こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は315話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
315話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 復讐の終わり
「よく似合う?」
鏡の前に立ったエレナがくるくる回りながらメイに聞いた。
「花に座った蝶のようです」
「綺麗に見えるなんてよかった」
エレナは髪を整えながら微笑んだ。
いつにも増して濃い笑顔が彼女をさらに輝かせる。
(時間が経つのは本当に早い。今日が処刑日だなんて)
謀反に関する調査が終わり、約束のなかったベロニカの処刑が今日行われる。
謀反に加担した家臣たちや、親戚はすでに処刑された。
今や、謀反の首謀者フランチェ大公の唯一の血肉であり、後継者であるベロニカを処刑するので、代を絶って帝国法を正すだろう。
(ヴェロニカがよく耐えてくれた。気が狂って死んでしまったらどうしようと心配したのに)
限りなく慈愛に満ちたエレナだったが、ベロニカには悪魔よりも残酷だと思われるほど、一抹の同情も与えなかった。
聞くところによると、処刑日が決定されるまでずっと不安に震えたという。
死が与える恐怖心に苦しみ、体は醜くやせ細ったとか。
しかし、彼女を苦しめた心理的な拷問も今日で終わり。
帝国の象徴である首都凱旋門。
謀反の首謀者フランチェ大公の首が嘆矢されたそこでベロニカの処刑式が行われる予定だ。
今日のためにエレナはクリスティーナに特別なドレスを注文した。
派手すぎるとベロニカの処刑を楽しんでいるように見えるため、色と華やかさは殺された。
その代わり、マーメイドドレス特有のラインを見せながら、高雅さと品格を同時に生かした。
惨めに死んでいく自分の境遇とは違って、夜空の星よりもっと輝くエレナを見れば、ベロニカはどんな気分になるだろうか。
格の違いから来る絶望感と悲惨さに身露いしながらあがくだろう。
そして死ぬその瞬間まで目を閉じないだろう。
エレナはその最後を満喫するために今日を待った。
「できた?」
「はい、お嬢さん」
ドレスの裾がしわくちゃにならないか点検していたメイが手を引いた。
一つの乱れもなく完璧な準備を終えたエレナが寝室を出る。
「お嬢さん」
クリスティーナが特別にデザインした白の制服を着たヒュレルバードが声をかけた。
「どうしたんですか?」
「隣の部屋でレン伯爵が待っています」
「レンが来たんですか?」
エレナは目を丸くする。
「はい、待っているとは言わないように頼んだので申し上げられませんでした」
「とにかく無事だったのですね」
エレナは微笑んだ。
口元に浮かぶ笑みがいつにも増して明るかった。
それもそのはず、首都に戻ってきて1ヶ月が過ぎたのに、レンに会えなかった。
バスタージュ伯爵家として書信まで送ったが、返事をもらえなかった。
良くないことでもあるのかと気になって、自分の足で訪ねてきたというから、とても嬉しかったのだ。
レンが待機しているという応接室のドアを開けてエレナが入る。
「レン」
エレナの呼びかけに自分の家のようにソファーに足を組んで座っていたレンが手を振った。
「久しぶり」
「どうしたんですか?返事もないし。何かあったんですか?」
レンは特有の意地悪な笑みを浮かべた。
「ないけど」
「じゃあ、どうして返事をしないんですか?心配したじゃないですか」
レンの口元にかかっていた笑みがさらに深まる。
「私は、あなたを見たよ」
「いつですか?」
「たびたび、いや、よく」
エレナが首都に来た日。
サロンの討論に参加した日。
両親を逹れて皇居に行った日。
その他にも10本の指で数えることもできないほどよくエレナに会っていた。
それで今のこの出会いが彼には昨日会ってまた会うように自然だった。
エレナは馬鹿げているかのように追及する。
「いや、見たなら知ったかぶりをしないと。報告書も知らないふりをしたら私がどうやって分かるんですか?」
「一種の節制というか」
「司祭になるつもりですか?それは知らなかった。でも司祭と距離が遠い人だということは自分でもよく知っていますか?」
レンはくすくす笑った。
「事実なのに。手に負えないと思って我慢するんだよ」
「変なこと言わないで。連絡はして生きています。顔も映るし」
「私がどう出ると思って連絡して顔も映せって。ばっとここに座って暮らしたくなる」
レンはにっこりと笑う。
おそらく死んでもこのひばりのような女性は知らないだろう。
今言っているこの言葉が冗談ではないことを。
レンはエレナを不快にさせたくないので、いつもの冗談で包装した。
「荷物は後で運んでおくから、行って。処刑式に遅れるよ」
「レンは行かないんですか?」
「狂った女の死には興味がない」
「狂った女」という言葉にエレナは失笑した。
「そうですね。今日は難しくて別に時間を作って食事でもしましょう。さもないと伯爵家に攻め入りますよ」
「いつでも歓迎する」
「じゃあ、私は行きます。後で会いましょう」
エレナは挨拶をし、急いで応接室を出た。
久しぶりに見たレンには申し訳ないが、処刑式の時間に合わせるためには遅滞する暇がなかった。
がらんとした応接室に一人残ったレンが伸びをしながら起きる。
「本当に攻め込むのかな?送り返したくないと思うけど」
レンは冗談交じりの冗談を言いながら、よろよろと応接間を出ていく。
サロンを出発したエレナは馬車に乗って凱旋門通りに向かう。
皇室でベロニカの処刑式を公表しただけに、街は逆賊の処断を見るために凱旋門に向かう帝国民でにぎわっていた。
エレナが到着した凱旋門一帯は、足の踏み場もなく人だかりができている。
平民だけでなく、数十人の貴族も処刑式を参観するために訪れていた。
貴族の勢いが衰え、皇権が強くなるにつれ、皇帝によく見せるためのコウモリのような者たちだ。
ヒュレルバードが止まった馬車のドアを開けると、静粛に着飾ったエレナが姿を現した。
ヒュレルバードのエスコートを受けながら降りたエレナに向かって、貴族たちと平民の視線があふれた。
美貌も美貌だったが、Lの名声によって人々の注目を集めるしかなかった。
「殿下がお待ちです」
皇居近衛副除長のフィギンが待っていたかのように丁寧にエレナに挨拶しながら案内する。
凱旋門を挟んだ中央に処刑台が、左右には壇上が設置されていた。
左側には子爵以下の貴族が着席し、右側には皇族と伯爵以上の高位貴族が座って
いた。
原則的に準貴族の身分であるエレナも左側に座るのが正しい。
しかし、シアンはそのような貴族的な形式にとらわれないようにエレナの席を設けた。
「殿下にお目にかかります」
「最もよく見える席を用意した」
シアンの権限は隣の席であった。
原則的に皇太子妃や格別な女性だけが座れる席だったので、エレナも慎重だった。
「はい、殿下。勧めてくださるので、感謝の気持ちで着席します」
エレナは断らなかった。
誰よりもベロニカの没落を望んでいた彼女だったので、この瞬間だけは他人の視線を意識せず、完全に処刑式に集中したかったからだ。
(あそこに来るんだ)
エレナは死刑執行に目を向ける。
馬車に監禁されるように閉じ込められていたベロニカが皇居近衛隊の手に引かれて連れ出されていた。
やせこけた顔、やせこけて骨しか残っていない腕と足、半分怖がって揺れる目つき。
ベロニカには生気が感じられなかった。
死を認めず、薬がカラカラに上がった毒気さえも抜け出たように元気がないように見えた。
「死に物狂い!」
「どうして皇帝陛下の獄体に無礼を犯すの?」
「サロンではお酒に毒を入れようとしたんだって?その時、そのお酒を全部飲んでみて。ぞっとする」
「悪魔よ。人の仮面をかぶってああするわけにはいかない!あんな女は殺さないと!」
彼女の悪行が皇室調査隊によって知らされ、公憤を感じた諸国民が歯ぎしりした。
激しい感情に打ち勝つことができなかった何人かは、石をつかんでベロニカに向かって力強く投げつける。
ほとんどの石が届かなかったが、いくつかはベロニカの頭や肩を殴った。
「ああっ!」
ベロニカは断末魔の悲鳴を上げ、うつむいていた首をさっと上げる。
ほどいた長い髪の間に見える目つきから狂気が垣間見えた。
目が合った諸国民が思わず肩をすくめた。
死にかけているのに、何の目つきが殺伐としているのか。
皇宮近衛隊員に連れてこられたベロニカが処刑台に上がった。
「ひざまずけ」
ベロニカが殺しそうに睨みつけて反抗すると、皇宮近衛隊員が膝の後ろを突いて無理やりひざまずかせた。
「離せ!離せ!」
かつての悪を取り戻したベロニカが身もだえをすると、皇居近衛隊員が肩をぎゅっと押さえて強制する。
結局、彼女ができる最後のあがきというのは、目を見開いてあの壇上の上にいるエレナに向かって呪いをかけることだけだ。
「L!これは全部君のせいだよ。根も葉もない卑しいものを連れてきたら、あえて!」
距離感があったにもかかわらず、ベロニカが騒ぐ言葉がエレナの耳に鮮明に聞こえた。
ベロニカは青筋の立った目で呪いをかける。
「これで終わりだと思わないで。死んでもただではおかない。夜ごとに訪ねてゴロゴロと噛むだろう。お前が死んだら地獄に連れて行って火の穴に突っ込んでやる」
エレナは無表情にそのようなベロニカを見下ろすだけで、一切返事も反応も見せなかった。
見るに見かねたシアンが椅子を蹴って立ち上がり、謹厳に叫んだ。
「リンドン伯爵は罪人の罪を詠むように」
シアンの指名を受けたリンドン伯爵が壇上の前に出て巻物を広げる。
「一罪逆謀加担、二罪皇帝殺害加担、三罪皇帝獄体損傷、謝罪貴族殺害、五罪貴族殺人未遂・・・その他六つの追加罪目で罪を求刑するところ。帝国法に基づいて処刑を命じる」
リンドン伯爵が詠んだベロニカの罪目はなんと11種類に逹した。
大逆罪である逆謀から始めて、一様に質が悪く、許されない重罪だった。
「執行せよ」
シアンの命令が下されると、皇宮近衛隊員がベロニカを連れて行き、処刑台に固定する。
高いところにぶら下がっている青い刃が太陽の光を浴びて身の毛がよだつように輝いた。
「放して。これを開けろって!お前らはみんな覚えているだろう。悪魔になっても皆殺しにするぞ!」
ベロニカのあがきはそこまでだった。
皇居近衛隊員が処刑台の天井の刃を支えていた綱を剣でたたき切ってしまった。
稲妻より速く降りてきた刃がベロニカの首をそのまま切る。
彼女の頭は処刑台の下で転がっていた。
最後の瞬間まで死を受け入れることができなかったベロニカの姿は哀れだった。
エレナは少し残酷かもしれない処刑過程を一瞬も目を離さずに見守る。
この瞬間のために、息もつかずに走ってきたのだから。
この復讐の最後を見守る義務が彼女にあったから。
エレナは頭を上げて、澄んだ空を見上げた。
前世と現生の記憶が交差し、形容できないほど多くの感情を呼び起こした。
「全部終わったよ」
混乱はしたが、涙は出なかった。
感動的でもなかった。
前世という足かせから解放された今、やっと完全に彼女の人生を生きていけるようになったことに感謝するが、その重さも感じていた。
復讐は終わりではなく始まりだから。
エレナはできる限りのことをするつもりだった。
2度の人生をプレゼントした神の奇跡に恥ずかしくないように、その最後に何があるかは分からない不安定な未来だとしても力強く生きてみるつもりだ。
やっとまともに暮らせるようになった彼女の人生に向かって一歩、二歩以上足を踏み出す
力さえ残らない時まで。
首をかしげる時に残された足跡に笑うことができるように生きろ。
<END>
エレナの復讐が終わりを迎えました。
ここからの未来が気になりますね。
物語はこれで完結です。