こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
137話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 不思議な夢
その後しばらくして、レリアは望んでいたことが叶ったような気分だった。
シュペリオン領地で家族と共に過ごす日々は夢のようだった。
母は記憶を取り戻してはいなかったが、少しずつこの場所での生活に慣れていっていた。
おばあさんも健康がとても良くなり、おじいさんも日に日に表情が明るくなっていった。
叔父さんたちや叔母さんたちも同じ。
記憶を失った母を見て、時折悲しそうな表情を浮かべることはあったが……それでも幸せそうに見えた。
特にカリウス叔父さんは、毎日毎日、泣いたり笑ったりを繰り返していた……。
数日前、レリアが母とカリウス叔父さんと一緒に温室でお茶を飲んでいたとき、デザートにマクレリアが出てきた。
それを見たレリアは、以前叔父さんがしてくれた話を思い出した。
「お前の母さんは、特にこのデザートが好きだったんだ。叔父さんと味の好みが似ていてな。誰がより多く食べるかで競い合うくらいだったんだよ。だから、お前がこれを美味しそうに食べているのを見ると……」
「わあ!だからあの時、叔父さんがワンワン泣いたんですね?」
「……ワンワンまではいかないけど……うん、恥ずかしいけど、そうだったよ。」
母が特に好きだったというマクレリアを見て、懐かしい気持ちが湧いた。
シュペリオン城でこのデザートを好んでいたのは、レリアとカリウスの二人だけだった。
だからなのか、叔父さんがティータイムを取る時には、料理長は必ず自分の得意なこのデザートを作ってくれた。
「これはどんなデザートですか?」
「……これは“マクレリア”というものだよ。」
「初めて見ますね。」
母は好奇心に満ちた目で料理を見つめた。
丸い形をしたデザートにはチョコレートソースがかかっていた。
一目見ただけでも食欲をそそった。
レリアは母の皿にデザートを取り分けた。
母は慎重にマクレリアを少しだけ口に入れた。
そして目がどんどん大きくなり、飲み込むや否や言った。
「とてもおいしいです。どうしてこんなにおいしいんですか?」
母は明るく笑ったその瞬間、見守っていたカリウスの表情が崩れ落ちた。
「……」
レリアは当惑した。
叔父が感情的になり始めたのだ。
「ううっ……」
幼い頃にあった出来事の記憶がよみがえったのか、叔父はマクレリアを手にしたまま子供のように泣き始めた。
母の表情も当惑に変わっていった。
こんなふうに突然叔父が母の前で泣き始めたせいで、母は内心、叔父を少しばかり困ったように感じていた。
だがまた大きな声で泣き始めたので、母は困惑した表情でレリアを見つめた。
「…叔父さん、だから… 幼い頃に私が…」
レリアはうまく説明できず、戸惑っていた。
母は慎重に近づいてきて、手で口を覆ったまま彼女の耳元にそっと尋ねた。
「もしかして、あの方はどこか怪我されてるんですか?頭とか……」
大の男が毎日泣いている姿を見て、そんなふうに聞いたようだ。
叔父にとってはとてもつらい状況だったが、記憶がない母があまりにも無邪気に尋ねたため、レリアは思わず笑ってしまった。
レリアはそうではないと首を振った。
母は安心したようだ。
「…叔父さん……」
レリアは手を伸ばし、叔父の大きな肩を優しく撫でた。
「ごめんね… ただ僕は……」
叔父はすすり泣いていたハンカチを持って母を見つめた。
家族みんなで合意した状況だった。
もうほとんど公爵家に慣れてきた母が健康を取り戻すことに専念することにした。
だから、あえて過去のことを持ち出して記憶を取り戻させようとはしなかった。
母にも、家族にも時間が必要だった。
時間がかかっても、少しずつゆっくりと進むことにした。
レリアは記憶を取り戻す薬があることを祖父に打ち明けた。
長い会話の末、祖父とレリアは結論を出した。
母が完全に健康を取り戻した後に薬を使わないようにしようと相談したのだ。
そのため、すぐに叔父が泣いている理由を説明するのは難しかった。
今の叔父が言葉を詰まらせ何も言えないのも、当然のことのようだった。
「…泣かないで、召し上がってください。」
そのとき、母がそっと叔父の手を取って背中を軽くたたいた。
弟だという話を聞いたからか、彼がなんだか不憫に見えたようだ。
しかし叔父はますます大きな声で泣き始めた。
母は困り、レリアは困ったように笑った。
夢のように幸せだった。
母は健康を取り戻しつつあり… 家族がいるという事実を嬉しそうに受け入れているようだった。
夢であってほしくないほど、幸せで平和だった。
さらに、彼女のそばには友人たちもいた。
朝起きれば友人たちと一緒に食事をし、一日に一度お茶を飲みながら散歩にも出かけた。
カーリクスは相変わらずおバカだったし、ロミオは穏やかで、グリフィスは温かかった。
望んでいたすべてが叶ったような気分だった。
永住地で家族と穏やかに過ごす日々、そしてそのそばを守ってくれる友人たちまで。
もちろん、まだ自分たちの運命がどうなるか分からないのに、これほどまでに平和でいられるとは思わなかった。
その点は理解していた。
これから多くのことが変わるだろう。
けれども… レリアが中立地域に行くとしても、1年に数ヶ月はまたこの幸せを感じられるだろうと確信していた。
しかしながら…。
しかしながら…。
このように幸せな日々を送っていても、レリアの胸にはぽっかりと穴が空いたような気分が残っていた。
オスカー。
オスカーがいないからだ。
遅い夜、部屋に一人残されたレリアは、毛布を抱きしめて泣き始めた。
毎日が夢のように幸せなのに、奇妙なことに、部屋に一人残る遅い夜になると涙があふれ出た。
オスカーが恋しくて、心配だった。
レリアは自分自身に問いかけた。
この気持ちは薬の副作用のせいなのか?
それとも単なる憂鬱感?
今なら答えを出せる。
オスカーを好きだということを認めないわけにはいかなかった。
ただの友人だと思っていた。
ただの同情心から始まった気持ちだと思っていた。
軽くて、哀れで、守ってあげたくて。
誰かの支えになったという曖昧な優越感に酔って、「友情」という言葉が与える特別な感覚に浸っていたのだ。
自分だけを見つめる無垢な視線が好きだった。
まるで自分を救い主のように思ってくれるのも心地よかった。
雨が降ると抱きしめたくなるその体温も愛おしかった。
行き場のない子犬を拾ったかのような、どこか重たくもある責任感さえも良かった。
けれど、いつの間にかその気持ちは変わっていた。
ある朝突然変わった気もするし、ゆっくりと染み込むように変わっていった気もする。
他の女性に微笑むオスカーを見た瞬間、胸の奥がぐつぐつと煮えたぎるのを感じた。
自分でも驚くほど腹が立った。
まるで何かを奪われたかのようだった。
オスカーが困っていた状況から自分を救い出してくれたようで、嬉しかった。
もう皇城に戻る必要がないということにも、安堵していた。
手をつないで会話を交わしたときの、あのくすぐったくて甘やかな感覚が好きだった。
内心では「雨が降ればいいのに」と悪いことを考えたりもした。
ふとした瞬間にオスカーをもう一度抱きしめたくなったから。
自分の気持ちを誤魔化して、薬の副作用のせいだと弁明した。
でも、それ以前から…明らかにそれ以前から…。
もう一度自分を見つめる彼の、切なさの混じった視線を見たときから。
幼い頃のように無垢に自分を追ってくるその視線を感じたときから…。
レリアは記憶を取り戻せば取り戻すほど、苦しさが増していった。
会いたかった。
もう一度会って、「君を嫌っていたわけじゃない」と、きちんと言ってあげたかった。
たとえ心を抉ることになっても、自分の気持ちを告白したかった。
苦しまないでと、抱きしめてあげたかった。
幼い頃のように… もう一度抱きしめてあげたかった。
それだけだった。
レリアは夢を見た。
幼い頃の自分の姿が見えた。
小さくて丸っこい子どもがとことこと歩いていた。
場所は中立区域。
皇太子に会うために切った髪がぎこちなかった。
幼いレリアは山道を歩いていて、ふと立ち止まった。
遠くに何かを見つけたのだ。
びっくりして近づくと、石に座って震えているあの子が見えた。
彼女と同じように中立地域に来た子どもたちの一人。
自分と似た銀色の髪を見て妙な親近感を覚えた。
ひとりでいることもそうだった。
近づいて見ると、その子の名前を思い出した。
オスカー、オスカーと言った。
レリアは小鹿のように震えているその子に痛ましさを感じ、慎重に近づいた。
できるだけ軽く挨拶をした。
「こんにちは?」
相手は返事をしなかった。
話し方があまりにもぶっきらぼうだった?
レリアは顎をかしげてもう一度呼びかけた。
「オスカー様。」
「……」
震えていた子どもが、ゆっくりと顔を上げた。
「大丈夫ですか?」
目が合った瞬間、レリアが尋ねた。
涙で濡れた赤い瞳が次第に大きくなっていった。
その姿を最後に、レリアはゆっくりと夢から目覚めた。
レリアはゆっくりと目をぱちぱちと開けた。
奇妙な記憶だった。
確かにオスカーとの最初の出会いはあんなふうではなかったのに… 確かに… なのに…。
頭がズキズキと痛んできた。
再び眠気が襲い、レリアは眠りに落ちた。
しばらくして。しっかり閉じられていた窓が開き、風が吹き込んできた。
カーテンがひらめき、黒い人影が見えては消えた。
再び窓が閉まり、足音もなく誰かがベッドへ近づいてきた。
「………」
侵入者は息を潜めたまま、しばらく立っていた。
部屋の中には、荒くなるレリアの呼吸音だけが満ちていた。
再び朝が訪れたとき、部屋には誰もいなかった。
痕跡もなく窓は閉ざされていた。
朝、目を覚ましたレリアは身体を起こしかけて止まった。
不思議な夢を見たような気がするのに… はっきりとは思い出せなかった。
レリアはぼんやりとベッドから抜け出した。
けれどまた、ふと足を止める。
「……」
レリアは虚空を見つめながら眉をひそめた。
鼻先にかすかな香りが漂った。
オスカーからしかしなかった特有の匂いだった。
不思議と胸がきゅっとして、温かくて、でも冷たい朝のような香り。
しゃがんでいたレリアが素早く窓際へと駆け寄った。
窓を勢いよく開けて外を見渡した。
城の外の風景が目に入ってきた。
忙しそうに動き回る城の使用人たち、温室、庭園、その向こうに広がる領地の景色まで。
「………」
レリアは眉間にしわを寄せたまま、目をしばたかせた。
錯覚だろうか?
あまりにも恋しければ、香りまで感じられるのか?
あらためてオスカーをどれほど恋しがっているのかを実感した。
レリアは再び窓を閉め、拭くために歩き出した。
「オスカーを探しに行かなくちゃ。」
レリアの簡潔な声に視線が集まった。
広くて華やかな温室のテーブル。
レリアはティーカップを手で撫でながらそう言った。
隣に座っていたロミオは無言で彼女を見守り、向かい側のグリピスとカーリクスも同じようにしていた。
ただ、グリピスの表情は曇り、カーリクスは鋭い目つきで睨んだ。
「オスカーの消息、何か聞いてないの?」
「うーん……」
レリアの質問にグリピスが困っているような声を出した。
「レリア、もちろん心配してるのはわかるけど… 待っていればきっと戻って来るさ。」
「でも、オスカーは本当に辛そうだったの。」
レリアは同意を得ようとして、当時一緒にいたカーリクスを見た。
カーリクスは何もわからないように肩をすくめた。
本当に頼りなさそうな様子だった。
レリアはもどかしさを感じて指先をいじった。
グリピスはそんな彼女を慰めるように落ち着いて言った。
「きっと一時的なことさ。あいつ…いや、オスカーはどれだけ苦しくても死んだりしない。そんなに心配する必要はないよ。」
「………」
「それにこれは冗談じゃなくて、本当に遠くからでも探して戻ってくるよ。僕たちの中で君を置いて行く人なんていない。」
「…それってどういう意味?」
「彼は君がいないと生きられないんだ。僕たちもそうだけど。」
「………」
「もっと近づくならともかく、僕たちが離れることはないよ。」
グリピスは穏やかなニュアンスを込めて語った。
しかしレリアは、ぽかんとして何もわからないという表情だった。
グリピスはそれ以上説明するのが難しかった。
魂が従属されたかのように、深く刻み込まれたかのように。
決して君のそばを離れられないと、どう説明すればいいのか。
ただ飼い犬が主人から離れられないようなものだと、当然のように思えた。
レリアのそばに戻ってくることは、彼らにとって本能だった。