こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

38話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- シュペリオン公爵②
再び目を開けたとき、シュペリオン公爵はそれ以上レリアには質問をしなかった。
『勘違いしてるのかな?私が本当のことを言わないから?』
レリアは不安になったが、やがてその不安は和らいだ。
シュペリオン公爵が以前よりも優しい眼差しと口調でレリアを包み込んでくれたからだ。
まるで、「話さなくてもわかっている」、「無理に話す必要はない」、「レリアが自分で口を開くまで待つ」という気持ちが伝わってくるようだった。
そのおかげで、レリアは神殿から逃げて以来、初めて心から安らぎを感じた。
一方で、シュペリオン公爵の態度があまりにも優しかったため、レリアはまるで一度も会ったことのない母親と一緒にいるような錯覚すら覚えた。
祖父が本当に自分を見つけ出してくれたのだと思うと、胸がいっぱいになって、息をするのも苦しくなることがあった。
『本当のことを言わないといけないのに。』
何度も言おうと口を開いた。
けれど、どうしても言葉が出なかった。
言おうとすると、涙が出てしまいそうだったからだ。
『みんなに知られたら、また大騒ぎになるだろうな……。』
泣くとからかわれたあの日を思い出した。
またこんなに泣いたと知れたら、友達がどれだけ驚くだろう――そんな、やるせない思いがこみ上げた。
『どうせ、もう二度と会うことはないだろうけど。』
中立地帯から本国へ戻ってきてから、親しい仲間たちがそばにいなかったせいか、レリアはさらに幼い頃に戻ったような気がした。
人は孤独で疲れると、身体も心も縮こまり、精神までも幼くなるのだと実感する。
皇城で過ごしていた頃、レリアの体も心もすっかり萎縮していたのだった。
『逃げてきてよかった。』
レリアはそう思いながら、もう泣かないと心に誓った。
しかし、騎士たちは、レリアに対してやたらと優しくなったシュペリオン公爵を見て顔をしかめた。
「なんであんなに優しくしてるんだ。」
「何か間違って聞いたんじゃないか……。」
「笑ってるほうがかえって怖いんだけど、俺は。」
騎士団員たちにとって、いつも威厳たっぷりで恐ろしい存在だった公爵がこんな姿を見せたため、騎士たちはただただ戸惑うばかりだった。
シュペリオンは領地に向かう前、最後に立ち寄る大都市クレタに到着した。
馬車は商店街の前で停まった。
シュペリオン公爵はレリアを自ら抱き上げて馬車から下ろし、手を取ってどこかへ連れて行った。
レリアはしっかりと祖父の顔を見上げた。
「……」
目が合うと、シュペリオン公爵はやさしく口元をほころばせた。
普段はあまり笑わない性格だったためか、シュペリオン公爵はここ数日で顔中に汗が滲むほどの緊張ぶりだった。
それでもレリアを見ると、自然と微笑んでしまった。
本当は、もっと悲しそうな表情を浮かべたかったが、意識的に微笑んだ。
レリアが自分を怖がらずに見られるようにするために。
「えっと……どこに行くんですか?」
シュペリオン公爵は、レリアの問いに答えず、ある建物の前で立ち止まった。
「……。」
後ろについてきた騎士たちを振り返ったレリアは、首をかしげて前方の店の看板を見上げた。
そこは、子供服を売る店だった。
それもとても高級そうな店だ。
レリアはごくりと唾を飲み込んだ。
「領地に到着する前に、いくつか服を買ってあげたいんだ。」
「……私は大丈夫です。」
「それでも、ローブを着たまま行くわけにはいかないだろう。」
その言葉に、レリアはこっそりと自分が着ているローブを見下ろした。
テシス卿がくれた、とても立派なローブだった。
『そういえば……。』
領地に到着すれば、シュペリオン家の人たち全員と顔を合わせることになる。
もしかすると、母が幼いころに知っていたあの人たちにも――。
「……」
あの時の記憶が蘇り、緊張で足がすくみ、喉が詰まった。
シュペリオン公爵は最初からレリアの正体を明かすつもりはなかった。
どうせ誰も簡単には信じないだろうからだ。
『とにかく領地に着く前に話さなきゃ。』
レリアはそう心に決め、公爵の後に続いて、こそこそと店の中へ入った。
・
・
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それからしばらくの時間が過ぎた後。
レリアは、最初に自分の足で店に入ったときとは違って──騎士の背中にしがみついたまま、レリアはお店の外へ出た。
たくさんの服を試着して、疲れ切ってしまったのだ。
レリアについてきた騎士たちは、両手いっぱいにショッピングバッグを抱えていた。
腕に掛ける袋が足りないために無理やり持ち歩いていたが、騎士たちの表情には笑みが浮かんでいた。
シュペリオン公爵の命令だからではなく、本当にレリアを気に入っていたのだ。
「何かお手伝いできることはありませんか?」
「僕に持たせてくれるもの、ありませんか?」
「騎士様、水を持ってきましょうか?!」
小さな子供がちょこちょことついてきて、そんなふうに動くたびに、自然と笑みがこぼれた。
特に指示することはなかったが、しおらしくしているレリアのために、わざと些細な用事を与えて手伝わせたりもした。
任務を終えて得意げにしているレリアを見ると、騎士たちは互いに目配せを交わした。
『可愛い。』
『本当に可愛い。』
領地に仕える召使いの連中とは違う。
まだ騎士になる夢を抱いている少年たちとは違うからか、騎士たちの目にはレリアがまるで実の妹のように映った。
無理もない。
最初に見たときから思っていたが、あまりにも小さくて痩せていた。
十歳だと聞いて、どれほど驚いたことか。
しかし、初めて会ったときに比べ、ガリガリに痩せていた体に肉が付き、肌もつやつやしてきた様子を見るたびに、シュペリオン公爵は嬉しさで胸がいっぱいになった。
まるで、捨てられていた子犬が、愛される家族のもとで幸せに変わっていくのを見ているような気分だった。
「服が少なすぎるのではないか?」
シュペリオン公爵は顎を撫でながら考え込んだ。
明日にはこの都市を出発し、領地へ向かわなければならないため、今日購入したレリアの服はすべて急いで用意したものだった。
シュペリオン公爵は、領地に到着したら、シュペリオン領で一番有名な仕立て屋たちを集めようと考えていた。
「いずれにしても、少ないな。」
「はい。私もこれよりたくさん服を持っています。」
「それでもよく似合っていましたよ。」
騎士たちはシュペリオン公爵の言葉に答えながら、くすくすと笑った。
シュペリオン公爵は、騎士の背中に寄り添うレリアを見て、小さくため息をついた。
彼は、この子が死んだエリザベスの娘であると確信していた。
しかし、世の中には何が起きるかわからない。
もしかするとエリザベスの血筋ではないかもしれない。
だが、それは大した問題ではなかった。
とにかく、この子がエリザベスに似ているという事実。
それだけで、エリザベスが送ってくれた子だと思うだけで、大きな慰めになったのだった。
『いつか自分から口を開いて話してくれるだろう。』
まだ子どもは自分の名前すら明かしていなかったが、シュペリオン公爵は無理に聞き出すつもりはなかった。
子どもが何か大きな秘密を抱えていることは明らかだった。
皇室から追われる身なのを見れば、それは間違いない。
もう検問を心配する必要はなくなったものの、不安は完全には拭えなかった。
都市の外郭を越えるたびに検問は続いたからだ。
シュペリオン公爵は、あえて子どもを自分の孫と断定することはしなかった。
シュペリオン公爵の子どもたちは世間に知られていたが、孫たちが何人いるか、そしてそのうち何人が生き残っているかについては、ほとんど知られていなかった。
そのため、検問をしていた領地の兵士たちは、ほとんど疑うことなく公爵を通過させた。
何しろ、皇族たちの外祖父であり、大貴族でもあるシュペリオン公爵を疑う理由などなかったのだ。
『一体なぜ、ペルセウス皇帝はこの子を追っているのだろうか。』
シュペリオン公爵は子供に直接問いただしたかったが、子供が自ら口を開くまでは焦らず待つことにした。










