こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

119話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 大きな罪②
このように混乱している中で、マリアンヌはただ白く笑っているだけだった。
マリアンヌには今、処刑者が近づいているという緊張感すらないように思えた。
そしてそれほど時間が経たないうちに、エルミール軍が城へ入城する音が聞こえてきた。
遠くから荘厳なエルミールの国歌が聞こえ、人々の歓呼の声が止むことはなかった。
城に残った人々は何とか生き延びようと、すでにエルミール軍側へと寝返っていた。
残された少数の者たちはアドリヌのように閉じこもっているか、すでにロストフ公爵の手にかかって命を落としていた。
音が次第に近づくほどに、アドリンの緊張は徐々に高まっていった。
彼女は無意識のうちに唇をギュッと噛んでいた。
そしてしばらく時間が経った頃だろうか。
扉の向こう側に人の気配が感じられた。
殺してやりたいほど憎いロストフ公爵の馴れ馴れしい声も一緒に聞こえてきた。
アドリンは再び花瓶を手に取る。
扉が開いたら彼に投げつけようと覚悟していたのだ。
しかしその思いは、席に座っているルルスの蒼白な顔を見るとすぐに変わった。
感情的に行動することは、ここにいる皇族たちにとっても、誰にとっても得にはならない。
彼女は結婚して新しい家庭を築いたが、それでも兄妹はかけがえのない存在だった。
だから彼女はただ、無言で扉が開かれるのを見守るしかなかった。
やがて、扉がゆっくりと開いた。
アドリンは冷静な目で中に入ってきた人々の顔を見渡した。
一番先頭にいた金髪の軍服姿の男が、きっと敵国の総司令官、イシス皇太子なのだろう。
そしてその隣には、首を露出させて涼しげな様子のロストフ公爵が、泰然とした顔で立っていた。
そのすぐ隣には……
『少女?』
アドリンは冷静さを装うのも忘れ、少し驚いたように言った。
マリアンヌよりも幼く、まさに「少女」としか言いようのない幼い女の子が立っていたのだ。
『こんな場所にどうして?』
ようやく十歳になったくらいだろうか?
戦場と変わらぬこの場に彼女がいるのは不自然だった。
しばし彼女を見つめたアドリンは、すぐにその正体に気づいた。
十歳ほどの年齢、銀髪に青い目、そして総司令官と親しげな様子。
その少女はまさしくエルミール帝国の聖女、アイシャだった。
彼女であれば、ここにいても特に不思議ではない。
不思議だったのは、彼女の反応だった。
アドリンを見た瞬間、彼女の顔がわずかに和らいだのが分かった。
そんな彼女を守るかのように、そっと前に出てきた人物がいた。
アドリンは何気なく彼を見ていたが、その容姿に一瞬心を奪われた。
腰まで伸びる白金色の髪と、草のように鮮やかな金色の瞳は、まるで絵画のように美しかった。
金色を神聖視するイデンベル帝国において、彼の美しさはそれ以上の意味を持っていた。
気がつけば、私は呆然と彼を見つめていたのかもしれない。
アドリンは次の瞬間ようやく我に返った。
しかし、あんなにも心を奪われていたのは、どうやら彼女だけではなかったようだった。
彼女が完全に茫然自失の状態から抜け出したのは、敵軍が連れてきた捕虜たちの姿を目にした時だった。
通常なら、彼らは一塊になって慎ましく整列しているものだが――乱れていた薄緑色の髪は絡まり、ずいぶんとやつれて見えた。
全身をきつく縛られているのはもちろん、お腹には大きな傷跡があった。
治療もされず放置されたのだろうか?
アドリンは思わず彼の名前を呼んだ。
「……エルシ!」
するとエルシスが目を開け、彼女を見つめた。
「やあ、アリン。」
あれほど大きな傷を負っているのに、彼は微笑んでいるように見えただけだった。
アドリンはその姿に胸が締めつけられる思いがした。
エルシスは彼女の異母兄であり、誕生日もたった数ヶ月しか違わず、幼い頃から親友のように過ごしてきた。
小さなことで言い合いをすることはあっても、お互いを深く憎んだことは一度もなかった。
しかし今、この終わりは一体何なのか。
アドリンの口から鋭く刺すような言葉が飛び出した。
「私たち全員を殺すつもりなんでしょう?」
敵軍の総司令官は彼女をじっと見つめた。
アドリンは奥歯を噛みしめた。
もし家族を殺すつもりなら、いっそ自分もすぐに殺してくれと言いたい気持ちだった。
それでも、せめて家族だけは助けたいという気持ちが強かった。
そんな激しい感情にとらわれていた時、マリアンヌが前に出た。
「お会いできてうれしいです。」
その声は、まるで現実を忘れさせるかのように柔らかだった。
「私の名前はマリアンヌ・デル・イデンベルです。未熟者ですが、イデンベルでは聖女の称号をいただいています。」
彼女がにこやかに笑った瞬間、まるで白い小さな光が一面に散らばるような錯覚を覚えた。
「私がお願いしたいことは、ただ一つだけです。武器を置いて、お互いに話をしましょう。」
『マリアンヌ。』
アドリンは呆然と彼女の姿を見つめた。
マリの言葉だ。
誰が聞いても納得せざるを得ないものだった。
だからこそ彼女は当然、エルミールの人々も武器を置いて話をするつもりだと思った。
『彼』が出てくる前までは。
「その前に片付けなければならないことがあるんじゃないか?」
そう言葉を挟んだのは、さっき見かけた白金の髪をした青年だった。
アドリンは彼をじっと見つめた。
そしてようやく気づいたのだった。
彼は非常に特異な服を着ていた。
エルミールでも、イデンベレでも滅多に見られない古い衣装だった。
「ルーン様……?」
敵国の皇女、アイシャがかすかに呼んだ声だった。
彼女は彼を見た。
彼女もまた彼を疑っているようだった。
名前はルイ。
アドリンが思い浮かべた人物と一致するが、「ルイ」と呼ばれたその青年は口元に冷笑を浮かべていた。
「さっきから臭くてたまらなかったんだ。」
「……?」
「それにしても、他人の家族を引きずり回し、他人の軍を指揮してるとはな。」
この部屋にいた人々の中で、彼の言葉の意味を理解した者はいなかっただろう。
マリアンヌさえも例外ではなかったようだった。
彼女は苦笑しながら彼に言い返した。
「他人の家族、ですって……?」
「最後まで知らないふりをするつもりか?」
「何をおっしゃっているのか、本当に分かりません。」
マリアンヌの言う通りだと、アドリンは心の中で思った。
しかも匂いだなんて、ここではかすかな香水の香りしか感じられなかった。
しかしルーンという男はそれ以上説明せず、ただ「見せた」だけだった。
彼が手を上げた瞬間、アドリンは奇妙な感覚を覚えた。
まるで巨大な気配が彼の手に集中しているような感じ。
どんな存在も彼の前では軽々しく出てこれないだろう。
彼の手からはまばゆい光のオーラがあふれていた。
アドリンは息を呑んで言った。
『魔法⁈』
本当は最初から気づくべきだった。
あのルーンという人物もまた、かなり高位の魔法使いだったのだ。
その手はアドリンの大切な妹、マリアンヌに向かっていた。
アドリンは、自分の身体を覆っている大きな影を見つけた。
彼女の前に立っていたのは、さっきまで微笑んでいた「ルイ」だった。
その姿は以前とまったく違っていた。
美しく整っていた顔は鬼のように歪み、黄金色の瞳は激しい怒りで燃え上がっていた。
「……この程度で終わらせると思ったのか?」
静かに、だが確かな怒りを孕んだその言葉は、彼の口から放たれた。
アドリンは呆然と彼を見上げた。
彼が自分の前に立っていなかったら、自分は確実に致命傷を負っていたはずだ。
彼が――彼が自分を守ったのだ。
「ルイ……?」
ホールの中にいた人々は皆、マリアンヌとアドリンに注目していた。
混乱していたアドリンは、自分の体を見回した。
『どこにも傷はないじゃない?』
では、彼女が浴びたあの光は一体何だったのだろう。
アドリンは、無意識にマリアンヌを見つめていた。
彼女が無事かどうかを確かめるためだった。
しかし次の瞬間、アドリンは息を止めた。
彼女が見ている光景が理解できなかったからだ。
アドリンが彼女を突き放したため、マリアンヌは床に半ば倒れるように横たわっていた。
だが、それよりも重要なのは彼女の様子だった。
彼女は荒く息をしていた。
「マリ、マリ?」
一体彼女に何が起きたのだろうか。
アドリンは彼女のもとへとひざまずいて近づいた。
マリアンヌの髪の毛は先端からゆっくりと黒く変わり始めていた。
まるで白い画用紙に黒いインクが染み込んでいくような。
ただ髪の毛だけではなかった。
大きく開かれたマリアンヌの黄金色の瞳も、まるで苔が生えたかのように緑がかり、やがてはっきりとした緑色へと変わっていった。
彼女は口を開いて小刻みに震えた。
無意識のうちに顔を隠そうとしたが、それを拒む何かに支配されているようだった。
アドリンはこの状況をまったく理解できなかった。
続いて、マリアンヌの顔が少しずつ変わっていった。
すべての変化が終わったとき、アドリンはその顔の中に見覚えのある誰かの面影を見てしまった。
もしかして、“あの子”が年を取って成長していたら、こんな顔をしていたのでは?
アドリンはそんな思いを抱いた。
どうしていいか分からず、凍りついてしまった。
「……アリサ?」








