こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

103話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 始まりと終わり④
「それは……」
まるで操られた人形のように、男爵の顎がゆっくりと向きを変えた。
壇上の王座。
その場に座っていた人物を示す証人の視線を追い、宴会場の全員がそちらに目を向けた。
「まさにそこに座っておられる方、国王陛下です。」
「……!」
疑惑はすでにあったが、明確に指し示された犯人に、人々の目は大きく見開かれた。
「まさか、噂が事実だったとは……。」
「いや、それどころか今回が初めてではなかったとは。一体何度、こんなことが繰り返されてきたんだ!」
「ぞっとする……!」
ざわめきが広がった。
裏切りと軽蔑の感情を宿した冷たい視線。
これまで一度も国王に向けられたことのなかった宴会場の反応に、国王は唇を小刻みに震わせた。
単なる噂話として語られていたときとは、状況がまったく異なっていた。
以前なら、根拠のないデマだと一蹴して済ませることができたが、今回は違う。
王国の有力貴族が全員集まる場で、この爆弾が炸裂したのだ。
ただの作り話ではなく、恐ろしい現実と証拠を伴った事実が突きつけられた。
「ゲステ男爵。お前の家門は、歴代戦争時から王室の軍需物資の調達を担ってきた名門だったな。肩書こそ違えど、その立場に変わりはなかったはずだ。事実なのか。」
たとえ下級貴族とはいえ、かつて王家の側近であった者が告発したという点が、さらに信憑性を高めた。
「最初から彼が嘘をついていたならば、公爵閣下がここに連れてくるはずがないでしょう?」
さらに、それが王国で最も尊敬されるアスラン家の手によって提示されたものなのだから、信じない者を探す方が早いほどだ。
完全に一方に傾いた宴会場の雰囲気に、国王は奥歯を噛み締めた。
緊張しているのか、絶えず首を動かすガステ男爵を睨みつけた。
『あのネズミめ!いっそ始めから殺しておくべきだった!』
まだ新星帝国との取引が終わっていないため、利便性のために生かしておいたというのに、こんなことになるとは。
もし予想できていたなら、早々に処理しておくべきだった。
確実な口封じができなかったことを悔やみながら、国王は口を開いた。
「よく聞いた。」
事実がすべて明るみに出た後、これに対する国王の最初の発言が何であるか。
誰もがわずかな期待、あるいは単純な好奇心を抱いて彼の口元を見つめた。
「重度の妄想患者だな。」
「!?」
自分に向けられた疑惑をまったく認める気のない、国王の傲慢な表情がはっきりと浮かび上がった。
「ゲステ男爵。この者がまともな精神ではないとわかっていれば、こんな戯言で私を陥れようとはしなかっただろう?」
「……私は、ただ真実を述べただけです!」
「その目を見ろ!目の下はくぼみ、震える体つきはまさに典型的な精神異常者のそれだ。病床に伏しているべき患者が、私の宴会に来て騒ぎ立てるとは!」
自らの宴会の品位が損なわれたと怒りを露わにする国王の表情には、微塵の良心も感じられなかった。
ガステ男爵は、国王が自分を妄想に取り憑かれた狂人のように扱い、非難するのを聞くと、激しく声を張り上げた。
「陛下が私に直接命じられたのです!」
「はっ、この男がまだ——」
「取引の条件が整うまで、反乱分子がこれ以上現れないように抑えろと!」
「……!」
続けられた言葉に、宴会場は再び衝撃に包まれた。
「国民を意図的に飢えさせて殺していたというのか?」
「そういえば、大飢饉のとき、毒にやられた者が多く出たのは……!」
国王の暴政が明らかになり、その影響を受けた貴族たちでさえ、驚きを隠せない様子だったのを見て、ベアティの瞳が冷たく細められた。
『私も最初に聞いたときは、耳を疑った。』
疑わしく思っていたが、実際に調べてみると、想像をはるかに超える恐ろしい真実だった……。
背筋が凍るような衝撃の連続だ。
初めて事実を知ったベアティがそうだったように、呆然としていた人々の表情にも、まず驚愕が浮かんだ。
そして、驚愕が過ぎ去った後、次第に怒りがこみ上げていくのが見て取れた。
そして、その中で最も年長の老臣が、彼の功績への報酬として宮廷から所有を認められた家宝の剣を腰に差し、姿勢を正した。
剣を抜いた老臣の鋭い視線が、国王に向けられた。
「陛下。」
「……レジオン侯。」
「はい。先代から陛下をお支えしてきた年老いた身です。今や地に伏す日を待つばかりの老人が口を開くのは、ただの戯言に過ぎないと思われるかもしれませんが……。この老いぼれも、黙って見過ごすわけにはいきません。」
「……」
「お答えください。この証人の証言は事実ですか?」
三代にわたり王国を支えてきた老臣の言葉には、重みがあった。
しばらく沈黙していた長老が口を開くと、もはや否定するだけでは事態を収拾できないと悟った国王が口を開いた。
「事実でないなら?」
「……!」
皆の目が大きく見開かれる中、ベアティは国王がさらに言葉を重ね、すぐに否定しようと考えているのではないかと目を細めた。
しかし、幸運なのか不運なのか、国王の次の言葉は単なる繰り返しではなかった。
「では、事実だとしたら?それが何か問題か?」
国王は否定しなかった。
代わりに、事実を無視することを選んだのだ。
「そうか。臣民の命を犠牲にして敵国と取引をしたと?まあ、あの妄想患者の言葉が真実だとして——。」
黄ばんだ瞳の中で蛇のような瞳孔が縦に裂け、危険な光を放った。
「それで?」
鋭い視線が、宴会場の貴族たちを切り裂くように走った。
「何をどうしようというのだ?ここにいるお前たちは誰だ?皆、余の臣下ではないか!余の臣下が、些細な噂話ひとつを見つけただけで、獲物をくわえた犬のように騒ぎ立てるというのか!」
臣下の不忠を非難し、怒鳴る国王は、自らがまだ絶対的な立場にあることを誇示するような表情を浮かべたが、どこか落ち着かない様子でもあった。
「臣下は臣下の本分を守らねばならぬ。主に歯向かうとは、どういうことか?ふん。」
その傲慢で揺るぎない態度に、誰もが言葉を失った。
鋭い声が火矢のように沈黙を切り裂き、国王に突き刺さった。
「では、国王の本分とは何でしょう?」
「何?」
「他者に本分を守れと命じるならば、まずは自身が守るべきではないでしょうか?」
「はっ、まったく!」
正面から鋭く突きつけられた問いに、国王は顔を赤黒く染め、表情が崩れそうになるのを必死で抑えながら、まるで冗談を聞いたかのように無理に笑ってみせた。
だが、ベアティは彼が軽く流して逃げようとするのを許さなかった。
「そうではありませんか? 国王の本分とは、王国の民を守る義務を果たすことではないのですか?」
まるで純真な子供のように、澄んだ声で投げかけられた言葉が、鋭利な刃のように国王を貫いた。
「う、うぐっ!」
一国の国王に対し、臆することなく言葉を投げかけ、面目を潰すような発言をする小さな少女の言葉に、とうとう怒りを抑えきれなくなった国王が爆発した。
「黙れ!」
国王は主君としての威厳まで振り絞り、怒りを表現したが、哀れなことに、その怒りは小さな体格の少女を威圧しようとする程度のものだった。
だが、ベアティはその圧力にも一切怯まなかった。
『お父様やお兄様に比べれば、こんなのはまるで小山程度のものね。』
一族の怒りが山脈を揺るがすほどであるのに比べたら、国王の怒りなど庭の噴水に浮かぶカエルの鳴き声にも及ばない、とすら思えた。









