こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
今回は259話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
259話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 素敵な組み合わせ
その晩、私はジェレミーと二人きりで遅い食事をした。
もともとアグリチェの人たちは各自の食事を済ませるのが普遍的だったので、他の兄弟たちは呼んでいない。
今さら家族の真似をして親睦を図るのは、私と他の異母兄弟の両方にふさわしくなかった。
ジェレミーはできるだけ長く私のそばにいたいと思っていたが、どうやら疲れがたまっているようで、私は彼を早めに部屋に戻した。
冬からずっと一人で無理をしていたうえに、ユグドラシルでも気にすることが多かったので、ジェレミーも十分な休息を取る必要がある。
その上、アグリチェでこのように滞在できるのも数日だけ。
各家門の首長たちはしばらくして、再びユグドラシルに集まらざるを得なかった。
そこで、これまでにない大会議が開かれる予定だったからだ。
キィッ。
ジェレミーを見送ってからもう少し時間が経った後、私も部屋を出る。
ジェレミーが言ったように、部屋は毎日掃除をしているかのように綺麗だった。
しかし、蝶番が少しパサついていたのか、ゆっくりとドアを開けると、かつてない鋭い鉄の音が響く。
誰も知らないうちに静かに部屋を出るつもりだったが、突然音がして瞬間的に動きを止める。
それでも外に感じられる気配はなかった。
ジェレミーが知れば、なぜか管理の疎かさを理由に使用人たちに警鐘を鳴らしそうだ。
そうする前に、ドアに油を塗るように言っておかなければならないと思って、私は廊下に出た。
このように夜中にアグリチェの内部を一人で歩いていると、さらに昨冬のことを思い出した。
私はゆっくりと歩いて、アグリチェを去る最後の夜に滞在したラントの執務室に向かう。
ジェレミーは首長になってもここに来たことがないようだ。
私は執務室に入ってきて、しばらく誰も使っていた痕跡のない室内の姿を一度見て回る。
電気をつけていない状態だったので視界が暗かったが、この程度はすぐに慣れて、すぐに難なく動くことができた。
私は部屋の片隅にある飾り棚から酒瓶と杯を取り出し、以前のように机に行って座る。
ここもやはり普段掃除は着実にしておいたのか、グラスが新品のように綺麗だ。
酒瓶を持って杯に酒を注ぐ。
窓の外の明かりを見ながら苦い液体を一口含んだら、本当に数ヶ月前に時間が戻ったような気がした。
そうしているうちに、ふとくだらない気がした。
あ、そういえば、あの日着ていたカシスの上着はどこへ行ったのだろうか?
どこかに落としたのは確かだが、それがどこなのか思い出せない。
まあ・・・もう失くした日時もかなり過ぎて、今思い出しても見つからないけど。
思ったよりグラスはすぐに空になった。
私はまたしてもその中に酒を注いだ。
窓の外の風景も、この部屋の静けさも、そして今私がここでやっていることも、冬の記憶を自然に思い出させるほど、その時と似ていた。
しかし、実際のところ、その当時とは多くのことが違っている。
それなら、もっとすっきりした気分じゃないといけないのに・・・。
不思議なことに、ずいぶん前に乗せられたものがまだ下がっていないように、胸が妙に重苦しかった。
そのように酒瓶を半分ほど空にして、ある程度酒気が上がってきた時、待っていたお客さんが訪ねてきた。
「一杯あげようか?」
それでも窓の外を眺めながら、私は黙ってドアを開けて入ってきた人に向って尋ねた。
これも昨年の冬と同じ状況だ。
しかし、窓に映ったのはその時とは違う人。
「なんで一人で飲んでるの?」
少しの空白の後、低い声が響いた。
ゆっくりと近づいてくる足音とともに、彼の裾についてきた外の空気が鼻先をかすめる。
「あなたを待っていたわ」
彼をここまで導いた蝶が私のところに飛んできて周囲を徘徊し、杯の上に舞い降りた。
私は首を回して、私の前に立っている男を覗野に入れた。
近づいてきたカシスが足を止めて私を見下ろす。
彼の視線が私の顔を静かに見回した。
私は自分の中までのぞき込もうとするかのように、私の目をじっと見つめるカシスを避けずに尋ねた。
「どこから入ってきたの?」
「あの時の、あの秘密の通路」
「本当?」
「いいや」
私がカシスを見つけたのは彼がちょうどこの建物の中に入ったときだった。
それで彼がどうやってアグリチェの中に入ってきたのか気になった。
昔の秘密通路を利用したという話に北側境界の大魔物生息地を横切ってきたということだと思って驚くところだったが、幸い冗談だったようだ。
しかし、カシスの次の言葉を聞いて、私は苦笑いしてしまう。
「正門側のセキュリティが脆弱だったが?」
だから灯台下暗しってことかな?
まさか堂々と正門から入ってきたとは。
どうやら、邸宅周辺の警備を強化しなけれはならないようだ。
もちろんカシスにはあまり役に立たないような感じではあるんですけれども。
その後、私たちはしばらく黙ってお互いの視線に向き合った。
こうして彼と顔を合わせるのは久しぶりのようだ。
もちろん毒蝶を通じて間接的に彼を見たことはあったが、こんな風に直接会うのはユグドラシルで以来初めてだったからね。
私はカシスが中立地域でデオンとニックスを訪ねたことを知っていた。
しかし、それについては何も言わなかった。
カシスも同様に私にそのことについては口を開かなかった。
「カシス、今この部屋、どこか知ってる?」
そうするうちに私は通りすがりに言葉を流した。
カシスの覗線が一度あたりを見回した。
「首長の執務室か」
彼は部屋の中の様子を見て、簡単に類推したようだ。
私はカシスを見ながら唇の先をそっと引き上げる。
「・・・私たち、ここで面白いことをしようか?」
再び目が合った。
私はカシスの反応を待たずに椅子から立ち上がる。
ところが、一歩ずつ前に踏み出すほど、視野に映ったものが目まぐるしく絡み始めた。
あまりたくさん飲んでいないと思っていたが、思ったよりずっと強いお酒だったようだ。
急に目の前がぐるりと回って一瞬ふらついてしまった。
そんな私をカシスがつかまえる。
「ロクサナ・・・」
何か言おうとしたかのように唇を引き離したカシスに体を近づけた。
思わず握ったカシスの襟をもっとぎゅっと握りしめ、額を彼の胸に当てたまま、私はしばらく動かなかった。
「ここ、ラントが使っていた部屋だよ」
しばらくして静かに頭を上げると、ずっと私を凝視していたようなカシスと虚空で覗線が絡まる。
「あの人は・・・」
私が本当に酒に酔ってはいるようだ。
「今もここで私を見ている」
さっきからカシスの背後に死んだラント・アグリチェの姿が見える。
暗闇の中でぼんやりと立っている黒い悪鬼が怨念に満ちた目で私を睨んだ。
私は不気味に光る赤い瞳を避けずに、それに正面から向き合う。
「だから、カシス」
カシスの気配が少し変わった。
私の言葉は彼にも何らかの動揺を引き起こしたようだ。
私はラントから視線を離し、再びカシスを覗界に入れた。
そして今私が何を言いたいのか自分も正確に分からない状態で彼にささやいた。
「今私にキスして」
前後の脈絡のないおかしな言葉だ。
しかし、カシスはそれに荒唐無稽さや疑問を示さなかった。
まるで私がどんな気持ちでこのような話をするのか理解したようだった。
もちろん単純な私の錯覚であるだけかも知れないが。
冷たく固まった彼の顔に窓の外から広がった光が染まる。
私は向き合った金色の瞳が光源のように輝くのを見て、にっこり笑う。
その後、カシスを待たずに先に頭を上げて彼にキスをした。
浅く重なった唇から温もりが染み込んだ。
カシスからは一瞬何の動きも感じられなかった。
そうするうちに押さえつけられたような低い息づかいが私の唇をくすぐった直後、彼は頭を傾けて私にもっと深くキスしてきた。
腰を包んだ腕がもっときつく締まる。
私は唇を広げてカシスを迎えた。
私の手にかかったグラスは体が後ろに傾いて横に倒れた。
床まで転がり落ちたが,カーペットの下にあったので割れなかった。
机の片隅にこぼれた赤い液体が私の裾も少し濡らす。
しかし、そんなことはどうなっても構わない。
カシスは私の望み通り、少しの隙間もなく私の唇を飲み込んで濃いキスをした。
その動きが多少荒かったが、むしろそれが良かった。
目の前がますます眩暈がする理由が続くキスで息が苦しくなったためなのか、それとも体から噴き上がる熱で一緒に酒の勢いが強くなったためなのか分からない。
私はカシスの首に腕を巻きつけ、彼をさらに引き寄せる。
背後に涼しい寒気が漂う机が届いた。
しかし、目の前には炎のように熱い体温があり、それを渇望して触れ合った体が熱くさせる。
足を上げてカシスの腰に届く瞬間、彼はぴくっとした。
しかし、ここまでして辞めるつもりはない。
私はもつれた舌を痛くないようにかみしめながら手を動かし、カシスの首筋にざっと目を通した。
しばらく止まっていたカシスも再び動き出した。
熱い手が私の体を伝って流れ落ちる。
少し前までいつ灸を据えたかのようによどみない手が素肌に触れた。
同じように体温の高い唇が私のあごに烙印を押して降りてきて、首に細かい跡を刻みながら下に道を作った。
体を覆っていた布切れが剥がれても寒気の代わりに熱気が押し寄せたる。
全身を飲み込むような荒々しく巨大な嵐が私を襲ったようだった。
しかし、それを飲み込んだのは私だ。
私はカシスの全てを貪欲に平らげる。
曇った視界に闇が広がった。
遠くからでも、その中に埋め込まれた赤い瞳だけが鮮明に輝いていた。
私は急な息を切らしながらカシスの肩に顔を埋めたまま笑った。
このように低劣な快感が沸き上がると知っていたら、ラントが生きている時も見せてあげればよかった。
私は今、ラントから奪った戦利品を彼の幽霊の目の前で私のものに取っていた。
もちろんカシスは私にとってそんな下品な言葉で呼べる人ではなかったが。
しかし、アグリチェの視点から見た時、カシスは私がラントから初めて奪っていくのに成功した人だと言える。
その上、彼はラントが生きている間、あれほど歯ぎしりしながら殺したがっていたリセル・ぺデリアンの息子。
そして私は、ラントの娘だ。
それも彼を裏切って死に追いやった。
なんて素敵な組み合わせなんだろう?
どうして私が笑いをこらえることができるのか?
眩暈がする頭にうっとりするほど強烈な快感が走る。
背筋を伝って流れる戦慄で体が震えるほどだった。
いずれにせよ、私の肉体の血を半分ほど譲った父の幽霊を前にして、彼の空間といえるいるところで彼の仇敵同然の男と体を交えながらこのような感情を感じるとは。
もしかしたら私は気が狂ったのかもしれない。
でも・・・。
今この瞬間この場にいるのは私であり、また今この瞬間このように生きていることもまたまさに私だった。
そうだよ。
ついに私は勝利した。
終わりがなさそうだったこの凄絶な戦いで。
今この瞬間になってやっとそれを実感した。
すると、後になって抑えきれない勝利感が押し寄せてきた。
その中に頭の先からつま先まで飲み込まれたまま、私はもがいた。
「・・・ロクサナ」
そうするうちに突然、先が少し割れた音声が耳元に溜まる。
上半身を少し持ち上げて、私から身を引いたカシスが私を見下ろして、もう一度変なことを言った。
「泣かないで」
私を見つめるカシスの顔に秘められた感情を見て、私はもっと理解できない気持ちになった。
私はきっと勝利感に酔いしれて笑っていたのに、どういうことだろう?
歯にそっと力を入れたように、カシスの顎が硬くなる。
すぐに彼は手を上げて私の目の周りをゆっくりと見回した。
彼の指が触れるところに湿った感じがして、ようやく私が涙を流していたことに気づいた。
・・・おかしかった。
こんな瞬間に、なんで涙が出るんだろう。
もしかしたら、この前まで一緒に過ごしていたニックスの涙が移ったのかもしれない。
彼は人形のくせにとてもよく泣いたから。
グリゼルダの隠れ家に滞在する間も、とれほど昼夜を問わず泣いているのか、そこで過ごす間、一日もまともに眠ることができないほどだった。
そうしているうちに、すぐに私は少し前にカシスがそうしたように歯をそっと食いしばってしまった。
間抜けな人形。
ニックスは私の留守中に去った。
カシスが彼に会ったのは確かだが、結局こうなったのを見ると、ニックスの体は回復の見込みがないことが明らかだった。
だから、おそらくあの愚かな人形は、自分が死ぬ姿を私に見せたくなくて、音もなく消えたのだろう。
もう彼は本当に分かるように考えて行動しているようだったから。
ニックスが本当に蘇ったアシルなのか、それともただ自我の混乱を感じている人形に過ぎないのか、私は知らない。
しかし、敢えてそれを問い詰めて知りたい気持ちもなかった。
むしろニックスが主張したように、このまま彼を人形だと思った方が良かった。
ある意味、私の立場ではニックスが消えてくれたのがもっと楽なことだから。
どうせ私がわざわざ探さなくても彼はすぐ死ぬはずだったし、目の前で息が止まっていくニックスの姿を見るのは私としても気まずいようだったからだ。
それでも・・・。
「おかしい」
なぜか今これが私が望むものではないような気がしきりにした。
私は本当にそんな理由だからニックスの後を追わなかったのか?
「私は勝ったのに・・・」
私は誰に言っているのか分からないことをつぶやいた。
「なんでまだこんなに空っぽなの?」
相変わらず心が寂しかった。
まるで私に穴があいた部分があって、いくら頑張ってもこのまま永遠にその中がいっぱいになることはなさそうだ。
カシスが涙を拭いてくれた手を動かして私の顔を掃いた。
泣いている私を映している彼の瞳に一見苦痛に似た感情が通り過ぎていく。
すぐにカシスは頭を下げて私の目の周りにキスをした。
肌の上に羽毛のように温かくて柔らかい温もりが染み込んだ。
「ロクサナ、あなたは空っぽではない」
続いて、低い声が耳をくすぐった。
「それでも物足りなさが感じられたら・・・」
カシスはずっと私にささやいた。
「これから詰めていけばいい」
これから一つずつ一緒に埋めていこう。
そしてそんなに間もなく、きっと私の中が溢れるほどいっぱいになるだろうと。
カシスが繰り返しそう言ってくれるから、本当にそうかもしれないと思った。
私は優しいささやきを聞きながら彼をもっと強く抱きしめた。
ただ私のためだけに存在する胸の中に抱かれている間、間の中に沈んでいた赤い瞳も消えた。
カシスと私はそれ以来ずっと黙って抱き合っていた。
それでも触れ合った体に数多くの言葉が伝わってくる。
窓の外で輝く星のように、燦然とした言葉が心臓の上に降り注ぐようだった。
闇夜。
しかし、暗黒が濃いほど、それを照らす光も明るくなるものだったからだ。
だからきっとこの夜を追い出して来る夜明けは、いつにも増して世の中をまぶしく照らすだろう。
翌日目が覚めたとき、私は自分の部屋のベッドに横たわっていた。
カシスはもう帰ったのか見当がつかない。
しばらく寝たまま窓の外から入ってくる日差しを眺めた。
今日は晴れていて、部屋の中に積もった日差しが特に明るかった。
カシスともう少し分かち合いたい話が多かったが、今になって遅れて残念な気持ちになる。
カシスもぺデリアンで他にやることが多いはずだが、この時点でアグリチェまで来たのは明らかに私のことを心配しているからだろう。
やがて私はベッドから身を起こした。
その後、化粧台に行って鏡を確認する。
それでも幸いに顔に昨夜の跡が残ってはいなかった。
目に腫れさえない上に、むしろ体が軽いのを見た時、どうやらカシスが措置を取ってくれたようだ。
鏡に映った自分の顔が普段と変わらないことを確認し、私は目を一度長く閉じて開けた。
そして鏡の中の冷たい顔を後ろにして背を向ける。
清浄をふるうのは昨日一日で十分だ。
すでに今までの私が歩んできた道は、いくらもがいても変えられないものだから。
しかも、過去の残骸に捕まっているには、これからの私が歩かなければならない道があまりにも長かった。
だからこれからは前だけ見て行こう。
そう思って、私は一歩踏み出して、固く閉ざされていた部屋のドアを開ける。
目的を成し遂げたはずなのに空虚さを感じるロクサナ。
そんな彼女を救ってくれるのはカシスだけですよね。
新たな一歩を踏み出したロクサナのこれからが楽しみです!
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