こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

96話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 死を迎えた時期②
「領主様、東部の避難民たちが北部へ押し寄せています。」
「避難民たちが北部へ?」
戦争で壊滅した東部よりはマシかもしれないが、それでも北部が暮らしにくい土地であるという事実は変わらない。
故郷を捨てて別の場所に定着しようとするなら南部の方がはるかに魅力的な選択肢だという意味だった。
信じられないといったグレンの声に、行政官エドワードがさらに詳しく状況を説明した。
「すべては領主様の侯爵としての名声のおかげです。ウィンターフェル侯爵は義理を重んじるお方なので、決して困難な人々を見捨てないという噂が広まっているんですよ。」
まるでウィンターフェル侯爵だけが人々を救うために敵軍を追撃したことを語っているようだった。
エドワードはさらに話を続けた。
「そういう意味で私は東北部地域の開発を勧めたいと思います。」
「東北部地域というのは、アラウンド近辺のことか?」
「はい。ちょうど先日のモンスターレイドで陥落していた城も奪還されたとのことです。避難民が集まっているので、人手不足を心配する必要もないでしょう。」
「悪くないな。ナディア、君の考えはどうだ……ナディア?」
無意識にナディアを見ていたグレンは、驚いて言葉を止めた。
彼女が完全に上の空の顔で、遠くを見つめていたからだ。
「どこか具合でも悪いのか?」
ナディアは自分の名前を何度か呼ばれてようやく我に返った。
「えっ?どうかしましたか、グレン?」
「東北部開発についてどう思うかって話をしてたんだ。」
「東北部開発? じゃあアラウンドの近くですね? うーん、悪くはないけど……」
ナディアは言葉を濁しながら考え込んだ。
アラウンド近辺の東北部開発。話だけ聞くと悪くはない計画のようだ。
だが──
『しばらくの間、こんな余裕はなくなるかも?』
ナディアがかつて死を迎えた日が近づいているということは、王の死もまた近づいていることを意味していた。
だが、この時点で王の死を口にすることはできない。
彼女は視線を外して答えた。
「私は大丈夫だと思います。エドワード、詳細な報告書が完成したらすぐに届けてください。」
「はい、かしこまりました。そして他の領地からもモンスターの死体に関する取引の要請が殺到しています。」
悪魔族との戦争を経て、彼らが同族の死体をどう利用しているのかが明らかになって以来、モンスターの死体に対する需要が急増していた。
『もうこれ以上、私たちだけのノウハウじゃなくなるのは惜しいけど……それでもウィンターフェルはモンスターが最も多く出現する地域だからな。』
この不毛な領地に特産品ができたという事実は変わらない。
十分に喜ぶべきことであった。
「これまで通り、ウェインとカタリナに仲介を任せるように。とはいえ、こうなってしまった以上、しばらくの間はモンスター討伐に対する王室の補助金はなくなるだろう。」
「まあ、そうでしょうね。器の小さい連中ですから。」
エドワードはチャマ夫人の前では強い言葉を口にできない様子で、口をもぐもぐと動かすだけだった。
グレンもまた不満が多いのか、表情がすっきりとしなかった。
南部と北部の間に積もった感情の溝を見せる象徴的な例だった。
その様子を見ていたナディアが考えた。
『王がああして死ななかったとしても、いつかは戦争が起きていただろう。』
つまり、魔族の王の生死とは無関係に、彼の死は既に予定されていたということだ。
ナディアの口元に寂しげな笑みが浮かんだ。
だがそれも束の間、彼女はすぐに明るい表情を浮かべた。
そして手をパンパンと叩き、周囲の雰囲気を和ませた。
「さあさあ、どうせ補助金なんて大した金額でもなかったじゃないですか。それよりも安定した収入源ができる方がいいことですよ。」
「もちろん、それはそうだけど……」
「次の議題に進んでもいいですか?戦争で孤児が増えましたよね。だから孤児院と貧困者支援施設を増やしたいのですが……」
ナディアの話が続くと、執務室の中の雰囲気が徐々に明るくなっていった。
家臣たちがそれぞれの意見を出し始めると、一時的に沈んでいた空気が再び活気を取り戻しはじめる。
しかし皮肉なことに、その場で議論されていた多くの議題がすべて後回しになることになったのは、その後のことである。
東部に視察に出ていた王が、食事を誤って食べて死亡したという知らせが伝えられたようだった。
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バベル2世 15年、8月。
王の遺言状が公開される。
第二王子リアムが後継者に指名される。
外戚部のオルデル伯爵の領地を訪れていた第一王子フレイが、遺言状の真偽に疑問を抱く。
バベル暦 2世15年、9月。
リアムが首都に戻り、皇太子冊封式を執り行う。
同じ月。
北部連盟が公式にユオン将軍の真実性に疑義を提起する。
公式な調査を要求するが、拒否される。
バベル暦 2世15年、10月。
各地の臣下たちが一堂に会し、会談を開く。
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各家門の紋章が刻まれた馬車が、凍りついた大地の上を並んで進んでいた。
次の王位継承者を協議する会談に参加するためだ。
会談に参加する領主たちの名前は無色であったとしても、暫定の会場は皇無地の一角に仮設された。
薄氷の上を歩くような政局であるだけに、誰もが互いの領地に足を踏み入れたくない様子だった。
当然のことながら、最低限の護衛を除いた兵力は同行していない。
会談場の周辺を守っているのは、少数の王室近衛兵と、領主たちが連れてきた護衛だけだった。
その王室近衛兵の一人が、グレンに近づいて尋ねた。
「失礼ですが、身分を確認させていただきます。ウィンターフェル侯爵様でいらっしゃいますか?」
「そうだ。」
「それでは、お隣のレディは……?」
「私の妻だ。」
すると彼の表情が一気にぎこちなく変わった。
「会談場に入れるのは、各家門の家主一人だけです。」
「知っている。しかし、同行者を連れてくるなという話は聞いたことがないが。」
一見、理屈に合わないような返答ではあったが、グレンにとってそれを納得させる義務はなかった。
しばらく迷っていた衛兵が、グレンを案内するために口を開いた。
「うーん……それでは、奥様は会談場の外でお待ちください。後継者様はこちらへどうぞ。他の方々はほとんど到着されています。」
「ナディア、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
ナディアは遠ざかる夫の背中に向かって手を振った。
グレンの姿が完全に天幕の中に消えると、ファビアンが口を開いて言った。
「奥様、天気も寒うございますし、馬車の中でお待ちくださいませ。我々が食事の準備を整えましたらお呼びいたします。」
「では、お願いします。」
秋とは名ばかりで、皇無地の上にはすでに冷たい風が吹きつけていた。
ナディアは外套の裾をしっかり握り、体を反転させた。
だが、彼女がちょうど馬車の中に入ろうとしたその時だった。
「侯爵夫人!ウィンターフェル侯爵夫人!」
聞き覚えのある声だった。
振り返ると、見覚えのある顔が手を振りながら走ってきていた。
第一王子フレイだ。
明るい金髪が冬の陽の下でも黄金のように輝いていた。
その姿を見たナディアの最初の感想はこうだった。
『走らないでください、殿下!』
王族の体面を考えて歩けと言われたのが喉元まで出かかったが、ナディアはそれを指摘するのをあきらめた。
あまりにも嬉しそうににこにこ笑っている相手に、夫人も小言を言うことができなかったのだ。
『まあ、王族に親しみやすい魅力があるってのも悪くないわね。』
ナディアは軽く膝を曲げて挨拶した。
「殿下もいらしてたんですね。」
「ついてきただけさ。なのに会議場には入れないって言うんだって?」
「それは家臣たちだけが集まって意見を交わす場ですから。それよりも、オーデル伯爵は?」
「すでに会談場の中に入っています。少し前に到着していました。あの方は……約束の時間に1秒でも遅れるのを嫌う方ですから。」
そう話すフレイの顔に、かすかに引きつったような気配がよぎった。
ナディアは思った。
『オルデル伯爵が後継者教育をきちんと施しているのね。』
彼はジョカとは正反対の性格で、本当に幸運だった。
「それでは、会談場に入れない者たち同士ででも、話でもしましょうか?」
「いいですよ。」
そう言った二人はすぐに席を移動した。
使用人たちが火を焚いたたき火のそば、簡単な椅子が置かれた場所だった。







