こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
今回は60話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
60話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 釣り糸の先
釣り糸にエサをつけた釣り人がすべきことは何か?
「焦らずに待つことよ」
ナディアは故郷にもう少しとどまりたいと思っている。
部屋を片付けながら、数日間首都周辺を散策した。
城の外の湖でボート遊びをしたり、丘陵地帯でピクニックをしたりもした。贅沢な休暇を楽しむ貴族のような姿だ。
では、どれほど有意義な時間を過ごしたのだろうか?
ナディアが釣り竿に魚がかかるのを待っているのは、暇をつぶすためだった。
ウィンターフェル侯爵の館。
寝室で本を読みながら時間を過ごしていたナディアに、一通の手紙が届く。
「王宮からの伝言です」
「女王陛下から送られた書簡なの?」
「え? あ、はい。そうです。ところで、どうしてお知りになったのですか?」
「今やっと薬の効果を見て、安堵したからです」
ナディアはゆっくりと横になっていた体を起こし、手紙を開ける。
それはやはり女王陛下の侍従が書いたものであった。
手紙の内容は、以前受け取った薬がとてもありがたく効果的だったので、もう少し手に入れることは可能かというものだ。
「代金として多額の金銭を支払う意思があるという。慎み深くも薬の効果に非常に感動された様子ね」
「幸運ですね。用意はできているので、陛下にお届けしましょう」
「何のこと?今から作るとなると、少し時間がかかるでしょう?」
「え?領地から持ってこられていない・・・あ、わかりました。今から材料を調達して、配合するにはしばらく時間がかかりますね」
素早くナディアの意図を理解した執事は、軽く頭を下げた。
薬を要求されるや否や、準備が整っているようにすぐに渡したが、この側の心中はどこか腑に落ちないものだった。
ウィンターフェルが積極的に薬の商業化に乗り出すような状況ではなく、外部からの要求が後を絶たず、どうしようもなく販売を開始せざるを得ない様子だった。
やらなければならない。
それに・・・。
「しばらく首都にさらに滞在する場所も必要ですからね。慎重に薬を作っている途中だと言えば、誰も文句は言えないでしょう」
「一石二鳥ですね」
執事が口を開き感嘆しているときだった。
コンコン。
ノック音と共に扉が開く音がした。
二人の視線が同時に同じ方向に向かった。
そこには急いで駆けつけたらしいグレンが、ドアノブをつかんで立っていた。
「あの噂、聞いたか?」
「何の噂ですか?」
「首都内で第一王子に関連する怪しげな噂が広まっているらしい」
「まあ、なんてこと」
ナディアは舌打ちをしながら感嘆した。
「予想から少しも外れていませんね。第一王子様もきっと非常に不安を感じておられることでしょう。これで王子様も誰かが自分を脅かしていると感じられたのではないでしょうか」
今回の出来事は、これまで何もせずに過ごしてきたフレイが、軍の必要性を自覚するきっかけとなるだろう。
馬を水場へ連れて行くことはできても、水を飲ませることはできないというものだ。
異母兄弟と対峙しなければならないという危機感を、その花畑の中で暮らす王子が自ら感じる必要があった。
「見てください。私が言った通りになりましたよね?父のやり方も長年見てきたおかげで、すっかり熟達していますから」
「それはそうだけど・・・何かが少しおかしい」
「何がですか?」
「しばらく前、古代の王国が滅亡した時のように、今回もひと月以内に月が消えると言われている。王位にふさわしくない王子が王座に就くと、大きな災厄が訪れるとか・・・」
「・・・」
ナディアはしばらく口を閉じたまま過去の記憶を振り返った。
確かに過去の生でもこの時期に似たような現象が起きたのは間違いない。
(ただし問題は・・・現時点ではそれを知っているのが私だけだということ)
父親が突然未来を見通す目でも持ったのでなければ話は別だが。
「それは・・・確かにおかしいですね」
王族を非難するために自然災害を利用することは、奇妙なことではない。
例えば、数年間続いた飢饉を王の無能さのせいだと噂することは、これまでにも何度かあった出来事だ。
しかし、今回は何かが違っていた。
今広まっている噂は、未来に起こる現象を覆い隠そうとしている。
グレンもまた、その点を見過ごすわけにはいかないようだった。
「もし何も起こらなかった場合、その責任を押し付けられる結果になるだろう・・・。反逆者を摘発しなければならないという声が、さらに力を持つことになるはずだ」
「そうですね。父がそこまで予測しているとは思えませんが・・・」
ナディアは手にしていた本の表紙を指でなぞりながら考え込んだ。
(過去の人生でもこの時期に似た現象が起きたのは確か。正確な時期を覚えていなかったから活用しようとは思わなかったけれど・・・。私も正確に覚えていないことを、どうして先に知っているのだろう?)
まさか、向こう側にも未来から戻ってきた者がいるのだろうか?
あるいは、占星術で天の動きを読み取れる者が彼らの中にいるのか・・・。
「まさか」
父の下で仕えていた家臣たちを一人ずつ思い浮かべるうちに、彼女の顔はやや深刻になった。
不意に前世の記憶が蘇ったからだ。
固まってしまった彼女に、グレンが声をかける。
「とりあえず彼を引きずり下ろしてみようという策略だろうか?でもそれで予言が間違っていたことが明らかになれば、王子を復権させるべきだという意見が大きくなるはずだが・・・」
「そうではなく、彼らはすでに確信しているのです」
彼女の元婚約者には、ある不思議な習慣があった。
それは、毎晩空を見上げて星を観察すること。
夜が更けると、ためらいもなく城の見張り台に登っていく姿を不思議に思っていたナディアは、好奇心を抑えきれずに彼に尋ねた。
「タクミ卿は夜空を眺めるのが好きなんですか?」
「ああ、これはただの・・・私の昔からの癖です。前に事故に遭って目を覚ましたらここだったという話をしましたか?」
「聞いた覚えがありますね」
どこまで信じればいいのか判断がつかないほど信憑性のない話ではあったが、まあ一応そういうことだ。
車のようなものに轢かれて意識を失った末に、別の世界に移動したと言っていたのだろうか?
「あのとき、私は自分のいる位置を把握しようと空を見上げていました。星座の位置を見れば、自分が落ちた場所のおおよその位置を特定できると思ったんです。でも・・・」
彼の口元には苦い笑みが一瞬浮かんだ。
「私が知っていた夜空とは完全に違っていました。まるで宇宙の反対側にある別の惑星に来てしまったような感じでした。実際、その通りだったんです」
「・・・惑星?」
「ああ、それを説明しようとすると長くなりますね・・・後で詳しくお話しします。とにかく、そのときの私は完全に異なる世界に落ちたということを信じたくありませんでした。それで、何度も空を見上げて確認したんです」
「・・・」
「もしかして、私が知っている夜空と似た構成が少しでもあるのではないかと思って・・・」
そう語る彼の顔には、さまざまな感情が交錯していた。
複雑に入り混じった表情を浮かべていた。
その表情には、戸惑い、恨み、悲しみ、失望、絶望が滲んでいた・・・。
「とにかく、私が最近毎晩夜空を観察しているのは、もちろんその時に身についた習慣もありますが、それ以上に興味が湧くからです。ご存じですか?星と月の動きには一定の規則があるということを」
「月が一ヶ月周期で縮んだり膨らんだりするのは知っていますよ」
「そのように、空にあるすべてのものは一定の規則に従って動いています。詳しく観察すれば分かります。非常に長期間の観察が必要ではありますが・・・例えば、月食や日食が起こることも予測できるのです」
その時、彼女は思わず別の方向に目を見張るしかなかった。
「それは、神が人間に下す罰の象徴ではなかったのですか?昔、古代王国が滅びた時にも月が消えたと聞きました」
「それは災害のように見えるかもしれませんが、ただの自然現象にすぎません。原理さえわかれば、その時の出来事を馬鹿らしいと笑うことができるでしょう。そういった現象がなぜ起きるのかといえば・・・」
一瞬言葉を止めたタクミが、困ったように微笑んだ。
「説明すると少し長くなりますね。後ほど時間ができたら、ゆっくり説明させていただきます。きっと理解していただけると思いますので」
「楽しみにしています」
その日の会話はそれで終わった。
二人は一緒に見張り台を降り、後で時間ができたら一つずつ説明するという約束を交わした後、別れた。
しかし、そのとき交わした約束が、漠然とナディアの心に引っかかっている。
彼女は結局、詳しい話を聞くことができなかった。
王が突然慌ただしくなり、状況が急変して戻ったかと思うと、ほどなくして彼女も命を落としたためだ。
(多少の誇張が混ざった話だと思っていたのに・・・)
まさか本当に起こり得ることだとは。ナディアは信じられないという表情を浮かべながら口を開いた。
「彼があの時言っていたこと・・・そう、これはきっとタクミ卿が考え出したことなんでしょう」
予想外の名前にグレンの表情が少し険しくなる。
首都に到着したあの日から、再びその名前が話題に上ることになるとは、彼もまた驚きを隠せなかった。
「彼に自然災害を予測する能力があるという意味ではないのだろう?」
「似たようなものです。彼が非常に遠い場所から来た異邦人であることはご存じですか?」
「そうだとも聞いた」
「彼の故郷では、天体の動きを予測する学問が発達しているようです。彼が何かを予測したのは明らかです」
「天体の動きを予測する?まさか占星術に似たものか?」
「私も詳しくは分かりません。ただ、占星術とは少し違うように感じました。とにかく重要なのは、首都で広がっている噂が実際に起こる可能性が高いということです」
昔一度だけ出た会話だったため、タクミがそれを利用しようと考えるとは予測できなかった。
しかし、どんな危機にも出口は存在するもの。
あちらが空の動きを予測できるなら、こちらは未来に起こることをすでに経験してきた。
少し悩んだナディアが意味深な笑みとともに口を開いた。
「グレン」
「ん?」
「これから私がどんな信じ難いことを言っても、私の言うことを聞いてくれますか?私がどんなお願いをしても」
少し触れられたナディアとタクミの過去。
彼女がグレンにお願いすることとは?