こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

84話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- それぞれの戦場②
ナディアがここ数年、懸命にお金を稼いできた理由の一つは、まさにウィンターフェルが悪魔族との戦争で負傷者が出るのを防ぐためだった。
財政的な理由で支援できなかった過去において、ウィンターフェルは無形の財産をどれほど多く失わなければならなかったのか?
それなのに今回、正規軍に出陣すると言うから、何やら心がざわつくのはどういうわけなのか。
「うーん……。」
ナディアは執務室の窓辺を見つめながら低くため息をついた。
今日は特に帳簿の数字が目に入ってこない気分だった。
『どうしてこうなるの?』
もしもグレンが深刻な負傷を負い、これからの計画が台無しになってしまうからだろうか?
これまでの努力がすべて無駄になってしまうかもしれないからだろうか?
しばらく考え込んでいた彼女はふと気づいた。
『あまりにも情を移してしまった……。』
グレンは彼の個人的な理由でなければ、ウィンターフェルに留まることはなく、戦場に出ることもなかった。
もし彼が重傷を負ったり、万が一命を落としたりしたら……考えるだけでも恐ろしかった。
ナディアが一人でそわそわしながら窓の近くを行ったり来たりしているところを、より身分の低い侍女たちが見て近づき、尋ねた。
「どうなさいましたか、奥様?何か不快なことでもおありですか?」
「出征が目前だから心配で、どうにもこうにも……。」
「まあ、大したご心配を。南部の弱い領民ならともかく、我々の騎士団は何年も怪物どもと戦ってきたんです。」
「ですので、ご安心ください。領主様はもちろん、騎士の皆様も無事に戻られるでしょう。」
「人は簡単に死んでしまうものです。どんなに鍛えられた身体でもね。それでも、たった一本の矢で人が死ぬのが命というものじゃない?」
そう言ったナディアの口から、再び深いため息が漏れた。
見守っていた侍女たちも、自然と気まずい表情を浮かべるほど深いため息だった。
侍女たちは目を細めてお互いに視線を交わしながら、何か小声で話し合っていた。
『この愚か者、それを慰めと言うの?奥様が領主様をどれほど愛しているかを知らないの?それが慰めになるわけがないでしょう。』
『じゃあ、どう言えばいいの?』
『心が乱れるときには、単純なことをするといいって言うじゃない。』
「奥様、もしよろしければ、幸運のお守りでも作ってみてはいかがでしょうか?」
「……明日が出発日なのに?」
「時間がないので、剣の柄に結ぶくらいの簡単なもので十分ですよ。二重の糸で小さな結び目を作るくらいなら、一日もあれば足ります。」
「でも……私の不器用さはみんな知っているでしょう?」
「大丈夫です。こういうのは元々、誠意が大事なんですから。」
悩んだ末、ナディアは侍女たちと一緒に装飾品を作ることに決めた。
どうせ仕事が手につかない状況だ。
「これをこちらに……はい、そこに結び目を作ってください。蝶の形にすればいいですよ。」
「こう?」
「はい、その通りです。どうですか、奥様? やれそうですか?」
「人々がなぜ迷信に頼るのか、少しわかった気がする。気持ちが少し楽になるみたいね。」
このような物は、作る際に込めた願いが効果をもたらすと言われていた。
信じるか信じないかは別として、ナディアの表情は真剣そのものだった。
装飾品の結び目一つ一つに彼女の願いが込められていた。
「さあ、これで完成です。まるでさっと作ったように見えますね?」
侍女たちが言ったとおり、結果物はすぐに出来上がった。
もちろん、出来栄えの完成度は大した問題ではない。
まるで子どもが遊び半分で作ったような粗雑で寂しい装飾品。
これを贈り物だと言ってグレンに渡すのは、ためらうほどだ。
「……」
ナディアは自分の手に持ったものと、リサの手に持った装飾品を交互にじっと見つめていた。
作り方を見せるために手本として作ったものだったが、どういうわけか私のものよりずっと立派に見える。
「リサ。」
「はい、奥様。」
「悪いけど、あなたが作ったものを、誰かに渡すつもりなの?」
リサが肩をすくめながら答えた。
「もちろんありません。ただ作り方をお見せするために作っただけです。」
「よかった。それなら、むしろそれをグレンに渡して……。」
「え?ダメです!こういうものは誠意が何よりも重要なんです!作った人の願いが込められていなければ意味がないんですよ!」
「それでも、こういうのが領主の剣につけられていれば、領主の威信が損なわれることはないでしょう?」
「まさか、奥様の作品を手荒に扱う人がいるはずがありません。」
ナディアが渋い表情を見せると、他の侍女たちまで彼女の気分を持ち上げるために奮闘し始めた。
「大丈夫ですよ。最初に作られたものとしてはとても立派です。」
「そうですよ。それに、そもそもこういうものは少し不器用な感じで作るものなんです。あまり完璧を求めすぎてもダメですよ。」
「侍女たちにやらせたと思われるかもしれませんね。」
「ふむ、そうかしら?」
続く侍女たちの称賛に、ナディアは少し自信を取り戻した。
『そうだ、まさか心を込めて直接作ったものを断るわけがない。彼もそんなに失礼な人ではないはずだ。』
しかし、湧き上がった自信も、わずか一日で揺らいでしまった。
出発当日、早朝に起きてグレンを訪ねたが、なぜか言葉が出てこなかった。
目の前に立って、落ち着きなくうろうろするナディアを見ている。
グレンは疑わしげに少し眉をひそめた。
「何かあったのか?嫌なことでもあったのか?」
「それが……」
ナディアは背中に隠していた手をそっと前に出した。
それは受け取る相手の好みに合わせて、青い絹で包まれた装飾品だった。
不格好な装飾品の形に彼女の顔がわずかに赤く染まる。
質素な箱に収めて渡すべきかと迷ったものだった。
「これ、戦場に行く人に手作りの装飾品を渡すと幸運をもたらすって……」
「……」
「ちょっと不格好だけど、それでも受け取ってください。外に出すのが恥ずかしかったら、懐に隠して置いてもいいです。全部迷信に過ぎませんけど……それでも気持ちの問題じゃないですか?」
「まさか自分で作ったのか?」
「もちろんですよ。形を見てくださいよ。こんな手先の不器用さでどうやって領主様の使用人になれると思います?」
「いや、いや。そんな意味じゃなかった。ただ……忙しいだろうに、余計な手間をかけさせてしまったんじゃないかと思って……。」
「なんだか昨日から仕事に全然集中できなくて。座っていても何も進まないので、何か他のことをしている方がましです。それとも、受け取ってもらえないんですか?」
「まさか。」
グレンは慎重に両手で装飾品を受け取った。
装飾品の完成度に比べて、過剰に慎重な手つきで、それを見ていたナディアが少しばかり気恥ずかしくなるほどだった。
しばらくの間、贈り物をじっと見つめていた彼が、ついに口を開いた。
「俺を心配してくれたものだと、そのまま解釈してもいいのか?」
「もちろんその通りです。知っている人が戦場に向かうとなれば、心配するのは当然じゃないですか。」
そう言いながら、彼の両手に握られている装飾品をそっと見つめていた。
「必ず元気で戻ってきてください。」
「……」
真剣な表情で自分を見上げる彼女の顔は、それでもどこか愛らしさを感じさせずにはいられなかった。
グレンは知らず知らずのうちに彼女の肩を引き寄せ、自分の腕の中に抱き寄せていた。
「グレン?」
「少しだけ。」
ナディアは驚いたような表情を浮かべたが、彼を押しのけることはしなかった。
おそらく、これは親愛の表れだと考えたかったのだろう。
「必ず無事で戻ってくると約束する。」
「その約束、必ず守ってください。」
心が乱れて、しばらくの間抱きしめていたいと思ったが、それは叶わないことだった。
名残惜しい気持ちを振り払って彼女から体を離そうとした瞬間、彼の視線に不意に飛び込んできたものがあった。
ちょうど廊下の柱の後ろにちらりと覗いている黒い影だった。
いや、正確に言うと「影」ではなかった。
わずかに動いていたからだ。
『……ドマヴァム?』
黄金色の瞳孔が、興味深げに彼を見つめ返していた。
床をパタパタと叩く尾が、不満げな気配を示しているようだ。
「あの厄介な魔物がまた何か騒ぎを起こそうとしているのか……。」
どうしてこうも雰囲気が良い時に限って邪魔されるのか理解できなかった。
しかし、警戒していた態度が何だか滑稽にも見え、ノアは不満そうな表情を浮かべつつも、どうしようもないといった風にその場を離れていった。
小さな翼をパタパタさせながら、遠ざかっていく後ろ姿。
グレンは驚いた目で、どんどん小さくなるその背中を見送るしかなかった。
「……何かおかしい?」
事件が防げず落ち着きのない小さな影が、いつの間にかその場を去っていたのかもしれない。
グレンが驚いた表情でさっきまでノアがいた場所を見つめていると、ナディアが怪訝そうに彼を見上げて声をかけた。
「どうしたんですか?後ろに誰かいますか?」
「いや、見間違えたようだ。」
小さな竜の少し困ったような表情を思い出すと、グレンはふと苦笑いを浮かべた。
もしかしたら、あの影と少しだけ和解することができるのではないかという考えがよぎった。
ナディアが意味深な笑みを浮かべる彼の姿を、不思議そうに見つめていた。
「そろそろ戻りましょう。今ごろ皆さんが領主様をお待ちしているはずです。」







