こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

104話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 始まりと終わり⑤
そして次の瞬間、国王の顔は青ざめた。
「ひぃっ!」
無意識のうちに悲鳴を漏らすほど、彼を睨みつける二人の獅子の気配が、彼の本能に直接恐怖を植えつけた。
『このままでは、何も話せなくなってしまう。』
極度の恐怖に震える国王を見て、ベアティは家族の袖をつかんだ。
「はぁっ、ひっ! ふぅ……」
まるで全身を貫く寒気から解放されたかのように、国王は押し殺していた息を激しく吐き出した。
『くっ……! こ、こいつめ!』
そして、皆の前で醜態を晒してしまったことを自覚した国王は、顔を真っ赤にし、腫れぼったい目に力を込めた。
怯えた犬がますます牙を剥くように、国王は声を張り上げた。
「若輩者が随分と生意気だな。それで今、私に義務を果たせと説教するつもりか?」
「……」
「この世に、どのような臣下が主君に向かってそんな傲慢なことを言えるのか!」
そして、自らの声に酔いしれた国王は、さらに感情を高ぶらせ、まるで宣言するように叫んだ。
「余こそがこの国の国王、アストルム王国の支配者だ! この王国で、余に罪を問える者がいると思うか!」
その傲慢な宣言に、一瞬静寂が落ちた。
そしてそのとき——
「そうですね。」
まるで他人事のように、父が窮地に追い込まれる様子を劇のように見物していた第一王子が口を開いた。
国王の視線がアテルに向けられた。
親族としての情もない冷ややかな視線を、なんの躊躇もなく真っ向から受け止めたアテルは、にこりと笑いながら言った。
「一人だけなら、可能ではありませんか?」
「……何?」
瞬間、嫌な予感が国王の脳裏をよぎった。
ドンッ。
その不安が現実になるかのように、代理席の床を打ち鳴らすアスラン公女のはっきりとした声が響き渡った。
これこそ、まさにこの瞬間のために用意していたものだ。
ストゥム領地の事態が起こるとは予想していなかったが、どんな形であれ使うつもりで持ってきたものがあった。
ベアティは商人の荷物の中に手を入れ、小さな巻物を取り出した。
「皆さま。我々の王宮の歴史に興味のある方はいらっしゃいますか?」
手に伝わる古びた羊皮紙の感触を確かめながら、ベアティは宴会場の人々を見渡した。
「昔々、ずっと昔のことですが……。」
「突然、何を——」
ベアティの言葉を遮ろうとした国王は、騎士たちの鋭い視線に気圧され、言葉を飲み込んだ。
背後で国王が何かを呟いていたが、ベアティは気にも留めず、全員に聞こえるように声を張った。
「そう、それは『王』が存在するよりもはるか昔の話です。」
パラッ。
彼女の手から紐解かれた古文書が勢いよく広げられた。
「獣と獅子は契約を交わしました。」
はるかはるか昔。
聖者たちの助けを借り、初代守護者が世界を脅かす魔族を追放した後——。
辛うじて最初の滅亡の危機は乗り越えたものの、豊かだった土地はすでに荒廃し、魔族の残党が散り散りになりながら暴れ回るなど、世界は混乱に陥っていた。
そんな混乱の時代。苦しむ人々を守るために立ち上がった者たちがいた。
彼らこそ、初代守護者の後継者たち。
「大陸を貫く壮大な山脈の下、すなわち現在の我々の王国が築かれたこの地では、獣の守護者と獅子の守護者があらゆる災厄と魔族から人々を守ってきたと言われています。」
ここまでは、広く知られた初期の王国史であった。
王国がどのように建国されたのか、それは国中に伝わる伝説のような話。
混乱の大陸で苦しむ人々を救うために立ち上がった二人の英雄。
彼らこそが、初代国王と初代アスラン公爵だった。
「おや?でもここに、まだ続きがあったようですね?」
そう言いながら、ベアティは手にした羊皮紙を、皆に見えるように掲げた。
門外不出とされるこの書物をひも解いたのは、アストルム王国が建国された当時の記録だった。
「この文書を初めて発見したときは、驚きました。ですが、それも当然です。なぜなら、我が家の始祖が関わっていたのですから。」
王も貴族も、まだ存在しなかった時代。
世界を守るために手を取り合い、誓いを交わした二人の英雄が残した文書。
「これは盟約を記した、一種の契約書ですね。獣と獅子がそれぞれ何を誓ったのかが記されています。」
獣と獅子は約束を交わした。
獣は群れの最も内側で、獅子は群れの最も外側で人々を守ると。
獣の知恵を活かして内部を安定させ、獅子の力を用いて外敵を排除する。
それが、当時最も効果的な役割分担だったからである。
「感動的な文章が多いですね……特に、ここ。」
建国初期の指導者たちが、まるで義務を果たすように記した誓約書の文面をなぞるように、ベアティの手がある一節の前で止まった。
「獣は群れの生存のために知恵を使い、群れの安全のためだけに牙を剥く。この時代の獣の守護者の牙は、有名だったようですね。」
張り詰めた雰囲気を和らげるように、ベアティは軽く息をついた。
文書の最後に刻まれた言葉が、静かに響き渡る。
「蛇は、その毒牙を決して己の民に向けてはならない。ここに誓う。」
「……」
「どこかで聞いたことがあると思いませんか?」
静まり返った宴会場で、誰かが驚き混じりに声を上げた。
「戴冠式の誓約……!」
適切な瞬間に放たれたその答えに、ベアティは小さく微笑んだ。
王国に新たな王が即位する際、君主は皆、戴冠式において誓約を交わす。
「王国の民が豊かで安定した生活を送るため、知恵を尽くすことを誓う。」
「私の力は、王国の民を安全に守るためにのみ使う。」
「王国の敵は、蛇の毒を恐れることになるであろう。私の最も鋭利な武器は、決して王国の民に向けられることはない。」
王冠を授かる前に、すべての王位継承者が自身の名前と共に誓った言葉であった。
宴会場には、今回の国王の戴冠式に直接参加した者たちも何人かいた。
『王国を守護するという国王の誓約。その誓いとあの文書にはどんな関連があるのか?』
その瞬間の栄光を思い出しながら、人々はアスラン公女の次の言葉を待っていた。
「はい。この文書に記された誓約の内容は、そのまま戴冠式にも用いられました。これが初代国王陛下の意志だったのかはわかりませんが、しっかりとここに署名がなされていました。」
「初代国王陛下の直筆?」
好奇心を抑えきれない学者の一人が、署名を確認できる距離まで近づいた。
「ほう、これは……。」
「何かわかりますか?」
「もちろんだ。この独特な筆跡、そして独特な最後の文字の形! 初代陛下の筆跡の特徴が明確です!」
新たな史料の登場に興奮した学者が、鼻息を荒くしながら答えた。
学者が十分に確認し、発言できるように時間を与えた後、ベアティは再び口を開いた。
「王国史の専門学者を招き、検証を終えた正式な資料です。ご覧のとおり、初代陛下の署名があり、その隣には我がアスラン家の初代家主の署名もあります。」
初代家主の署名も、すでに内部で検証が完了していることを付け加え、ベアティは続けた。
「この契約書には、先ほどお話しした戴冠式の誓約にも記されている、蛇の義務に関する条文が含まれています。そして、王国の守護に関する騎士の義務についても詳細に書かれています。そして――」
最も重要な部分が残されていた。
ベアティは、この文書を事前に準備して持ってきた理由を話す前に、深く息を吸った。
皆の集中した視線を感じた。
宴会場の貴族たちだけでなく、壇上の吸血鬼たちまでもが注目していた。
首に王家の紋章を掲げた国王を見下ろしながら、冷たい表情で佇むリテルを一瞥したベアティは考えた。
『これで、お前は終わりよ。』
リテルがあれほど望んだ輝く吸血鬼の王冠は、もはや以前と同じではなくなるだろう。
パササッ。
いまだに国王の頭上に置かれている光り輝く王冠、その金の輝きが、ベアティの目にははっきりと映っていた。
迫りくる嵐を予感しながら、ベアティは口を開いた。
「最後の規定。それには、誓約の義務を守らなかった場合、どのように対処するかが記されていました。」
獅子と蛇、どちらかが誓約を破った場合に備えた規定。
「一方が盟約を破った場合、相手方はそれを公に糾弾し、裁きを求めることができる。」
つまり、今まさに公開裁判の場となっているということだ。
「そして、盟約違反が明白である場合、相手方は違反者を処罰する。」
「処罰!」
「そ、それは……!」
誰かが後ろで息をのんだが、国王という地位はすべての階級の頂点にあるもの。
その王に対して「処罰」という言葉が使われること自体が、かつてないほど強烈な響きを持っていた。
驚愕に満ちたどよめきが広がる。
「ぐぬっ……!」
ギリッ。
国王が歯ぎしりする音が公爵の耳に届いた。
鬼のように険しい顔で立つ国王の目が、鋭くベアティを睨みつけていた。
彼がまた嘘で場を混乱させる前に、公爵は先に口を開いた。
「国王、あなたは確かに戴冠式で誓いました。この国の人々を守ると。」
「そうか?」
王冠を手にした後、誰にもこのように指摘されたことのなかった国王は、困惑した表情を浮かべた。
「私もまた、それに忠誠を誓いました。戴冠式の誓約を立てた国王を、アスランの公爵として支持し、王国を守護すると。」
剣を握った使者が、混乱を隠せない表情で口を開こうとしたとき、吸血鬼は冷静に応じた。
「その誓約を破ったのなら、アスランももはや彼に忠誠を尽くす理由はありません。」
「!」
明確な反逆。
目前に押し寄せた過去の訴えに、国王の思考は混乱し始めた。
絶望的な表情を見せまいとしながらも、国王は額に手を当て、顎を引いた。
そんな国王の頭上に、最初から最後までまったく変わらない、冷静な声が響いた。
「もちろん、今回の証人だけでなく、他の証拠を提示したいという考えもあるでしょう。まだすべての疑惑が解明されたわけではありませんから。」
いくらでも新たな証拠を出してみろ。すべて暴いてみせる——。
そう考えながら、ベアティは静かに目を細めた。
『国王と新星帝国の取引条件もすべて明るみに出ることになるわ。呼ぶべき証人は、あのストゥム領地の管理者だけではない。』
ふふん、と鼻で笑いながら、ベアティは全員に聞こえるようにはっきりと声を張った。
「よって、アスラン家はアストルム家の家主として、王国の国王に対し、初代から続く盟約に基づき、公開裁判を要求します。」








