こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

99話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 親友との再会④
「陛下、皇后様、第二皇子殿下がご入場されます!」
ざわついていた宴会場が、まるでネズミが通ったかのように静まり返った。
皆が杯を下ろし、腰を折って敬礼した。
皇帝が上座に着くと、周囲を見回して額にシワを寄せた。
「皆、杯を上げよ。」
皇帝の言葉が終わると、貴族たちは静かに杯を持ち上げた。
「久しぶりに開催された宴に、これほど多くの人々が参加してくれて感謝する。」
ゆっくりと話していた皇帝は、杯を回してエタム公爵家の人々が集まる場所に視線を向けた。
「今日はエタム家から嬉しい知らせがあると聞いていたが……、主人公をはじめ、重要人物が欠席しているようだな。」
皇帝の言葉に、エイリンを探していた貴族たちの耳がぴくりと動いた。
「二人の公爵はまだ参席していないのか?」
「それは……。」
シャルニエル・エタムは口を噤み、一瞬躊躇した。
皇帝は机をトントンと叩いた。
彼もまた末っ子がどこに行ったのか分からない様子だ。
その瞬間だった。
パアアアッ!
宴会場の中央がまばゆく光り始めた。
その光を吸い込むように、人々の視線が集中した。
その瞬間、チャルニエル・エタムの背筋がゾクッとした。
「まさか、そんな……」
まさか、彼らの末っ子がまた何かしでかしたのではないかと願った。
眩い光が消え、現れたのは……
「あ……、わ、我が帝国の栄光たる太陽を拝見いたします……。」
服はあちこちしわくちゃになり、最初よりも明らかにみすぼらしく見える……。
「エイリン・エタムです……。」
まるでこのような状況を予想していなかったかのように、青ざめた若き家長だった。
『この末っ子がまた何かやらかしたのか!』
直系・傍系を問わず、エタム家のすべての人々の頭の中に、同じ考えが同時に浮かんだ。
まったくもって華やかさのない登場だった。
「……。」
「……。」
場内はまるで息を潜めたかのように静まり返った。 こんなにも多くの人がいるのに、誰一人として息遣いすら聞こえない。
まさか宴会のど真ん中に転送されるとは思いもしなかった。
私もまた、呆然としていて息を整えることすらできなかった。
皇帝は、突然現れた私を信じられないといった様子で見つめていた。
そして、その隣に立っていたエノシュも、しきりにハンカチを震わせていた。
「……ようやく主人公が登場したな。」
さらには、皇帝はそれ以上の説明を求めようともしなかった。
まるで、何もなかったかのようにこの状況を自然に流そうとしていた。
「ね……。お父さん、遅れるなって言ったじゃない。」
「もう遅い。」
「……申し訳ありません。」
私はそっと頭を下げると、チャルニエル・エタムが私の隣にやってきて、一緒に頭を下げた。
「申し訳ありません。確かに時間通りに到着しましたが、何か事情があったようです。」
「……そういうことにしておこう。」
だが、それ以上詳しくは問わないようだ。
「この宴は、私の息子の不治の病を治してくれたエタム家の令嬢が、無事に成長し、成人したことを祝うための宴なのだ。」
『私のため……?』
私が目を丸くすると、皇帝はクスッと軽く笑った。
「最後まで招待状への返事がなかったから、陛下も少し気を揉んでいたよ。」
この宴会への出席が決まったのは、わずか2週間前の会議でのことだ。
最初は断るつもりだったみたいだけど、皇帝からの招待をそこまで無視してもいいものなのだろうか?
「この場を借りて正式に話そう。エイリン・エタム。」
「あ、はい!」
「朕の息子を救ってくれて、本当に感謝している。」
皇帝はゆっくりと頭を傾ける。
ほんの少し、ただ軽く頭を下げただけなのに、皇帝にとっては非常に破格な行動だった。
また、これが何を意味するのか分からない者はいないだろう。
周囲は一瞬にして静まり返った。
私も戸惑いながらうつむいていると、チャルニエル・エタムが私の肩を軽く叩いた。
その瞬間、私はようやく気づき、慌てて深く腰を折った。
「あっ!私はただ友人を助けただけです!」
欲などはなかった。
ただ、あの時は何としてでもエノシウスを救いたいという気持ちだけだった。
私が独りよがりな期待を抱いてしまったわけではなかったのだ。
「杯を掲げよう。」
皇帝の言葉に、私は慎重に杯を掲げた。
「友のためにしたこと……、何でもないように聞こえるその言葉を、行動で示すことは実は一番難しいことなのだ。」
「え?」
私の問いに、皇帝はただ穏やかに笑いながら視線を第二皇子へ移した。
「皇子には良い友ができたようだな。」
「はい、父上。」
何も考えず素直に答えるエノシュの言葉に、杯を傾けながらふと、ある考えがよぎった。
背筋に冷たい汗がにじんだ。
『これは、関係がぎくしゃくしていることを周囲に示そうとしているのか。』
私はドラゴンであり、その事実はまだ公にはなっていないが、エタム家の次期当主となる予定なのだ。
『……承知しました。』
もちろん「感謝」という言葉は本心だろうが、それと同時に感謝のパフォーマンスを通じて、私にプレッシャーを与えようとしているのも明白だった。
「あなたにとっても、エタム家にとっても、この宴が楽しいものになることを願っています。」
「ありがとうございます。」
「では、皆で楽しみましょう。」
皇帝が軽く手を振ると、場が和らいだ。
楽団が演奏を始めた。
「お嬢様」
「はい?」
「エルノはどこにいる?」
「あぁ、コリン公爵と……。」
邸宅にいたと思う、と答えながら、ひょっとしてと周囲を見回した瞬間だった。
父はいつの間にか貴族たちの間に、まるで最初からそこにいたかのように自然に立っていた。
「…後ろにいます。」
「何?」
「叔父の後ろにいます。」
チャルニエルが背を向けた瞬間、エルノー・エタムが躊躇いがちに微笑みながら、そわそわと私の方へ近づいてきた。
「エイリン。」
彼が私の腕を引こうとした瞬間、チャルニエル・エタムが前に立ちはだかった。
「少し話がしたい。」
チャルニエルが父に向かって低く尋ねた。
その冷たい眼差しを見て、父は思わず肩をすくめた。
「私は忙しい。」
「どこへ行っていた?」
「ちょっとした用事があって。」
「これ以上、私を苛立たせて娘の宴を台無しにするな。」
「破滅したくないなら、ついてこい。」
チャルニエル・エタムは怒った顔で体を勢いよく回した。
父は私を見てチャルニエルの後ろ姿を見つめながら、静かにため息をついて彼を追っていった。
「末っ子が叱られるな。」
ネルリア・ジャルダンがそっと肩をすくめた。
「叱られるの?お父様が?」
「そうよ。間違えたらいつも叱られていたもの。もちろん、そうは言っても末っ子の性格上、お兄ちゃんたちをさらにイライラさせるんでしょうけど。」
「あの……。」
頭の上を雲が過ぎるような気がしたが、その時、誰かが私に近づいてきた。
貴族の一人のようだ。








