こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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70話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 一年の最後の日②
「ふむ、ふむ。王宮ほどではありませんが、立派な邸宅ですね。」
きちんとした連絡もなしに押し掛けてきた王妃は、不快な気配を隠せずにいたものの、形式的な挨拶を私に向けた。
「それはそれは光栄です、王妃様。」
それに対して、母はただ平然とした表情で、静かに王妃の前に茶器を置いた。
柔らかな動作で、慎重に置かれた茶器だった。
どうやら王妃ドロリスは何か恐ろしいものでも見たかのように、そわそわと肩を動かしていた。
「え、ええ。」
「まずはお茶をお召し上がりください。」
「そうですね、そうしましょう。」
緊張が伝わる王妃に、母は明らかに礼儀正しく勧めた。
それにもかかわらず、「フッ、アッ、熱い……!」、焦っていたからなのか、王妃はその茶をきちんと冷ますこともせずに口をつけ、舌を火傷してしまったようだ。
失望した目で母をじっと見つめる。
「こちらです。冷たい水でお口を冷やしてください。」
それでも母は冷静だった。
「一体何をしに来たのかしら、この人は。本当に笑わせるわね」と心の中でつぶやいた。
私が見ても、母がわざわざその態度を見せるとは思えなかった。
私は母の隣に静かに座っていた。
ドロリス王妃は、口の中を十分に冷やした後も、じっと状況を伺っているようだった。
それにしても、今日は侍女を一人も連れてきていないのね。
王妃が何度か癖のように侍女を見回したが、すぐに視線を外すのを見ると、どうやら援助を求める相手もいないようだ。
ただ迷った様子だけが目立ち、徐々に落ち着きを取り戻そうとしていたその時だった。
「ママ、ママ、うわーん!」
王妃の腕の中で静かに眠っていたシャルロットが、空腹を訴えるように泣き出したのだ。
ドロリスに抱かれていたシャルロットは、彼女の顔を見て驚いたように身をよじった。
「うわぁ、どうしたの、シャルロット?ここにお母様がいるでしょう?」
「うわぁーん、ママ、ママ!」
日頃、どれほど子どもを見ていなかったのか、子どもが泣き叫ぶ姿に王妃の顔は真っ赤になり、なだめようと必死になった。
周囲の目がある前ではそんな姿を見せなかったというのに、ここではなぜか気まずそうにしている様子だった。
「私があやしましょうか?」
「いえ、大丈夫です!シャルロットは私の娘ですから……。」
それでも自尊心を保とうとしていた。
「ふう……。」
おかげで応接室内の騒音は収まる気配がなかった。
『どうやったらミハイルより子どもをあやせない人間がいるんだ?』
以前のミハイルと比べても、確かに彼の方が上手いと思わざるを得なかった。
だから私はソファから静かに降り、側にあった侍女の服の袖を軽く引っ張った。
「どうされましたか、お嬢様?」
「赤ちゃん、お母さんが好きなんです。」
「あらあら。」
「赤ちゃんをお母さんに返してください。」
そう言いながら手を差し出すと、侍女は戸惑いながらも了承したようだ。
目をぐるりと動かしながらも、困惑したように顧客を眺めた。
どう見てもドロリスは、赤ん坊の世話など慣れていない様子だった。
彼女は母の許可を得ると、すぐに厨房へ行き、シャルロットのために用意された離乳食を手に取った。
私も離乳食を持ってシャルロットの前へ進んだ。
体力と体格が良いシャルロットだったが、その癇の強さは並外れており、泣き止む様子は見られなかった。
「はい、ママがここにいるよ。」
ドロリスは困惑しているようだったが、私は動揺せず、シャルロットの顔の近くで離乳食を差し出した。
すると、おいしそうな匂いに惹かれたのか、シャルロットはぴたりと泣き止み、王妃の腕の中でじたばたしていた動きも止まった。
「ママ、これ食べていい?」
「うん、赤ちゃんのだよ。」
私がそう言うと、シャルロッテはフォークも使わず、手で食べ物を掴んでそのまま口に運んだ。
「シャ、シャルロッテ!そんな行儀の悪いことをしてはダメでしょう!」
ドロリスは顔を赤らめ、水分が滲むほど驚いて声を上げた。
しかし、なんとか口に食べ物を入れて落ち着いていたシャルロッテが、突然驚いたように泣き出した。
状況が悪化した。
見知らぬ場所に、見知らぬ人々の中にいるのが、彼女をさらに不安にさせていたのだ。
赤ちゃんは、赤ちゃんだもの。
「それなら、私が食べさせてあげる。」
そう言いながら、私はシャルロッテの隣に腰を下ろし、そっとソファを叩いて座るよう促した。
王妃は一瞬戸惑った様子を見せたが、シャルロッテがまるで舞台に立つように自身の体を少し傾けて落ち着くと、自然とその場を譲るほかなかった。
「さあ、あーんして。」
育児をしていると、子どもに食事を食べさせる日が来るのは当たり前のことだ。
それでも、一方では少し胸が締めつけられるような感覚もあった。
だって、私が今、赤ちゃんに食事をさせているなんて、自分でも驚きだったから。
さらに、彼女の成長が目に見えて感じられるのは嬉しいけれど、まるでミハイルの赤ん坊の頃を思い出させるような、感慨深さが胸に広がった。
慎重に丁寧に振る舞う王妃とは対照的に、シャルロッテの仕草にはどこか愛らしい不器用さが漂っていた。
シャルロッテは食欲に集中していた。
適度に離乳食をすくって口元に運ぶと、彼女はおもむろに上手に食べてくれた。
その姿を見ていると、妙に楽しい気持ちになった。
だからミハイルが私に食べさせたがったのか。
親の関心をそれほど受けられなかったものの、シャルロッテの小さな唇は可愛らしくぱくぱくと動いていた。
食べるたびに、赤ちゃん特有の桃色の唇が一生懸命動き、まるで餌を受け取る小鳥のようだった。
そんな彼女の様子がとても愛おしく感じられたおかげで、応接室は自然と和やかな雰囲気に包まれていった。
・
・
・
母は、私とシャルロッテが過ごす様子を優しい目で見守りつつ、ふと視線を王妃に向けて問いかけた。
「それで、公爵邸には何かご用があってお越しになったのですか?王妃殿下。新年最後の晩餐の準備でもお願いされるご予定ですか?」
「いえ、いえ!私は国王陛下に報告を届けなければならないんですから。ええ!」
そう言いながら、彼女は母に対して少しばかり申し訳なさそうな様子を見せた。
しかし、母は目を一つも動かさなかった。
兄上には、それくらいされてもいいでしょう。
私も母の反応に全く同意した。
その堂々とした反応に、ドロリスの態度が再び和らいだ。
すると、彼女は私とシャルロッテに視線をさっと向けると、ためらうように手をいじりながら話し始めた。
「……ええ、私たちは家族ですもの!」
「そうですよ。」
「本当に、あまりにも配慮が足りなかったと思います。それに……末娘は英雄の名前を持つ子供で、私たちのシャルロッテは聖女の名前を持つ子供ですもの。」
「はい。」
「だから……その、年齢も近いですし。」
ドロリスの声は次第に小さくなっていった。
「子供たち同士がもう少し親しく過ごせたらいいなと思いまして……。」
その瞬間、私は王妃がどのような考えで足を運んだのかを悟った。
彼女がひどく自尊心を傷つけられているのが伝わり、ますます気の毒に思った。
国王にまでこんな思いをさせられるなんて、怖かったのでしょうね。
王妃でありながら、ドロリスは自分自身に自信を持てないでいた。
だが、そんな彼女を堂々と振る舞わせることができるのは、国王の存在だった。
国王が母上に叱られて伏せているのかもしれないわね。
一言で、生存の危機を感じたようだった。
父母が似ているというのは大変なことだ。
『危険な状況が次々と押し寄せてくるな。』
特にシャルロッテを連れてきたことが。
「ふむ、ふむ。それが私が頼りないと思われていたことも分かりますよ。でも、考えてみれば子供を育てる中で支えを得られる相手は、テクラくらいしかいないのです。」
激しい風が吹き荒れる中、しばらくの間おしゃべりが続いた。
母親はその話を少し聞いてから、私とシャルロッテに視線を移した。
お腹を空かせていたシャルロッテは、急いで用意された離乳食を食べて満足した様子で、私が口を拭いてあげても泣かずにおとなしかった。
母親は柔らかく微笑んで言った。
「子どもが愛らしい瞬間を見逃すのは、なんとも惜しいことですよね。」
新年を迎えるにふさわしい、心温まる言葉だった。
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