こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

109話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 過去の記憶
私は一つひとつ指差しながら説明してあげた。
「それは、私が特に好きなルビー紅茶だよ。香りが良いお茶を飲むときには……」
テーブルの上に並べられたものを一つ一つ丁寧に説明していたら、マリアンヌが口を開けて私を見つめているのが感じられた。
「……お姉さんはなんでもよく知ってるんですね。」
私は照れくさそうに笑う。
「なんでも聞いていいよ。私が知ってることなら全部教えてあげる。」
妹ができたみたいで、私はとても嬉しかった。
今までは他の家族たちと遊ぶのも楽しかったけど、これからはマリアンヌとも楽しく過ごせそうだと思った。
その時だった。
「ここ、ホイップクリームがついちゃってる。」
居眠りしていたラキアスお兄様がナプキンを取って、私の口元を拭ってくれた。
私は目をぱちくりさせた。
『……』
顔が少し赤くなるのを感じた。
お姉さんらしくて素敵なところを見せたいのに。
私が渡そうとしたときには、どうやら生クリームをくわえていたようだった。
どうやらケーキを食べていて、クリーム部分をかじってしまったらしい。
私は慌てて咳払いをして、喉を整えた。
気まずさから何か別の話題に変えたくなったその時、ちょうど遠くから誰かが私を呼んだ。
「……リス!」
私は驚いて目を見開き、首を回して声の主を確認した。
そこには一人ではなく、数人がいた。
「……エルシスお兄様、アドリン姉様、ルルス?」
久しぶりに見る家族だった。
何しろ私たち兄妹は大人数だったので、一度に全員が集まるのはかなり珍しいことだったのだが……
「みんな、どうしたの?」
私が尋ねると、エルシス兄様が私の近くに寄ってきて、私の頭にポンと手を乗せた。
「久しぶりに時間ができたから、みんなで君の宮殿に遊びに来ることにしたんだ。」
「ほんとに?!」
私は嬉しくて思わず笑ってしまった。
うたた寝していたアドリーヌ姉さんが尋ねた。
「ここでティータイムをしてたのね?」
「うん!あ、……みんな、ラキアスお兄様とマリアンヌに挨拶して。」
ラキアスお兄様は他の人たちに向かって軽くお辞儀をした。
緊張しているのはマリアンヌだけだった。
好奇心に満ちた家族たちの視線に、マリアンヌは再び肩をすくめた。
「……ど、どうも、初めまして。」
「マリアンヌは私の妹だから、これから仲良くしてあげてね!」
私の言葉に家族たちはうなずいたり、マリアンヌに微笑みかけたりした。
周囲をうかがっていたマリアンヌは、慎重にケーキを一口取り、口に入れた。
「……おいしいです。」
ケーキの味がとても気に入ったようだ。
でも、ひとつ問題がある。
私は微笑んで、その子のほっぺをそっと指さした。
「ほっぺにクリームがついてるよ。」
さっき私がやったのと同じミスをしたようだ。
その子もきっと恥ずかしがるだろうと思い、私はナプキンを差し出した。
マリアンヌはそのナプキンをしばらく見つめてから、受け取った。
だけど……気のせいだろうか?
マリアンヌが一瞬、ラキアス兄様を横目で見たような気がした。
けれどラキアス兄様は無表情のままだった。
「気のせい……かな?」
私は心の中でそう思いながらも、顔をそらした。
すると、ある考えが浮かんで、私はすぐに手を打った。
「どうしたんですか、お姉様?」
ルルスが私に気を遣いながら尋ねてきた。
私はにっこり笑って言った。
「マリアンヌにも愛称をつけてあげるのはどう?」
「愛称?」
「それいいね。」
マリアンヌは目をまんまるく開いていた。
私はマリアンヌに向かって言った。
「私は普通、リスって呼ばれてるの。うーん、マリアンヌは……マリって呼ぶのはどう?」
「……マリ?」
「うん。」
彼女はその名前を小さくつぶやくように繰り返し、クッキーをつまんだ。
「いいですね。マリ……」
私はぱっと笑顔になった。
「これからよろしくね、マリ。」
・
・
・
本当に楽しいティータイムだった。
久しぶりに家族たちに会えてうれしかったし、今はもう新しい家族となったマリもそこにいた。
ティータイムを終えたあと、私はマリの宮殿まで彼女を見送りに行った。
私の後ろには数人の護衛騎士と侍女たちがついてきた。
マリの宮はとても奥まった場所にあったので、私たちはかなりの距離を歩かなければならなかった。
その間、マリは一言も話さなかった。
どれくらい歩いただろうか。
遠くにマリの宮が見えてきた。
「ねえ、マリ。」
私は彼女に話しかけた。
「昔から私は妹がいたらいいなって思ってたの。」
マリが目を上げて、じっと私を見つめた。
「来てくれて本当にうれしい。」
それは私の率直な本心だ。
私はその子に手を差し出した。
「私だけじゃないよ。みんな君を好きになるはず。」
私はにこにこ笑いながら言った。
彼女が私の気持ちを受け取ってくれるようにと願いながら。
でも、マリはその手を握らなかった。
代わりに私にこう言った。
「お姉ちゃん。」
「……え?」
マリは静かな目で私を見つめていた。
さっきとは少し違った彼女の雰囲気に、私は少し怯んでしまう。
「うん、どうしたの?」
マリがふっと不思議な顔で笑った。
彼女の赤い唇が弧を描き、彼女の目が三日月のように歪んだけれど……
どうしてだろう、私はマリがまったく笑っていないような気がした。
さっきまで青かった空は、いつの間にか赤い夕焼けに染まりつつあった。
その紅の色は美しい反面、どこか不吉な気配を漂わせていた。
その赤い光はマリの横顔にも降り注いでいた。
「知ってますか?」
彼女がゆっくりと私に向かって言った。
私はマリの意図をどうしても読み取ることができなかった。
「私は、二番目は嫌いです。」
二番目。
その言葉には、なぜか強い力が込められているように感じられた。
「三番目も、四番目も、いらないんです。」
彼女はゆっくりと言葉を続けた。
「私は一番最初のだけが好きです。」
ひんやりとした風が吹いてきた。
夏が近づいているのか、蒸し暑い天気だったのに。
マリの言葉はどういう意味だったのだろう?
当時の私はまだ幼かったので、彼女の言葉の意味を理解することができなかった。
「……そうなんだ?」
ただ、その子が“最初の”が好きだと言ってるんだなと、そう思って流しただけだった。
マリは戸惑っている私を見て笑いながら言った。
「それじゃ、私はこれで行きますね。」
「え、宮殿まで送っていくのに……」
「大丈夫ですよ。」
そしてマリは返事もせず背を向けて宮殿の方へ歩いて行った。
私はその子の後ろ姿をしばらく見つめていた。
手入れされていないマリの宮殿の塀には、いばらの茂みが絡まっていた。
夕焼けの赤い光と鋭く尖ったトゲのような東屋、そしてマリの後ろ姿まで。
その姿はとても奇妙な印象として私の記憶に残っていた。
特に気になったのは、マリがその後、ラキアス兄様のあとをずっとついてまわっていたことだ。
侍女見習いとして宮に入れなかった母、子どもたちに無関心だった父。
おそらくつらい思いをしていたマリは、ラキアス兄様に頼りたいと思ったのかもしれない。
ラキアスは一見、無表情で冷静に見えるけれど、実は自分の人たちをとても大切に思っているのだろう。
彼とマリの年齢差を考えれば、マリにとってはまるで両親のような存在だったに違いない。
――それなら、なぜだったのか?
なぜマリは私を殺そうとしたのか……。
……分からないままだった。
きっと、本人に直接聞くまでは、知ることはできなかっただろう。








