こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
今回は62話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
62話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 釣り糸の先③
「奥様、第二王子宮殿からは何の連絡もありません。当面は何の措置も取らないつもりのようです」
待ち望んでいた知らせが間もなくナディアの耳に届く。
彼女は椅子に寄りかかったまま穏やかに答えた。
「やっぱり、そうなると思っていました」
「どうして第二王子が動かないことを予測できたのですか?」
「結婚前に彼と少し交流があったのです。彼ならば、あの噂に耳を貸すはずがないと思いました」
「やはり・・・」
ファビアンは感心した表情で相手を見つめた。
「全て奥様のおっしゃる通りですね」
「第二王子を知る者なら誰でも予想できた結末ですよ」
そう言いながらも、不満そうで感心する様子は消えなかった。
グレンや他の家臣たちは勇気を出して集まり、彼女を見つめていた。
敬意と畏敬の混ざった視線だったが、ただ喜んでいるだけではなかった。
なぜなら___。
「・・・それで尋ねなかったのですか?私がどうして災害が起こる日を知っているかを」
未来の天候をどうやって確信しているのか説明しなければならないからだ。
当然のことだが、ナディアがその日に洪水が起こると予測できたのは、過去の記憶のおかげだった。
実際、最初はいつか洪水が発生し、多くの被害をもたらしたという曖昧な記憶があったが、具体的な時期までは分からなかった。
しかし、タクミが洪水が発生する日付を把握し、それを利用できるようになった。
洪水が起こった正確な日付や、その日に月蝕が続いていたことをはっきりと思い出していたのだ。
災害により、民心が極度に揺れ動いていた。
記憶に鮮明に刻み込まれていた。
ここで問題が生じる。
いくら考えても、未来から戻ってきた事実を隠したままでは説明する方法が見つからなかった。
しかも、この時期は雨が多い季節でもなく、都でも天気をあてにするのはギャンブルのようなものだったので、理由づけはほとんど無理だ。
(急な状況に驚いて、とりあえず叫んでしまったけど・・・)
どう解釈すべきか視界が真っ暗になった。
背中には冷や汗が一筋流れた。
しかし、緊張していたのが不思議なほど、周囲の反応は予想外に落ち着いていた。
「まぁ、何かしら計画があったんでしょうね」
「どんな方法を使ったのかは分かりませんが、確信があったからこそ計画を実行に移されたのだと思います」
「領主様に聞いたところ、説明するのが少し面倒だと言っていました。それならば、群衆を納得させる気はないのでしょう」
グレンの反応もまた同じ。
「こんなことを仕掛けるくらいだから、確信があったに違いないさ」
「・・・」
ナディアの言葉が詰まる瞬間だった。
いや、安心してもいいはずなのに・・・いいはずなのに・・・。
「・・・人をこんなに簡単に信じてもいいんですか?」
「誰も簡単には信じてないさ。彼が何らかの確信を持たずに行動するような人物ではないことを分かっているから、信じているんだ」
「その通りです。殿下がウィンターフェルにお越しになってからの行動を思い出してみてください。一つ一つが現実的でないことがありましたか?」
「我々は今や殿下が城の裏でダイヤモンド鉱脈を発見したとしても、なるほどと納得してしまうでしょう。それに比べれば、天候を予測することなんて・・・」
家臣たちはその言葉に同意するかのように、うなずいた。
「結局、雨が降ることを事前に知ることができたのは、殿下の策があったからですよね?」
「まあ、そうですね。私の秘策のひとつでしょうか・・・」
「ああ、まあ、それでいいです」
物事が予想外に簡単に解決しそうな気配が見える。
ナディアはその機会を逃さず、急いで話題を進めた。
「物事が計画どおりに進んでいるとはいえ、油断してはいけません」
ナディアがしようとしているのは、父の陰謀をそのまま彼らに返すようなものであった。
愛する父の表情がどれほど見事なものになるのか、彼女は初めから期待していた。
条件はすべて整っていた。
ナディアから各自の役割を伝えられた家臣たちは、手分けして行動を開始する。
集まった者たちはその場で散らばりながら、彼らの小さな声が次第に広がっていった。
「第二王子が噂を無視してくれて幸運だった。もし真剣に彼の言葉を聞いていたら、最初から全てが台無しになっていたかもしれない」
「殿下は個人的な性格までもすべて考慮されていた」
「おっしゃった通りですね。すべて計画があったんでしょう」
そんな賢い方が私たちの領主を好いてくださるなんて、なんと幸運なことでしょう。
みんな同じ考えを抱きながら歩いていた途中、誰かが低い声で口を開いた。
「でも、物事がうまく進むのはいいんだけど・・・」
「うん?」
「私たちの領主様と殿下、本当に働き者だと思いませんか?」
「・・・」
さっきまで元気に盛り上がっていた雰囲気が、一気に冷めていく。
何かを飲み込んだように黙り込んでしまった。
みんなの頭の中には、一瞬だけ見えた領主夫婦の姿がよぎる。
非常に事務的でそっけない態度。
それは新婚夫婦というよりは同業者に近い雰囲気だった。
誰かが口を開いてグレンを弁護した、いや、弁護しようとした。
「その、男と女の間のことを第三者がどうやってわかるんだ・・・」
「いや、いや。それでも雰囲気ってものがあるでしょう! 本当にひどい記録で・・・一つとして良いところを見つけられなかったんだから・・・」
「わぁ、私たちの領主だけど、ちょっとひどすぎる。どうしていまだに心も受け入れてくれず、能力だけ利用するの?」
「どれだけイケメンでも、それだけで許されるなんて、これはあまりにひどいんじゃないですか?」
「そうだよ。このままじゃ奥様が傷ついて去ってしまったらどうするの? 領地にはご主人がいなくても何とかなるけど、奥様がいなくなったら困るんだから!」
「もう1年だよ、1年。このタイミングなら少しは気にしてもいいんじゃない?」
悪い人間だって、一日世話をしてもらったら感謝するものだ。
ましてや人間がどうしてこんなことを・・・。
領主に対する非難の声が湧き上がった。
そして、その声は・・・。
「えっと、グレン・・・大丈夫ですか?」
「・・・」
全て聞こえてしまったのだ。
庭側に面した窓が開いていたようだ。
ナディアはそっと彼の顔色を窺いながら口を開いた。
「すみません・・・。つい私が伯爵様を悪者みたいにしてしまいましたね」
「いや・・・それは君のせいじゃないよ」
そう言いながら話すグレンの顔には、耐え忍んだような悲しみが漂っていた。
ナディアの目は彼の辛さを映しているかのように曇りがちだった。
(不運な人。顔も知らない女性と結婚することになっただけでなく、部下たちから罪なく非難を受けているなんて・・・)
部下たちから信頼を失うことは大きな問題だ。
いずれ伯爵家を去る身ではあるが、グレンは生涯ウィンターフェルで暮らさなければならないのではないだろうか?
彼の私生活がこのせいで苦しくなることは望んでいなかった。
「それなら親しい部下たちだけに真実を打ち明けるのはどうでしょう?私が伯爵様を愛しているというのは嘘ですから、私を不幸に見せかける必要はありません」
「ダメだ」
「・・・」
グレンは口をきつく閉ざした。
絶対に、絶対にそうしたくなかった。
秘密保持の問題を放棄するのがただ嫌だった。
しばらく沈黙していた彼が、ついに口を開く。
「・・・それよりも適切に演技する方が良さそうだ」
「え? 演技って・・・?」
「まあ、休みの日に外出したり、観劇したり・・・。他の人たちが見たときに仲が良さそうに見えるようなことだよ」
グレンがさらに一言を付け加えた。
「ちなみに、絶対に本気であるわけではない」
「うーん・・・」
グレンの提案にナディアは一瞬考え込んだ。
どうするべきか?
彼の言うとおりにするのは特に難しいことではない。
しかし・・・。
「それは難しくないですが、もしかして後々もっと面倒になるのではありませんか?私と離婚する時に、どう説明するおつもりで・・・」
バキッ!
何かが壊れる音に、ナディアの言葉が止まる。
「え、これ、どうして急にこうなったの?」
グレンが座っていた椅子の肘掛けにひびが入っていた。
頑丈そうな家具に突然ひびが入るとは。
「でも、以前にも似たようなことがあったのではないか?」
不吉な予感がこみ上げてきた。
しかし、その感覚の正体について深く考える前に、グレンが話を続ける。
「家具の管理が少しおろそかになっているみたいだな。それよりも、私の提案についてどう思う?」
「私は気にしませんが、侯爵様の立場が問題ですよ。後になってもっと困難になるかもしれませんから」
「離婚・・・という話が出る頃には、すべてが終わっているはずだ。その時は秘密を守る必要もなくなるし、何か約束をする必要もないだろう。どうにでもなるさ」
「うん、それならそうしましょう」
「離婚」という単語を口にしたとき、グレンが歯を食いしばったような気がしたが、ナディアは自分の勘違いだろうと思うことにして、深くは考えなかった。
いずれにせよ、彼が提案した内容はナディアにとっても悪い話ではない。
だからこそ、それが原因でグレンの評判が悪くなるのは望むところではなかった。
「いいですよ。休憩時間の代わりだと思っておきます。それに、雑談は今回の仕事をきちんと片付けた後でやることにしましょう」
「それは当然のことだ」
「あ、それで一つ気になることがあるんですが。私と同じ部屋を使うことについて、先代侯爵様には何と説明したんですか?」
グレンに真実を告げて以降、先代侯爵は一度も彼女に異を唱えなかった。
結婚して1年が経つ息子夫婦が同じ部屋を使わないという状況を特に気にも留めず放置しているのだ。
嫁に対する信頼が揺るがないことが分かると言えども、不思議な話だった。
ナディアが気になる顔で視線を上げると、彼の顔が徐々に赤くなり始める。
「ちょっと・・・言うのが恥ずかしいんだけど」
「え?それってどういうことですか?もしかして後々、私たちの話が合わないと困るじゃないですか。早く教えてください。」
グレンはしばらくためらったが、ついに口を開いた。
「君が怖がりだから・・・進展を少しずつゆっくり進めている最中だと言っておいた」
「それ、いい感じですね?よくやりましたね。じゃあ、設定上、私たちは今どの段階まで進展しているんですか?」
「え、それは・・・」
「恥ずかしがることはありませんよ。後になって話が合わなくて嘘だったと聞くよりもマシじゃないですか」
「・・・キスまでしたということで・・・」
「あは」
ナディアが微笑んだ。
そして、ふと思い出したように言った。
「でもそれ、『設定上』じゃないですよね?実際にしたじゃないですか、キス」
「・・・!」
結婚式のときもそうだったし、彼が私に黄金のバラを渡した日もそうだった。
過去の出来事を思い出させられると、グレンの顔が一気に真っ赤になる。
赤くなった顔を隠しながら、彼女は笑いをこらえた。
「ちょ、ちょっと、あなたって本当に恥ずかしがり屋なんですね・・・!」
「そもそも、黄金のバラを受け取るレディーが騎士にこれくらいのスキンシップをするのは普通でしょう?それなのに、何をそんなに恥ずかしがっているんですか?」
笑い声がしばらくの間、響き渡った。
臣下たちのナディアへの信頼度がMAXです。
その反面、夫婦関係を心配する声も増えてきました。
グレンもどうすればいいか悩んでいるのでしょう。