こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

8話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑧
一方、公爵の応接室では。
「……」
「……」
ベアティは部屋の中で自分が茫然としたまま兄と二人きりになったことに気づいた。
兄の背後に立っている騎士は見覚えのある顔だったが、久しぶりに再会した兄妹の会話に参加する意志はまったくなさそうに見えた。
『あ、気まずい……!』
部屋の中には、まるで気まずさが固まったような重い沈黙が流れた。
『ヨハンナさん、いつ戻ってくるの?』
気まずさを隠すこともなく、一部屋に少年の主人と幼い少女だけを残して出て行った執事長を、心の中で急かしながら待つベアティ。
彼女はじっと扉を見つめ、少しでも早く誰かが戻ってくることを願った。
「ふん。」
その小さな少女の動きを、少年はじっと観察していた。
彼の黒髪とは異なり、ふわふわとした明るい金色の髪は、つい触れてみたくなるような輝きを放っていた。
さわさわ。
何かを気にしているのか、くるくると動く黒い瞳。
興味をそそられるように、じっとしていられず動き回るその視線。
そして、何かを頬張った後のような小さく赤い唇は、きゅっと固く閉じられていた。
そして、このすべての特徴が、あどけない小さな顔にぎゅっと詰め込まれていた。
「小さいな。」
少年は新鮮な目線で再びベアティを見た。
さっきから何かが気に食わないのか、彼女は鼻をひくひくと動かしている。
「ふん。」
その様子を横目で見ながら、少年はそっぽを向いてため息をついた。
黒い鼻をひくひくさせている姿が、思わず連想された。
『本当に、俺の尻尾よりも小さいんじゃないか。』
さっきの発言がただの冗談ではないような気がしてきた。
『そういえば、城に初めて到着したとき、リスの姿だったと言ってたな。』
自分がその場にいなかったが、皆が語る幼い妹のさらに小さな姿を聞き、驚きの声をあげたという話を思い出した。
「ふん。」
どこか引っかかるものを感じた。
「……。」
少し考え込んだ少年は、大きく座っていた椅子から立ち上がり、ベアティに近づくと、口を開いた。
「おい。」
ベアティは少し緊張した様子で、目の前に立つ兄を見上げた。
「リスになってみろ。」
「……?」
どういうこと?
突然の少年の要求に、驚いた表情を浮かべていたベアティは、次第に警戒心を含んだ目つきになった。
『なぜリスの姿に変われと言うの?もしかしていじめるつもり?』
小さなリスを片手に持ちながら、ぞくぞくするような光景が彼女の頭に浮かんだ。
しかし、その想像とは異なり、少年はそんな考えをしている様子はまったくなかった。
『また動く。あの小さな頭で何を考えてるんだ?』
ただただ興味が尽きないだけのようだ。
『ずっと私を見てる。』
警戒心を露にした視線を投げかけながらも、この小さな生き物は相手の顔をじっと見つめている。
少年は、こういう顔つき……つまり一般的に「かわいい」とされる基準に入る生物が、こういう形状をしていることを理解していたが間近で見たのは初めてだ。
それは、主に戦場で育った少年の環境によるものでもあるが、
『逃げもしないとは。』
獅子の主人である少年の特質によるものでもあった。
まだ幼かった頃の少年ですら、自然と背負う獅子の威圧感に、小動物たちは皆逃げ去るのが常だった。
『気味悪いものがいないのは良いことだが。』
夜間の状況でも虫が寄ってこないのはありがたい点ではあったが、
『ウサギやリスとかはどうなんだ?』
森に入ればウサギやリスなど、小動物たちは皆逃げていった。
それは特に変わったことではなかった。
『命を脅かすわけでもないのに、なぜ逃げるんだろう。』
おそらくは山中の小動物たちは、彼を自然の捕食者と認識しているのだろうが、それを夕食にしようと考えたわけでもないのだ。
ただウサギの耳がぴくぴく動く様子が面白くて、捕まえてみたかっただけだった。
「?」
ベアティはじっと見ていた少年の目が微妙に細められるのを見て、警戒心を抱いた表情になった。
過剰に警戒しすぎた?
少し緊張していたベアティはしばらく考え込んだ。
まだ完全に警戒心が解けたわけではないが、目の前の兄はただ「自分を嫌っている人」と思うには引っかかる何かがあった。
彼女が送ったすべての手紙を無視するか、破り捨てた父親とは違い、兄は帰還する前には全く交流がなかった。
『……最初から壁を作る必要なんてないでしょ?』
いや、むしろ仲良くしようと努力すべきかもしれない。
天真爛漫な自分とは異なり、獅子の主人として優れた能力を持つ兄は家門の誇りとして愛されている立場なのだから。
成人式まで公爵城に滞在する予定のベアティにとって、できるだけうまくやっていくべき相手でもあった。
『そうね。』
考えをまとめたベアティが慣れた感覚を引き上げた。
ぽん!
リボンとフリルの装飾がひらひらと舞い上がり、ベアティのドレスがソファの上に放り出された。
ぶすっ。
そして服の中から、小さなもぞもぞした物体が一瞬姿を見せた。
ぽん。
袖からちょこっと、小さなリスが顔を出した。
「!」
少年の目が大きく見開かれた。
リスは、彼が初めて間近で見た、小さな小さな生命体で、本当に本当に小さかった。
よく磨かれた玉のような黒い目はきらきらと輝いていた。
光沢のある毛並みは明るい髪色と同じで、短い尻尾には淡い縞模様がくっきりと入っていた。
丸々とした白い小動物の頬と、リスのような小さなほお袋は白い毛で覆われていた。
ぴくぴく動くリスの耳は、まだ警戒心を解かず、ピンと立ったままだった。
「私に似てる。」
『えっ?』
「え?」
後ろで控えていた騎士が、思わず声を漏らし、信じられないというように問い返した。
「いったいあのかわいいリスが、お嬢様やドレン様と似ているなんて、どういうことですか……?」
半ばあきれたような騎士の視線がベアティへと向けられたが、少年はベアティにじっと視線を定めて一言だけ言った。
「見て。」
ピクッ。
ベアティも同じように好奇心から耳を傾けた。
「耳が丸いでしょ。」
「?」
「ええ?」
当惑する人間とリスの反応にも動じず、
そっと。
部分的に半変化してライオンの耳を露わにしたカールが、自分とベアティを交互に指し示しながら言った。
「似てるでしょ?」
鋭いライオンの耳がぴくぴくと動く様子は、なんとも呆れたものだった。
「いや、ちょっと。えっと、そんなこと言ったら私の耳だってそっくりだし。」
「変な耳はどこにでも合うんだよ。」
「変……!ドレン様、それはひどいのではありませんか?」
完全に憤慨して怒鳴り散らす騎士とは異なり・・。
「……」
ベアティは知らず知らずのうちに口元をきゅっと閉じていた。
リスの耳とライオンの耳。
片方はふっくらしていて、もう片方は広い掌のよう。
『全然違うけど……』
明らかに違う二つの耳を見比べて、共通点は丸いという一点のみだと主張する叔父を見ていると、
『……それでも少し似てる?』
なんとなく体が温かくなる気がした。
くすくす。
笑いを押し殺す口元に、
「チュッ」
リスの小さな口から思わず笑い声がもれた。
「はっ!」
ササッ。
リスの鳴き声を出した途端、慌てたベアティは小さな手で顔を覆った。
だが、少年はすでに優れた主人の聴覚でしっかりと聞き取っていた。
「……」
叔父の鋭い視線のせいで、ベアティは汗がじわじわと滲み出た。
「それが君の鳴き声か?」
キラキラと輝く顔に向けられる視線が暑苦しく感じられたが、肘掛けに身を縮めたベアティは口を隠した手を離そうとはしなかった。
「ふん。」
恥ずかしがる妹を見て、少年はどうしたらリスの顔をもっと見ることができるのか不思議に思った。
そんな時、彼の目にティーテーブルの上にあった物が入ってきた。
「はい。」
「えっ?」
近くから聞こえた音に反応した表情で、リスが手にしたアーモンドを眺める大きな手が見えた。
正確にアーモンドを持ち上げた手。
「これをあげる。」
お菓子の材料でテーブルの上にあったアーモンドを手の上に置き、少年は誘惑するような視線を投げかけた。
「……。」
ベアティは一瞬戸惑った。
『なんて卑怯な方法。』
幼児でもないし、そんな小さな食べ物に簡単に引っかかるだろうか。
そう思いつつも。
とん。
慎重に自分の目の前に置かれた少年の手を見る。
『……誠意があるみたい。人の誠意を無視してはいけないから、受け取るべきよね。』
少し考えた後、ベアティは最終的にそわそわと動き始め彼の手の上に乗った。
「!」
自分の手のひらの上に感じる感触に、少年の目が大きく開かれた。
『……これが乗っているのか?』
軽すぎて信じられないほどの感触だった。
少年が驚きに呆然としている間に、ぷるぷると震える手のひらで平衡を保ちながら、ベアティが目標物の前に到着した。
「はっ!」
農園のアーモンドを冷たいボウルに入れ、周囲をくるくると見回した。
『ふむ、あそこがいいかな。』
曲がった木の枝のような細い指でポイントを指しながら走っていった。
いつもの癖で耳の横に身を寄せ、ベアティは少年の指をつかむと立ち上がり、ふかふかの尻尾をクッション代わりに腰を下ろした。
「……!」
まるで寄りかかるように自分の指先に触れた小さな温もりに、コンと音が鳴ったような感覚が走り、理解できない衝撃が少年の胸を揺るがした。
突然の衝撃に驚いた少年の口が小さく開いた。
『いいね。ちょうどぴったりだ。』
少年の指先を足場にして座り込んだベアティは、カリカリとアーモンドを齧りながら、頬に装着するように取り出したアーモンドをすっぽりつかんだ。
『種はいつも美味しい。』
そんな悠々とした彼女の様子とは裏腹に、少年の心の中では波が押し寄せるような動揺が渦巻いていた。
『これは一体……?』
これまで感じたことのない鈍く強烈な衝撃だった。
すぐ胸に走った感覚が何なのかもわからず、少年は突然早鐘のように鳴り出した心臓の鼓動に動揺しながら戸惑った。
しかし、その疑問を解き明かす間もなく。
ドサン!
部屋の静寂が破られた。
「ベアティお嬢様。」
ドアを開けて入ってきたのは、大公を呼びに行くと言って出て行った侍女だった。
伝える言葉を口にする侍女の表情はどこか曇っていた。
「ご主人様がお呼びです。」
『ご主人様……えっ、お父様のことを言っているの?』
びっくりして思わず内心で驚くベアティ。
お父様と聞いて、咄嗟に頭をよぎった考えが言葉になったのも気づかないまま。
『お父様は今お城にいないって言ってたのに?それに私を呼ぶって?まさか……直々に叱られるつもりなの?』
混乱しているベアティが慌てて口を開いた。
「えっ?えっ?」
『私をなんで?』
「まあ。」
侍女は「えっ」と口を忙しそうに動かしながら、少し怯えた様子で、少年の手の上に何かが載っているのを見て驚いた顔をした。
「ふふ。仲良くしていらっしゃったのですね。ご兄妹の楽しい時間を邪魔してしまい申し訳ありませんが……」
侍女はにこやかに笑いながら、小動物の姿をしたベアティの元に近づいてきた。
「今はご主人様のところに行かなければなりませんからね。お嬢様、お父様とお話をするなら、人間の姿になっていただかないといけませんよね?」
そう言って、再び服を着せるために手を差し伸べた。
ポフッ。
ベアティは特に抵抗もせず、その手を取った。









