こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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2話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ②
例えば、「フィローメル」の悪意ある性格を際立たせるために描かれた幼少期のエピソードがある。
「フィローメル」は父から誕生日プレゼントにもらったネックレスを無くしてしまい、それが父の怒りを買うのを恐れて、ある侍女が盗んだことにしたという話だ。
実際にも似たような出来事があった。
ただし、意図的に侍女に罪を着せたわけではなかった。
フィローメルは本当に侍女が持ち去ったと思い込んでいた。
ネックレスがなくなり、最後に部屋を掃除していたのがその侍女だったため、誤解してしまったのだ。
後に侍女が潔白を証明すると、乳母にこっぴどく叱られ、きちんと謝罪もした。
本気で命を奪おうなどとは考えてもいなかった。
記憶を掘り起こすと、「死ぬわよ!」と言ったような気もするが、それはただの感情的な発言だった。
嘘をついたわけではなかったが、小説では「フィローメル」の本心や裏事情が描かれていなかったため、冷酷な悪役として描かれていた。
「違うわ。ただ外部の人間が事情を知らずに聞きかじった話を書いただけよ。」
そう自分に言い聞かせて、フィローメルは心を落ち着けた。
空気が凍りつくような緊張感が走った。
「皇女様、入りますよ。」
突然、乳母の声が扉の外から聞こえた。
「ちょ、ちょっと待って!」
慌てて机の前に駆け寄り、小説を布で包んで隠した。
もし乳母に恋愛小説を読んでいたことがばれたら、説教の嵐に遭うのは明白だった。
「また勉強をサボって、ぼんやりしていたんじゃないでしょうね?」
扉が開くと、乳母は鋭い目つきで彼女を見つめ、言葉を投げかけた。
「ぼんやりなんてしていない!ちゃんと勉強していました!」
机の上にあった分厚い歴史書を手に取って隠したものの、疑い深い乳母は部屋を数回見回した後、ようやくフィローメルの前に立った。
「お願いですから、もう少ししっかりしてください。皇女様が誤った発言をされると、困るのは皇女様ご自身なのです。」
「うん……。」
その後、乳母の説教が始まった。
乳母は皇帝を除いて、彼女を正面から叱ることができる唯一の存在だ。
皇后の乳母でもあったため、フィローメルに対しては厳しい態度を崩さず、周りも彼女を「乳母」と呼び続けた。
皇后はほとんど実母のように乳母に信頼を寄せ、結婚するときにも宮廷に連れてきたという。
ユースティスはそんな妻の意向を尊重し、乳母を娘の保護者として育成と教育に関する全権を任せていた。
そのため、彼は娘に無関心であり、実際のところフィローメルに関連する問題は乳母が一手に引き受ける形となっていた。
「陛下から、今回は必ず皇女様の行動を正すようにとの厳命が下りました。」
「はっ、嘘だ。」
ユースティスがわざわざそんな指示を出すような、娘に関心を持つ父親ではなかった。
しかし乳母は、それがフィローメルに効果的だと知っており、以前から都合が悪くなるとユースティスの名前を持ち出して皇女を抑えようとしていた。
それによると、礼儀の授業を一生懸命受ければ、ユースティスと一緒に食事をしたり、試験で満点を取れば執務室で遊べるといったような約束をする方法だった。
それで気を引かれたフィローメルは条件をクリアするたびにピンと来たり、来なかったりしながら、約束の履行を少しずつ信じていった。
フィローメルは大量の数十個の約束が破られた後にようやく、自分が騙されていたことに気づいた。
その後、学びへの興味を失った背景には乳母の策略があった。
「今、何ておっしゃいました? 嘘つきだなんて!人の言葉を疑うなんて悪い癖ですよ。正直者として愛の鞭を受け入れるべきですか?」
本音を突かれた乳母は過剰に取り乱して叫んだ。
「わかった、わかったよ。これから気をつける。」
フィローメルが先に折れて謝罪した。
乳母は老年に近い年齢にもかかわらず、体格が良く力も強かった。
鞭を振るうことはあっても、皇女を厳しく罰することはなかったが、子どもにとっては十分に怖い存在だった。
「どうかお願いです。本当にどなたに似ているのか……イザベラ様もその年頃は本当に疑い深かったですが……」
乳母の口から耳に釘を打ち込むように繰り返される「母親に似ていない」という言葉が、今日もまた胸を鋭く突いた。
「乳母……」
「はい?」
「私ってそんなに母と似てないの?」
フィローメルが慎重に尋ねた。
「ええ。驚くほど似ていません。イザベラ様は幼い頃から賢く、落ち着きがあり、それでいて時には天真爛漫なところもあって……。」
頭の先からつま先まで亡き皇后と比較しながら、フィローメルの自尊心を傷つけるのが乳母の楽しみだった。
今日は乳母の日常的な小言に加えて、書物の中の話のように「自分が本当の皇女ではない」という声が聞こえた気がして、フィローメルの気分はさらに沈んだ。
「だから建国記念日には慎み深くしていなさいよ……。」
乳母の言葉を考え込みながら、片耳で聞き流しつつ、フィローメルは意図せず目に留まった内容に再び目を向けた。
「建国祭?」
「私の話、聞いていませんでしたよね?」
「私が建国祭に参加できるの?」
「ええ。国家的な行事なので、その日だけ特別に外出許可を得て外出されることになりました。」
建国祭。
九歳の建国祭。
本で読んだ記憶がある言葉だった!
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乳母が部屋を出た後、フィローメルは小説『皇女エレンシア』を取り出し、最初の部分をめくった。
「見つけた。」
彼女が見つけたのは、主人公エレンシアが九歳のときに村で開かれた建国祭のイベントについての記述だった。
エレンシアはフィローメルと同い年であるため、ここで語られる建国祭は、先ほど乳母が言及した建国祭と同じものだった。
エレンシアはその行事に参加しようとしたが、当日大雨が降って建国祭自体が延期となり、参加できなかった。
建国祭が大雨で延期になるという部分があまりに突飛で笑った記憶がある。
『その建国祭は、ベレロフ帝国で最も重要な祭典であり、毎年神託を受けて日取りを決めるもの。』
関係者たちによれば、帝国の内政に関わる天候の専門家や魔法使い、学者たちが集まって研究した結果、今年もその日には雨が降ることはないと断言されていた。
さらに本の中では、大神官が倒れる事故が発生し、建国祭が1週間ほど後ろに延期される。
「そうだな。やっぱり虚構に過ぎなかった。」
突如として語られる大神官が倒れる話とはどういうことなのだろうか?
気持ちが少し軽くなった。
これで建国祭当日が晴れなら天気だけ確認して安心すれば良い。
建国祭を無事に終えた後に、この本を父に渡して、気まずい作者に罰を与えられることを期待して。
フィローメルは笑いながら本を閉じた。
当然そうなるべきだったが……。
厚く雲がかかった空を、フィローメルはしとしとと降る赤い雨粒をぼんやりと見つめていた。
「……陛下、とにかく行事は延期するしかないようです。」
皇帝の秘書官は、思わぬ事態にどうすればいいかわからず、ユースティスに助けを求めた。
彼らは宮殿の前庭に設置された野外イベント会場に足を踏み入れることもできず、近くの記念館の庇の下で雨を避けていた。
冷や汗を流しながらイベント責任者は、どうしようもない豪雨だと説明した。
「分かった。イベントは延期だ。もう一度日程を組んで報告しろ。」
皇帝の言葉で記念式を聞くために集まった多くの皇族や貴族たちが立ち去る準備をしていた。
『本当にこのまま延期になるのか。小説の内容みたいに?』
一瞬のうちに目の前が真っ暗になった。
小説はあくまで小説でなければならない。
絶対に現実となってはいけない。
そうでなければ、自分は本当に父の実の娘で………。
「ダメ! 延期しちゃダメ!」
フィローメルは自分でも気づかないうちに甲高い声を上げ、庇の外へと飛び出していった。
「皇女殿下! ダメです!」
人々が慌てて雨に濡れる皇女を連れ戻そうとしたが、フィローメルは気もそぞろに走り出し、ユースティスの前に立ちはだかった。
そして彼を見上げながら、切実に口を開いた。
「お父様。」
ユースティスの厳しい表情にわずかな動揺が走った。
「どうかお願いします。建国祭を延期しないでください。いいですか?」
「……。」
「記念式は記念館の中で行えばいいじゃないですか。だから予定通り進めてください。」
皇女の突然の行動に驚いた人々は、父娘の間の空気を読むのに必死だった。
「こうしてお願い申し上げます。どうか……。」
フィローメルの瞳が光を反射しているのか、それとも涙なのか分からないほど、潤んで輝いて見えた。
「……皇女様、それはできません。どうか儀式の体裁を守ってください。」
フィローメルに付き添う侍女の一人がそばに来て小声で言った。
屋内で記念式を行うというのは到底受け入れられるものではないことは、フィローメル自身もよく分かっていた。
ベルレロフは太陽神の加護を受けて築かれた帝国だった。
建国祭は、太陽が燦々と降り注ぐ青空の下で行わなければ意味がない。
単なる野外活動の不便さを理由に延期するものではなかった。
よく分かっている。
「でも、でも……。」
「もうやめましょう。」
フィローメルに向けられていた皇帝の視線がじっと固定された。
「しかし、皇女殿下……」
侍従のフラン・ベクジャクが言葉を詰まらせると、ユースティスが彼を睨むようにして言葉を継いだ。
「子どものわがままに振り回されるのが日課だとでも? それも、自分勝手な祝祭を見たくて皇帝の前を邪魔するために?」
青い瞳の奥に見えた怒りの輝きに、周囲の人々は息を飲んだ。
多くの者が、皇帝がその美しい容姿とは裏腹に、悪魔のように残酷になる可能性を知っていた。
彼がその地位を得るために、兄弟たちだけでなく、先帝までも暗殺したという噂が密かに広まっていた。
「行こう。」
ユースティスは冷静に振り返った。
彼をきっかけに、参列者たちが一人また一人と席を立ち始めた。
それぞれがまだ光の中にぼんやりと立ち尽くしている皇女を一瞥したが、声をかける者はいなかった。
むやみに皇帝の不興を買っている皇女に関わって、良いことなど何もないのは分かりきっているからだ。
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