級の宴は最高ですね。でも、あの子って本当にドラゴンだったんですか……?」
少し整った顔立ちをした、すらりとした容姿の男が鋭い目つきで無色透明の水を一口飲みながら言った。
「ふむ、甘いですね。最近この味がやたらと気になっていました。誰が知っているでしょうか? この甘さの中に毒が……」
「そこまでにしなさい。余計なことは口にしないように。」
「あっ、申し訳ありません。」
男は後頭部をかきながら、ばつが悪そうに答えた。
「それで、どうだ? できそうか? 言ったからには、お前がその子を連れてくれば、一生お金に困らないようにしてやる。」
騒がしい賭博場の奥の一室で、密かに交わされる二人の男の取引の声が静かに響いていた。









