こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

104話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 向き合う勇気②
南宮、後園。
フィローメルの言葉を聞くために集まった四人の前で、彼女はこれまで知っていると思っていた全ての考えを振り払った。
エレンシアの記憶、星光商店での出来事、そしてこの世界がゲームのようだという個人的な推測まで。
カバンに入っていた様々な商品も見せられた。
商品を一通り試した後で、レクシオンが言った。
「確かにこの世界が創作物だというフィルの仮説はそれらしいですね。」
「……本当にそう思いますか?」
自分で言っておきながら、あまりに突拍子もない話だったので、彼らの平然とした態度にフィローメルはさらに驚かされた。
「この商品の中には明らかに現存する魔法の限界を超えたものがあります。ここよりもさらに高次の世界が存在すると仮定してもおかしくないでしょう。」
今回はジェレミアが話した。
「そして一部の魔法使いたちの間でも、世界を特定の方向へ導く巨大な力があるという話が出ていました。」
「巨大な力ですか?」
「各地でしばしば観測されるんです。正体を特定できない強力な魔力の反応が。」
次に話を引き継いだのはルグィーンだった。
「そしてそのような魔力反応が起きた後には、予想外の状況が起こる。」
彼はテーブルをトントンと叩いた。
「魔法使い達と神官たちが百人なら百人全員、明日は雨が降るだろうと予測した日、土砂降りの雨が降ったとか。」
思い出がよみがえった。
フィローメルは9歳の頃、建国祭での出来事を思い出していた。
その話を聞き終えた後、ルグィーンは考え込んだ。
「その日のことなら、私も覚えている。突然空から雨が降り始めて、そしてその部屋でエステリオンを感じたんだ。」
「エステリオンがなぜ……?」
フィローメルの問いに彼は肩をすくめた。
「実際に、強大な力が残る魔力反応自体が、エステリオンとかなり似ている。」
ジェレミアが付け加えた。
「だから私たちは、もしかするとエステリオンが巨大な力からこぼれ落ちたものではないかと推測してきました。何らかの理由で、その巨大な力の一部が剥がれ落ち、誰か一人の人間に付与されたのではないかと。」
ルグィーンはテーブルの上に置かれた商品を一つ一つ見渡した。
「これらからもエステリオンを感じる。その時の霧のように。」
そういえば、彼は以前も知恵の秘薬を見てエステリオンを感じると言っていた。
「フィルが岩の光と共に消えたときもエステリオンを感じた。光が消えると、エステリオンももう感じなくなったけど。」
フィローメルは思わず喉を撫でた。
知恵の秘薬だけでなく、彼女が経験したすべての奇現象がエステリオン、そして巨大な力と関わっているようだ。
その時、理由は分からないが、キツネから聞いた単語が頭に浮かんだ。
「システム……」
「システム?」
「ああ、商店で会ったキツネが言ってたの。システムってやつを使えば、どこにある商店にも行けるって。」
それまで黙っていたカーディンが口を開いた。
「システムってすごい力なんじゃない?」
ジェレミアがカーディンをにらみつけた。
「何の根拠で?」
「勘だよ。」
「感覚で語るな!」
レクシオンが弟たちを制止した。
「さあ、落ち着いてください。カーディンの言うことも一理あります。フィローメルがどこかへ消えたとき、ルグィーン様は巨大な力を感じ、その場所はシステムというものを通じて行けるところではないかと。」
私の推測に力を得たカーディンは興奮して言った。
「そうだ。これからは『巨大な力』じゃなく、ただ『システム』って呼ぼう!そのほうがかっこいいよね!」
複雑に絡んだ状況をレクシオンが出てきて整理した。
「つまりフィルの仮説が少し強化されたわけですね。この世界が他人の創作物の中だという……。……正直に言うと、あまりにも衝撃的です。」
眼鏡の奥に見える二つの瞳は、熱意に燃えていた。
「これほどまでに衝撃的なら、実際に確認してみたくなるのも当然ですね。」
他の人々も同意を示した。
カーディンでさえも。
『魔法使いだからだろうか。みんな考え方が似ているな。』
彼らが馬鹿げた話だと一蹴してしまえば、それで終わりだったかもしれないが、今まで抱えていた不安は、思ったよりも深いものだったようだ。
ルグィーンが手を挙げた。
「では、そのシステムというものについて、持ってきた不審な物品を調査して、詳細を明らかにしよう。」
その言葉に兄弟たちはそれぞれ気に入った商品をいくつか手に取った。
「次の議題に移ろう。」
今度はエレンシアについて議論する番だった。
〈皇女エレンシア〉の著者であり、別の世界から来た者。
『そしてこの世界の創造主を演じたがっていた人間。』
だが、商店で見た彼女は創造主と呼ぶにはあまりに未熟な存在だった。
この世界がゲーム内の世界だとしたら、〈皇女エレンシア〉の正体は一体何なのだろうか。
「とても重要な問題だな……。」
ルグィーンの目つきが鋭くなった。
「ナサールってやつ、何者なんだ?何の関係がある?」
「……え?」
「そいつは何者なんだ?なんでお前の周りをうろついてるんだ?」
推測するような4人の視線がフィローメルに向けられた。
自分とナサールの関係なんて……。
呆然としたフィローメルはぽつりと尋ねた。
「それ、今重要なんですか?」
ルグィーンはテーブルをドンと叩いた。
「当然重要だ。他の世界の侵入者が現れたなら、この世界の全体像すら疑われるんだぞ。お前に近づく人間はまず疑ってかかれ。」
「ナサールと私は……」
彼女は少し考え込んだ。
少し前の出会いでは、二人の今後の関係について具体的に決めたわけではなかった。
『でもナサールは私が好きだと言ったし、私も友達以上の感情があるって言ったし……』
恋愛は小説でしか触れたことがなかったが、この関係はこう表現するのが妥当だった。
「お互い良い気持ちを持って付き合っていこうという関係です。」
「つ、付き合う?」
ルグィーンは口を開けたまま、驚いた顔をしていた。
ジェレミアは目を見開き、カーディンの口もぽかんと開いた。
レクシオンだけは「そんなもんだろう」とでも言いたげな顔で、淡々とお茶を飲んでいた。
「私が交際をするなんて、そんなに予想外のこと?」
ルグィーンは勢いよく席を立ち上がり、問いただした。
「交際って、普通は打算的にするものじゃないか?じゃあ、そのナサールってやつと結婚するの?」
「結婚だなんて…… それはまだ分からない。」
「分からないってことは、結婚するかもしれないってことだろ? お前はあの男が好きなのか? どうして? どこが好きなんだ?」
質問を浴びせる父親をレクシオンが制止した。
「さあ、やめましょう。家族間でもプライバシーは尊重すべきです。」
「お前は黙って……」
「ええ。不貞な父親というのは、子供の恋愛に必要以上に干渉しないものですよ。」
「……チッ。」
ルグィーンは言いたいことが山ほどありそうな表情で口をぎゅっと閉じた。
「そして、それは不貞な兄の条件でもあります。」
続くレクシオンの言葉にカーディンとジェレミアがぴくりと動揺した。
まるで自分がナサールと付き合うことになったとでも言わんばかりに。
とにかくレクシオンのおかげで場は落ち着いた。
彼と親しげな視線を交わした後、フィローメルは口を開いた。
「それよりもエレンシアについて話し合いましょう。この場所がゲームの中の世界であるならば、エレンシアが書いた小説とは一体何なのでしょうか?」
皆、頭を悩ませてみたが、納得のいく答えは出なかった。
彼らにとって他の世界という概念はベールに包まれたもので、想像するのも難しかった。
髪をいじりながら考え込むカーディンが叫んだ。
「いっそあの王の口実にまたあの姫の記憶を見せたらいいんじゃない?」
レクシオンも同意した。
「同感です。フィル、真実の涙を使うのが、現状では真実を通じる唯一の方法のようですね。」
「え、ああ……そうですね。」
フィローメルは頬をかきながら、懐から真実の涙を取り出した。
半透明の小瓶には金の模様が入っていた。
「一度使った後に見たら、なぜかこうなっていたんです。」
彼女はぎこちなく笑った後、視線を落とした。
「……やっぱり私が強く叩きすぎたせいでしょうか?」
後悔が込み上げた。
明らかに軽くトンと突くつもりだったのに、金髪の後ろ姿を見た途端、つい気持ちが入って腕に力が入ってしまったのだ。
「まさかこんなことになるとは思わなかったよ。」
自分がルグィーンに謝ったりする立場ではないと思っていた。
戸惑いを隠せずにいる弟にジェレミアが声をかけた。
「もういい。たぶんお前の力のせいで遺物か何かが壊れたんだろう。それが何かおかしいってことだ。もしかするとその女が石頭の女かもしれないし。」
レクシオンも口を挟んだ。
「遺物にこれほどの衝撃を与えたのは、おそらく皇女の神聖力でしょう。」
「そんなこともあるんですか?二人とも似たような血筋なんじゃないですか?」
「普通は起きないことだけど……確かに神聖力というのは霊魂の力だから。霊魂が変わった可能性もあります。変質した神聖力が真実の涙に衝撃を与えたのかもしれません。」
彼は亀裂の入った小瓶をじっと見つめた。
「とにかく、真実の涙は慎重に使ったほうが良さそうです。おそらくあと一回が限界でしょう。」
「そうですね。エレンシアも馬鹿ではない以上、真実の涙には警戒しているはずです。」
彼女があのように神聖力を吸い取り自分の体を守れば厄介だった。
その場面を思い浮かべたフィローメルは、過去の記憶の一部がちらつき、すぐにかき消した。
『エレンシアが完全に無力化された状態を狙わなきゃ。』
金髪の後ろ姿を思い浮かべながら、フィローメルは小瓶をそっと握りしめる。
・
・
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西宮、皇女の書斎。
「…ああ、頭が…。」
席に座っていたエレンシアは、そっと後頭部を撫でた。
頭が痛むようだった。
あの女、フィローメルのせいだ。
昨夜の出来事を思い出すと歯ぎしりが出た。
頭は打たれたままで記憶操作の痕跡も残っていたが、本来の目的だった本は手にしたが、すぐに奪われてしまった。
『やはりフィローメルが持っていたんだ。』
<皇女エレンシア>がこの世界に存在するかもしれないという疑念が湧いたのは、つい最近のことだった。
私たちのゲームの小説化を記念して、ゲーム内でも〈皇女エレンシア〉をイベント用アイテムとして配布することに決定しました!」
当時なんとなく聞いていたゲーム関係者の言葉がふと頭に浮かんだ。
『〈皇女エレンシア〉もここにあるかもしれない。』
そんな仮定が、彼女がこれまでフィローメルに抱いていた疑いを一気に解消してくれた。
それまではフィローメルが「ビンゴの当選者」だけを疑っていたのであって、〈皇女エレンシア〉のことは考えもしなかった。
人が変わったのだから、当然あの者と同じ当選者だと思い込んでいたのだ。
『なぜか一緒にご飯を食べるときも、辛い料理には手をつけなかった。』
会話の中で、韓国人なら反応しそうな内容を話したときも、フィローメルは特に反応を見せなかった。
『代わりに、私ばかりが変なことを言っている顔をしてたっけ。』
「皇女エレンシア」を思い出した瞬間、『フィローメルはただ本を手に持っていたキャラクターじゃないの?』という答えにたどり着いた。
同時に、切実にその本が欲しくなった。
理由は…『ゲームの内容が思い出せない!』
ゲームのストーリーがどうだったかが曖昧だった。
ネットに上がっている攻略情報だけを見て、ゲームを大体プレイしていたからだ。
似たようなジャンルのゲーム、小説、漫画などを数えきれないほど触れてきたせいで、頭の中で内容がごちゃ混ぜになることもあった。
ひどいときは自分が書いた小説の内容すら混乱した。
『ロマンスパートくらいは一生懸命書いたけど、他の部分はただゲームに出てくるテキストを貼り付けただけだし!』
最初からあの本を持ってこの世界に来ていたら、こんなに話がこじれることもなかったはずだ。
『私はこのゲームとフィローメルのことを知りすぎていた。』
攻略情報を見て簡単にプレイしただけで、目をつぶってもクリアできるゲームだと過大評価していた、と彼女は思った。
フィローメルもまた、性質を少しだけ突けばゲームのように簡単に本性を現し、自滅するものだと思っていたのだが。
エレンシアは拳をぎゅっと握りしめた。
「それがこの結果だ。」
皇帝の好感度は、ある瞬間からまったく上がらなくなった。
もともとは、どの選択肢を選んでも好感度がすいすい上がって、ゲームを始めたばかりの初心者にも基本的な好感度を提供してくれるキャラクターだった。
なのに、何がどうなってしまったのか、実際に出会った彼には、これもダメ、あれもダメ、という感じで、何をやっても上手くいかない雰囲気になっていた。
「……詰みじゃん。」
データの欠片のような存在で、好感度も何もかも全部消えちゃったんだろう。
その時、ベッドに横たわっていた乳母がうめき声をあげた。
「皇女様、さっきから何をそんなにそわそわしているんですか?悪い癖です。直してください。」
「わかった!わかったってば!」
エレンシアは思わず叫んだ後、指先を噛んだ。
予想外の反応に乳母は口をつぐんだ。
最近、彼女の忍耐は限界に達していた。
あの惨めな老婆まで巻き込んで結界に閉じ込めたのは、皇帝に見せつけるためだった。
『ほら、見ろ。お前の本当の娘は私だ。あの偽物じゃない!』
妻そっくりの娘が妻の乳母を振り払う姿を見れば、皇帝も気づくはずだと思ったのだ。
しかし、ベッドに横たわっていた乳母はエレンシアを終始責め立てて苦しめた。
彼女は部屋にいても安心してくつろぐことができなかった。
「お父さん、乳母のことは私が責任を持って面倒を見ます! だから乳母にもう一度だけチャンスをください!」
すでに皇帝に向けて好意的に言ってしまったことがあったため、もう乳母を追い出すことはできなかった。
そんな苦しみにもかかわらず、皇帝はまだ冷静さを保つことができなかった。
「一体フィローメルって、何がどうしてあんなに貴重なの?」
皇帝よりもさらに問題なのは、男性主人公たちだ。
それでも父上らしく、好感度がある程度以下には落ちない皇帝に対して、彼らの好感度管理はひたすら大変だった。
ジェレミアはそもそも登場さえせず、ナサールは彼女を露骨に拒絶した。
特にナサールはまったく容赦がなかった。
自分をゲーム最高の人気キャラクターにしてくれたのが彼女自身だというのに。
『キリアンの好感度はある程度引き上げることには成功したけど……』
男性の反応に少しイラつきながら、エレンシアはインベントリ画面を開いた。
数時間後、キリアンとその父親エスカル伯爵が西宮を訪問する予定だ。
彼らを迎える前に用意しておくべきものがあった。
間もなく、画面に何かのアイテムが表示された。
【愛の妙薬】
説明:キャラクターに食べさせると好感度が1から10の範囲でランダムに上昇します。
(カテゴリが「家族」であるキャラクターには使用不可)
使用条件:既存の好感度が30以上
所持数:0
「昨日、商店に行ったときに補充しておけばよかった。」
このゲームは、基本のインベントリ空間がとても少なかった。
プレイヤーがゲームらしいゲームを楽しむためには、インベントリを拡張する有料アイテムが必要だった。
『このクソゲー!金をむしり取ろうって魂胆だったのね!』
エレンシアはぶつぶつ言いながら化粧室に向かった。
ショップはシステムメニューを通じてどこからでも入場できるという点が唯一の救いだった。
以前、知恵の秘薬の一つが消えたとき、彼女はその都度ショップに行って確認していた。
しかししばらく後――
「ぎゃあああっ!」
エレンシアは叫び声を上げながら化粧室から飛び出してきた。
「私のアイテム、全部どこ行ったの!」
部屋の中を見渡したとき、エレンシアの体がブルブルと震えた。
『一体誰?まさかフィローメルが犯人?それともこのタイミングで新しい犯人が現れたの?』
落ち着こうと努力し、必死に頭を回転させた。
彼女が購入できるアイテムはすでにすべて売り切れていた。
犯人の好感度は自分と同等、あるいはそれ以上であるはずだ。
『好感度が掲示板に残っていれば、正確に分かるのに!』
あいにく、その掲示板は一定時間が経つと初期化されてしまう。
犯人が購入した商品を手がかりに好感度を推測するのは不可能に近い。
エレンシアの目には、彼女が購入できるアイテムは見えなかった。
『落ち着け。好感度が表示されるキャラクターは全部で四人。』
ユースティス、ナサール、ジェレミア、キリオン。
この中で皇帝とナサールから異常なほどの愛を受けている人物を彼女は知っていた。
『フィローメル!』
その女以外には、彼らから自分以上の好感度を得られる人物はいなかった。
しかも、ちょうど昨日フィローメルと鉢合わせしたばかりで、この事態が起きたのだ。
『間違いなく関係がある!』
エレンシアは一歩踏み出し、南宮へと向かった。








