こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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6話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑥
世界樹の果実は本当に妙薬のようだ。
ユースティスが送ってくれたお茶を飲んだ後、フィローメルは気分を取り戻した。
前よりも体も、頭も軽くなったような気がした。
皇女の文学の授業の時間。
読んでいた本を閉じたフィローメルが、文学教師に言った。
「全部読みました。次は何を読めばいいですか?」
「もうお読みになったのですか? もしかして、ざっとページをめくっただけでは……?」
「ちゃんと読みました。疑わしいなら、読んだ部分から問題を出してください。」
フィローメルは、先生が出したいくつかの問題をすべて正解した。
乳母と教師たちは、病み上がりとは思えないほど熱心に授業に取り組む皇女を、驚いた目で見守っていた。
授業の内容には何の興味も示さず、ただ時間を過ごしていた以前とは、まるで別人のようだった。
フィローメルが、理解できない部分があると自主的に質問をまとめて尋ねに行くと、年配の外国語教師は驚きすぎて目を丸くするほどだった。
さらには、自由時間まで補習を受けたり、本を読んで静かに過ごしていた。
ナサールと過ごす時間も例外ではなかった。
「皇女殿下。」
「うん、公子。質問があるんだけど、シリア戦争が勃発したのはいつだったっけ?」
「……帝国歴132年です。」
「あ、そうだった。教えてくれてありがとう。やっぱりナサールは賢いね。」
ナサールは横に座り、歴史書を暗記する婚約者をじっと見つめた。
顔を向けた途端、その言葉を口にしたフィローメルは本を広げ、ナサールの方には一切目を向けずに勉強を始めた。
ごくたまに分からないことを質問する時でさえ、フィローメルの視線は本の上にとどまった。
賓客である彼のために皇宮図書館から本を借りてもよいという許可が下りたが、そうする気にはなれなかった。
ナサールは、壊れた磁器のように前に置かれた茶碗だけを見つめていた。
皇女の遊び相手として宮廷に来て、これほど退屈したことは初めてだった。
今まではいつもフィローメルが望むままに動き、気づけば時間が過ぎていたのに。
『俺に怒ってるのかな?』
違うと分かっていながらも、ナサールは本に顔を埋めるほど集中している小さな顔が、ふと視線を上げてこちらを見た。
フィローメルはいつものように微笑みながらナサールに接したが、妙な距離感を感じた。
ぎこちなかった。薄いガラスの壁で隔てられているような距離感。
ナサールにまったく関心を示さないフィローメル。
そのぎこちなさに、幼い公子は髪をかきあげた。
なぜか気分が良くなかった。
以前は、皇女がもう少し大人びてくれればいいのに、と思ったこともあったが……。
なぜか、まったく良い気分ではなかった。
変化はそれだけではなかった。
皇女が臣下に対して怒る回数が明らかに減っていた。
ガシャン!
「わっ、ごめんなさい! 皇女様!」
侍女が落とした茶碗が粉々に砕けた。
表面に描かれた青い鳥が三つの破片に分かれた。
その茶碗は、昨年の誕生日にエイブリトン公子が贈ったもので、皇女が最も大切にしていた品の一つだった。
「す、すみません! 本当に申し訳ありません!」
厳しい罰を受けるかもしれないと思い、侍女は震えた。
実際、皇女が怒ったとしても乳母が庇ってくれれば問題はなかっただろうが、最近の彼女は乳母の目の敵にされていた。
休暇をもらって故郷に帰った際に、乳母に渡すはずだった記念品を忘れてきたのが理由だった。
彼女はフィローメルの冷たい叱責を覚悟しながら、胸をぎゅっと締め付けた。
ところが……
「何してるの? 早く片付けなさい。」
「え?」
「カーペットまで汚れたじゃない。片付けて出ていきなさい。」
「は、はい! 分かりました!」
侍女は慌てて割れた破片をかき集めた。
フィローメルの言葉は、さらに予想外だった。
「手を切らないように気をつけなさい。人の方が大事なのに、せいぜいこの割れたカップがそんなに重要だというの?」
以前なら、皇女が怒り狂って侍女の手を叩いていたかもしれないのに。
驚いた侍女は、その日以来、自分が経験した妙な出来事を宮廷の人々に会うたびに思い出した。
最初、大半の人々は皇女の変化を一時的な気まぐれだと考えていた。
「建国祭の時に失敗して、こっぴどく叱られたせいじゃない?」
「まあ、見ていなさいよ。どれほど続くか。すぐに元通りになるわ。」
「とにかく、しばらくは宮廷が静かになりそうだな。」
彼らは皇女の普段の姿をあまりにもよく知っていた。
繊細で、わがままな幼い子供。
皇女としての義務は放棄し、遊びだけを優先するわがまま娘。
しかし、その変化が一日、二日、三日と続くにつれ、皆の考えも変わらざるを得なかった。
おしゃべり好きな皇女が、ついに大人びてきたのだろうか。
生き延びるためのフィローメルの本能的な抑制は、周囲の人々の目には単なる成長に映っただけだった。
「その間、誠心誠意、皇女様を教育してきた者がいたんでしょうね。腰が少し痛いからと辞めていたら、後悔していたでしょう。」
乳母はすべてが自分の功績であるかのように、フィロメールを教育した偉大な教育者として自慢げに振る舞った。
「やはり乳母様ですね。」
「素晴らしいです。」
フィローメルは乳母の誇張と侍女たちの賛辞を、片耳で聞き流した。
そして、フィローメルに関する話が皇帝の耳にも入ったのか、しばらくしてフィローメルは皇帝に呼び出された。
それは昼食の席だった。
長い食卓の両端に座る二人の前に、次々と豪華な料理が並べられた。
フィローメルは、皇帝の鋭い視線を感じながら、料理がどこに入っていくのかも分からないほど緊張していたが、できる限り平静を装おうと努めた。
『なぜ呼ばれたのだろう?』
まさか今になって、父娘らしくゆっくり食事でもしたいということではないだろうし。
皇帝が重々しく口を開いた。
「話は聞いている。学業に熱心に取り組んでいるそうだな。良いことだ。」
そっけない口調だったので、それが褒め言葉だと気づくまで少し時間がかかった。
父との食事、父の口から出た褒め言葉。すべてが初めてのことだった。
それでも、長い間望んでいたものが、意味を失った後にようやく手に入ったような気がした。
フィローメルは、とりあえず礼儀正しく答えた。
「……ありがとうございます。しかし、まだ道半ばです。」
「はい、大臣たちは口が渇くほどに褒め称えていた。」
「すべて陛下が素晴らしい大臣たちを配してくださったおかげです。」
陛下?
言葉に込められた違和感に、ユースティスは目を細めた。
皆が彼をそう呼んでいたが、フィローメルはいつも「お父様」と呼んでいたではないか。
「……会わないうちに、随分と大人びた話し方になったものだな。」
「これからは私も皇室の一員として、それに見合う品位を備えるため努力しなければなりません。」
フィローメルは微笑んだ。
歯が見えるほど口を大きく開くことはなく、ただ唇の端をわずかに上げる控えめな笑みだった。
皇帝はフィローメルの「貴族的な微笑み」をしばらく見つめた。
もし彼が娘についてもう少し詳しく知っていたならば、敏感な感覚で最近の変化が極めて不自然であることに気づいただろう。
しかし、それに気づくことのなかったユースティスは、若干の違和感以外に特に何も感じなかった。
「わかった。これからもそのように慎み深くあれ。」
「はい。肝に銘じます。」
「ところで、もう体調は良くなったのか?風邪は完全に治ったか?」
食事中にフォークを動かしていたフィローメルの手が一瞬止まった。
まさかユースティスが病状について尋ねるとは思わなかった。
「……陛下が送ってくださった薬を飲んで、すっかり治りました。」
まるで本当に心配してくれているかのようで、妙な気分だった。
『いや、適当に与えられた好意に心を許してはいけない。』
フィローメルはもう一度気を引き締めた。
もし自分が偽物だと明かされ、高貴な者たちの言葉を信じなければ、いつか自分を殺す者が現れるだろう。
「それは良かったな。お前の母も体がとても弱かったな。」
「……はい。」
皇帝はまるで父親ではないかのように話し、十年近く母として接してきた皇后もフィローメルの本当の母ではなかった。
短い間、宙に視線を投げかけたユースティスだったが、彼は再びフィローメルを見つめた。
「努力することは称賛に値する。もし望むものがあるなら言ってみろ。可能な範囲で聞き入れてやろう。」
称賛、心配、次は報酬なのか。
フィローメルはごくりと唾を飲み込んだ。
待っていたものがついに来た。
皇帝はすべてにおいて明確な区別をつける。
怠惰な者には厳罰を。
成果を上げた者には褒賞を。
そのため、フィローメルにも同じ言葉をかけるだろうと予想していた。
しかし、すぐに望みを口にしてはいけない。
フィローメルはひとまず本音を抑えた。
「特にありません。陛下が私のことを気にかけてくださるだけでも光栄です。」
皇帝はワインの杯を口に運びながら、ゆっくりと言った。
「謙虚だな。しかし、皇位に就く者には適度な野心があるほうがよい。」
そこまで言われたら、もう遠慮する必要もない。
フィローメルは考えるふりをしながら、ついに口を開いた。
「実は…欲しいものがあると言うべきでしょうか。陛下にお願いしたいことがあります。」
「何だ?」
フィローメルは以前から願っていたことを皇帝に伝えた。
初めて挑戦する演技が自然に見えるように、できる限り誠実さを込めて。
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