こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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3話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ③
揺れに揺れる馬車の中で、小さなリスの姿勢のままベアティは平静な顔つきで手のひらを見つめていた。
首都を初めて出るときには、まだ消えない裏切られた気持ちに涙を流していたが、 「信じた私が悪かったのよ。」
じっくり考えてみると、「友達」と呼んで根拠のない好意を期待したことが問題の原因だったように思えた。
最初にリテルが「初めて」と言いながら友達になりたいと近づいてきたときから、警戒すべきだった。
「君が取るに足らないリスの獣人であろうと関係ない。僕は君を友達だと思っているから。」
周りの誰もそんなことを言ってくれたことがなかった。
だから嬉しかった。
だが、今になって振り返ってみると、 「ありふれた詐欺師の手口じゃないか!」
他人と違う、言葉もおかしな甘い言葉をいつも浴びせてくる理由は何だったのか。
「友情だとか、君は特別だとか、そんな甘い言葉はすべて毒を隠そうとする偽りなんだ。」
再び身震いしながらベアティは固く心に誓った。
「根拠のない好意を口にしながら近づいてくる人間は無条件で警戒する!」
これからは絶対に人を信じない!
ベアティは込み上げる騒々しい感情を抑え込みながら、いつでも慰めになってくれる大好きな本の一節を思い出した。
「《大商団主回顧録》中『用人術』とは……ただ一人の力で大規模な商団を成し遂げた伝説的な大商団主である筆者自身が語る。『愚かな人間たちに期待を寄せることは、同じく愚かな人間であることを意味する。』」
そうか!
小さなリスが顎を大きくかみしめた。
胸に深く刻まれた教訓を噛みしめながら、彼女は気づいた。
自分にはまだ、人間関係への幻想が残っていたのだと!
だから、友達だから助けてくれるというおかしな言葉を、あんなに簡単に信じてしまったのだ。
見返りもなく誰かを助けるなんて。
「そんなの、小説の中でしか出てこないじゃない!」
『小説』
確かに全て本で読んだ内容だが、未来の商団加入に備えて熱心に図書館のあらゆる本を読んできたベアティには理解できた。
商業書、地理書、歴史書といった実際の記録とは違い、小説は作り物の話だ。
そこに登場する、互いを思いやる家族。
心温まる思いを分かち合う友人。
お互いだけを大事にする恋人。
友情、愛といったキラキラした話は、まるでおとぎ話の中の妖精のようだった。
つまり、実在しない幻想。
いくら作られた話が甘く、幻想的であったとしても、現実とは区別すべきだ。
『小説と現実は違うのよ。』
何もかも「見返りもなく助けてくれる友達」なんて話に騙されて詐欺に遭ったのではないか。
少し腕を組み、少しばかりむっつりした様子で顎を擦りながら、ベアティは深く悟った。
全ての好意は幻想だ!
世の中の全ては対価の対価、対価の取引!
交換比率にだまされないように気をつけよう!
「よし!」
交換比率について悩んでいたベアティは再び思考を整理し、腰をピンと伸ばした。
そして両手を頭に持っていき……乾いた腕が届かない頬に手を当て、心の中でノートを広げた。
「感謝リストから名前を消して、返すべきリスト……リテレ・ドゥクス・アストルム。」
既に書き留めてあった名前の上には線を何本も引き、他のリストの上にも忘れないようにはっきりと名前を書いた。
彼の裏切りで悲しんだ記憶はもう忘れた。
結論を出し、消し去るべきことは消し去るだけ。
それで終わり、それが全てだ。
「私が一発食らったのだから、私も返してやる。」
それが正当な計算だ。
ベアティの愛読書『大商団主回顧録』の一節がまたも彼女を励ました。
それによると、利益の交換において重要なのは、均衡のとれた負担感を保つことだ。
もちろん、利益には物だけでなく、人間関係の恩恵も含まれる。
「リテル。第一王子を非常に意識していたよね……。」
普段は何でも余裕そうに観察する落ち着いた口調で話していた彼が、この異腹兄弟である第一王子について言及する時だけは刺々しくなった。
「第一王子が生きていたなら、その弱点を突いてしまえばいいのに。」
ちくしょう。
落ち着かずに尻尾を揺らしながら下に向かおうとしていたベアティの尻尾が、何かを思い出したように再び上へ跳ね上がった。
「いやいや! 私が8歳だから、まだ第一王子も生きているはずじゃない?」
しかしその後、すぐに続く思考に尻尾は再び下へ垂れていった。
「第一王子と会う方法がないじゃない? 幼い頃から……。」
戦場や外国を転々としているというのに、どうやって探し出すんだ……?
そうだ。
そもそも私が行ける場所もないのに、第一王子を探すなんて無理。
気まぐれに尻尾を上げ下げしていたベアティの前に、突然、ぽとりと大きな種が落ちてきた。
「おっ! この種、いい感じ!」
反射的にその種を手に取ったベアティは、ふくろうの巣にしっかり食糧を保存した後、それをサッと磨いて綺麗にした。
ふくろうの巣が満たされると、少しは気分が落ち着いたようだった。
ベアティは胸に手を当てて深呼吸をし、徐々に冷静さを取り戻していった。
「よし。しっかり考えよう。」
慎重に、これからどうするか計画を立て始めた。
「ほら、ここにもう一つあるよ。」
ゆっくりと、少しの間だけおやつを楽しむように。
いつの間にかぼんやりしていたベアティは、口の中にヘバラギの種をしまい込んでいたことに気づき、ハッとして正気を取り戻した。
ぷるぷる。
「ああ、逃げ出しちゃった。」
再び魅力的なヘバラギの種を見せてくる乗客の手を避けながら、ベアティは馬車の上に駆け上がった。
「ふう。」
ベアティは口の中で守っていた種をそっと取り出し、それを持ち直して腰を落ち着けた。
『気をつけなきゃ。若い体だからこんなにも本能に振り回されるんだ。』
たとえ今はただの動物のふりをしていても、彼女は確固たるスイン(霊物)。
『スインらしい気高さを守らないと。』
ベアティは白い毛並みをきれいに整えながら思った。
噛まれるのが嫌で、必死に歯を磨いた。
スイン化と呼ばれる祝福を受けるのは、大陸でもごく少数の限られた血統だけだ。
アストルーム王国では、アスラン家と王室のみがスインの祝福を受けた体を持っていた。
それ自体が何にも比べることができない、非常に貴重な血の証拠。
自身の体を犠牲にして混沌を鎮め、大陸を救った偉大な古代スインたちの業績を思うと、自分にもその血が受け継がれているという考えに、ベアティは少し胸が熱くなった。
だからこそ、その体にふさわしい身の振り方をしたいと彼女は考えた。
・
・
・
「ダラムジュ?それもスインなの?」
「ダラムジュのスインだって?何の能力があるんだろう。どんぐりでも拾ってくるのか?」
「そんなものを敬わなきゃならないなんて、笑っちゃうね。」
無意識に響いた音に、ほんの少し肩が動いた。
「いや、いや、今それが重要じゃないでしょ。」
ごちゃごちゃと絡みつく暗い考えを振り払い、ベアティは「ふーっ」と鼻息を荒げた。
一部は愚痴のようでもあり、自分を奮い立たせるものでもあった
「さあ、考えよう。これからどうしよう?」
その場の衝動で事を起こしたものの、これからのことを考えないわけにはいかなかった。
「また罰を受けたくないなら、今が正念場。」
帰還前、リテルとの最初の対面後から邸宅の警備はさらに厳重になっていた。
伯母は「信仰の勉強」という名目で彼女を抱え込み、ダラムジュの姿としても外へ出られないよう、邸宅に配備された警備陣を敷いていた。
もし戻って来たのがリテテとの出会いの後であれば、単純にスイン化を目的とする名目では、容易に邸宅を脱出することはできなかっただろう。
だが……。
「このままここにいるのは危険すぎる。」
幼いスインにとって外をうろつくのはあまりにも危険な場所だった。
幼少期に何も知らずに外に出て、誘拐されかけた苦い経験が鮮明に蘇った。
ブルブル。
その時のことを思い出すだけで、今でも体が震えた。
ベアティは今日だけで十回目、少し強迫的ともいえる態度でダラムジュの姿を崩さずに自身の体を確認しながら考えた。
「もしシングムを手に入れられれば、血眼になって追い求める人は多いからね。」
歴史上、わずか一度だけ競売に出品されたシングム。
かつて海で偶然発見されたという古代スインのシングムは、城の三つの財宝に匹敵する価格で取引されたという。
シングムを売って人生を逆転させた成功者の話は、誰もが知るところだ。
「これが他の人の目に留まったら……。」
ダラムジュの姿で、外見からは見えない小さなシングムをそっと握りしめ、ベアティは軽く震えた。
「早く大人になれればいいのに。せっかく成人式を迎えたのに子供に戻るなんて。」
彼女が脱出計画を成人式以降に立てた理由がここにあった。
まだ幼いスインは、興奮すると耳や尾が飛び出してしまい、完全に成長するまでは体とともに成長するシングムを分離することができなかった。
完全に成長して成人になることで、スインの特徴を自由自在に操れるようになるのだ。
「その時まで安全にいられる場所はないのか?」
どうしても抜け出したかった屋敷を脱出したものの、どこに行けばよいのかわからず途方に暮れた。
持っているお金は一文無しで、どうすることもできなかった。
子どもの姿に戻ってしまったため、食べるための仕事を探すのも困難を極め、ただ飢え死にしないようにするのが精一杯だった。
この身体で働こうものなら、すぐにどこかへ売られてしまうのがオチで、そうならなければ幸運なほうだ。
「……本当に森に入って生き延びるしかないのか。」
追っ手を避けて庭の木に身を隠しながら、そんな考えが頭をよぎった。
でも毒蛇や狼のような猛獣に出くわしたらどうする?
「今の年齢では、人間の姿でも捕まって食べられそうだ。」
ぐぅぅ。
「どこに、どこに行けば……。」
不安な気持ちで馬車の車体上を飛び降りてきた小さな木片を指先でいじりながら、ベアティは思案していた。
その時。
「それ、聞いた? 今回もまた獅子の公開処刑で、あのふてぶてしい帝国の奴らの鼻っ柱をへし折るらしいぞ。」
「それならここに書いてある新聞を見れば分かるはずだよ。」
「お、おい!気を付けろ。そんなに窓際に近づくなって!」
「わっ!私の新聞!」
パララッ!
突然風に吹かれて飛んできた大きな紙が彼女にぶつかった。
「プュ、プュッ!」
驚いて短い腕を振り回したベアティは、手に掴んだ紙の文字を見て目を丸くした。
「プュウウ……プュッ?」
【最速の王国ニュース、アストルム日報 発行日:大暦718年□月□日】
紙の端に書かれた日付にぎゅっと目を凝らし、ベアティは驚きに言葉を失った。
大暦718年。
しかし、後に誰も予想しなかった後悔の始まりとなる出来事。
ただ勝利を重ねていた黄金獅子公の「初めての敗北」として記録されるであろうことが、間もなく起こる。
「この出来事を変えることができたら……」
今の人々には想像もできないだろうが、十年後にはすでに解決策が提示されていた問題。
その答えをベアティは知っていた。
キラキラと輝くアイデアを思いついたベアティの瞳が輝いた。
「これはチャンスだ!」
現在、8歳の体を持つ自分が何をできるのかと不安に思ったが、振り返ってみると今の自分には非常に大きな強みがあった。
ここまで来て確認した限りでは、現在は大暦歴718年。彼女が最後に知っていた日付よりもまるまる10年前だった。
つまり――
「これから10年間の未来の知識を利用できるってことだ!」
ベアティは跳ね上がり、両手を上げた。
「その『情報』を公爵家に教えてあげるんだ。兵士たちが不足していると噂の場所なんだから、問題を解決してあげる代わりに保護を要求すればいい。」
忙しく頭を回転させながら、ベアティは記事と一緒に載っている絵に目をやった。
戦闘の様子を想像した挿絵と、その隣には総司令官の肖像画が描かれている。
「黄金獅子公、レオンハルト・エルデ・アスラン。」
絵を見つめていたベアティは、心の中でそっと彼を呼んでみた。
「ご主人様。」
公爵家の直系の娘でありながら、一度も会ったことのない家門の主。
「ああ……。」
思わず口を開けるのもためらわれる。
「父上」と呼ぶのも、これまで一度も経験したことのないその呼称――。
獅子の家門で生まれた反面教師のような存在で、ダラムジとしての自分の正体を見るのが嫌で、わざわざ首都に追いやった張本人――。
『自身の公爵性に誇りを持たないことが恥ずかしいのか。』
黄金獅子の家門の異端者。
義母はアスラン家で生まれた者ですらなく、小規模な異種族として生まれ、最終的には外界に放逐された存在だと言われている。
おそらく自分自身を嫌悪していた義母だが、それが嘘とは思えなかった。
『私が大きくなるまで、一度も会いに来なかったことを考えれば、それが真実だろう。』
ベアティの記憶の中で、彼女は成長する間に父親と呼べる人物を一度も見たことがなかった。
彼女は新聞の肖像画を通じて家族の顔を覚えていた。
『手紙に返事が来たこともない……。』
戦争中もそばを離れることなく息子を可愛がった父親と違い、ベアティには一通の手紙すら送ったことのない父親だった。
どれだけ多くの手紙を送っても、宛先が間違っているのではないかと心配して、または人を変えてみても、返信は一切なかった。
成人式の前に一度でも公爵家を訪ねても良いかを尋ねる手紙が、宛先不明で戻ってきたのが唯一の反応だった。
『……焼き捨てる価値すらなかったのね。』
一瞬むっとしたベアティは、わずかに震えた肩を堂々と上げた。
ピュー!
どうしても堂々としていられなかったダララッジュの鼻から小さな音が漏れ、自信を取り戻したようにベアティはしっかりと話した。
「ズッズッズッ、ズズズズズズズ、ズッズッ?」
『この情報を持って行けば、誰が何をしても私を無視することなんてできないでしょう?』
鼻をつく鋭いダララッジュの鳴き声に、一瞬自信を失いそうになったが、ベアティは再び毅然とした態度を取った。
しっかりと小さな拳を握りしめながら、ベアティは考えた。
『どれだけ私を嫌いでも、拒否できない取引を提案するしかない。』
そもそも8歳の体で行ける場所は限られている。
『公爵邸に行き、その方法を先に提案し、大邸宅でしばらく滞在させてもらうように頼むしかない。』
一人で外に出て働ける年齢になるまでは滞在できる場所さえあれば十分だ。
『成人するまではね。』
成人の儀を済ませた後なら、今回は夢見ていたような上層階に入ることができるはず。
手に入れた未来の知識を活用すれば、どこでも食べて生きていけるだろう。
『いや、もしかしたら上層階を設立することだってできるかもしれない?』
未来の知識の価値を試算しながら、ベアティはさらに大きな夢を描いた。
『いいわ。』
この場で切り札として出すのは『その情報』。」
「相手から引き出すべき条件は、成人するまでの滞在場所と、それ以上の事業計画への助力。
『ジュジュッジュッ、ジュジュジュッ!』
『この取引、必ず成功させるわ!』
思っていたのは、ただそれだけだった。
この時点までは。
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