こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

103話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 親友との再会⑧
沈黙していたアルビオンが、短くため息をついた。
「ここでする話ではなさそうですね。」
「ではお二人でお話しください。私はここでローズモントの式典でも踊っていましょうか。」
もちろん、それは嘘だ。
なぜなら、ヒル・ローズモントは私にダンスの誘いすらまともにしてこなかったから。
私はヒル・ローズモントの手を取って体をひねり、すぐさまテラスへと向かった。
「え、え、エイミー……」
戸惑ったヒル・ローズモントの顔が真っ赤に染まった。
しきりに目を潤ませていて、まるで泣きそうな顔だ。
『この子、本当に打たれ弱いわね……』
真っ赤に変わった顔を見ていると、思わずため息が出そうになった。
少しだけ、いじめたくなるような気持ちも湧いてきた。
だけど、いつもヒル・ローズモントをいじめているみたいだから、少し可哀想にも思えてきた。
「エイリンって気軽に呼んでくれる?」
「わ、はい!あ、私も呼んでもらって大丈夫です!お話も気軽にしてください!」
「じゃあ、敬語やめるね。先生は私のこと、何て言ってた?」
「えっと……おバカかと思ったけど、すごく賢いって褒めてましたよ!」
それ、悪口じゃない?
「それに、詐欺の才能もあるって……」
それも悪口だよね。
「『首輪つけて飼いたい』なんて言ってましたよね!」
それはもう、侮辱というよりもはや罵倒だ。
私は呆れた表情でフィル・ローズモントを見ると、この子鹿のような少年はぱちぱちとまばたきをしていた。
『うん、あれを褒め言葉だと思って育ったのね……』
誰がそんなこと言ったんだろう、としばし沈黙。
「ちゃんと話せてるね?君も気軽にしゃべっていいよ。」
「え、う、うん。言葉は、えっと…お兄様の前だと少し…うん、お兄様が怖くて……」
「うーん、それなら家を出てみるのはどう?」
「だめだよ…。お兄様には恩があるから。育ててもらったし。代わりに責任を取らないといけないんだ。両親が亡くなって、兄さんがすごく大変だったから。」
しょんぼりとした声から感じられたのは、この鹿がヒル・ローズモントにしっかり依存しているという事実だった。
「そうなんだ?」
「うん、うちの両親はとても怖くて厳しい人たちだったんだ。兄さんが助けてくれるまでは、ずっと部屋に閉じこもってたよ。僕が外に出て空を見ることができたのも、全部兄さんのおかげなんだ。」
「………」
その言葉に込められた深い思いに、私は思わず口をつぐんだ。
するとヒル・ローズモントが少し驚いたように私の目を見て、にこっと笑った。
「ごめんね、こんな話はしないって言ってたのに。秘密にしてくれる?」
狩人のようにしがみついている純朴な小鹿が、笑いながら言った。
相手を慰めるには、自分が知っていることもなく、ただそのコップをいじるしかなかった。
背後から風がすっと抜けていくような感覚とともに、ひんやりした気配が漂ってきた。
「……ついに見つけた。」
背後から聞こえる声に、私とフィル・ローズモントが同時にカップを手から離した。
瞬間、身体から血がすっと引いていくような感覚。
以前から私をつけ回していた、あの不気味な男だった。
片手にワイングラスを持った彼は、私を見ながらニヤリと笑っていた。
近くで見ると、目の下は一層くっきりしていて、少し目が潤んでいるようにも見えた。
私が驚いて立ちすくんでいるときだった。
「どなたですか?」
ヒル・ローズモントが急いで私の前に立ちはだかった。
「なんだ?血の気も引いてないガキが、よくも俺を止めるつもりか?俺が誰だか知ってるのか?」
「存じません。」
ヒル・ローズモントはかなり毅然と答えた。
しかし、よく見ると指先がかすかに震えていた。
「でも、レディに見知らぬ男が無理に近づいてはいけないと教わりました。」
「はっ!俺はあの子の父親だ!すぐにどけ。父親が自分の子どもにも会えないっていうのか?」
「お父さん?」
フィル・ローズモントが反問した。
『お父さん?』
誰?私にもう一人お父さんがいたっけ?
「本当にそうなんですか?」
フィル・ローズモントが手を引っ込めて尋ねた。
私は戸惑いながらも彼の手をぎゅっと握りしめ、首を横に振る。
「違う、その人知らない。」
私は彼をじっと見つめた。
明らかに見覚えがあるような感じはしたけれど、実際に会ったことはなかった。
不審な男が一歩近づいてきた。
「ドラゴンの能力でも使って脱出しなければならない。」
また深い眠りに落ちるのが怖くて今まで使えずにいたが、今はそうも言っていられなかった。
隙を見て、フィル・ローズモントと一緒に一歩踏み出した瞬間だった。
ガツン!
不審な男の顔がテラスの床に激しく叩きつけられた。
「ゴホッ!」
無様に倒れた男の背に、冷然とした靴の先が静かに地面に降り立った。
「俺の娘もずいぶん大きくなったもんだな……。今や平気で俺の娘に手を出そうとしてるとは。」
父だった。
「お父さん!」
「お嬢さん、ここで何をしてるんだ?他の連中は。」
「みんな私を助けようとして、人と対峙してると思います。」
「助けなんて言葉では済まないな。」
私が気まずく笑うと、父の視線がゆっくりと下を向いた。
父の視線を追って私も顔を下げると、ナアとフィル・ローズモントがしっかりと握っている手が目に入った。
じっと睨みつける視線に、フィル・ローズモントはそっと手を引いて私の後ろに体を少し隠した。
「フィル……?」
「怖いよ、あの人……」
「うん、あれは僕のお父さん。」
「……エイリンのお父さんって、怖いんだね。」
フィルは震えながら答えた。
その正直な感想に、私は言葉を失う。
さっきまでガタガタ震えながらも大きな武器をしっかり持っていた少年は消え、今は再び弱々しいフィル・ローズモントだけが残った。
「助けてくれてありがとう、フィル。」
「いや、以前先生がレディが危険なときに逃げたらいけないって言ってたから。」
たくさんの勇気を振り絞ったのだろう。それがありがたかった。
初めて会った誰かを守ろうとして、危険な相手に立ち向かうなんて、そう簡単にできることじゃない。
「だから、ありがとう、フィル。君は勇気のある人なんだね。」
私はにっこり笑って言った。
フィル・ローズモントの目がほんのり赤く染まり、やがて熟した桃のように顔が真っ赤に染まった。
「ぼ、ぼく、勇気…あるのかな……?」
緊張したようなフィル・ローズモントの言葉の結びに、
「うん。」
「兄さんは、僕には一人でできることなんて何もないって言ったのに……」
「違うよ。」
私の一言に、フィル・ローズモントは顔を赤らめて、ぎゅっと大剣を握りしめた。
「兄さんに自慢しないと……」








