こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

97話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 親友との再会②
「え…?」
「だから、俺に申し訳ないと思うなら、もうどこにも行くな。ここにいろ、ベムベム。」
「それはちょっと……。」
すべてが豪華なこの部屋を見回すと、リヒャルトがどれほど万全の準備をしていたのかが分かる。
「俺が守ってやる。だから、俺のそばにいろ。お前を大切にしない世の中の奴らをすべて──。何でもあげるから。欲しいものは何でも言って。」
思いがけない言葉に目を大きく見開いた。
私が放り出したはずの存在が、すでに狂人として確立されてしまったのだろうか?
「……家族って……、私が見つけてあげた家族は、気に入らなかった?」
「ううん。すごくよかった、すごく幸せだったよ。でも、君がいなくて寂しかった。君は私の最初の家族だから。」
笑顔はどこか寂しげに見えて、私は黙って何も言えなかった。
「私をここに閉じ込めたの?」
「違うよ、君が外に出る必要がないようにしたんだ。もともと君のための部屋だったんだよ。戻ってくるって言ったじゃないか。」
かすかな期待と混ざった震える声に、私はぎゅっと唇を噛みしめながら、そっとリヒャルトの腕を引いて抱きしめた。
「ごめん。」
「……。」
私の謝罪を聞いても、リヒャルトは何も答えなかった。
「嘘じゃないよ。私にとっても、リヒャルトは大切だった。」
だけど、思いもよらなかった幸福が、あまりにも一瞬のうちに私を包み込んだ。
一生をかけて願い、夢見ることしかできなかったすべてが、目の前に広がり、途切れることなく私の胸に押し寄せてきた。
それらすべてを手に入れたくて、貪欲に欲望を抱いたのも事実だ。
「でも、私も……。生まれて初めてできた家族だから……。友達だから……。すごくたくさん、足りなかったんだ。」
重たいと分かっていても、すべてを手に入れようともがいていた。
リヒャルトの愛情を知っていながらも、「この子ならもう少し待ってくれるはず」と、無意識のうちに考えていたのも事実。
「私は……君と家族にはなれない。リヒャルト、ごめんね。私を愛してくれる家族ができたの。私はそれが一番幸せ。」
私は少し微笑んでみせた。
以前、両手を組み、ぎゅっと目を閉じながら、誰かも知らない神に願いをかけた。
神様が何なのかも、仏様が何なのかも知らなかった。
ただ人々が偉大な存在だと言うから、ただ願った。
私を愛してくれる両親ができますように。
私を優しく扱ってくれる物語の中の兄や弟ができますように。
一緒に楽しく遊び、信じられる友達ができますように。
時々、私が貴族と出会い、すごく高い地位の人の家族のような存在になったり、大人になって大成功し、家族を無視する想像をすることもあった。
一度、授業中に定規で手が血が出るほど叩かれたときも、悔しいことがあったときも、入学式で一人ぽつんと立っていたときも。
卒業式の日、一人で空っぽのカバンを抱えて、よろめく足取りで家へ帰ったあの日も。
そのすべての寂しさに満ちた時間を、小説と想像が私の胸の痛みを癒してくれた。
けれど、ずっと想像するだけだったすべてのことが、現実となって恐ろしいほど叶ってしまった。
「私が生涯、一度は聞いてみたかった夢のような言葉を言ってくれたね。義父として家族になってくれるって。でも、ごめんね。」
「……」
「私は、君の家族にはなれない……。」
最初から、友達として過ごそうと言うべきだったのに。
守ることのできなかった約束だった。
「本当にごめん。」
私は顎をうずめたまま言った。
リヒャルトがどんな表情をしているのか分からなかったが。
「バカ、ベムベム。」
リヒャルトが私の頬をしっかりと握りしめた。
「君、それを言ったら僕が許してくれると思うの?」
ぽたぽた。
私の額の上にリヒャルトの涙がぽたぽたと落ちてきた。
音もなく涙を流し、歪んだ顔で私をじっと見つめる彼を見て、突然こみ上げる感情に胸が締めつけられ、私も泣き出してしまった。
「ごめんね、ハァ……。」
どんな気持ちで待っていたのか分かったから、もっと申し訳なく思った。
過去の自分を思い出して、さらに悲しくなった。
一体これは何なんだろうと、こんなにも悲しいのはどうしてなのかと、私たちはお互いを強く抱きしめ、嗚咽しながら泣いた。
そして、十分に泣いた後、やっと少しずつ気持ちを落ち着けることができた。
「……もう、家族になろうなんて言わないよ。」
リヒャルトは、パンパンに腫れた目でそう言った。
リヒャルトの目の端を見ていると、自分の目もどんな状態になっているのか気になってきた。
『あぁ、目が熱い。』
目の周りがじんわりと熱を帯びていた。
リヒャルトはどこから持ってきたのか、冷たいタオルで私の涙を優しく拭い、私の目にもタオルをかぶせて、隣に横になった。
私たちはぐったりとしたままベッドに横たわる。
「うん、私たち友達になろう。」
「それは嫌。」
「……え?」
「家族じゃなかったら嫌なの?さっきまで雰囲気よかったのに。」
私が戸惑って身動きすると、リヒャルトはしっかりと私の目の上にタオルを置き、起き上がれないようにした。
「うん、代わりに僕と結婚しよう。それもある意味、家族でしょ? ね?」
「……。」
お父さん、この子、おかしいよ。
私が呆れながら席から立ち上がろうとしたその時だった。
バチッ!
どこかで火花が散る音がした……。
「結婚?あいつを連れて行って、一人でやらせるのがいいな。」
冷たい声が聞こえると同時に、私の体が宙に浮いた。
トンッ、ハンドタオルが床に落ちた。
「お父さん?」
ついに明るくなった視界には、怒ったのが明らかな、華やかに笑っている父と、魔法で宙にふわふわ浮かされているリヒャルトがいた。
「お嬢様、ケガは……。」
彼の言葉がぴたりと止まった。
私の顔を慎重に観察するように見つめていた父の表情が、ぱっと咲いた花のように明るくなった。
「涙に濡れた顔はまるで殺人の証拠だな、まったく。」
「え?殺人の証拠って……!」
違うと言おうとした瞬間だった。
「人間の体から水分がなくなれば死ぬと聞くが。」
たった少し泣いただけで大げさな!
「十分に殺人未遂だな。」
くだらない理屈をもっともらしく並べたその男が、そのまま剣を抜こうとした瞬間だった。
波のように水の塊が父に向かって襲いかかる。
しかし、父が私に防御の魔法をかけてくれていたおかげで、私は一滴も濡れなかった。
「息子よ!大丈夫か!」
そして、その一言で場の空気は一変した。
騒然とした招かれざる客、それは他ならぬクーレン公爵だった。
久しぶりに会った彼に嬉しさを感じたものの、それを表現するには状況が悪すぎた。
父は剣を抜き、唸るように構えていた。
その一方で、しっかりと父にしがみついて離れないリヒャルトは、クーレン公爵を睨んでいた。
「ケガはないか、リヒャルト。」
「ありません。」
まるで平然としているかのように答えたリヒャルトだったが、顔は赤くなっており、こっそりと私を見つめたあと、ひんやりとしたコリン伯爵の腕の中から抜け出した。
そっと手の甲で私の頬を拭ったリヒャルトが、父を睨むように見ながら口を開いた。
「伯爵閣下、結界が張られていたはずですが、どうやって入ってこられたのですか?」
「魔法で。」
父が愉快そうに笑いながら堂々と言った。
コリン伯爵も苦笑いを浮かべながら、リヒャルトの前に立ちはだかった。
「今、私の息子に何をしたつもりだ?」
「そちらの息子が私の娘を誘拐し、殺そうとしました。ですので、それ相応の報いを受けてもらうだけです。」
「殺すだと……?うちの優しく誠実な息子が、そんなことをするはずがない。」
リヒャルトを庇おうとするその言葉に、返答するクーレン公爵の声には不快感がにじんでいた。
『リヒャルトが、誠実……?』
悪人ではないように思うが、誠実かどうかは分からない。
『リヒャルトは、なんだか可愛くなってしまったような気もするけれど……。』
そんな考えに耽っていると、クーレン公爵が口を開いた。
私はそっと身を引き、父の腕の中に抱かれている自分を見つめた。
険しかった表情が少し和らいでいくのを見て、私はぎこちなくお辞儀をし、コリン公爵も少し驚いたような様子で頷きながら私の挨拶を受け取った。
「いくらなんでも子どもに剣を向けるとは!弱々しい私の息子が傷ついたらどうするつもりですか!」
コリン公爵は怒りを露わにした。
『……弱々しい?』
少し戸惑いながら視線を向けると、リヒャルトは頬を真っ赤に染めていた。
どうやら、私の父が自分の前に立ちふさがるのが、それほど嫌ではないようだった。
「子どもの前で平然と剣を抜く親とは……さすがエタム公爵家。親になる準備がまだまだのようですね。」
「子どもを守るためなら、何だってするのが親ではありませんか。」
「だからといって、他人の家に忍び込み、婚約の書類を盗み出し、さらには廃嫡まで脅すと?」
お父さん、婚約の書類まで盗んだの?
驚いてお父さんを見つめると、彼は理不尽だと言いたげに顔をしかめた。
「盗む……? そんなことをした覚えはないが。」
誰よりもその事情を知っているように見えるのは気のせいだろうか?
「きちんと管理もできずに、自分のものを失ったくせに、人を責めるとは、どうかと思いますが。」
冷静な父の表情を見ていると、コリン公爵の言葉が事実であることに気づかされた。
父は嘘をつくときも、気分が悪いときも、表情が明るくなる。
「どんな事情があろうとも、あなたはその子が傷つくのを防ぐべきでした。」
「その程度の話ですか?」
父はくすっと笑った。
『うちの父は、本当に信じられない。』
あまりにも父の言葉が的確すぎて、一発殴りたくなるような気分だった。









