こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

5話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 見慣れない光景③
そして目を開けたとき、私はいつの間にか自分の宮殿にいた。
再び戻ってきた状態だった。
視界は暗闇に包まれていた。
皇宮の厳格な法により、私と皇后は別々に眠ることになっていたため、部屋には私一人だけだった。
『……暗くて嫌だ。』
静かな中で、私は心の中でそっと精霊たちを呼んだ。
『みんな。』
すると、精霊たちが一つ、また一つと私のそばに寄ってきた。
彼らの姿を見ると、心が温かくなる。
初めから、私が再び生まれ変わったその瞬間から、彼らはずっと私のそばにいた。
私にとって、精霊たちは友達以上の存在だった。
『君たちがいなかったら、私はこの新しい人生をもうとっくに諦めていたかもしれない。』
私が心の中でそうつぶやくと、まるで慰めるように精霊たちが私に寄り添ってくれた。
『……ん?』
しかし、何かおかしい。
精霊たちの様子がいつもと違う。
特に、光の精霊たちが。
彼らは宙を見つめながら、まるで誰かを待っているかのようだった。
私は不審に思い、少し身体を起こした。
『何が起こっているの?』
彼らが何かを伝えようとした。
しかし、それよりも早く、カーテンがそっと揺れ、月明かりが部屋の中に差し込んできた。
風にたなびく白いカーテンの向こう、淡い金色の月光が降り注ぎ、部屋全体を神秘的な光で満たした。
満月だった。
私は驚いて目を大きく見開いた。
そして、そのカーテンの向こうには一人の男が立っていた。
月のように輝く金色の瞳、なびく銀白色の髪——あまりにも神秘的な雰囲気をまとった男だった。
静寂に包まれたこの空間で、ただ月だけが彼を照らしていた。
息が詰まりそうな沈黙が流れる。
いったい、これは何の状況なのだろう?
理解が追いつかなかった。
『……誰、なの?』
私は口をぽかんと開けたまま、その男を見つめた。
すると、彼はカーテンの向こうから一歩踏み出し、こちらへ歩み寄った。
そして、じっと私を見つめた。
私の青い瞳と、彼の金色の瞳が宙で交差する。
私は視線を逸らすこともできず、彼を見つめ続けていた。
すると、彼はゆっくりと口を開いた。
——精霊が見えるのは、本当だったんだな。
低く響く、心地よい声が部屋の中に広がった。
私は驚いて目を大きく見開いた。
鉄壁の警備をかいくぐり、エルミール帝国の第一皇女の寝室に侵入しただけでも十分に重大な事件なのに、その上、私が精霊を見られることを知っているだなんて——。
もし私が言葉を発する余裕があったなら、今すぐ彼に矢継ぎ早に質問を浴びせただろう。
しかし、私はただ呆然とするばかりだった。
しかし、私は泣くには幼すぎたし、今この状況でできることはたった二つしかなかった。
すぐにでも叫んで人を呼ぶか、あるいは自分の命を守るために静かに息を殺すか——。
どちらを選ぶべきか迷っていると、まるで私の心を読んだかのように、彼はそっと自分の指を私の唇に当てた。
——静かに。
その瞬間、微かな風が吹き、カーテンが揺れて満月の光が部屋に差し込んだ。
私は思わず目を閉じた。
『……信じられない。』
月光に照らされたその男の姿は、この世で私が見たどんなものよりも美しかったと断言できるほどだった。
彼はゆっくりと近づき、私を見下ろした。
白銀の絹糸のような髪が、そっと揺れていた——。
——面白い子だ。
私のそばにいた精霊たちは、そろって頭を下げた。
——王をお迎えします。
『……王?』
信じられず、私は彼の顔をじっと見つめた。
彼がこの精霊たちの王だというのか?
そう思った瞬間、私はあることに気づいた。
彼は他の精霊たちと同じように、言葉ではなく『意志』だけで私に語りかけていたのだ。
人間に近い外見のせいで、私は彼を誤解していたらしい。
気づいた瞬間、知らず知らずのうちに体が震え始めた。
彼は静かに私を見つめた。
——……ずいぶん早く見つけたようだな。
彼の言葉の意味はわからなかった。
しかし、はっきりと分かったのは、彼の威圧感がとてつもないということだ。
次第に息が詰まるような感覚に襲われた。
ティリオンの前に立ったときでさえ感じなかった圧迫感だった。
——おやすみ。
彼はそっと私の額に指を添えた。
その指先は、まるで光が宿っているかのように淡く輝いていた。
——今日のことは忘れていい。
私は目を大きく見開いた。
『ちょっと待って。』
だが、抵抗する余地などなかった。
彼の指先が触れた途端、どういうわけか強烈な眠気が押し寄せてきたのだ。
私は意識を手放すまいと、必死に目を開けていた。
しかし、無駄だった。
最後に私が目にしたのは、魔力を帯びたかのように美しく輝く金色の瞳だった。
そして、その瞳に宿る微笑。
その金色の瞳を最後に、私の記憶は途絶えた。
・
・
・
「皇女様、お目覚めですか?」
まばゆい朝の日差しが全身に降り注いでいた。
私はゆっくりと目を開ける。
いつも通り、乳母は穏やかな笑みを浮かべながら私を見つめていた。
「昨日から一度も目を覚まされず、とても深くお休みになったようですね。」
そうなの?
私は心の中で首をかしげた。
しかし、目覚めた記憶がないのだから、おそらく乳母の言う通りなのだろう。
『……。』
私はまばたきをした。
すると、なぜか目の前に幻想的なぼんやりとした月の残光が漂っているような感覚だった。
『なんだか変な気分……?』
もしかすると、夢を見ていた間に、何か強烈な幻を一瞬だけ垣間見たのかもしれない。
『ああ、そういえば。』
私は思わず目をこすった。
昨日、庭で聞いた話を思い出したのだ。
『皇帝が一ヶ月間も宴を開くと宣言していたっけ……。』
ちょうどその時、乳母がその話題を持ち出した。
「愛らしい皇女様、ご存じですか?」
乳母は満面の笑みで叫んだ。
「皇帝陛下が皇女様の誕生日の宴のために、国内の有名な芸術家やデザイナーをすべて呼び寄せているそうです!」
もともと彼女はおしゃべりで、お世辞も多い性格だったが、今日は私を飾り立てながら、いつも以上に興奮していた。
「超大型の幻想画を描かれるそうですよ。そして、皇女様のための芸術作品や、美しい宝石の装飾品を惜しみなく作るともおっしゃっています。」
「本当に素晴らしいですね。」
侍女たちは口々に感嘆の声を上げた。
顔には期待と興奮が満ちていた。
「皇帝陛下がそこまでなさるのも当然ですね。皇女様をこんなにも愛していらっしゃるのですから。」
私は興味のないふりをして目を伏せた。
しかし、皇帝の宣言は決して単なる誇張ではなかった。
その日から、皇女宮では誕生日の宴の準備が本格的に始まったのだ。
侍従たちは目の回るような忙しさに追われ、他の宮からも次々と新たな人員が配置された。
その中で、母や侍女長、乳母はまるで戦場を指揮する将軍のように慌ただしく動いていた。
誕生日の宴が近づいているというのに、私にできることは特になかった。
侍従たちは忙しそうだったが、私は彼らの指示通りに動き、服や装飾品を合わせるときはただじっとしていればよかった。
その過程で、私はまるで貴重な黄金のように常に大切に扱われていたため、疲れることもほとんどなかった。
私の服や装飾品を合わせに来た人々は、口が渇くほど私を褒めちぎった。
どれほど可愛らしく、愛らしいか——。
生涯のうちに聞くべき称賛をすべて聞いたのではないかと思うほどだ。
ついには退屈しのぎに刺繍をしていたところ、隣にいた乳母が目を丸くして私を見つめていた。
「まあ、殿下!」
突然の呼びかけに驚いた私は、口を開けたまま、まばたきすることさえ忘れてしまった。
「新しい歯が生えましたね!」
乳母が私の顔を覗き込んだ。
『新しい歯?』
そういえば、ここ数日、片方の歯茎がむず痒くて少し痛かった。
それが、新しい歯が生えてきたせいだったとは。
宴の準備をしていた人々も、私に新しい歯が生えたという知らせを聞きつけて駆け寄ってきた。
「とても可愛らしいですね。」
今や、ただ歯が生えたというだけで称賛されるようになってしまった。
私は恥ずかしくなり、少し顔を赤らめた。
その時だった。ある侍女が言った。
「もうそろそろ、お言葉を話される頃ですよね? そうでしょう?」
その言葉に、何人かの人々が顔を見合わせた。
「……。」
隣で私を静かに見つめていた皇后の表情がわずかに曇った。
やはり、彼女は私が言葉を話さないことを内心気にしているようだった。
私が感情表現の少ない子供だという話は、皇女宮でも有名だった。
常に静かで、騒がず、手のかからない子。
しかし一方で、密かにこんな噂もあった。
もしかすると、皇女には何か問題があるのではないか——と。
そうでなければ、ここまで表情が乏しいはずがない、と言うのだ。
私は今まで、普通の子供なら口にするはずの「ママ」や「ババ」といった幼児語すら一度も発したことがなかった。
この年齢になれば、「お母さま」や「お父さま」と言い始める時期のはずだった。
だから、私の成長についての話題は、宮殿内では暗黙のうちにタブーとされていた。
おそらく、あの侍女は宴の準備で忙しく、無意識に口を滑らせてしまったのだろう——。
新しく仕え始めたばかりで、状況をよく知らない様子だった。
乳母は皇后を気遣ってか、明るい声で話した。
「そうですね。歯も生えてきましたし、お話しされる日もすぐに来るでしょう。」
皇后は静かに微笑んだ。
「そうね。」
「もちろんですとも。皇后陛下と皇帝陛下の血を引く素晴らしい皇女様なのですから。すぐに言葉を話し、立派に成長されるのは間違いありません。」
乳母は母を必死に慰めていた。
私はそっと目を伏せる。
自分の気持ちを押し殺すのは、決して楽なことではなかった。
周囲の人々は無理に明るく振る舞うこともせず、ただ静かに私を見守り続けた。
私を心配そうに見つめるその眼差しには、偽りのない優しさがにじんでいた。
皇后が心配しているのが分かる。
不安に思っているのも。
それでも、私はどうしようもなかった。
どれだけ努力しても、口を開くことができなかった。
決して、まだ肉体が未発達だからという理由ではない。
もし覚悟を決めれば、今すぐにでも話せるだろう。
『……でも。』
その覚悟を決めることが、あまりにも怖かった。
言葉を発しようとするたびに、胸が詰まり、息苦しくなるほどだった。
あまりにも恐ろしくて、むしろ何も言わないほうが楽だと思うほどだ。
前世で家族に裏切られた記憶が、まるで鎖のように私の全身を縛り付けていた。
今でも、私はその恐怖から抜け出せずにいた。
静寂が広がる。
私は何も感じていないふりをしようとしたが、心の奥に込み上げてくる感情を無視することはできなかった。
その時、温かい手が私にそっと触れた——。
ふいに、私は思わずその手を避けてしまった。
その手の感触が、あまりにも優しくて。あまりにも温かくて。
「アイシャもすぐに言葉を話せるようになるわ。」
皇后は柔らかな声でそう言った。
「それまで、私はいつまでも待っているから。」
私はぼんやりと皇后の瞳を見つめた。
淡いピンク色の瞳には、悲しみよりも強い感情が宿っていた。
私への愛情。
それがそこにあった。
『………』
なぜか、言葉が喉に詰まった。
最初に話を切り出した侍女は、唇をぎゅっと結んでいた。
自分が軽率なことを言ってしまったのではないかと気にしているようだった。
それを見て、皇后はゆっくりと立ち上がった。
「さあ、アイシャ。今日も歩いてみましょうか?」
侍女たちは慌てて席を整えた。
皇后の腕に抱かれていた私は、ふかふかの座布団の上に移された。
最近、私には新しい日課ができた。
それは皇后の前で、一歩一歩歩く練習をすることだった。
普段はどんなことにも無関心な私だったが、この歩く練習の時間だけは一生懸命になった。
誰の助けも借りずに、自分の力で歩きたかった。
ただの気分の問題かもしれない。
でも、一歩でも前に進めるたびに、少しずつ自由を手に入れているような気がした。
「いち、に。いち、に。」
皇后の声に合わせて、私は足をそっと持ち上げた。
まだ足に十分な力が入らないため、歩くのは容易ではなかった。
皇后は少し離れたところで、両腕を広げながら私を見つめていた。
その姿を見た瞬間、ふと過去の記憶がよみがえった。
私の昔の母…。
イデンベルの皇后が私を一度も温かく抱いたことがないと言ったけれど、記憶をたどってみると、何度かあったようだ。
公式の場で仲睦まじい様子を演出するための政治的な行動に過ぎなかったけれど、それでも私は幸せだった。
母の腕の中は、形だけでも温かかったから。
「……」
必死に足に力を込めて、一歩、二歩、三歩と歩いた。
周囲の人々が応援する声がかすかに聞こえた。
「……はあ。」
たった三歩歩いただけなのに、足が震えた。
これまで私が最大で歩いた回数は三歩が限界だった。
でも、なんとなく今日はもう少し歩けそうな気がした。
「もう少しだけ。」
私は欲を出してみた。
「もう少しだけ行ってみよう。」
でも、やはり欲張りすぎたのだろうか。
私はカーペットの上に「ぽすん」と倒れてしまった。
私を見守っていた人々が気の毒そうにため息をついた。
「あと少しで四歩だったのに、惜しいですね。」
「それでも、とてもよくできましたよ、皇女様。」
私はふかふかの床にぺたんと座り込み、顔を伏せた。
「大丈夫? アイシャ?」
皇后の声が聞こえた。
「……うん。」
私は本当に最後の力を振り絞って、もう一度立ち上がった。
足が少し震えていたけれど、もっと挑戦したかった。
「頑張ってください!」
そんな私を見て人々は笑いながら称賛してくれた。
しかし、その声に耳を傾ける余裕はなかった。
私はただ前を見つめ、集中していた。
目標としていた皇后の元まで歩いて行きたかった。
そこまで行くには、最低でもあと十歩は歩かなければならない。
それでも、決して諦めたくはなかった。
少しずつ、少しずつ歩いていけば……
いつかは、その腕の中にためらいなく飛び込めるだろうか?
私は再び歩き始めた。
皇后は疲れた素振りも見せず、変わらず両手を広げて私を待っていてくれた。
誕生日の宴が近づくにつれ、私の居る皇女宮はさらに活気づいていた。
そんな中でイシスの訪問は少し予想外だった。
私の情報通であるスダジェンが、
ユーモアを交えながら「彼が春の狩猟から戻ってきた」という知らせを教えてくれた。
彼の手には特別な贈り物が握られていた。
それを見た私は、少し戸惑ってしまった。
普段なら、子供が喜ぶような玩具や綺麗な花を持ってきてくれるはずなのに、今日の彼の手には、それとはまったく違うものがあったからだ。
「熊の肉だよ。この前の狩りで俺が仕留めたんだ。」
それは、まさに熊の肉の塊だった。
彼はにこにこしながらそう言った。
『……え? 熊を狩ったの?』
私は思わず、暑さも忘れて目を丸くした。
彼はまだ9歳のはずなのに、本当に熊を狩ったというの?
もともと武術の才能があるとは聞いていたけど……。
これは本当に想像を超える話だった。
しかし彼はそこで終わらず、少し興奮した様子でさらに続けた。
「それだけじゃないよ、アイシャ。君のために用意している誕生日プレゼントがあるんだ!」
それが何なのか、まったく見当がつかず、私は思わず瞬きをした。
すると彼は、唇に指を当てて「シーッ」と秘密のジェスチャーをしてみせた。
「でも、それは誕生日まで秘密だよ!」
彼は楽しそうに笑った。
私は少し戸惑ったが、誕生日の宴が来るまで待つしかないと思った。









