こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

10話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 誕生日③
シャンデリアの光が華やかに輝いている。
扉を開けて入ると、人々の視線が一斉に集まった。
圧倒的なインパクトだった。思わず身をすくめてしまうほどに。
しかし、イシスは慣れた様子で迷いなく歩みを進めた。
イシスに抱かれている私は、当然のように彼の足取りに合わせて、おとなしく彼の前へと進んでいくしかなかった。
少し緊張した様子だった皇后も、ゆっくりとその前へと歩み出た。
そして、正面には皇帝が座り、私をじっと見つめていた。
彼の顔には、今日はいつにも増して温かい微笑みが浮かんでいた。
周囲では、人々がざわめく声が聞こえてきた。
話し声があまりにも入り混じっていて、はっきりと聞き取ることはできなかったが、私は耳を傾けようとした。
私は、彼らが私をどう思っているのか気になっていた。
しかし、すぐに気づいてしまった。
声を聞き分ける必要すらないということに。
ほとんどの人が同じことを口にしていたのだから。
「……可愛すぎる!」
小さなつぶやきのようなその声が、宴会場の座席へと広がっていった。
可愛い?
私は、無意識のうちにぽかんと口を開けてしまった。
皇女宮の侍女たちからも毎日のように言われる言葉だったが、何度聞いても慣れることはなかった。
可愛いと言われ続けると、ますます自分が赤ん坊になったような気がしてしまう。
しかし、私が口を少し尖らせたことで、人々はさらに可愛いと思ったようだった。
「……あ!」
どこからか、数人がそわそわと囁き始めた。
私は結局、唇を引っ込めた。
イシスはゆっくりと歩き、皇帝の前に立った。
私は自然と皇帝を見上げるしかなかった。
座っていた彼はゆっくりと立ち上がり、席を離れてイシスの前に立ち……そっと手を差し出した。
「………」
イシスは何も言わなかった。
皇帝の仕草は明らかだ。
まるで凍りついた私を渡せと言わんばかりだった。
イシスは不満そうに口を引き結んだ。
「アイシャは、僕の妹なのに。」
皇帝はその言葉に、一瞬「ほう?」とでも言いたげな表情を浮かべた。
しかし、イシスはどうしようもないといった様子で、深く息をつくと、落ち着いた仕草で私を引き渡した。
皇帝は微笑みを浮かべながら、私を大切に腕の中へと抱き寄せた。
『いつか私が壊れてしまうかもしれないから抱けないって言っていたのに……。』
私は言葉を失った。
人々はざわめいていたが、まるで私と皇后、皇帝、イシスの間だけに特別な保護膜が張られているような気がした。
まるで、誰も入り込むことのできない強固な壁のよう。
その直後、皇帝が宣言した。
「朕の第一皇女、アイシャの誕生日宴を祝うために来てくれた皆に感謝する。」
彼の声は決して大きくはなかった。
それでも、誰もが彼に注目していた。
皇帝は微笑みを浮かべながら続けた。
「今月の宴は、ただアイシャのためだけに開かれる。」
その言葉が、宴会場の隅々まで響き渡った。
「それでは、皆楽しんでくれ。そして祝おうではないか。」
人々は姿勢を正し、皇帝の声に耳を傾けた。
「我が娘の初めての誕生日を。」
短いが力強いその言葉に、人々は一斉に声を張り上げた。
「お祝い申し上げます!」
「お祝い申し上げます!」
その後、皇帝は聖水の瓶を開け、手に数滴落とした後、私の頭に優しく振りかけた。
まるで儀式のように、私の髪に聖水が染み込んだ。
光の神を信仰するエルミール帝国の民にとって、この聖水は光の神殿で祝福された神聖なものだった。
光の神聖力と、私の精霊たちの波長はなかなか相性が良いようだった。
聖水が降りかかると、私の周囲の精霊たちが嬉しそうに喜んでいるのを感じた。
彼らは興奮した表情で、精霊たちは空中を飛び回りながら踊っていた。
『機嫌がすごくいいみたい。』
私は無意識にその光景を見ながら、ふと手を差し出してみた。
すると、光の下級精霊である「ルー」が私の手のひらに降り立ち、幸せそうに微笑んだ。
私もその姿を見て、思わず自然に笑っていたのだろうか?
すると、隣から誰かの小声が聞こえてきた。
『見た? 皇女殿下が笑ったよ!』
『うん! かわいすぎて、息が止まりそう……。』
その言葉を聞いた私は、皇女としての品格を守ろうとなんとか表情を整えようとした。
しかし、すでに私を見つめる人々の目には、「かわいさ」というフィルターが完全に定着してしまっているようだった。
その後、私は皇帝の玉座の隣に座ることになった。
とても気が重くなる席だった。
しかし、この席を避けることはできなかった。
すぐに人々が次々とやってきて祝辞を述べ、贈り物を開封する時間が始まったからだ。
儀式は身分の高い者から順に進められた。
この果てしなく続く貴族たちの行列よ……。
私は改めて、帝都にはこんなにも貴族が多かったのかと思い知らされることになった。
公爵から始まり、侯爵、伯爵……彼らが贈る品々は様々だったが、すべてが貴重な品物であることには間違いなかった。
私は興味深そうな表情で彼らを見上げた。
すると、彼らは私がかわいいと感じたのか、ため息をつきながらも満足げに席へと戻っていった。
時間は退屈に、ただひたすら流れていった。
最初は少し興味があったものの、式典は長く、面白みがなかった。
結局、私は退屈さに耐えられず、思わずため息をついてしまった。
「……ふあぁ……。」
赤ん坊の体だからなのか、集中力が続かない。
舞踏会で踊る人々を眺めたり、楽師たちの演奏を聞いたりもしたが、それでも退屈で仕方がなかった。
その時だった。
まるで私の気持ちを察したかのように、イシスが静かに席を立った。
私は少し驚いて、彼を見上げた。
「何が起こったの?」
まばたきをしながら考えていると、ふと、彼が私に贈ると言っていたプレゼントのことを思い出した。
「誕生日まで秘密って言ってたよね? じゃあ今くれるの?」
しかし、妙なことに、彼の手には何も持たれていなかった。
「従者が持ってきてくれるのかな?」
私は少し疑問に思った。
イシスはゆっくりと私の方へ近づいてきた。
しかし、彼の手は依然として空っぽのままだ。
私が座っているのは皇帝の席であり、必然的に彼は皇帝の玉座の近くに立つことになった。
私を抱いていた皇帝は、すでに彼に対して何か察していたかのように、自然な表情でこの状況を見守っていた。
少し離れたところにいた侍従が、赤いビロードのクッションに置かれた剣を手にし、厳かに歩み寄ってきた。
鞘に収められた黄金の剣は、まるで装飾用のように美しく、精巧に作られていた。
「私に剣を贈るつもりなの?」
私は目を瞬かせた。
しかし、冷静に考えれば、イシスが私に剣を贈るはずがなかった。
私は今、剣どころか、短剣さえ持つことができないたった一歳の赤ん坊なのだから。
どうやらこの剣の持ち主は私ではなく、イシス自身であるようだった。
私のもとへと歩み寄ったイシスは、ゆっくりと私を見つめながら膝をつき、私の手をそっと握った。
私はその親しみのある接触に、一瞬驚いてしまった。
すると、イシスは安心させるように微笑んだ。
「愛しい、私の妹。」
彼は優しく微笑んだ。
「お前の最初の誕生日を祝おう。」
彼が膝をつく姿勢は、まるで騎士が主君に対して忠誠を誓うときの礼儀作法のようだった。
彼の声が響き渡る間、宴会場は静寂に包まれた。
ゆっくりと、皇帝が立ち上がった。
すると、跪いていたイシスの肩がはっきりと見えた。
「イシス・ド・エルミールよ、お前の意志はすでに聞いている。」
「はい、父上。」
「アイシャに、騎士の誓いを立てたいのだな。」
「そうです。」
瞬間、人々が驚きの声を上げるのが聞こえた。
その中には、皇后も例外ではなかった。
大勢の人がいる宴会場は、まるで針一本落ちても聞こえそうなほど、静まり返っていた。








