こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

102話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 始まりと終わり③
一方、カリーに引かれてきた男、ゲステ男爵の顔は青ざめていた。
国王は目を伏せながら彼を見つめた。
『まさか口を割るとは!』
記憶にない顔だなどと主張するのは、明らかに嘘だ。
彼に命じたことをはっきりと覚えている国王は、目に力を込めてゲステ男爵を脅すように見つめた。
しかし、その国王の狡猾な意図に気づいたゲステ男爵は、主人の威圧的な視線に怯えて身を震わせながらも、必死に口を閉ざし……
いや、隣のアスラン公爵を見た瞬間、反射的にひれ伏した。
「違います! その後、陛下から何か指示を受けたり、この場で発言を覆したりすることは……決してありませんので、誓います!」
まるで速射砲のように、自分と国王の関係を否定するガステ・ナムザクの目には、必死の光が宿っていた。
彼が今言いたいことは、ただ一つ。
『とにかくあの尋問室へは連れて行かないでくれ……!』
ガステ・ナムザクが最初からこんなにも協力的だったわけではなかった。
領地から連れ出されたときは、何かの間違いだと考えていた。しかし、到着した場所がアスラン家のタウンハウスだと知った瞬間、警戒心が一気に高まった。
『ふん! いくらアスラン家が名門とはいえ、私も同じ貴族。 それどころか、私は陛下の信任を受ける宮廷貴族なのだ!』
国王の秘密めいた命令を実行する側近であるという理由から、ゲステ男爵は自らの価値を実際よりもかなり高く評価していた。
『むやみに事を荒立てるより、軽く脅して優位に立ったほうがいい。そうだ、まさか国王の側近に手を出せるはずがない。』
そう考えたゲステ男爵は、得意げに顎を上げ、ちょうど尋問室に入ってきたベアティに向かって、どもりながら言った。
「ち、小さなお嬢さんも、なかなか手荒なことをするね。さあ、お父上を呼んできなさい。」
「……。」
「ふん。いくらアスラン公爵でも、この私の口を割らせるのは簡単ではないぞ——」
もちろん、同じ貴族だからといって手を出されることはないと思ったのは、中央の社交界にばかりいて北部の気風をよく知らないガステ男爵の思い違いだ。
「ぎゃあああっ!」
すぐ後ろについてきたカリーは、ベアティの指示に従い、男爵が真実だけを話せるよう適度に痛めつけた。
そのおかげで、アスラン家はここ数年、ストゥム領地で何が起こっていたのかを詳しく知ることができた。
「ガステ男爵。」
ベアティの落ち着いた声が宴会場に響き渡った。
がたがた震えながら騎士たちを見回していたガステ男爵は、ぎくりとしながらアスラン令嬢に視線を向けた。
「今、多くの人々が疑問を抱いています。」
「え、ええ……?」
「国中に広まった噂。ストゥム領地の人々の死を取引材料として、敵国と手を組んだという話は本当にあったのか。」
落ち着いたが、明瞭な声が鋭く耳に突き刺さった。
「それについて、長年ストゥム領地の管理人を務めていた男爵ほど正確に知る者はいないでしょう。」
「そ、それは……。私が、管理人としていた間に起こった出来事を……。」
「はい。ストゥム領地で起こった事件について、皆に聞かせてください。」
ごくり。
公女の静かで冷ややかな黒い瞳に、アスラン特有の威圧感を感じたゲステ男爵は、無意識に唾を飲み込んだ。
彼の緊張で引きつった唇がわずかに震え、今にも何かを口にしようとしたその瞬間——
「男爵!まさか、余が座すこの場で嘘をつこうなどと考えたのではあるまいな!」
脅迫じみた言葉を口にしながら、国王は再び警告の視線を送る。
彼の秘密命令を遂行していた者なら理解できるはずのその言葉は、「もし嘘で事実を隠すなら、その後どんな目に遭うか覚悟せよ」という意味だった。
通常、家族を人質に取られる立場だったり、宮廷内での地位を重要視する者には効果的な脅しだった。
『ふん! 公爵は本当に愚かだ。陛下、あなたが側近である私をしっかりと保護してくれなかったからこそ、こんな事態になったのではないか!』
孤立し、ただ財と権力だけを追い求めていたガステ男爵には、もはやその言葉は通用しなかった。
男爵は尋問室で事実を小出しにしながら、アスラン家の反応をうかがっていた。
そして、彼らが国王の失策を確信すると、どう立ち回るべきかを考え始めた。
権力の流れがどれほど大きく変わるかも分からない状況で、以前の主君に忠誠を尽くすつもりなど、もはや微塵もなかった。
「……私は事実のみを話します。」
ベアティが一歩前に進み、尋問室で得た証言を改めて問いただした。
「ストゥム領地の王国民たち。彼らを敵国である神聖帝国へ引き渡したという事実はありますか?」
「……あります。」
「いつからそうだったのですか?」
「それは……大規模な軍備増強が始まる直前でした。私は命令を受け、神聖帝国から来た者たちを案内しました。これは何年にもわたり繰り返されてきたことです。」
人々がざわめいた。
「何年も?つまり、今回が初めてではないということか?」
「王国の貴族が、敵国と内通していたとは!」
「命令を受けていた、だと……?それでは——」
国王の顔が青ざめたり赤くなったりを繰り返した。
「男爵は今、何を馬鹿なことを言っているのか—」
「やめよ。」
騒ぎを起こし、割り込んで場を混乱させようとする策略は、公爵によって即座に遮られた。
「“証拠”を見つけたのではありませんか?」
「わ、私は……」
「男爵の証言をすべて聞いてから判断しても遅くはないでしょう。」
冷静に対応する黄金の瞳に言葉を詰まらせたが、国王は無意識に震えそうになる体を抑えながら声を張り上げた。
「こんな荒唐無稽な話を聞いている時間は無駄だ!」
「それとも、聞かれては困る話でもあるのですか?」
国王は公爵の言葉に反応しそうになる体を何とか抑えた。
「証言を妨げ続けると、何か疑われるように見えますが。」
「……。」
『やましいことがあるからこそ、責任を押し付けようとしているのか。』
口には出さなかったが、そう思わずにはいられないほどの疑念を抱かせる国王の態度に、公爵は無言のまま鋭い視線を向けた。
「証言を聞きましょう。」
国王と公爵に集中していた視線が、再びベアティと生き証人へと移った。
「神聖帝国との取引は何だったのですか?」
「私も正確には知りません。ただ、人々が次々と亡くなっていった時期に、まだ息のある遺体を隠し場所まで案内する役目を果たしていただけです。」
「王国民の遺体を?」
「はい。彼らは、私にも正体の分からない物品を持ち込み、それを遺体から何かと交換していました。」
『あの赤い光か……。』
若い夫婦が語った目撃証言だけでなく、聖座の記憶を通じて直接見たことがある、あの忌まわしい光景。
驚きに見開かれたベアティの瞳が細められた。
敵国の者たちが王国民の血を浴びてきたという話は、耐え難い侮辱だと感じた人々が、宴会場で憤り、ざわめき始めた。
高まっていく人々の怒りを感じながら、ベアティは最も重要な質問を投げかけた。
「その任務をあなたに命じたのは誰ですか?」








