こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

96話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 奇妙な夢③
「何だって?!」
カン!
激怒して壁をドンドンと叩いた国王は、怒りを抑えられずに拳で机を叩きつけた。
その荒々しい音に、前で顎を引いていた補佐官の肩がビクリと震えた。
「これは一体どういうことだ!あちこちで何の噂が広まっているんだ! 早く報告しろ!」
「へ、陛下……。」
「下賤な者どもめが!この王国の主を侮辱するとは何事だ! まったく、皆そろいもそろって裏切り者というわけか!」
ガシャーン!
怒りにまかせてインク瓶を掴み、壁に投げつけた国王は、肩を震わせながら叫んだ。
「どこの奴が厚かましくも王宮の内情を暴こうとしているというのだ!」
静まり返った部屋の中で、国王の荒い息遣いだけが響き渡る。
ドサッ。
すべての怒りを吐き出した国王は、力が抜けたように椅子にもたれかかった。
国王が再び口を開いた。
「……それで。」
「は、はい?」
「それで!余が知るべきことは他にあるのか?」
パラッ。
机の上にあった書類を投げつけた国王は、散らばった書類の端を指で乱暴に弾きながら怒鳴った。
「暇な貴族どもの社交界から、町の路地裏のならず者どもに至るまで、一体どこの無礼者が口を滑らせたのか。王宮が……。『光の主』などという馬鹿げた噂のほかに、余が今すぐ知るべきことがあるのかと聞いているのだ!」
ガタッ。
「光の主」という言葉を発する前に、歯ぎしりが聞こえるほど強く噛みしめた国王は、今にも喉を唸らせんばかりに、怯えながら固まっている補佐官を睨みつけ、声を張り上げた。
「い、いえ、ございません!」
「では、下がれ。」
「あの……それでは、この件について——」
「愚か者め! すぐに出ていって、くだらない噂を流したやつを捕らえろ!そして、どんな手を使ってでも今広まっている根も葉もない噂を消し去るのだ!」
「は、はい!」
再び爆発した怒りに、補佐官は慌てて顎を引きながら素早く部屋を出て行った。
「ちっ。まったく、くだらない陰謀を企む闇の連中め……。」
国王は考えるだけでも怒りが込み上げるのか、再び荒い息を吐きながら額を撫でた。
そのとき、静かに彼の背後へと近づいた第二王妃が、国王の片方の肩をそっと撫でながら、まるで慰めるような口調で言った。
「陛下……。」
「はぁ……。」
「おいたわしい方。なぜあの者たちは、これほどまでに陛下を煩わせるのでしょうか。」
礼儀も知らぬ愚か者たちめ、と代わりに憤慨する第二王妃の言葉を聞きながら、国王は黙って目を閉じた。
『噂だ。あいつらのくだらない噂だ!』
くだらない者どもは、根も葉もない話を広めなければ、舌に棘でも生えるというのか。
何年もの間、彼はこうした荒唐無稽な噂に悩まされ続けてきた。
ここしばらく王宮では何の問題も起きていなかったというのに、王宮直轄の命令で処刑された者が出たと聞けば、またすぐに騒ぎ立てる。
取るに足らない庶民が死んだところで、自分に何の罪があるというのか。
誰が殺され、誰が死んだと言うのだ!
まともに財産を築いて生きていれば、そんなことには巻き込まれなかったはずだ。
しかし、くだらない連中は、どうしても権力者にだけ文句をつけたがる。
これまでも、こうした噂話にはうんざりしていたが、今回の新たなデマは、まるで流行病のように広がっていた。
『今度は王宮の天井が崩れたとか、しまいには、余があの哀れな公爵の男を嫉妬で陥れたなどと言い出す始末か!』
「くだらない噂話め……。」
国王は悔しさをにじませながら歯を食いしばった。
もちろん、実際にアスラン側へ送らなければならない莫大な賠償金をいくらか滞納したのは事実だが、それにはすべて事情があったのだ。
借金取りどもが妬んでいるだけだ。
こんな根も葉もない話を王宮へ持ち込む者など、まったくもって反逆者も同然だと、国王は独りよがりに考えていた。
「私が今まで甘やかしすぎたな。」
「陛下……。」
「こうしておかねば、あの者どもが私の寛大さをいいことに、ますますつけ上がるではないか!」
ブルブル……。
国王は椅子の肘掛けに置いた拳を震わせながら叫んだ。
その拳を包み込むように、第二王妃がそっと手を重ねた。
その手のぬくもりを感じながら、国王は自分に言い聞かせるように叫んだ。
「まったく、鞭を打たなければ言葉の意味すら理解できない愚か者どもめ!」
「まあ。陛下、それはどういう意味で……?」
「そうだ。近衛隊を派遣する。」
「街の掃除ですか?」
まるで待ち望んでいた言葉を聞いたかのように、第二王妃の目が輝いた。
国王の近衛隊。
かつて国王に忠誠を誓う精鋭兵として名を馳せた部隊だったが、ここ数年で完全に変質してしまった。
正直な意見を述べる者は、真っ先に粛清され、残ったのは名もない傭兵や荒くれ者ばかり。
それは、国王が彼らに十分な給与を支払う代わりに、民間の財産を奪う権利を認めたからだった。
以来、近衛隊は「王命」の名のもとに、庶民の財産を略奪し、賄賂を要求し、国内での暴力行為をためらうことはなかった。
そのため、王の命令を忠実に遂行するという名目のもと、悪名高き存在となっている。
そんな連中に「王宮を脅かす噂を鎮圧する」という名目の武器を与えれば、遠くの街に噂を流したとしても、どんな騒ぎが起こるのかは明らかだった。
「王室の権威を示してやらねばならんな。」
国王は、民の口を封じることなどまったく気にせず、むしろ彼らの口を完全に閉じさせるために、より冷酷な命令を下すことを考えながら、ゆっくりと口角を上げた。
しかし、その時だった。
静寂に包まれているはずの外から、慌ただしい足音が響いた。
「へ、陛下!」
息を切らしながら駆け込んできた補佐官を見て、国王は眉をひそめた。
『品のないことよ。』
何があったのか、顔が青ざめた補佐官は、国王の冷淡な視線にも気づかないほど、ひどく動揺しているようだった。
荒い息を整えながら、ようやく補佐官が慌てた様子で口を開いた。
「た、大変です!外で噂が広まっています!」
「はぁ……。」
取り乱した補佐官が、街中で噂がさらに広がっているのを目の当たりにし、動揺して報告してきたのだと考えた国王は、彼を冷ややかに見つめながら、苛立たしげに言った。
「そうか。ならば、その噂を鎮圧しろ。すぐに、余が下した命を実行せずに——」
「陛下が敵国と手を組んだという噂が広まっています!」
「何だと?!」
バッ!
思わず立ち上がった国王の顔が、瞬時に固くこわばった。
「余が敵国と手を組んだだと?!いや、それは——」
『どうしてそれを知っている?』
無意識のうちに、事実を否定する言葉を口にした国王だったが、すでに動揺していたため、ハッとして口をつぐみ、激しく唇を噛みしめながら、自分の舌を噛んだ。
口の中に広がる血の味を苦々しく飲み込みながら、国王は疼く舌を押さえつつ、怒鳴り声を上げた。
「誰だ! そんな馬鹿げたデマを広めたのは!」
「すぐに近衛兵を出動させ、騒ぎを起こした者どもを捕らえろ!」と叫んだ国王の顔は、青ざめていた。
『まずい! 噂はどこまで広まってしまったんだ?』
どこで、どれほどの数が耳にしたのか。
必死に頭の中で計算を巡らせる国王の瞳が、不安げに揺れた。
・
・
・
そして、その時。
宮廷中に噂を巻き起こした張本人は、何食わぬ顔でペンを置いた。
「ふふっ。」
コトン。
今回も完璧に仕上がったバインの新作。
何年も愛用してきたペンを満足げに撫でながら、ベアティは口を開いた。
「いい感じ。」
指先で軽くデスクを叩きながら、思考を整理するようにベアティは手にしていたコートの襟を握りしめながら、目の前の人物たちを見つめた。
「噂はしっかり聞いた?」
「はい……!」
涙ぐんだ声で答えたのは、若い夫婦だった。
二人は感極まった様子で目を潤ませ、口を開いた。
「本当にありがとうございます!伯母様を紹介していただいただけでも感謝しきれないのに、こんなに奇妙な話まで信じてくださるなんて……。」
「あの場面を見てから、初めて安心して眠れるようになった気がします。」
繰り返し感謝の言葉を述べる彼らを見ながら、ベアティは、二人と初めて出会ったときのことを思い出していた。









