こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

101話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戦場へ
『……ふぅ。』
私はため息をついた。
アルセンの前では悟られないようにしたが、実際のところ、心は混乱していた。
彼の言葉に動揺しなかったわけではない。
私も『私が戦場へ向かうのはどうだろう?』と考えていたからだ。
それが最も効果的に情報を伝える方法だから。
信用できる伝令を探すのにも時間がかかる。
それなら、いっそ私がルディオンに乗って自ら情報を届けに行けば、時間を大幅に短縮できるだろう。
しかし、それをするには両親を説得しなければならない。
いくら前回リオテンに行ったとはいえ、本物の戦場へ向かうのは極めて危険な行為であることを私はよく理解していた。
「……どうするのが一番いいんだろう?」
どうしても答えは出なかった。
考えすぎてこんがらがった気持ちを落ち着けるため、私は宮殿の外へと足を運んだ。
王宮の庭園で少しでも散歩をしてみようと思ったのだ。
後ろには侍女たちと近衛騎士が付き従っていた。
前方には王宮の森が見える。
冬の夜なので虫の声すらなく、薄暗い闇が辺りを包んでいた。
私は無言で庭園を歩いた。
半ば凍った地面は湿っており、夜の空気は肌寒い。
思ったよりも冷たい風が吹きつけ、私は思わず肩をすくめた。
暗い夜空には、細い三日月が浮かんでいた。
―イシス兄上は今、何をしているだろう?
かつてこの庭園で、兄上と駆け回ったこともあった。
私はそっと目を伏せる。
「……会いたい。」
胸が締めつけられるような気持ちで、私はイシス兄上の身を案じた。
危険でも、今すぐにでも出発したかった。
しかし、私にとって最も重要な問題、『両親を説得する方法』がどうしても思い浮かばない。
だからといって諦めるわけにはいかない。
たとえ両親に無理なお願いをすることになっても、私は出発しなければならなかった。
イシスお兄様や、エルミール軍全体のためにも。
『何か良い方法はないだろうか。』
両親を説得するための方法だ。どんな人であれ、
ましてや帝国の皇帝や皇后でさえ決して反対できない……。
考えを巡らせていたその時、ふと空気の中に爽やかな香りが漂っていることに気づいた。
甘く、それでいて少し冷たいその香りは、一度嗅げば決して忘れられないほど独特だった。
私はその香りを嗅いだ瞬間、その場に立ち止まってしまった。
『……これは。』
誰の香りなのか、考えるまでもなかった。
私はハッと目を覚ました。
気がつくと、周囲には侍女や近衛騎士たちがいた。
「皆の者。」
「はい、皇女殿下。」
私は自分についてきた侍女たちと騎士たちに命じた。
「少しの間、一人で考える時間が必要です。庭園の外で待機しているように。」
「しかし、安全が……。」
「私には武術の心得があるから大丈夫。」
皆、一瞬驚いたようだった。
だが、私の武術の腕を信頼していること、また私が何か考え込んでいると察したのか、彼らはおとなしくその場を離れていった。
人々が去った後、私はそっとその名を呼んだ。
「……ハイネン様。」
木の後ろから、一つの人影が姿を現した。
先ほどから感じていた香りの主だ。
神秘的な水色の髪が月光を受け、滑らかに輝いていた。
奥深さの分からない青緑色の瞳が私をじっと見つめていた。その目はかすかに揺れながらも、
笑みをたたえていた。
「……お久しぶりです、ハイネン様。」
「そうだね、元気にしてた?」
ハイネン様は私に親しげに声をかけた。
まるで昨日会って別れたかのように、あるいは久しぶりに再会した旧友のように。
私は戸惑いながらも、喉を鳴らして答えた。
「……ええ。」
戸惑っていた私は、ハイネン様に尋ねた。
さまざまな感情が胸の中で交錯していたが、どうしても聞きたいことがあった。
「……あの、ルミナス様は……お元気でいらっしゃいますか?」
私の問いかけに、ハイネン様は静かに微笑んだ。
その穏やかな顔には、何の揺らぎもなかった。
「……気になるか?」
「……はい。」
私は無意識に唾を飲み込んだ。
ルーン様は私を守っていたが、結局、皇族のしきたりに押し流され、王宮へ戻らざるを得なかった。
彼が帰る原因となったのは私なのか、それとも彼が以前言っていた「大義」とやらのためなのか——私はそれが気になって仕方がなかった。
彼は今、どうしているのだろう。
しかし、ハイネン様はその問いには答えず、まるで話題をそらすように、別の言葉を口にした。
「それより、やるべきことがあるのでは?」
私は息をのんだ。
「……やるべきこと、ですか?」
「そうだ。戦場へすぐに向かわねば、時間がない。あなたがここで考え込んでいる時間があるのか、気になるね。」
私は驚いて思わず声を漏らした。
「……それをどうしてご存じなんですか?」
すると、ハイネン様は面白そうに微笑んだ。
「私は精霊王だから。精霊界から人間界を見守るのは、とても簡単なことだよ。」
「……そうだったんですね……。」
私は彼の言葉に圧倒された。
精霊界ならば、彼が望むだけで私の一挙手一投足を見守ることができるのだろう。
「……それなら、すべてご存じなのですね。今、何が起こっているのかも。」
「そうだよ。」
私の言葉に、ハイネン様はゆっくりと顎に手を当てた。
私は唇を噛み締めた。
もしかすると、ルーン様も私のことを見守っているのだろうか。
彼が去った後、私がどれほど苦しんだか、それを見せたくなかったのに……。
ルーン様のことを考え込んでいた私に、ハイネン様は何気ない口調で言った。
「手を貸そうか?」
「……?」
ハイネン様の口調は軽やかだった。
まるで楽しそうに話しているかのように聞こえた。
だが、その言葉に込められた意味は決して軽いものではなかった。
「お前が戦場へ向かえるように。」
私は驚きのあまり息をのんだ。
まさか彼がそんなことを言うとは思ってもみなかったからだ。
「……え?」
「助けが必要だろう? ついさっきまで途方に暮れていたようだが。」
そう言って、ハイネン様は再び微笑んだ——。
「そ、それは……。」
私は唇をぎゅっと噛んだ。彼の言う通りだ。
彼がここに来る前まで、私はどうやって両親を説得するか考え続けていたではないか。
しかし、だからといって彼の好意を素直に信じることはできなかった。
私は、いつの間にか背中に冷や汗が流れているのを感じた。
彼は今、微笑んでいるが、本来彼は私に良い感情を持っていないことは知っていた。
以前に出会ったとき、彼は私をほぼ殺そうと脅したのだから。
アルセンの情報を信じたのとは話が違う。
彼とは違い、ハイネン様には私を助けなければならない理由がまったくないのだ。
「なぜ……私を助けようとしてくださるのですか?」
「さてね。」
彼は肩をすくめた。
「一つだけ言えるのは、私はお前が思っているよりもずっと慈悲深い静寂の王だということだ。」
「……。」
「私の善意を疑おうとするな。」
私が戸惑っていると、彼はゆっくりと言葉を続けた。
「私の意図よりも、お前が今直面している現実のほうがよほど重要だ。」
彼の言うことは正しかった。
そもそも精霊の王である彼の真意を見極めたところで、私ができることは何もない。
ならば、彼の助けを受けることこそが、むしろ最善の選択だった。
彼は微笑みながら言った。
「お前の口で言ってみろ。これからどうすべきか。」
私はしばらく迷った後、口を開いた。
「……強いきっかけが必要です。父上と母上を説得するために。」
「どの程度?」
「誰も反対できないほどの程度。」
「なるほど。」
ハイネン様はあっさりと頷いた。
「では、お前のために信託でも下そうか?」
私は思わず目を見開いた。
「し、信託ですか?」
「ルミナスの権限を代行して、神官たちに信託を下すことは私にも可能なことだ。彼らに、この国の皇女が戦場へ向かうべきだと伝えてやろう。」
私は驚きで口をつぐんだ。
「でも、なぜ……。」
「なぜお前を助けるのか? 言っただろう。私はお前が思っているより、ずっと気まぐれな精霊王なのさ。」
彼の言葉を信じることはできなかった。
ハイネン様が言葉を続けた。
「だが、お前も知っているだろう。召喚されていない精霊の王が人間を助けるには限界がある。」
彼の言葉に、私は胸の奥に重苦しさを覚えた。
不快感が広がるのを感じながらも、彼はゆっくりと続けた。
「本当にお前の兄を救い、戦争で勝つためには……」
彼の声は、まるで悪魔の囁きのようだった。
「お前には力が必要だ。」
「……力?」
私はその言葉に引き込まれるように耳を傾けた。
すると、ハイネン様は静かに告げた。
「私はお前にルミナスを召喚する方法を教えることができる。」
「……。」
「もしそうすれば、お前は望むものを何でも手に入れられるだろう。むしろ精霊の王を歓迎するよ。その代わりに、お前の生命力をもらうがな。」
私の生命力。
以前にも彼がこう言うのを聞いたことがあるせいか、最初ほどの衝撃はなかった。
だが、それでも戸惑いが完全になくなったわけではない。
私はじっと考えた。
私が望むこと。
それは、祖父を助け、戦争で勝利し……。
『……復讐を果たすこと。』
胸が高鳴った。もし精霊王を召喚できるのなら、このすべての願いが夢ではなく現実になるかもしれない。
同時に、ふと考えた。
昔、今よりも幼かった頃……。
もし復讐を果たしたら、その後私は何をすればいいのだろう?
「……そうだ。」
愛する人たちと、長く長く平和に生きていきたいと思っていた。
それが叶うなら、ほかに何も望むことはないだろうと。
しかし、その未来を手に入れるためには――私は自分の未来を変えなければならないのか。
その思いに、私は思わず皮肉な笑みを浮かべた。
ハイネン様は、自分の好意を疑うなと言ったが、私はその意図を深く考えざるを得なかった。
(ハイネン様は……私がルーン様を召喚することを望んでいるのだろうか?)
それが彼にとって何を意味するのかは分からない。
しかし彼は沈黙し、じっと意味ありげに私を見つめていた。
「だから、いつでも彼を召喚する覚悟ができたなら、そう言え。」
そして彼は私の元を去っていった。








