こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

46話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 姉の面影③
『食事もしなかったくせに。』
レリアは不審そうに、デザートを一緒に食べようとするカリウスを見た。
「食べてみろ。」
カリウスが親切にも、レリアの空いた皿にエクレアを載せてくれた。
エクレアは丸い形をしたデザートで、隣にはチョコレートソースがかかっていた。
見ているだけでよだれが出そうな、初めて見るデザートだ。
『まさか毒が盛られてるわけじゃないよね。』
レリアは一瞬、疑わしそうな目でカリウスを見た。
『正直、私のこと嫌いなのはわかるけど……』
それでもカリウスは、意地悪な態度を取ることはあっても、ましてや子どもを殺すような人ではなかった。
『それに、私が来てからおばあさまの病状がすごく良くなったのに……まさかそんなことするわけないよね。』
レリアは疑いを振り払い、大きくエクレアを一口かじった。
「……!」
レリアの表情がぴくりと歪んだ。
それを見ていたメイドのベッキーは心配そうに顔をしかめる。
ベッキーがこれまでレリアにエクレアを渡さなかったのには、ちゃんと理由があった。
普通、子どもたちは甘いデザートを好むものだ。
しかしエクレアは、濃厚な香りのコーヒージャムがたっぷり詰まったお菓子だった。
コーヒーの香りが強ければ強いほど、深い味わいを出すため、子どもたちが好むようなデザートとは言いがたかった。
『子どもにしてはあまりにも手厳しい…。』
ベッキーは、寂しそうな目でカリウスを見つめた。
正直、カリウス様がお嬢様を快く思っていないことは、ベッキーもよく分かっていた。
無理に押しかけてきたように見えるのも無理はなかった。
しかし、城の使用人たちは皆、レリアを好んでいた。
公爵の命令もあったが、それ以上に、レリア自身がとても明るく活発な子どもだったからだ。
本来なら、元気いっぱいに駆け回る年頃にもかかわらず、たまに寂しげな表情を浮かべるその姿が、見る者の胸を締めつけた。
そのためか、幼い子どもでも食べるのが難しいデザートをカリウスが無理に食べさせようとしているように見えて、ベッキーにはなんだか気の毒に思えた。
とはいえ、口に入れたものをすぐに吐き出すことを想像していたレリアは――そんなことはしなかった。
レリアは不満げな顔をしたまま、もぐもぐと必死に噛み、ついにはごくりと飲み込んだ。
『無理して食べたのかな?』
カリウス様に弱音を吐きたくなかったのかも、と考えたベッキーは胸が痛んだ。
だが、レリアはさらにもう一つを手に取って食べた。
「すっごくおいしいです!ベッキー!これ、本当においしい!本当です!」
レリアはベッキーに向かって明るく笑い、エクレアを夢中で食べ始めた。
「……」
その様子をじっと見守っていたカリウスは、ナイフとフォークをそっと置き、またも込み上げる感情に目を伏せた。
それは、口に入れた瞬間に分かった。
かつて、口の好みがよく似ていたエリザベスとカリウスは、幼い頃からこのデザートが大好きだった。
どちらがより多く食べられるか競い合うほどに。
さらに、美味しいものを食べたときに顔をほころばせるレリアを見ていると、カリウスは幼い頃を思い出した。
姉は、美味しいものを食べると、目尻を細めてその味をじっくりと味わった。
とても素直で可愛らしい表情だった。
そしてレリアも、その表情にとてもよく似ていた。
カリウスは、兄弟たちの中でも特にエリザベスと親しい関係だった。
エリザベスが亡くなった後、カリウスは長い間、深い喪失感と抑うつに陥っていたほどだ。
あまりにも遅かったが、これまで感じてきたすべてのことから、カリウスはようやく確信できた。
この子は、亡くなった姉の娘に違いないと。
『私は一体、何をしていたんだ……。』
それなのに、自分はこの子にどう接してきたのか。
砂漠で出会ったこの子に敵意を向け、冷たく突き放した。
さらに、シュペリオン城に来てからも同じだった。
この子が自分を怖がっていると知りながらも、いつも冷たい目で見つめてしまっていた。
やがて、彼は片手で顔を覆い、肩を震わせながら泣き始めた。
「……」
一方で、エクレアを一生懸命食べ続けていたレリアは、戸惑った目でカリウスを見上げた。
ベッキーを見やると、彼女もまた事情をよく理解できないように肩をすくめた。
その時だった。
「うちの子、デザートを食べてたのかい?」
外出して戻ったのか、シュペリオン公爵が柔らかい声で話しかけてきた。
驚いたレリアは目をぱちくりさせながらおじいさまを見上げた。
公爵はその目の輝きを「おばあさまは?」と尋ねる合図だと受け取り、やさしく微笑みながら答えた。
「おばあさまは馬車で眠ってしまわれたので、寝室にお連れしてきたところだよ……。」
そして、レリアに歩み寄る公爵は感情が急激に込み上げた。
公爵の視界に入ったのは、肉を噛みしめながら泣いている息子、カリウスだった。
シュペリオン公爵はこの光景を信じられずにまばたきを繰り返した。
どう見ても、泣いているようにしか見えなかった。
『何をしているんだ、この子は……。なぜあの子の前で泣いている?』
公爵はカリウスと、その隣でデザートの粉をぎゅっと握りしめているレリアを交互に見た。
一体何があったのかと、状況を理解しようとするような目つきだった。
その視線に戸惑ったレリアは、思わず大声で叫んだ。
「ち、ちがいます!わたしじゃないです!」
「はははは……はは!」
だが奇妙なことに、その言葉を聞いたカリウスは、突然大声で笑い出した。
幼い頃、姉といがみ合って喧嘩していたとき、父が入ってくると姉は必ず「私じゃないよ!カリウスが勝手に泣いたんだよ!」と言い訳した。
それから怒られないように、急いでカリウスの元へ駆け寄って抱きしめ、「ごめんね、だから笑って!」と、あやしてきた。
「……」
レリアはまるで狂った人を見たかのような表情で、そんなカリウスを見つめた。
シュペリオン公爵、そして見守っていたベッキーも、同じような顔をしていた。
・
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ベッキーと一緒に部屋へ戻ったレリアは、高鳴る気持ちのままベッドに横たわった。
驚いたレリアのために、ベッキーはエクレアを含めたデザートをぎっしりと持ってきてくれたが、レリアの手はなかなか伸びなかった。
『どこか具合でも悪いのかな?』
さっき急に泣き出したかと思えば、狂ったように笑ったカリウスを思い出すと、胸がざわざわした。
自分を嫌っている人ではあるけれど、それでもお母さんと一番仲の良い兄だ。
『それに……おばあちゃんが言ってた話では、私が知っている限り……』
レリアにとっては、誰よりも優しい祖父母だったが、若い頃の彼らは自分たちの子どもたちには非常に厳格な親だったという。
そのせいか、少しだけ胸が痛んだ。
最初は、自分を見つめるその鋭い視線に対して、「大人にもなってなんであんな感じなんだろう」と思ったこともあった。
しかしよく見ると、その目は何かを切実に守ろうとする人のようにも見えた。
『立派な大人になれってことか…。』
レリアは深刻な表情で人形を抱えながらベッドの上を転がり、再び起き上がった。
『あっ、そうだ!やることがあったんだ。』
レリアの視線が止まった先は、体力回復薬が入ったバスケットだった。
『早くお金を稼いでクリスタルを補充しなきゃ。』
そう思ってバッと立ち上がり、バスケットを手に取って出ようとした、そのとき。
コンコン。
ノックの音がして、レリアはベッキーが来たのだと思った。
しかしドアを開けて入ってきたのはカリウスだった。









