幼馴染が私を殺そうとしてきます

幼馴染が私を殺そうとしてきます【92話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【幼馴染が私を殺そうとしてきます】まとめ こんにちは、ピッコです。 「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

92話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 衣装合わせ

翌朝早く。

誰よりも早く一日を始めたロミオは、ゆったりとお茶を飲みながら物思いにふけっていた。

一時間前、早朝に目を覚ましたロミオは、城の裏にある庭園を散歩していた。

澄んだ朝の空気に気分が晴れやかになった。

するとちょうど散歩中のシュペリオン公爵と公爵夫人に出会った。

公爵夫人は健康状態があまり良くない様子だった。

大まかに見るに、神殿では神病(しんびょう)に分類される病にかかっているようだ。

公爵はそんなロミオを招き入れ、一緒に散歩しようと提案した。

「ふむ……」

公爵とのいくつかの会話を思い出しながら、ロミオは頭の中を整理していた。

詳しくはわからないが、大まかなパズルのピースはすべて揃った気がした。

エリザベス前皇后が子どもを産んだ直後亡くなったという神殿の秘密記録。

その記録にあった子どもがレリアだったのだ。

だから彼女はここにいるのであり、公爵とその家族たちはすべての事実を知っている。

公爵との会話を思い出せばわかる。

彼の一言一言には、レリアへの深い愛情があふれていた。

実の孫娘に対するような深い愛情だった。

それにしても、なぜレリアはすべての事実を隠しているのだろうか。

その理由は分からなかった。

なぜそこまでして自分が「レオ」であるという事実を隠しているのか。

彼の脳裏に、アウラリの子の死、そして先代皇帝にまつわる記憶がよぎった。

暴君だった皇帝、そして評判の悪かった先代皇太子… 真のレオ、皇族と貴族の子どもたちを集めたあの神殿…。

ロミオは額に手を当てたままカップを置き、窓の方へと歩いて行った。

ちょうど城門を通って本城に近づいてくる何台かの馬車が見えた。

一番目の馬車からは、華やかなドレスを着た女性が降りてきた。

彼女は馬車から降りるやいなや、付き従ってきた使用人たちにあれこれと指示を出した。

使用人たちは命令に従って手早く荷物を下ろし始めたが、衣装掛けに掛けられていたのは、きらびやかなドレスだった。

『もうすぐ開かれるという舞踏会のドレスだろうか?』

あのドレスはレリアのもののように見えた。

そしてその後ろ、やや遅れて別の馬車から若い男性が降りてきた。

その男は大きな決意を胸にしたかのように本城を見上げていた。

しかし、なぜか嫌な予感がした。

ロミオはレリアのドレスを選んであげようという考えで、鼻歌を歌いながら部屋を出た。

『早起きの鳥が宝を手に入れるんだ。』

残りの連中は、きっとまだぐっすり寝ていることだろう。

普段不眠症がひどい三人のために、久々によく眠れるよう睡眠魔法をかけてあげたのだから。

まったく… 自分ほど親切な友達はいない。

『なんて幸運な奴らだ。俺と友達になれるなんて。』

ロミオはレリアの部屋に向かいながら、陽気な口笛を吹いて微笑んだ。

その曇りひとつない笑顔で通り過ぎながら出会ったメイドたちは顔を赤らめて、そわそわしていた。

 



 

トントン。

ノックの音に、レリアはまだ寝ぼけ眼をこすりながら「入っていいわよ」と答えた。

ベッキーが明るい表情で入ってきて、その後に衣装室から来た人々が続々と荷物を抱えて入ってきた。

衣装室の責任者は彼女に丁寧に挨拶した。

「お嬢様、昨日おっしゃっていたドレスの仮縫いが仕上がりましたので、お持ちしました。」

「…もう?」

明らかに昨日の昼にドレスを選んだばかりなのに、もう仮縫いが終わったなんて。

「はい、そうです。もしドレスがお気に召さなければ、舞踏会までに新しく仕立て直さなければなりませんからね。それに、公爵様からは舞踏会用のドレス以外にも、普段着や礼服など数着の衣装をたくさん!ご注文いただいております。」

衣装室の責任者は、とても意欲に満ち溢れ、勤勉な人のように見えた。

レリアは祖父がこの衣装室の責任者にどれほど丁寧に依頼していたのかが分かる気がして、そう思った。

レリアはぼんやりとした気分のまま、ふらふらと立ち上がった。

使用人たちは広い部屋の中央にパーテーションを設置して、即席の更衣スペースを作った。

服を着てその場で直接確認できるようにしていた。

使用人たちが部屋を出て、女性の使用人だけが残ると、ベッキーは素早くドレスを選んでレリアに渡した。

「お嬢様!これはどうですか?」

「うん… いいわ。」

正直、レリアにはドレスを見る目がなかった。

ただ、まあ綺麗に見えた。

都で仕立てられた服を着るときもそうだったが、誰かが選んでくれたものをそのまま着るタイプだ。

レリアの無難な反応に、ベッキーは不満そうに口を尖らせた。

そのとき、トントン、と誰かが再びドアをノックする音が聞こえた。

レリアは「入っていいわよ」と言い、カーテンの中に入っていった。

「こんな時に来るなんて、私が忙しいの分かってるのかしら?」

中に入ってきたのはロミオだった。

ロミオはまったく予想していなかったようで、困ったように笑った。

「大丈夫です。朝からどうかされたんですか? 急ぎのご用でも?」

レリアはまだ服も脱いでいなかったが、カーテンの外から顔だけを出して尋ねた。

もしかして昨夜のうちにカーリクスの様子が悪くなったのではと心配がよぎった。

ロミオは「何でもないよ」とでも言うように肩をすくめた。

「いや…大丈夫なら、じゃあ失礼を。」

中へとすっと入ってきたロミオは、しっかりとドアを閉めた。

そして彼女のほうへ近づいてきた。

「舞踏会用のドレスを選んでいたところだったんですね。」

「はい… 祖父が来客のために催す舞踏会に参加しなければならないので。」

レリアは疲れたように答えた。

その「来客」の一人であるロミオはくすくすと笑った。

首都の舞踏会でにぎやかしの役を果たすためにレリアが苦労しているのを思い出したのだ。

彼は笑いをこらえながら軽く提案した。

「じゃあ、僕がドレスを選んであげるっていうのはどう?」

「えっ?本当ですか?」

レリアは驚いて目を丸くした。

静かに様子を見守っていたベッキーの目がキラリと輝いた。

「どれだけでも。君のためなら。」

以甘いセリフにベッキーの表情はとろけるように緩んだ。

レリアはその甘さに少し引いたが、ロミオがにやっと笑うのを見て少しムッとした。

『何か企んでるのでは?』

レリアは妙に不安になった。

まさか、今でもロミオはレオを殺した犯人だと疑ってるんじゃ…?

そんな複雑な思考に頭がぐるぐるしていたが、ベッキーはもうロミオにすっかり心を奪われているようだった。

「それでは殿下、どうかお嬢様のドレスを丁寧に、ゆっくりお選びくださいませ。」

ベッキーはドレスを一枚一枚見せながら、まるでロミオがレリアの夫でも構わないかのように丁寧に振る舞った。

ロミオはとても自然にその様子を受け入れた。

「うーん、レリアは緑よりも青の方が似合うね。銀髪によく合うから。」

ベッキーの表情が明るくなった。

「まあ、本当によくご存じですね!」

「でも、明るい緑ならまた話は別さ。レリアの瞳の色と似ているから。」

「まあまあ、そうですね!じゃあこの黄色はどうですか?」

「これは可愛いけど、デザインがちょっと子どもっぽいかな。レリアには大人っぽいのが似合うよ。」

「本当です!本当にうちのお嬢様のこと、知らないことがありませんね… わあ、それならこの赤いドレスはどうですか?」

「僕の考えでは…この赤いドレスと、あの青いドレスを着て比べてみるのがいいと思う。ああ、この銀色のドレスも。」

「まあまあ、さすがです!どうしてそんなにお嬢様のことをご存じなんですか…!」

「宝石も用意されてる?一緒に選びたいな。」

「もちろんです!少々お待ちください!」

ベッキーはそそくさと応接室の奥の衣装部屋に入っていった。

「……」

レリアは今何をしているのかとカーテンの向こうからロミオをじっと見つめた。

ロミオは笑みを浮かべながら彼女を見つめ、「あぁ」とつぶやいた。

「君、まさにそんな感じだったから……」

「……?」

「子犬みたいだね?首を伸ばしてご主人様だけを待つ子犬。とても可愛いよ。」

……な、何を言ってるの?

レリアは戸惑っていたが、それを見ていた衣装室の主人や女性使用人たちはこっそりとクスクス笑っていた。

どうしてそんなふうにするのか分からず、レリアは混乱していた。

「ここにありますよ!」

部屋から宝石箱をぎっしり持ってきたベッキーは、カーテンのそばのソファへとロミオを案内した。

座ってゆっくりご覧くださいと。

「すべて公爵様がお嬢様のために新しくご用意されたものです。カリウスの境界線近くの首都で買ってきたものも含まれています!」

ロミオは余裕たっぷりにまるで主人公のように中央の席に座り、ベキーが開けてくれる宝石箱を一つ一つ眺めた。

まるで宝石を買いに来た貴族のご令嬢のようだった。

「……」

レリアはゆっくりと宝石を選ぶロミオを疑わしそうに見つめた。

「お嬢様!では、こちらから着てみませんか?」

いつの間にかベキーがカーテンの内側に入り込み、レリアを促した。

レリアは戸惑いながらも、ベキーが差し出した赤いドレスを着始めた。

そのとき、もう一度コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

宝石を一つ一つ見ていたロミオが鋭い視線でドアの方を見つめた。

動物的な感覚で、彼は分かった。

ドアの外に誰かがいることを。

レリアが「誰なのか確認してきて」と言うと、ベキーはカーテンの外に出てドアの方へ歩いて行った。

しかし、ドアを開けるやいなや、押し寄せてくる人々に驚いて後ずさりした。

中に入ってきたのはカーリクスとグリピス、オスカーの三人だった。

大柄な男たちが一度に入ってきたので、ベキーは驚いて肩をすくめた。

「……」

「みんな、どうして……」

レリアは自分を見つめる三人の視線にたじろぎ、思わず目をぱちくりさせた。

三人はレリアから視線を外し、ロミオを鋭く睨みつけた。

「お前、まさか俺に催眠魔法をかけたのか?」

グリピスが歯ぎしりしながら彼に近づいた。

ロミオは思ったより早く正気に戻った彼らを見て、ふっとため息をついた。

「今、何をしているんだ?」

一方、オスカーはレリアを見てまっすぐに歩み寄ってきた。

カーテンの中で女性使用人たちがレリアを囲んでいた様子が怪しく感じられたのだ。

彼は使用人たちが慌てているのも気にせず、まるで敵に突進する中級兵士のように近づいてきた。

「ちょっと!そこまでです!」

レリアは彼がカーテンの中まで入ってこようとする気配に、思わず驚いて叫んだ。

「……」

オスカーは眉をひそめたまま、その場で立ち止まった。

「いま… 着替え中なんです。申し訳ありませんが、皆さん外へ出ていただけますか?」

「……」

オスカーはその言葉にも一切まばたきせず、ただ自分の耳に入った言葉を理解しようとして黙って立っていた。

ロミオの首を締めようとしていたグリピスもまた、動揺して後ずさった。

まさかレリアが着替えている最中だったとは思いもしなかったのだ。

『それで、あのカーテンの中にいたのか?』

グリピスは一瞬にして顔と首が真っ赤になった。

ロミオはそんなグリピスを見ながらため息をつき、心の中で思った。

『俺の幸せな時間を邪魔するとはな……。魔法はすぐ解けると思ってたけど。』

一方、カーリクスはまだドアの前に立ったまま、ひとり胸を高鳴らせていた。

息が……息がしづらかった。

レリアを見ていたら、息が……

「そうだ、いっそこうなったことだし、みんなでレリアのドレスを選ぼうじゃないか。」

カーリクスが正気を取り戻したのは、ロミオのその一言のおかげだった。

何を選ぶって?ドレスを?

『男のくせにドレスを選ぶなんて、ふざけてる……』

カーリクスは呆れながらも、言われた通りに従う犬のようにロミオの言葉に従ってカーテンの中へと歩いて行った。

「まあ、ちょうど良かったですね、お嬢様!もうすぐ成人の舞踏会もありますし、あらかじめ男性たちの反応が良いドレスの色を選べるかもしれません!」

ベキーはいつの間にか元気を取り戻したかのように目を輝かせながら駆け寄ってきた。

「えっ……」

レリアは戸惑ったが、カーテンの内側に入ってきたベキーが一瞬で服を着せてくれたため正気を取り戻せなかった。

まだ眠りから十分に覚めていない、ぼんやりした状態なのに……

結局、しばらくして。

部屋の中の状況は妙な空気に変わっていた。

ロミオは先ほどと同じ場所にそのまま座っていたが、少し前とは違い、気まずそうな表情で前髪をいじっていた。

オスカーはレリアが動けとは言わなかったためか、依然としてその場に立っており、グリピスは依然として怒りの表情でロミオと対角線上に座っていた。

そしてカーリクスは……

『男のくせに生意気な……』

まだ心の中でぶつぶつと文句を言いながら、窓辺にもたれてレリアを恨めしそうな目でじっと見つめていた。

「できました!」

ベキーが明るく言うと、使用人たちがカーテンを開けた。

レリアはこの状況が気まずくて死にそうだった。

まだぼんやりしていて、まるで夢の中にいるようだった。

四人の視線がレリアに集中した。

その熱い視線に、もう一度カーテンの中に隠れたくなった。

完全に目が覚めるような気分だった。

確かに全てきちんと服を着ているのに、露出のないドレスなのに、なぜか裸になったような気分になるのか理解できなかった。

赤いドレスは優雅な印象を与えるデザインだった。

首元が少し開いていることを除けば、まったく露出はなかった。

ただ、ウエストラインが強調されているのが少し気になった。

ベキーはレリアの視線を察して、あっ…と気づき、衣装室の店主に言った。

「まあ、私ったら。お客様がいらっしゃったのにお茶も出さずに…。とにかく、ドレスは私が令嬢と直接選んで連絡を差し上げますね。」

「はい、分かりました。」

「では、どうぞ。」

ベキーが合図すると、衣装室の店主と使用人たちはぱたぱたと部屋を出て行った。

ベキーもまたお茶を持ってくると言い残して去っていった。

レリアは気まずそうに立っていたが、普段着に着替えなければと考えて、奥の部屋へと入ろうとした。

そのとき、窓辺に立っていたカーリクスがそわそわと彼女に近づいてきた。

ぷんと怒った表情だった。

「おい!」

「……」

レリアが驚いて歩みを止めると、カーリクスはすぐ目の前までやってきて立ち止まった。

ところが……その視線は奇妙な場所を向いていた。

レリアはカーリクスの怒った視線の先を追って顎を引いた。

彼が見ているのはレリアの首の下だった。

「お前!いつまで女装して生きるつもりだ!?それでも男か?あぁ!?ちゃんとしろよ、ちゃんと!!ってか胸はどうしたんだ、変態野郎め!」

「こ、この狂ったやつ!」

カーリクスの無礼極まりない視線と口調に、ロミオが思わず怒鳴った。

「……」

レリアはあまりの驚きに、その場に尻もちをついてしまった。

瞬時に立ち上がって駆け寄ったロミオがカーリクスの背中を思いきり殴った。

カーリクスは痛がる様子もなく、なおもぶつぶつ言いながらレリアを睨みつけていた。

目は真っ赤だった。

「……」

グリピスもまた、カーリクスの行動と口から飛び出た言葉に驚き、呆然としていた。

一方、オスカーはいつの間にか近づいてきて、床に座り込んだレリアを支えた。

「大丈夫?」

優しくて穏やかな口調に、レリアは思わずオスカーの腕をつかんでいた。

「カーリクス、この狂ったやつ。どうしたんだ? 正気か? なんて無礼な……!」

ロミオはあまりにも常識外れなカーリクスの言動に言葉も出なかった。

カーリクスは悔しそうに反論した。

「いや、そうだろ。お前……俺が可哀想に思ってくれてると思ってたのに!違う!お前……お前、この変態!これからは女装やめろ!全部明かせ!お前の全てを暴けって!」

なんだ? 変な薬でも間違って飲んだのか? それとも片目の視力を失った後遺症か? あるいは昨日の異教徒との戦闘で何かあったのか?

レリアは呆れてカーリクスを見つめた。

カーリクスは完全に興奮して、足をバタバタさせていた。

見かねたロミオとグリピスが彼を引っ張って連れ出した。

「お前!この変態野郎!」

カーリクスは引きずられていく途中でも、レリアに向かって暴言を吐いた。

「えっ、昨日何かあったんですか?」

レリアは毅然として支えてくれるオスカーの腕をつかんで、やっと立ち上がりながら尋ねた。

「いや、まったく。」

「じゃあ一体なんで突然あんなふうに……」

「もともとおかしいじゃん、あいつ。」

誰よりも変わっている人物であるオスカーは、何事もなかったかのように振る舞っていた。

ところが、すでにぴったりとレリアのそばに寄り添い、さりげなく手を握っていた。

「今…何してるの……」

「ちょっとだけ。」

ほんの少しだけ。

オスカーは言葉通り、ほんの少しの間だけそうしてから彼女を離した。

「…きれいだ。」

いつの間にか握られていた手の甲に、オスカーの赤い唇が触れて離れた。

レリアは、うっとりとした彼の目元をなぜか怖く感じ、視線を逸らして手を引いた。

オスカーは真剣な表情で一歩下がった。

トントン。

半分開いたドアの隙間から、ベキーが顔をそっとのぞかせた。

「お、お嬢様?」

これは一体どういうことなのか…?

ベキーは戸惑いながら、ティーカップの乗ったトレイを押して中に入ってきた。

「お茶は二杯あれば十分でしょう。」

オスカーはそんなベキーに向かって言った。

ベキーはしばらく戸惑った様子で口を開いた。

「えっと、お客様がいらっしゃっています、お嬢様。」

「……また?」

一体今日は朝からなぜこんなに…と、レリアは疲れたように目元をこすった。

「ええと、クリク家門のベレボス卿がいらっしゃいました。」

ベキーはおずおずと告げた。

レリアは額に手を当てた。

誰だっけ? ああ……。

レリアはため息をついてベキーに視線を向けた。

事情を察したベキーがそっと身を引くと、その隙間からベレボス卿が入ってきた。

「……レリア嬢。」

ベレボスはきっちりとした表情で中に入ってきた。

そして、レリアの隣に立っているオスカーを見つめた。

『神殿の石像のように、とても美しくてハンサムな男を連れてきたと聞いていたが……。』

実際に見てみると、息を呑むほどのイケメンだった。

身長はどうしてあんなに高くて、体格はまたなぜあんなにがっしりしているのか?

しかしベレボスはそんなことをまったく感じさせず、静かに背筋を伸ばした。

「…あなたに似た、美しい花を持ってきました。」

背中に隠していた花束を差し出すと、レリアの目が細められた。

「ぜひ受け取ってください….」

タッ!

ベレボスが差し出した花束を、オスカーがひったくった。

それは、物を渡す召使いのような動作ではなく、奪い取るような仕草だった。

「今、何を――!」

バサッ。

オスカーの手に握られた花束は、瞬く間に赤い炎となって消えた。

床に落ちたかすかな残骸がパラパラと散らばった。

ベレボスは驚いて後ずさった。

「…レリアは花粉が嫌いなんだ。」

「そ、それは一体…レ、レリア嬢!一体この男は誰なのですか!こんな無礼をするなんて誰なんですか……!」

ベレボスは、天敵を見たかのようにオスカーを見つめながら、顔面が真っ青になっていった。

「はっ……!」

まるで幽霊でも見たかのような表情だった。

「うわあっ!」

ベレボスは叫び声を上げながら部屋を飛び出し、逃げていった。

ドアの前で待機していたベキーは、その様子に驚いて、走り去る彼の後ろ姿を見つめた。

そしてすぐに、外から静かにドアを閉めた。

レリアとオスカーが落ち着いて会話できるようにするためだった。

「何をしたんですか?」

「……」

レリアがオスカーに近づくと、オスカーは視線を逸らした。

『きっと今、あの人に妙な幻覚でも見せたんだわ……』

レリアは手も使わず、妙な力を使うオスカーが怖く感じた。

いつか彼女の家族にまでその力を使ってしまいそうだったからだ。

「オスカー様… 黙ってそばにいるって約束しましたよね。」

「それは二人きりのときの話だ。」

「え?」

「他の奴らが来た以上、約束は修正しないと。」

「な、何を……」

「君がちゃんと答えるまで黙ってそばにいるっていうのは、どう考えても僕にとって不利すぎるだろ?君が僕の言葉に答えてくれるって保証もないし。」

レリアは、彼との約束を思い出していた。

「君が自分の口で言ってくれ。私のものになると…。君がやろうとしていたことが終わったら、私についてきて、一生そばにいると。」

その言葉に、レリアはこう答えた。

「私のやるべきことがすべて終わるまでは、オスカーさんがそばにいてくださるなら、そのときお答えします。」

オスカーはそれを受け入れ、その後は静かにそばにいてくれたのに……突然こんなふうに些細なことも制御できなくなってしまうなんて、不安が込み上げてきた。

意思が通じない堅い壁と向かい合っているような気分だ。

「私をずっと君の思い通りに動かしたいなら、まず食べさせろ。従順にさせるには餌付けが必要な法なんだが、お前はどうなんだ?」

「な、何を食べるって……」

「知らないふりはするな。」

オスカーは微笑むように片方の口元をわずかに上げた。

レリアは目を瞬きもせず、明らかに距離を取っていたのに、一歩も動けなかった。

まるでオスカーにしっかりと狙いを定められたようだった。

「僕が望んでいることは、はっきり分かってるはずだよね。」

「………」

「知ってるよ。君が一度だけ目を合わせてくれたり、指先に触れてくれるだけで――」

オスカーが指先を使ってドレスの裾を動かしたレリアの手の甲にそっと触れた。

ほんの指先だけが触れただけなのに、心臓がドクンと鳴った。

「それだけで十分だってこと……。」

レリアはオスカーの言葉を信じられなかった。

目を一度合わせ、指先を一度触れるだけで満足できるって?

嘘だ。

たとえ今はそれで満足しているふりをしても、本当はレリアの頭の先からつま先まで、全部を飲み込んでしまいたいような目で、そんなことを言うなんて。

誰が信じるだろうか。

たとえ今はそれで満足だと言っても、きっと要求はどんどん大きくなるだろう。

いずれはすべてを差し出さないと満足しないに違いない。

でも、レリアは――正直、信じたくなかった。

今は、首輪の外れた猛獣のように飛びかかってこないことに満足するしかなかった。

レリアは本能的に分かっていた。

あの目の輝きに比べてこの程度の行動なら、オスカーはすでに限界まで我慢しているのだと。

「分かりました。」

「……」

レリアの返事に、オスカーの手が離れた。

彼は背を向けたまま、余裕ある様子でレリアを一瞥すると振り返った。

そして、「ああ」とつぶやきながらもう一度体を向けて言った。

「ちなみに、俺は青より今着てるその赤いドレスの方が好きだ。まるで獲物みたいで美しい。」

レリアはその言葉を残して去っていくオスカーの後ろ姿を見つめながら目をぎゅっと閉じた。

『絶対に青い服を着なきゃ。』

 



 

 

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