こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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1話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ
私の妹、5歳のマリアンヌは誰からも愛される子供だった。
彼女が明るく笑うと、振り返らない人はいなかった。
彼女が話すとき、耳を傾けない人もいなかった。
王国で一番輝く金色の瞳と、それをさらに引き立てる愛らしい容姿、そして優しい性格まで。
カラスのように黒い髪と緑の瞳を持つ彼女は、物静かで慎重な私とはまるで正反対だった。
人々は誰もが彼女に好感を抱き、それは私も例外ではなかった。
マリアンヌは見た目も性格も私とは全く異なっていた。
でも家族だから。
同じ血を分けた家族だから。
人々が私とマリアンヌを比較して、私を見下していたとしても……
私は心からあの子を愛していた。
いや、愛していたと言っていい。
私があの子を殺そうとしたという疑いをかけられるその時までは。
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・
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私は目をそっと開けた。
目を開けたというのに、何も見えない地下牢の独房の中。
この場所には光の一筋さえ差し込まない。
乾いた唇を舌で湿らせながら考えた。
「今日の配給はいつ来るのだろう……。」
一日に一度だけ運ばれてくる水の入ったコップと固いパンの欠片。
私は訓練された犬のように、その時間を待ち、また待ち続けた。
それがここで得られる唯一の安らぎだから。
「私はどうなってしまうのだろう?」
私は不安げに唇を噛んだ。
第4皇女にも関わらず、私は誰かの庇護も受けられず、正式な裁判すら開かれないまま地下牢に閉じ込められていた。
暗い牢獄の中で、孤独と無力感に押しつぶされそうになるたびに考えるのは、牢獄に入るきっかけとなった出来事のことだ。
あの日、澄んだ青空は広がり、陽射しは暖かかった。
美しく咲く春の花々と鮮やかな緑の木々は、私が一人で見るにはあまりに惜しい光景だった。
私は久しぶりにマリアンヌを宮殿に招き、庭園でティータイムを楽しんだ。
あの子はいつものように明るい笑顔を見せ、私に色々な話をしてくれた。
そして私もその子に合わせて気分よく応じた。
楽しいひとときだった。
普段と何一つ変わらないはずの。
そしてそのとき、あの子は突然血を吐きながら倒れた。
あの子の血で白かったテーブルクロスは鮮やかな赤に染まった。
「……マリ、マリアンヌ?」
私はまるで夢を見ているようで、その子をただ呆然と見つめていた。
その子は血の涙を流すような目で私を見つめていた。
口からは赤い血が溢れ出し、手はわずかに震えていた。
「お姉さま……」
そして目を閉じる。
その瞬間も何が起きたのかわからず、ただ立ち尽くしている私を騎士たちが連れて行った。
人々は、私がマリアンヌを殺そうとしたと口々に非難した。
私の父、皇帝陛下。
彼はマリアンヌを限りなく愛しており、その愛の深さと同じくらい素早く行動に出た。
事情を調べることもなく、私を地下牢の独房に投げ込んだ。
皇族であるがゆえに拷問を受けなかったことが幸運だと思ったのは最初の一日だけだった。
全身を覆うような暗闇、静寂、孤独。
もし一日に一度、独房に水とパンを運んでくれなかったら、私は本当に気が狂っていたことだろう。
「私の無実はいつ明らかになるのだろう。」
既にここに閉じ込められて一週間が過ぎていた。
このまま一生ここで暮らさなければならないのだろうか。
そんな考えが頭をよぎり、私は冷や汗を流した。
「きっと無実が証明されるはず。」
そう自分に言い聞かせたものの、今まで誰一人として私を牢獄から解放しようと動く気配はなかった。
不安のあまり胸が高鳴るばかりだった。
ドクン、ドクン……。
妙にその音が大きく聞こえてきた。
私は耳を澄ませた。
「……足音だ。」
自分の心臓の鼓動だけではなかった。
遠くから足音が聞こえてきたのだ。
混乱しそうになる意識をなんとか引き止めようと努めた。
「配給が来たのかな。」
私は体を半分起こした。
ぼんやりとしていた意識が、水が入ったコップと固いパンの欠片のことを考えると少し冴えた。
しかし、配給のための小さな窓が開くものと思っていたのとは違い、不意に牢獄の鉄の扉が開いた。
私は驚き、目を大きく見開いた。
暗闇に慣れた目に不意に射し込んだ微かな光が私を眩ませた。
そこには看守たちが立っていた。
「出てきなさい。」
「えっ、ちょっと待って……。」
看守たちは私を無理やり立たせた。
私は戸惑いながらも彼らに従う。
私はその荒々しい動きに震えた。
少し前まで何の恐れも知らなかった自分が、これほど震えているなんて。
私は帝国の皇女なのだから。
しかし、彼らはそんな行動が当然のことのように振る舞っていた。
私は唇を固く結び、耐えた。
そうだ、彼らにとって私は妹を殺そうとした、天の下で最も悪名高い悪女なのだ。
「……無実はきっと明らかになる。」
私はそう自分に言い聞かせた。
地下牢から地上に出ると、目が眩むほどの光が差し込んできた。
その眩しさに少し慣れると、目の前には皇宮の美しい景色が広がっていた。
外の世界は、春の3月。今まさに花が咲き始めた頃だった。
「ああ。」
私は思わず声を漏らした。
こんなにも暖かく、美しいものが陽の光だったのだと気づいたのは初めてだった。
外の世界はこんなにも神秘的で、驚くべき場所なのだと。
一週間ぶりに見た青い空と花々、そして新鮮な風は、この世で何よりも尊いもののように感じられた。
しかし、私がそれに感動している暇はなかった。
看守たちが私を急かして引っ張っていったからだ。
私の手はぼんやりと庭の端をかすめるだけ。
私が連れて行かれたのは皇帝の謁見室だった。
看守たちが扉を叩くと、重厚な扉が迷いなく開かれた。
そこには、私の兄弟姉妹と父が集まっていた。
父の左には第一皇子ラキアス、第二皇子エルシスが立ち、右には第三皇女アドリンと第六皇子ルルスが並んでいた。
そして、父のすぐ後ろには第五皇女マリアンヌが座っていた。
「マリア!」
私の胸の中にあった不安が、すっと消えていくのを感じることができた。
庭園でのティータイムの後、あの子がどうなったのか、ずっと心配していた。
けれど、マリアンヌは顔色が少し青白いだけで、驚くほど平然としているように見えた。
「よかった、大事には至らなかったんだ……。」
安堵のあまり涙が出そうになる。
久しぶりに目にする愛しい家族たちだった。
「父上、兄上、姉上、そして妹たち……。」
私はゆっくりと彼らの顔を見回した。
今すぐにでも彼らに駆け寄り、私の無実を訴えたかった。
しかし、次の瞬間、私は立ち尽くしてしまった。
私を見つめる彼らの目があまりにも冷たかったからだ。
父の冷徹な声が空気を切り裂いた。
「罪人の裁判を始める。」
私は耳にした言葉が信じられず、目を見開いた。
「さ、裁判……?」
私の声は震え、制御できないほどだった。
皇族の裁判については私も知っている。
普通、皇族同士の問題は大抵が形式的なものであり、名目上の裁判に過ぎない。
法が皇族の尊厳を超えることはできないからだ。
しかし、その裁判がここで行われ、しかも私がその裁判の被告になるなんて、夢にも思ったことがなかった。
「罪人、第4皇女アリサ。」
父は冷たい声で私に告げた。
「妹であるマリアンヌを嫉妬し、毒殺しようとした罪を認めるのか?」
私は口を開けたまま言葉を失った。
「私が、マリアを嫉妬して毒殺?」
今、自分が何を聞いたのか。
私がどうして彼女を嫉妬するというのか。
私が口を開けたまま言葉を失っていると、第三皇女アドリン姉が苛立った様子で叫んだ。
「質問に答えなさい、罪人!」
その剣幕に圧倒され、私は驚きのあまり口をもごもごさせるしかなかった。
「えっ、私は……。」
頭が回らなかった。
一週間もの間、独房に閉じ込められ、水一杯と固いパンをかじるだけの生活が続いていたからだ。
今こそ自分を弁護しなければいけない時なのに、口がうまく動かなかった。
私が答えられずにいると、弟であるルルスが冷笑を浮かべて私を嘲った。
「罪を認めているから弁明もできないんだろう?」
あの可愛らしく優しかったあの子が、まるで口に苦いものを含んだような顔をしていた。
私を見つめるその目には、驚きだけが浮かんでいた。
私は自分を落ち着かせることができなかった。
そのときだった。
私の宮殿の侍女の一人が、群衆の中から引っ張り出されてきた。
彼女の顔は固く引き締まっていた。
父は彼女に問い詰める。
「お前が見たことを詳細に話せ。」
「はい、申し上げます……。」
私は目を大きく見開いた。
彼女が一体何を見たというのか?
何を言おうとしているのか?
私は冷静でいようと努めた。
実際、私は何一つやましいことをしていないのだから。
しかし、侍女の言葉はあまりにも予想外だった。
「アリサ皇女殿下とマリアンヌ皇女殿下がお二人がティータイムを共にされていた日……」
彼女は言いづらそうに、一瞬言葉を止めた。
「……アリサ皇女殿下が、マリアンヌ皇女殿下のティーカップに白い粉を入れるのを見ました。」
「……な、何?」
私は呆然と立ち尽くした。
混乱と衝撃で頭が真っ白になった。
私は彼女のティーカップに触れたことすらない。
しかし、人々はまるでそれが事実であるかのように、その言葉を無言で聞いていた。
侍女はさらに話を続けた。
「それを見たとき、私はただ砂糖を入れているだけだと思っていました。それが毒だとは……。」
その言葉を聞き、父は彼女を鋭く見つめ、問い詰めた。
「お前の部屋を調査した結果、衣装棚から見つかった毒について説明しろ。「粉が見つかった。マリアンヌのティーカップから発見されたものと同じ種類の粉だ。」
「そ、そんなことが……。」
私は言葉を失った。
ただただ動揺するばかりだった。
「お前も知っているだろうが、皇族を害する行為はどんな場合でも厳罰に処される。それが、他の皇族を殺そうとしたとなれば、なおさらだ。」
父の声は冷たく響いた。私はようやく正気を取り戻し、震える唇を開いた。
「私は……。」
「お前は?」
頭が混乱していた。
独房に閉じ込められて、何日もほとんど飲まず食わずで過ごしていたときに想像した最悪の事態ですら、これほどではなかった。
私は無実を証明できれば、すべて誤解だと分かってもらえると思っていた。
それなのに『申し訳なかった。我々が本当に間違っていた。』と謝罪され、抱きしめられるのだと信じていた。
しかし、今、家族たちは皆、軽蔑と敵意の目で私を見つめていた。
誰一人として私の味方をしてくれる者はいなかった。
こんなはずはない。
私は何の罪も犯していないのに。
私は震える声で口を開いた。
「私は……マリアンヌを殺そうとしたことはありません。」
なんとか言葉を紡ぎ終えると、息苦しくなるような嘲笑と否定の声があちこちから響いた。
「ふざけるな!」
「いいわけにもならない……。」
しかし、私は必死だった。
周囲を見回し、今まで黙っていた人物――ラキアスに視線を向けた。
彼は私の異母兄弟で、同じ母を持つ者だった。
他の誰もが私を信じてくれないとしても、彼だけは私を信じてくれると思った。
それほどまでに彼に対して揺るぎない信頼を抱いていた。
「ラ、ラキアス兄上……。」
足が震え、まともに立つことさえできなかった。
代わりに私はラキアスのもとへひざまずいた。
「私は……そんなことしていません。分かっているでしょう?」
一週間ぶりに口を開いたせいか、声が震えていた。
それでも私は、自分の気持ちを伝えようとした。
「私がどうしてマリアンヌを害そうとするでしょうか。どうか、お願いです、信じてください……。」
ラキアスはしばらくの間、私をじっと見つめた。
彼は同じ母から生まれた兄弟で、私にとても似ていた。
私の緑色の瞳と、彼の青い瞳。
どれほどの時間、彼を見つめていただろうか。彼は私の方へ歩み寄った。
「あ……。」
私は涙が出そうだった。
そうだ、彼は私を信じてくれる。
彼は、私がマリアンヌを害そうとしていないことを知っているのだから。
彼は私の味方になり、この場から救い出してくれるだろう。
そして私を抱きしめ、慰めてくれるに違いない。
しかし……。
パシッ!
突然の出来事に、私は何が起きたのか理解できなかった。
痛みは驚きのすぐ後にやってきた。
左頬が火で焼けたように熱く感じられた。
「お前は嫉妬に狂ってしまったのだな。」
彼は青い目で私を冷たく見下ろした。
ラキアス、私の兄が私の頬を叩いたのだ。
私は口を開けたまま動けなかった。
彼は軽蔑のまなざしを向けた後、父の方に体を向けた。
「父上、これ以上この者を放置する必要はありません。自らの罪を認めようとしない、この愚かな罪人を……。」
彼の言葉は宣告のように聞こえた。
「処刑に処すべきではないでしょうか。」
「……!!!」
私は目を大きく見開いた。
処刑?処刑だって?私が……処刑されるというのか?
震える目で、この場にいるすべての人々を見渡した。
聞いたことが嘘であることを願いながら。
しかし、彼らは冷たい表情で私を見つめるだけ。
最後の希望の綱を掴むように、私はマリアンヌを見つめた。
彼女ならわかってくれるはずだ。
私が彼女を害そうとしなかったという事実を。
私がどうして彼女に嫉妬して害そうとする理由があるというのか。
私と目が合ったマリアンヌは唇を噛みしめた。
そして父の肩にしがみついて、こう言った。
「……父上、怖いです。怖い……。」
それに家族の顔色が険しくなったのは当然だった。
父の冷たく鋭い声が響いた。
「処刑は明日行う。それまで罪人には水以外のものを与えるな!」
「いや、嫌だ……。」
私は思わず声を上げた。
こんなことは受け入れられない。
まさか、またあの独房へ戻ることになるの?
それだけはどうしても避けたかった。
むしろここで喉を掻き切って死ぬほうがましだと思った。
『ああ、そうだ。』
喉を掻き切って死ぬ。
それで、これ以上の苦しみを味わうこともないだろう。
私はすぐにそれを実行しようとした。
喉元に手を伸ばした私を見て、エルシス兄上が私の腕を力強く掴まなければ、実際にそうしていただろう。
彼は鋭い感覚を持った剣士で、私の行動をすべて予測しているかのようだった。
「逃げるような真似をするな。お前は自分の罪に見合った正当な罰を受けなければならない。」
その冷たい青い瞳には怒りが宿っていた。
彼が掴んだ腕から痛みが走り、まるで骨が砕けるようだった。
私は耐えきれず涙をこぼした。
すると彼は嘲るように冷たく笑った。
「痛いか?」
「はっ、はっ……。」
「マリアンヌはお前よりもはるかに痛みと苦しみを味わっただろう。それでもお前は罪を悔いないのか……。」
私は泣きながら心の中で叫んだ。
私のせいじゃないのに。
私がやったことじゃないのに。
どうして誰も私を信じてくれないのか。
私はマリアンヌを見つめた。
どうか、彼女が私を救ってくれることを願いながら。
彼女が私を信じてくれれば、すべての問題が解決するのに。
しかし、次の瞬間、私は崖から突き落とされたような衝撃を受けた。
父の背後に隠れていた彼女は、私を見ながら意地悪そうに笑っていたのだ。
まるでこの状況を楽しんでいるかのように。
私が死ぬことが彼女にとってどれほど幸せかを示すかのように。
その悪魔のような表情に、私は凍り付いてしまった。
そしてそのまま私は再び光のない地下監獄に閉じ込められた。
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