こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

115話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 決戦の日③
暗くなった空はすでにすっかり夜に染まっていた。
だがその暗闇の中でも、私は自分自身を見ることができた。
私の体からほのかな光が溢れていたからだ。
それだけではない。
私は敵軍の姿もはっきりと見ることができた。
それはエルミール軍であれば皆同じだったに違いない。
イデンベル軍は皆が戸惑っていたが、私を含めたエルミールの人々は非常に落ち着いていた。
私は自分のそばに立つルーン様を改めて見上げた。
彼の圧倒的な能力は、尊敬の念を抱かせるものだった。
彼はこのような超越的な能力を見せながらも、あくまで堂々とした表情を崩さなかった。
『私も負けていられない。』
ルーン様を召喚しておいて、その活躍をただ眺めているだけならば、自分がこの戦場の最前線に立っている意味がない。
私は手を高く掲げた。
すると、私が召喚したルディオンが翼を広げて飛び上がった。
その鋭い翼により、イデンベレの兵士たちが数人、吹き飛ばされた。
同時に私は光の矢を作り出した。
ルーン様を召喚できるようになってから、私の精霊術も一段と高まり、精霊魔法を自らの手で使えるようになったのだ。
黒い空に黄金の光を放つ矢が放たれた。
その金色の矢尻は、暗闇の中でも人々の視線を引きつけるほど見事な輝きを放っていた。
続いて、その矢はまるで大地に舞い降りた流れ星のように、素早く軽やかに敵の心臓に突き刺さった。
敵を正確に貫いたその矢は、やがて光の粒に分かれ、空中に舞い散った。
おかげで多くの金色の粒子が暗い空を満たした。
その様子はまるで銀河の流れのようだった。まさに美しい光景だった。
人々が私の後ろで私を称える声が聞こえてきた。
ルーン様が示された精霊魔法には限界がなかったが、彼を召喚した僕である私には限界があった。
この儀式が終わる前に、できるだけ多くの敵を倒さなければならなかった。
私の手のひと振りで、イデンベレ軍の数十人が一度に薙ぎ払われた。
それは無茶というよりは、妙に繊細な感覚だった。
こんなに簡単だとは思わなかった、人を斬るということが。
もし私がほんの少しだけ早く、こんなふうに強くなっていたなら、私のために犠牲になった人たちをもっと多く守ることができたのだろうか?
その時だった。
魔力の波動が私を狙って飛んできた。
私は光の盾を作って、私に向けて放たれた魔法を防いだ。
その魔法は盾を破ることができず、空中でむなしく砕け散った。
視線を巡らせた私は、その魔法を放った敵を見つけた。
彼は青いローブを着たまま、うろうろしていた。
青いローブはイデンベレ魔法使いの象徴だ。
私は彼の正体をすぐに見抜いた。
エルシスが率いてきた魔法使い部隊の一員だ。
もう少しよく観察すると、私は彼のローブの裾に銀鉄の木の枝模様があしらわれているのを発見した。
『……魔法使いたちの首長か。』
銀鉄の花言葉は「知恵」。
その木の枝の模様は、魔法使いの首長にのみ授けられるものだった。
私は身体を完全に回して彼を見据えた。
彼が敵軍の重要人物であることを知ったからには、ここで逃すわけにはいかなかった。
たとえ彼が魔法使いの首長であろうと、ルーン様の精霊魔法には抵抗できないようだった。
彼は目を閉じたままだったのだから。
今、その者が私に向かって放った魔法は、まさしく私が展開している精霊魔法の波動と距離を読み取り、撃ってきたものに違いなかった。
それだけでも十分に見事だった。
一瞬で視力を失ったにもかかわらず、慌てることなく魔力の流れをしっかりと読み取っていたのだから。
『だけど……』
私は内心で舌を鳴らした。
私を相手にするには、それだけでは不十分だった。
私は祈るように目を閉じ、体内の魔力に意識を集中させた。
すると、活性化された魔力が私の周囲に集まり、無数の光の矢を形成した。
目の前にいた指揮官は怯えていた。
たとえ目が見えなくても、この魔力の波動を確かに感じているのだろう。
私はうっすらと笑みを浮かべた。
敵にとっては脅威でしかないが、強化された私に立ち向かえる者など誰一人いない。
歓声はさらに大きくなった。
ほとんどがエルミール側だったため、エルシスはかなり穏やかな気分を味わうことができた。
だが、自分とは違い、彼の前に立つ青々と若い青年は、彼に対して特に親しみを感じていないようだった。
とはいえ、彼の軍が勝っているのだから、心配することはないだろうとも思えた。
目を閉じていたエルシスは、イシスの存在を感じ取った。
戦闘の妨げになるため、彼は馬から降りてきた。
イシスもまた素早く馬から降り、彼に勝利の印を捧げた。
視界が効かない以上、どうしようもない限界はあった。
しかし、その代わりにエルシスはイシスよりもずっと年上で経験も豊富だった。
今こそ、その努力の成果を見せるときだった。
互いを探り合っていた二人は、ついに剣を交える。
相手の圧倒的な力が腕を通して伝わってきた。
「……立派だな。」
エルシスは彼を称賛したが、イシスは一言も返さなかった。
明確な無視。
何度か剣を打ち合わせたエルシスは、この勝負は簡単には決着がつかないと感じ、目を細めた。
平常時ならば、優れた敵に出会えたことを喜んでいたかもしれない。
だが、この場所はあまりにも状況が悪すぎた。
さらに、この場には彼が守るべき十万の大軍がいるのだ。
『……この魔法は、いつまで続くんだ?』
彼は無意識のうちに、少しずつ焦りを感じ始めていた。
数分以内には視界が戻ると考えていたからだ。
だが、予想よりもかなりの時間が過ぎても魔法は解けなかった。
そんなエルシスの穏やかな気配を、イシスは読み取った。
その声には、わずかに冷たさが込められていた。
「兵たちが心配なのか?」
エルミール語だった。
エルシスはエルミール語が堪能だったが、くだらない質問に答える理由はなかった。
代わりに、エルシスは別のことを尋ねた。
「この魔法は何だ?」
「さあね」
姿は見えなかったが、エルシスはイシスが笑っているだろうことを感じ取れた。
「神の力と言えるだろう。」
その親切な説明には、皮肉が込められていた。
エルシスは歯ぎしりしながら言った。
「神……笑わせるな。あいつらに神がついてるってのか?」
「もちろん。それに勝利の女神と光の神も共にあらんことを。」
「はあ、そうか。」
エルミールにいる聖女については、かすかに耳にしたことがあった。
視力を失う前に、自分も一瞬だけその聖女を見たことがあっただろうか。
確かに、聖女とは神々に愛される存在だ。
だが、エルミールに神がついているとは、とても信じられなかった。
『それならイデンベレにも聖女はいるじゃないか。』
エルシスはマリアンヌを信じていた。
彼女の気高さと品性は、心の奥深くに刻まれていた。
『それなのに、エルミールだけが力を授かるなんて、不公平ではないか。神よ……?』
エルシスは機をうかがい、イシスに突進した。
剣を振り下ろすと同時に、強烈な風が互いの間を吹き荒れた。
「貴様らの命運は、すでに尽きた!」
イシスが叫んだ。
エルシスは穏やかな気持ちを隠すためにも、もう一度剣を振るってみせる。
互いの剣の実力はほぼ互角だった。
戦いの決着は容易にはつかないだろうと思えた。
もしここが戦場ではなく、二人が親しい友人同士だったなら、この戦いは無限に続いていたかもしれない。
しかし、ここは戦場であり、二人は宿命の敵同士。
決着は必ずつけなければならなかった。
次第に、二人の戦いには勝敗の兆しが見え始めた。
エルシスは卓越した剣士であり、優れた天才だった。
さらに彼にはイシスとは異なる豊富な経験もあった。
だが、それが彼に隙がなかったというわけではない。
いくらエルシスといえども、闇の中で全てを見通すことはできなかった。
少しずつ──エルシスはイシスが突いてくる剣を避けるのに必死だった。
剣を交えた後、一時的に距離を取ったとき、エルシスは自分の額から汗がポタポタと流れ落ちるのを感じた。
『目さえ見えれば……。』
だが、戦いが始まって十数分経っても、視力が戻る気配はなかった。
『……あきらめるわけにはいかない。』
エルシスはイシスに話しかけた。
息を整えるためでもあり、時間を稼ごうとする意図もあった。
「君は確かに強いな。」
イシスは何も言わなかった。
エルシスはもう一度彼に話しかけた。
「君がその若さでこれほど強い理由は何だ?」
それは純粋な好奇心も混ざっていた。
エルシスはこれまで、イシスのように強い相手に出会ったことがなかった。
特にイシスのように年若ければ、なおさらだ。
しばらく黙っていたイシスが口を開いた。
「守るべきものがあるからだ。」
「エルミールのことか?」
「それもそうだが……。」
答えるイシスの声は非常に深い響きを帯びていた。
「たとえ世界と戦うことになっても、自分のすべてを犠牲にしてでも守りたい存在がいる。」
「………」
エルシスは疑わしく思いながらも少し沈黙して言った。
彼にとってそれほど大切な存在がいるというのは意外でもあったが、なぜか心の奥底でほんのりと理解できる気がした。
エルシスもまた、幼い頃にはそういう存在がいたのだった。
この世の何ものとも引き換えられないほど、その人のために強くなりたいと願うほど大切な存在が。
『……それは誰だ?』
エルシスは、瞬間的に頭が痛むのを感じた。
そのとき、イシスが鋭く切り込んできた。
エルシスはかろうじてその剣を防いだ。
「もちろん……。」
イシスが冷たく笑っている気がした。
「一度その子を捨てた君には、もう絶対に分かるはずがないけどな。」
『……俺が誰かを捨てただって?』
イシスの言っていることは、さっぱり理解できなかった。
彼は誰かについて話しているのだろうか?
そもそもエルシスは、イシスと以前に会ったことすらなかったのに。
エルシスはただ、困惑するしかなかった。
だが彼の言葉を聞いていると、なにか――つかめそうでつかめないその何かが……手の前でちらつくような気がした。
あの子は誰だっただろう?
あれほど大切に思っていたのに。
どうして忘れてしまったのだろうか。
『……お兄ちゃん……』
遠くからかすかに彼の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
それは無垢でありながらも、寂しげな響きを帯びていた。
そして次の瞬間、彼は飛んできた剣を避けることができなかった。
腹部に剣が突き刺さる。
殴られたように、嘘のように視界が揺らいだ。
視力を取り戻して見た世界は、目がくらむほど眩しかった。
近くで見たイシスの目は、夏の森のように鮮やかな青緑色だった。








