こんにちは、ピッコです。
「愛され末っ子は初めてで」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

88話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 婚約者?
いつの間にか5月も中旬。
5月5日、姉の誕生日パーティーを無事に終えて、もうすでに1週間。
教皇シメオンまでもが姉の誕生日パーティーに参加したため、もう留まる理由もなく、栄光のうちに帰国することになった。
「本当にこれはあまりにも不適切ではありませんか? 主の最初のしもべとして聖女様をしっかりお支えすることが一番重要なことなのに! 先に戻った年配の使徒たちが仕事が溜まっていると言って再び――」
そんなに面倒なら、教官なんてやらなければいいのに。
ともかく、彼は未練がましい顔をしながら青い山を後にした。
『ちょっと慎重になれよ。』
お前のせいで、わざわざ都に長く足止めされたんだぞ。
おかげで公爵家はようやく公爵領に戻る準備をすることになった。
父は浮かれた様子で話し始めた。
「公爵領に戻ったら、ホンシが過ごす大きな家も建ててあげよう。森も広いから、ここよりずっと気楽に過ごせるだろう。」
今回も父と私は先に到着しているだろう。
姉は、二人きりの時間を過ごそうと言ってくれた。
実際、お兄ちゃんはもう10歳だからゲートを使うこともできたけれど。
『ラウレンシアが10歳になるまでは、お兄ちゃんが一緒に行動しようとしてるの。それならうちの末っ子が寂しがらないかしら?』
姉は心配そうに私に尋ねてきた。
『ううん、私はお父さんと一緒にいるから大丈夫だよ。』
『お兄ちゃん、うちの末っ子のこともすごく好きなんだよ、知ってるでしょ?』
『うん!』
私はお兄ちゃんの優しい気持ちを十分に理解していた。
もちろんお姉ちゃんは、お母さんと二人で馬車旅行をすると言えば、それだけでも十分に楽しいはず。
でも、ちょっと無理をしているかもしれないとも思った。
一人だけゲートに乗れず、選択肢がないと思えば、ね。
それに……。
『どう見ても、みんなの関心が私に集中している状態だし。』
両親が教皇が帰国するやいなや、公爵領へ戻る準備を整えたのも、そんな理由からだ。
二人は長い話し合いの末、私がある程度成長するまでは都には来ない方がいいと結論を下したのだった。
『子ども時代って、一度過ぎてしまえばもう戻ってこないでしょう。だから、子どもたちが私のような幼少期を過ごさないでほしいんです。』
母のその言葉に、父は深く共感しながら頷いた。
『父も10代の頃、エンデブラン公爵になってとても苦労されたようですから。』
ミハイルに対してより気を遣っているのも、もしかしたら自分の幼少期を思い出していたからかもしれなかった。
そして気づいてみれば、最近はミハイルの様子も楽しくなっていた。
2ヶ月前、教皇がミハイルに直接謝罪をしてから、周囲の人々の態度もがらりと変わっていた。
『配属申請書が殺到してるんですって。』
『そうなんだ、困ったことになったよ。当時はむしろ志願する子がいなくて、やっと一人だけ選んだのに……』
ある日、大公が困った顔で両親にそんなことを言うくらいだ。
気まずくて断っていたのはいつの話だというのか。
今になって騒ぐの?
貴族たちでさえミハイルと自分の子どもが友達になってほしいと、こっそり根回ししている始末だった。
『友達とちゃんと打ち解けたこともないのに。ちょっと優しくしてあげるだけでも、すぐに喜ぶはずよ。』
『うちの娘は可愛くて優しいから、すぐに小公爵も気に入るんじゃない?』
『一緒に馬に乗ろうって言ってたの。小公爵はダミアン公爵とは仲がいいけど、公爵は体を使うことはあまり得意じゃないからって。』
まったく、情に流されると誰でもいいと思ってすぐに捕まるとでも?
私、2000年近くも情について研究してきたからわかるけど、それは絶対に違うのよ。
逆に親切にされると、裏があるんじゃないかと疑うようになるんだから。
『……私も最初は家族のことをそう思ってたわ。』
五歳になった今思えば、とても恥ずかしい行動だった。
父がとんでもない変わり者だと思って心配していたのだ。
ただ、家族への愛情が深い人だったのに。
とにかく、ミハイル側も今回都を離れたら、しばらく静かにしていようと計画していた。
しかし、私の家族はこの計画を延期せざるを得なかった。
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「それは本当なんですか? 本当に帝国に……」
公爵領へ戻ることにしたその日の前夜。
父は重い顔で突然の知らせを伝えた。
「はい、帝国から第17皇子がアナスタシアの従者として送られてくるそうです。」
再確認するように答えた父の言葉に、母は私をぎゅっと抱きしめたまま深いため息をついた。
私がぱちくりとした目で見上げると、母は私の頬を優しく撫でながら、大丈夫よと言うようにおでこにキスをしてくれた。
「いったい、なぜですか?」
「帝国でも聖女様をお迎えする機会がほしいって言ってたのよ。随行者でなくても、従者としてでもいいからって。」
その答えに、母の私を抱きしめる腕に力がこもった。
「絶対にだめよ。何も知らないお兄様ならともかく、ロガートよ、あなたはわかってるでしょう。何度も剣を交えたんです。決してプライドを捨てるような連中じゃありません。明らかに企みがあるはずです。」
「私もそう思います、でも――」
父の言葉に、母は自分でもわかっているというように口をつぐんだ。
「帝国がこれまで大人しかったのは、単なる偶然じゃありません。」
「ええ。十数年前には優柔不断で決断できなかったじゃありませんか。」
この会話をむしろ理解できなかったほうが気楽だったろう。
でも私はこの話を聞いた瞬間、今回の提案を断ることはできないと悟った。
悪しき帝国は、一気にパルサンを越えようと、戦争を起こそうとしていたのだ。
そんな中で私が現れたから、いくら聖国を重視しないアクシオンでも無視はできなかった、という話だった。
『私、すごく大きな騒動を起こしちゃったみたい。』
それでも後悔はしていなかった。
むしろ言い換えれば、私が一気に有名になったおかげで、アクシオンが戦争計画を修正したという話だったから。
戦争を起こすよりも、ただこの子一人を味方につける方がはるかに、はるかにマシだった。
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はっきりと私が聞いたのは、「従者」か「随行者」かの話だったはずなのに。
「赤ちゃんは私と一番仲がいいと思ってたのに。」
どういうわけか、ミハイル・レベンティスが私を訪ねてきて、ふくれた様子を見せた。
「私はお姉ちゃんとお兄ちゃんと一番仲がいいよ。」
ミメオンを定期的に相手にしてきたおかげか、かなり上達した発音でそう答えると、ミハイルは微妙な顔をした。
「そういうときは家族は除くんだよ。」
「じゃあ、ミハイルも除かなきゃ。」
「なんで?」
「ミハイルがお兄ちゃんって言ったから。」
するとミハイルの口元がふっとほころんだ。
「お兄ちゃんって思ってくれてたんだね?」
あんなに駄々をこねたのに、聞き入れてくれないわけがない。
ミハイルは絵本を1ページずつめくりながら私の隣にぺたんと座り、上目づかいで話しかけてきた。
「まだ赤ちゃんはすごく小さいのに。」
もう大きくなったんだよ?
もう足音だってあまりしないし?
あの赤ちゃんみたいな声も、いまや本当に恥ずかしいくらいなのに!
それにしても、他の子よりずいぶん成長が遅い気がして心配してるだけで、小さいだけ、小さいってだけなんだよ。
でもこういうことを口に出すとほんとに気を遣ってるみたいに聞こえそうで、私はただ無表情で黙ってしまった。
特に大きな変化があったわけじゃないのに、それでもミハイルは、何かを察したかのように小さく笑ってくれた。
「赤ちゃん、僕にも変なことを言ってくる人たちがいたんだ。」
「変なこと?」
「僕、まだ九歳なのに、自分の娘と婚約してくれって言うんだ。」
まあ、貴族の家だからそんなおかしな提案もあるんだろう。
お兄ちゃんにもずっとそういう話はあったし。
私があっさりした反応を見せると、ミハイルはとても寂しそうな顔をした。
そして紙の本をめくっていた私の手をそっと握りながら話した。
「僕はずっと、赤ちゃんと一番仲のいい人でいたいんだ。」
「そうすればいいじゃん。」
ちょっと面倒くさくなって適当に返事をしたら、ミハイルの手がピタリと止まった。
「本当?」
「うん。」
でもさ、君と一番仲がいいのは私じゃなくてお兄ちゃんじゃない?
君、私にはすっごく厳しく言ってたじゃない。
お兄ちゃんの友達で、パパの知人の孫だって。
それってすごく気を遣う関係じゃない?
もちろんそんなこと言ったら傷つくと思って口には出さなかったけど。
それに、君が私にすごく優しくしてくれるのも事実だったし。
たまにこうやってわがまま言うけどね。
「その言葉、忘れないでくれる?」
「忘れないよ。」
「約束?もっと優しくするから、新しい友達なんて見た目が変わったからって、僕と遊んでくれなくなったら嫌だ。」
私がそうしたくても、あなたがそうできないと思うけどね。
アンはどうしても、自分の可愛さを過大評価する傾向があった。
そして、ミハイルがあんなにも心配していた理由を、その日の夜、ようやく知ることになった。







