こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
136話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 母と娘
祖父が先に出て行き、レリアはようやく泣きやみ、遅れて執務室を後にした。
とぼとぼと部屋へ向かったが、階段を上るほどに城内がざわついているのを感じた。
戸惑ってきょろきょろしていると、遠くからロミオが彼女を見つけて駆け寄ってきた。
「レリア、お母様が目を覚ましたよ!」
「……え?」
ロミオが彼女の手をつかみ、勢いよく引っ張った。
レリアは部屋の前で立ち尽くした。
ロミオが先に扉を開け、彼女を中へ招き入れた。
中にはすでに到着していた家族たちが集まっていた。
レリアはゆっくりと歩を進めた。
ベッドのそばには疲れた表情のグリピスが座っていた。
そして母は――
「……」
意味が分からないという表情で戸惑いながら、目だけをぱちぱちと瞬かせていた。
「エリザベス… エリザベス……」
祖母は母の名前を何度も呼びながら、そばで母の手を握ってすすり泣いた。
祖父や叔父たち、おばもまた、涙を流して泣いていた。
レリアはそっとベッドに近づいていった。
遅れてレリアに気づいた母の表情が明るくなった。
唯一見覚えのある顔を見つけて、喜んだようだ。
「レリア様!これは一体……私が、私がなぜここにいるんですか?私は確かに……」
彼女の表情が曇った。
最後の記憶が蘇ったようだ。
レリアは泣き出しそうだったが、ぐっとこらえて家族たちを見つめた。
彼女の意図を察したのか、祖父は家族たちを連れて部屋を出ていった。
「………」
ようやく目を覚ました母と対面したが……家族たちを外へ出したことに対する罪悪感が込み上げたが、どうしようもなかった。
母がなぜ目覚めたのか、何が起こったのかをレリアが語っていなかったからだ。
家族全員が外へ出て、最後にグリピスが彼女に近づいた。
「ありがとう、グリピス。」
「…たいしたことではありません。」
グリピスは疲れた表情で彼女の髪を耳の後ろにそっとかけてやった。
そして短く額にキスをして出て行った。
彼が出ていくと、部屋にはレリアと彼女だけが残された。
「レリア様……私は一体どうして……」
「セナ様。」
レリアは彼女のそばに座り、そっと母の手を握った。
「私、夢を見てるんでしょうか?私は確かに死んだ……死んだと思っていたのに。」
「記憶はありますか?」
「……」
セナの表情が曇った。
最後の記憶を思い出そうとしたが、跡形もなく、何の傷も見当たらなかった。
彼女は震えながら着ていた服の中を探ってみた。
だが、剣で斬られた傷はなかった。跡すらもなかった。
夢だったのか?悪夢だったのか?しかし、あの苦痛の記憶はあまりにも鮮明だった。
「わたし、悪夢を……見たみたいです。」
「……誰かがセナ様を傷つける夢だったんですか?」
「……そ、そうです。」
「それなら……悪夢に出てきたその人の顔を覚えていますか?」
「……」
レリアの言葉に、セナはぎゅっと目を閉じた。
「辛ければ話さなくても大丈夫です。まずは……」
「覚えています。」
「……」
「男、男でした……背が高くて……」
地獄の悪鬼のような目をした男だった。
冷たく輝いていた青い目が思い浮かんだ。
「もう十分です。今は完璧に思い出す必要はありません。」
レリアは、万が一にも彼女がまた倒れるのではと心配して落ち着かせながら話しかけた。
たとえ断片的でも、記憶していることが重要だった。
「…はい、でもここは……」
「ここはシュペリオンの領地ですよ。どこか分かりますか?」
「…聞いたことはあります。でも、どうして私がここにいるんですか?」
「記憶を失ったって言ってましたよね?」
「…はい。」
「戸惑うかもしれませんが、ここがあなたの故郷です。」
「………」
セナはまるで非常に信じがたいことを聞いたかのような表情だった。
レリアは「お母さん」とすぐに呼びたかったが、ぐっと我慢した。
すぐに記憶を取り戻す薬を飲ませたいと思ったが、薬の副作用で再び目を覚まさなくなるのではないかと恐れた。
だから当主はここで順応し、健康を回復することが先だと判断したのだ。
「私たちは皆、セナ様の家族です。そして、あなたも……」
「レリア様が私の家族だというのですか?」
セナは驚いたように目をパチパチとさせた。
「…はい、そうです。」
「…私には家族がいないと思っていました。シュペリオン領地だなんて… こんな遠い場所で私の……」
セナは眉をひそめた。
家族がいるなんて夢にも思わなかったようだ。
身体に残る火傷の痕のせいか、本能的に危険な場所でかろうじて生き延びてきたと思っていた。
だからこそ逃げてはまた逃げ、そして神殿は安全だと判断してそこにじっと隠れていたのだ。
他の神官の名前を借りて使用できる状況だったことも、さらに安心材料となっていた。
しかしこんなにも遠く離れた場所に家族がいたなんて……。
だが記憶はまったくなかった。
しかも神殿で見たこの若い皇族が自分の家族だとは。
『やっぱり、本物の皇族ではなかったんだな。』
いったいどんな経緯で皇太子の名前を借りることになったのだろうか――どうしてあの場所に行くことになったのか、気になった。
自分もまた偽名を使い、他人の身分を騙していたため、同じような罪悪感を感じたのだ。
でも、もし家族だとしたら……どんな関係?
「レリア様と私は、ではどんな関係なんですか……」
問いかけながらセナは目をぱちぱちと瞬かせた。
そういえば、レリアは……驚くほど、炎の中で見た自分の姿と似ていた。
家族だと信じても不思議ではないほど。
疑う余地もなく、当然のように受け入れてしまうほど。
「それは……」
レリアが慎重に言葉を選んで話そうとしたその時、セナが先に口を開いた。
「私に、とても幼い妹がいたのでしょうか?」
「……」
「娘なんて… いるわけないし… 私が結婚までしてるはずないですよね?」
セナは冗談っぽく言った。
だが「娘」という言葉を口にした瞬間、何かが変だった。
急に、気分が――
「ゆっくり、ゆっくりお話ししますね。」
レリアは優しく微笑みながら言った。
笑ってはいたが、その顔にはぽろぽろと涙が落ちていた。
家族だと分かったからだろうか、その涙を見たセナは胸が締めつけられるような思いがした。
そして、その涙を無意識に拭いてあげた。
「……ふっ」
その手に、レリアは顔を埋めて泣き崩れた。
気づき始めた。
セナは手を伸ばして彼女を引き寄せて抱きしめた。無意識のうちの行動だった。
そしてレリアの肩を抱きしめた瞬間、セナは本能的に悟った。
ああ……私の娘なんだ。
この子が私の産んだ子なんだ。
昔、神殿で自分の手で服を着せてあげたあの子。
早く目を覚ましてと額を拭いてあげたあの子、幼くて可愛かったあの女の子が――私の娘だったんだ。
不思議なほど胸が熱くなって、涙があふれた。
「オスカーの消息は?何か聞いてない?」
ロミオの問いかけに、グリピスは興味なさそうに肩をすくめた。
カーリクスもまた知らない様子だった。
ロミオは息苦しそうにため息をついた。
レリアがあまりに不安げに話すので、もし本当に具合が悪かったらどうしようかと心配になった。
「レリアの消息を聞いたらきっと探して戻ってくるはず。死んでなければね。」
グリピスは淡々と答えた。
ロミオはしばらくその返答を噛みしめ、話題を変えた。
「本当にレリアを皇后にするつもりなのか?」
どう考えても正気の沙汰ではなかった。
そんな狂ったことを堂々と演出して見せたグリピスの度胸には驚かされた。
狂ってるとは思っていたが……こんな芝居まで打つとは。
世界全体を騙そうという策略にクスクスと笑いが漏れた。
「もっと良い方法があるなら言ってみろ。」
「……。」
グリピスが淡々と言うと、ロミオは何も言えなかった。
実際のところ、ロミオにも他の方法は思いつかなかった。
正直、ただレリアが望む通りにここに留まらせるにはそれも一つの手段だ。
ロミオはむしろその方がマシなのかもしれないと考えた。
『ペルセウス皇帝が黙っているはずがない……』
自分たちがいる限り、シュペリオン領地が戦争で敗れることはなかった。
しかし戦争が起これば、レリアが苦しむことは明らかだった。
ペルセウス皇帝を完全に黙らせるには、これ以上の方法はないというのも事実だった。
五大帝国の誰も、クロイツ中立区域を侵すことはできないからだ。
そして、オスカーのことを考えても同様だった。
レリアがここにとどまれば……オスカーは再び彼女を連れ去ろうとするだろう。
いずれにせよ、皇后になれば今よりもっと安全になり、以前のように簡単に連れていかれることもないはずだから。
しかし、グリピスの態度にはどこか引っかかるものがあった。
まるでレリアを皆で共有するような言い方をしたからだ。
「レリアを皇后にしておいて?どういうつもりなの?」
ロミオが尋ねると、グリピスは当然のことをなぜ聞くのかというように答えた。
「だから何?幼い頃のように、みんなで中立区域にいたんだし、レリアがここに来たいならまた一緒に来るんだよ。」
「………」
「僕たちは永遠に一緒に。レリアが望むとおりに。何か問題でも?」
グリピスは常識でも話すかのように、平然と答えた。
しかしロミオはその言葉の裏に深く刺さる湿った感情を感じた。
もちろん、正確に言葉で表すのは難しいけれども――
「お前のやり方はおかしい。」
その時、うとうとしていたカーリクスが口を開いた。
グリピスはふっと笑った。
「じゃあ、お前のやり方は?レリアは考えてもいないのに結婚、結婚って、大声で歌ってるだろ?」
皮肉な言葉にもカーリクスは動じなかった。
「……レリアは、愛する人と結婚する自由がある。」
「それって、お前ってことじゃないの?」
グリピスの表情が歪んだ。
本当に狂ったやつでも見るような顔だった。
カーリクスは腕を組んだまま、まるで相手の言葉を受け止めるように顎を引いた。
「レリアはオスカー……オスカーと結婚する。」
その時、カーリクスは確信に満ちてつぶやいた。
グリピスが冗談を聞いたかのように笑いながら応じた。
「面白いな。まあ、レリアが望むなら難しいことじゃない。女王になれば何だって可能になるさ。でも……」
「でも、何?」
ロミオが尋ねた。
グリピスはしばらく目をぱちぱちさせてから言った。
「一人がレリアを独占しようとする瞬間、俺たちはお互いに殺し合うことになるだろう。」
「……」
「レリアがそれを望むと思う?むしろ毎日お前ら4人を見比べながら均衡の平和を保つほうがマシなんじゃないか?」
…狂ってやがる。
ロミオは嫌悪の目でグリピスを見つめた。
グリピスの目は確信に満ちていた。
自分が言った狂気に満ちた戯言を真実だと信じているようだった。
だが、グリピスの言う通り、本当に誰か一人がレリアを独占してしまったとしたら?
ロミオは唾を飲み込んだ。
大丈夫だ。
たとえレリアが、まさかとは思うが、カーリクスを愛して彼と結婚すると言っても、ロミオは受け入れるつもりだった。
ただし、一生レリアのそばに友人として残るつもりだった。
たとえレリアが他の誰かを愛することになっても、そのそばにいられるだけでよかった。
たとえレリアが、まさかとは思うが、カーリクスと結婚して彼の子どもを産むことになっても……。
見守ることはできた。
子どもによき叔父になってあげようと思った。
ただレリアのそばにいられるなら――。
もう嘘をついてでもいい、難しいことじゃないから。
もちろんその場所が自分のものであれば、もっと幸せだろう。
自分の子を持つレリア……想像するだけで胸が苦しくなった。
だが、良心に胸に手を当てると――そのとき、グリピスの方法が正直でなければならない理由はなかった。
『私たち、永遠に一緒に。』
それはとても誘惑的な言葉だった。