こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

104話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 父親
「これ見て!離せってば!エルノ・エタム、この役立たず!」
騒ぎはさらに大きくなり、人々が集まり始めた。
散り散りになっていたエタムたちも一人、また一人とテラスの近くへ集まってきて、この状況に気づいた瞬間に目を見開いた。
「ぐあああああっ!」
重苦しい男の背を踏みつける父の足取りが一層重くなったようで、彼はひっくり返った亀のように両脚だけをじたばたさせ始めた。
「な、なに?俺が誰か分かってるのか?!」
「分かってるよ、私のおもちゃ。」
エルノ・エタムが答えた。
『お父さんのおもちゃ?』
まさか、去年お父さんが連れて行ったという、あの色男を装っていた人のことか?
「おもちゃ?!俺がなんでおもちゃなんだ!このガキの息子が、昔っからあそこの……!」
父の評価は昔も今も、相手が誰であれ、場所がどこであれ、まったく変わらないようだ。
このくらいなら、過去の父の姿を見てみたい。
小説に登場したとしても「公爵家の出来損ないサイコパスですけど何か?」程度ではなかっただろうか。
『……でも、あの顔でお父さんの趣味っておかしくない?』
不細工ではないけれど、だからといって父が隣に連れて歩くほどの美形でもなかった。
『父の趣味って、ああいうの?』
腕を組みながらそんなことを考えていたときだった。
「エイリン。」
「はい?」
「どんなことを考えていようと、それは関係ないから、その表情やめなさい。」
父の言葉に私はぎゅっと口を閉じた。
『私、どんな表情してたっけ?』
ふふん。
私はこっそりと手首を引きながら父を見上げた。
「この人、昨日からずっと私のことをつけ回してたんです……誰かご存じですか?」
「知ってるよ、そいつ……」
「厄介な奴さ。」
父がちょうど口を開こうとしたとき、誰かがその言葉を遮った。
聞き覚えのある声に振り返ると、テラスにはすでに多くの人が集まっていた。
「一体どうしたんだ?まさかまた何かしでかしたんじゃないだろうな、エタム公爵。」
皇帝だ。
テラスに入ってきた皇帝は、床にぺたんと座り込んでいるゴキブリのような男を一蹴した後、父を見た。
「我が愛しい娘に虫がついたようで。」
皇帝の目が細められた。
その表情から察するに、彼もこの厄介な男を知っていることは明白だった。
「我が家門のことゆえ、私が対処いたします。」
「私の宴で起きたことが、どうして家門の問題になり得ようか。」
「へ、陛下!私は無実です!」
床にいた男は、何かを考えているようだった。
彼は絶えず体を震わせながら、皇帝に向かって声を張り上げている。
「私は奪われた娘を取り戻しに来ただけです!エタム家門が私の娘を無理やり奪っていったというのです!」
顔をゆがめたかと思うと、彼の目からはたちまち涙がぽろぽろと流れ始めた。
一瞬で変わったその表情に、言葉が出なかった。
世界で最も鋼のような顔をしていたあの男が、今泣いていた。
まさにそのときだった。
突如、頭がズキンと痛んだ。私はとっさにこめかみを押さえた。
「この子は……何も……何も……知らずに……育たなければ……」
運命……。ドラゴンは…… 死ぬことさえも恐れなかった。
「それでこそ……。未来が平穏で幸せになるというのなら……。」
「……つらいことだよ。」
「だから覚えておきなさい。この子はあなたの子だ。」
突然、脳裏に浮かんだその声に、胸が締め付けられるような思いがした。
記憶の中に突然浮かび上がった、はっきりとしない記憶の中に現れたのは……。
『あの男じゃない?』
あの男が幼い私を抱いていた。
誰かと一緒にいたような気がするが、その記憶はなかった。
『まさかあの人が……』
あの野蛮人が、もしかして私の実の父なのか?
原作でも血縁検査をしたが、私はその結果を聞く前に連れていかれた。
原作ではマイラと共に遺物を盗もうとして捕まり、今はあの野蛮人がずっと逃亡生活をしているせいで、血縁検査を受けることすらできなかった。
私は自分が吸血鬼の子だと思っていたので、この家門の人間ではないと思っていたけれど……。
『実は私、ドラゴンだったんだよね?』
そうだとすれば、私もこのエタム家門の本当の一員である可能性が高かった。
ドラゴンの血が流れるのはこの家門の外には存在しないと聞いていたのだから。
『じゃあ、あれが本当に私の実の父なの?』
私はぎこちなく困惑した男を見つめた。
なぜ見覚えがあったのか、ようやくわかった。
記憶にはないけれど、私が幼い頃に会った人だったのだ。
「それは本当なのですか、エタム公爵?」
「分かりません。」
父が答えた。
私はしばらくの間、床でもがいている一人の惨めな男を見つめながら、やがて首を手に取った。
お父さんは私を見ていた。
表情はいつも通りのようなのに、なぜか慎重に見えるのはなぜだろう?
「エタム公爵、君がこの子を養子にすると言うからそうしろと言った。だが実の父親がいるなら……」
「私は、今この野蛮人が私の娘の実父なのかどうか分からないと言いました。」
お父さんの返答に、書斎の中でざわめきが強まった。
「違います!あの子は間違いなく私の子です! 苦労して生んだ子なんです!」
まさかあなたが私の父だなんて、あなたが私を生んだとでも?
顔も知らない母親が私を生んだんでしょ。
発言からして全く好感が持てない男だ。
「そうか、そういうことか? なら、ちょうどよかった。ちょうど新たに就任した大神官がいるではないか?血縁検査の権限は大神官にある。どうだ?ここで判断を下してみるのは。」
「私は関係ありません。」
皇帝の言葉が終わるやいなや、ルシリオンがすばやく人々の間に姿を現し、言った。
「私も!私も関係ありません!陛下!」
依然として父の足元にひざまずいていた犬のような男が、急に手を挙げて言った。
皇帝の視線が父へと戻った。
父は口をぎゅっと閉じていた。
「エタム公爵はどうお考えかな?」
「……」
父はしばらく何も答えられなかった。
彼はすぐに首を巡らせて私を見た。
私が視線を逸らすと、お父さんは短く息を吐き、野蛮人の背中から足を下ろしてこう言った。
「……私も大丈夫です。」
「ではすぐに実施しよう。」
ルシリオンが笑顔を浮かべながら私に近づいた。
彼はとても小さな針で、私の指先を軽く突いた。
丸い血がポタポタと滲んだ。
すると彼はすぐにお父さんの元へ行き、お父さんの前で手を差し出した。
『お父さんはなぜ?』
野蛮人と私のことを比べていたんじゃないの?
何か変だと思ったのか、額にしわを寄せた。
「私じゃないということを証明するためです。」
父は犬のような男を自分の後ろに隠した。
「承知しています。万が一のために三人同時に検査を行おうと思っています。」
「万が一とは……」
父は言葉を最後まで口にしなかったが、彼が何を言おうとしていたのかは分かった気がした。
私が父に養子として迎えられたと言われても、実子であるはずがなかった。
父の実子はカラン・エタムとシリアン・エタムの二人だけなのだから。
だからきっと、私がこの検査で実の娘として出る可能性はないと言おうとしたのだろう。








