こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は75話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
75話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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「皇太子殿下にお目にかかります」
エレナとラファエルは立ち上がり、礼儀正しくシアンを迎える。
度々画室を訪れていただけに、彼らも戸惑うことはなくなった。
但し、問題は別にある。
「どうして君がここにいる?」
隅の椅子に座っているレンを見つけたシアンが冷ややかに尋ねる。
「会いたい人がいましたから。そういう殿下こそ、こんなむさ苦しい場所にどのような要件で?」
「虐めたい相手がいると聞こえるね」
シアンが直球でレンに言葉の刃を向ける。
「落ち着いてください。私たちは仲良くなっているのだから。そうだよね、後輩ちゃん?」
「・・・」
「この状況でお前が無視したら、私が嘘をついているように見えるじゃないか」
エレナからの返事がないにもかかわらず、レンはあまり気にしていない様子だった。
「君は大丈夫なのか?」
「私ですか?ええ、まあ・・・、大丈夫ですが」
思いがけないシアンからの質問に、エレナは困惑しながら答える。
「なるほど」
会話のやり取りは短いが、シアンがエレナを気にかけていると気づかないほど鈍感な人物は画室の中にいなかった。
反応は違うが、レンもラファエルも疑問に満ちた目つきをしている。
最も困っていたのは、中間に挟まれたエレナ。
これまで一度も受けたことのないシアンの心のこもった配慮に、ありがたさと共に手に負えないほどの混乱を覚える。
かつては彼と向き合うたびに、かつての傷跡が疼くような痛みを感じていた。
しかし、今はもう平気。
エレナの思考が深まった頃、ドアが開きセシリアが元気よく入ってきた。
「こんにちは。サンドイッチを持ってきたのだけど・・・。ああ、殿下もいらしていたのですね?」
シアンに挨拶したセシリアが、画室の隅にいるレンを見つけて目を丸くする。
彼女は困惑した表情で立ち尽くしていた。
レンはそんな空気の中で、各人物を大袈裟に褒め称えるが、誰も相手にしなかった。
(はあ、どうしてこんなことに?)
頭痛がする。
ラファエルを除けば、みんな学術院在学中に会いたくなかった人物たちなのだから。
狭苦しい地下室で、全員が互いの顔を見合わせていた。
誰もが先に話を切り出すのが難しい状況。
(私のせいだ・・・)
認めざるを得なかった。
接点のないこのメンバーたちが集まるようになったのは、以前の暮らしにはいなかったルシアという存在が介入したからだということに。
エレナは低くため息をつく。
少なくとも、この気まずさを消しておきたい。
「セシリア先輩、さっきサンドイッチを持ってきたと言いませんでしたか?」
「え?ええ。お腹が空いていると思って」
「良かったです、お腹が空いていましたので」
そう言って、エレナはテキパキとテーブルの上を片付けて、食事の準備をする。
そして、全員を席に座るように勧めて、食前のお祈りをした。
(これからはお互いが出会わないように)
そんな願いも一緒に込めて。
画室を出て中央広場を横切るエレナ。
本来ならば図書館に直行したいが、今日はそれが出来ない。
望んでいない二人の男性が同行しているため。
「お見送りはもう結構ですので、お二人もお忙しいのでは?」
「私が学術院に入学して以来、すべきことが無いので」
レンがいい加減に答えると、シアンも負けじと言い返す。
「君を一人で行かせるのは、あんまり好ましくない」
レンがついているから心配なのは分かるが、エレナには気にかかる好意だった。
このままでは噂はどんどん広がってしまうだろう。
そうなれば、静かに過ごすのは難しくなる。
それはエレナにとって最悪の状況。
彼女の計画では、最低限の身分を確保したまま、密かに復讐の準備をすること。
ところが、こうして注目を集めてしまうと、今後の計画に歯止めがかかってしまうだろう。
何度説得しても離れてくれない二人に、ため息をつくしかなかった。
「殿下はどうして、こんなにもこの子を庇うのかな?」
「・・・」
「まさか、この子に好意があるのかい?」
レンがニヤニヤ笑って、そう尋ねる。
その質問にエレナの足が一瞬立ち止まる。
くだらない質問だと無視しようとしたが、シアンの返事が気になってしまったから。
「あなたは相変わらず無駄なことに関心があるのだな」
「ええ、肯定も否定もしないさ」
「・・・」
「殿下はこの子を誤解してるだろ?」
そう言ってレンが露骨にエレナを引っ張る。
「私はこの子の秘密を知ってるよ」
「あなたの言葉に信頼はない」
シアンは線を引いて、レンの言葉を聞き入れる考えがないことを明確にした。
「殿下には守れないよ。いいや、手に負えないだろう」
レンの意味深な発言に、肩を震わせて反応したのはエレナだった。
彼の言葉の中には骨がある。
(まさか、私がベロニカだということに気づいた?)
不安が起こるが、エレナはすぐに否定した。
(私がベロニカであることを知っていたら、知らないふりをする人間じゃないはず)
それなりに納得のできる結論を下したが、それでも逼迫感は解消されない。
「・・・」
なぜかシアンはレンの意見に反論できなかった。
「私の勝ちだね。もう行くよ」
レンはシアンの言葉を遮ったことで勝ったと感じたのか、そのまま反対方向に歩いて行った。
「殿下の表情が怖いから、君が慰めてあげな」
最後までシアンを刺激し、彼は手を振りながら去っていく。
エレナの望み通りにレンは消えたが、そのせいで雰囲気はメチャクチャになった。
向かい合ったシアンの表情を見て、思わず緊張してしまう。
夫婦で生きている間にも見られなかった恐ろしい表情を彼が浮かべていたから。
「殿下・・・」
声をかけると、シアンは怒りを抑えた声で言った。
「頭に来た。彼の言葉に何も否定できない私に」
その言葉を残して、彼は背を向ける。
一人残されたエレナは、遠ざかるシアンの後ろ姿を見て、長い間その場を離れることが出来ずにいた。
レンは雰囲気を悪くさせる天才ですね。
彼がどのタイミングでエレナの秘密をバラすのかが怖いです・・・。
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