こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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75話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 特別な誕生日⑤
教皇が驚きで動きを止めたのは、私の口から「許します」という言葉を聞いた瞬間だった。
わざとらしくぶっきらぼうな調子で「ええ、許しますよ」と言い、そう言った後で彼はやっと体を起こした。
両親は私の困惑を察したのか、それとも娘が普通でない状況にいるのが嫌だったのか、教皇に向かって言葉をかけた。
「聖下、私たちの娘はこれまで普通に過ごしてきましたが……」
「本当にそうお考えですか?」
教皇は微笑みを浮かべた。
「普通の子供がどうやって、あの危険な魔物の森でたった一人で12時間耐え、荒れ狂う大神官の放たれた力に抗えるというのですか。」
「それは……」
「単に主神の加護があったとしか言いようのない出来事を、誰よりもエンデブラン公爵とテクラ公爵夫人がよくご存じでしょう。」
その言葉に両親は静かに頷いた。
そして私はなぜか満足感を覚えた。
数年間の間に両親がどれだけ良い人たちかを私は直接感じてきた。
誰にでも優しかった彼らの態度は、幼いミハイルにさえ変わることはなかった。
しかし……。
それは自分たちの子供ではないから、そうだったんだろうな。
両親はただ健康に育つ普通の子供を望んでいただけかもしれない。
混沌とした世界の中で悪い方向に変貌していく人々を数多く見てきた私は、この瞬間、強い恐れを感じた。
私が……両親の期待を裏切ったらどうすればいいの?
それさえもわからない可能性が、この短い時間の中で私をじわじわと追い詰めていくようだった。
あまりに長かった、ほぼ4年という時間。
こんなに暖かいものを知ってしまって、それを奪われるなんて、あんまりじゃない。
しかもそれが、生まれて初めて見たあの熊のような教皇のせいだなんて。
気が付けば、私もミハイルの笑顔に釣られていた。
世界がぐらつくほど大きく揺れた。
しかしその瞬間。
「私たちの娘、大丈夫?」
どうにかして隠れようとする私を、母がしっかりと抱きしめた。
私が心配していたことが、なんでもないかのように母は穏やかな微笑みを浮かべていた。
「大丈夫よ。ここにはお母さんもお父さんもいるんだから。」
母がそう言う間に、教皇が「はあ、安心した」とため息混じりの声を漏らすのが聞こえた。
そのおかげで少し冷静になれた。
まだ、何も起こっていない。
まだ心配する必要はない。
それでも、あの熊のような人が自分にとって特別な存在であることを示しているかのように思えた。
それでも、両親はおそらく・・・。
私が平凡な末っ子だと言ったら、まずそれを受け入れてくれる人たちなんだ。
私はそう思いながら、母の胸に飛び込み、首にしがみついた。
すると母は小さく微笑みながら教皇に話しかけた。
「教皇様、それは確かに光栄なことです。」
「はい、そうですね!」
「でも、私の娘には荷が重いようです。」
母は教皇にも気後れせず、堂々とした口調で答えた。
「それって、もしかして私たちに引き下がれという意味ですか?」
教皇が慌てて尋ねると、国王は教皇の味方をした。
「無礼だぞ!教皇様の前で…」
しかし教皇はその言葉をさえぎるようにして、母に子供のように懇願した。
「もう少しだけ、もう少しだけ聖女様の素晴らしいご様子を見せていただけませんか?この日のために聖国ではどれほど多くの準備をしてきたことか!まだ聖女様のための材料の百分の一もお見せしていないのです!」
それが問題なのか?
教皇がそんなに一生懸命に頼み込むのを見て、いや、自分の思い描いた方向と違うからといって戸惑った国王がどう対応すべきか分からなくなり、言葉を失ったのか、口をつぐんでしまった。
私はそれでも年老いた落ち着いた神官たちが彼らを止めてくれると思っていた。
「その通りです、テクラ公女様! これは扇動です!」
「独占は悪いことです!聖女様は私たちの聖女でもあると言ったではありませんか!」
こいつらも同じようなやつらだ。
ここにいる信者たちはなんでこんなに分別がないの?
むしろ代信官が威厳を持っている方がまだましだった気がする。
とにかく、彼らの眩しいほどの輝きが私の背中を不快にさせた。
しかし、母は彼らの狂気じみた態度にも微塵もひるむことなく立ち向かっていた。
「私の娘を連れて行こうと思うのですが、問題がありますか?」
「いや、それでも……」
「聖女様の意思も伺わなければ……」
私の意思は今、お母様をしっかり抱きしめることだけで十分ではないの?
その時、お母様の背中越しに、私を見て「大丈夫だ」とでも言うかのように優しく微笑むミハイルの顔が見えた。
ミハイルは私が母を抱きしめた後も、首を引き寄せずに私の手をしっかり握ってくれた。
まるで、いつか私の味方でいてくれるかのような温かい手だ。
本当にこの人が計算するべき相手なのかな?
私はお母様の胸の中で静かに考えながら語った。
「お母さん。」
「うん、どうしたの、私の娘。」
すると、その小さな声をどうやって聞いたのか、ざわついていた聖国の人々が少し落ち着いた。
まるで私の一言でももっと聞きたいかのように。
そしてそのおかげで騒ぎも少し収まった。
「私、聞いてみたいことがあるんです。」
「誰に?」
「熊のおじさんに。」
私は彼が教皇だと分かっていたけれど、あえて「熊のおじさん」と呼んだ。
機嫌が悪かったわけではない。
でも、その変な態度が何をしても私の予想を超えてしまうものだった。
「ああ、もう既に聖女様に私を可愛がれとおっしゃるなんて!みんな凍りつくくらい恥ずかしいじゃないですか!」
それを教皇が人々の前で言うなんて信じられる?
運良くお母さんはその場の混乱した反応の中でも私の言葉にだけ耳を傾けてくれた。
「何を聞きたいの?お母さんが代わりに聞いてあげようか?」
その言葉に私は首を振った。
これは私がやらなければならないことだと思った。
もちろん、既に再会のための贈り物は準備され、大公国に送られていたけれど。
前からきちんと片付けておきたかったことだから。
それを察したお母さんは、静かに私の意志を受け入れてくれた。
私を抱きしめたまま、身体を少しひねり、教皇と向き合えるようにしてくれた。
すると教皇は少し驚いたようだった。
教皇は急に私よりさらに目線を低くした。
「何をおっしゃりたいのですか、聖女様。」
「ミハイルは悪くないでしょう?」
「え?」
「ほら、頭が少し半端な感じのおじさんがミハイルを悪く言っていたの。でも、全然悪くない。」
その瞬間、教皇の視線がゆっくりとミハイルに向けられた。
いや、教皇だけでなく、その場にいる全員の視線が少年に注がれた。
その時、私は少しだけ申し訳ない気持ちを抱いた。
だが幸運にも、レンティス小公爵の彼は、そんな視線にも怯まずに、普通のように誇らしい顔をしていた。
それでも本当に随分と良くなったな。
神殿で何かが解決されたわけでもないのに。
ミハイルはあの事件以降、他の人々が何を言おうと、以前のように寂しそうな顔をすることはなかった。
そのため、教皇が柔らかな笑みを浮かべ、ミハイルに軽くお辞儀をした。
「えっ……?」
この状況はミハイルさえも予期していなかったようで、彼の表情が揺らいだ。
「申し訳ありません。レベンティス小公爵。聖国と神殿を代表して謝罪いたします。」
「え?」
「実は、今回の訪問は聖女様にお会いするためでもありますが、レベンティス小公爵に正式に謝罪の言葉をお伝えするためでもあります。」
先ほどとは異なり、教皇はその地位にふさわしい厳粛な態度をとった。
「もちろん、一言だけで終わらせるつもりはありません。」
そう言いながら教皇が手を差し出すと、そばにいた年配の信徒が教皇に書類を渡した。
「聖国からあなたへの報酬を準備しました。このようなものでも、小公爵の心をすべて癒すことはできないでしょうが。」
教皇は慎重に近づき、その書類をミハイルの手に渡した。
「どうかお受け取りください。もちろん、これを受け取ったからといって、必ずしも神殿や聖国を許していただく必要はありません。」
彼はミハイルから手を離し、寂しそうな微笑みを浮かべた。
「その心はすべて君のものであり、主もまた、無理やりの赦しを望んではいないだろうから。」
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