こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

67話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇帝からの贈り物
本の真実を解明すること以外にも、フィローメルの日常はさまざまな出来事で満ちていた。
季節が次第に初夏へと移り変わるある日、皇帝宮の召使いがフィローメルの住まいを訪れた。
「皇帝陛下がご用意なさった贈り物がようやく完成し、皇宮へ到着いたしました。お時間のある際に、ぜひお越しください。」
「贈り物?」
「フィローメル様の先日の誕生日祝いの贈り物でございます。」
ああ、すっかり忘れていた。
フィローメルは半分が翡翠で装飾された黄金の模型を見つめた。
そして思い出す。
ユースティスがそれと同じ形の本物の模型をくれると言っていたことを。
「制作中だと言っていたが、もう完成したんだね。」
正直、学ぶ必要はなかった。
フィローメルは、工芸や彫刻に特別な興味があるわけではなかった。
ましてや、皇女であった頃に受け取った贈り物なので、今の自分が持つには少し違和感がある。
それでも、一度も見ずに贈り物を拒むのは無礼に当たるかもしれないと思い、フィローメルは足を運んだ。
皇宮内の巨大な池へと辿り着くと、まず目に飛び込んできたのは、見事な浮き彫りの装飾だった。
果たして、それはただの飾りなのか、それとも何らかの意図があるのか。
すでに黄金の模型でその形状を知っていたフィローメルは、実物を目にすると、思わず息を呑んだ。
船上で視線を少し横に移すと、少女の髪が目に入った。
礼装を着た従者たちが桟橋の前に集まっていた。
船の先頭にはエレンシアが立ち、侍従と話をしていた。
「どうして私が乗れないんですか?」
「申し訳ございません、皇女殿下。この船は皇帝陛下がフィローメル様に贈るためのものです。」
「そんなのおかしいです!私にも乗る権利があるはずです!」
聞いただけで頭が痛くなるような話だ。
見ないふりをしてそっと足を引こうかと悩んでいるフィローメルの傍にレクシオンが現れる。
二人は人目につかない場所へと移動した。
「レクシオン、ここで何をしているのですか?」
「完成した船が到着したと聞いて、視察に来ました。」
「レクシオンもあの船に興味があるのですか?」
「もちろんです。私も製作に関わりましたから。」
「船も作れるのですか?」
「正確に言えば、船そのものではなく、船に施された魔法術式を私が設計しました。あの船も一種の魔道具のようなものですよ。」
「そうだったのですね。」
フィローメルは顎を引きながらレクシオンを見上げた。
「でも、レクシオンは魔道具の管理が仕事じゃなかったんですか?製作にも関与されていたなんて知りませんでした。」
「何しろ金額が大きな依頼だったので、私も動員されました。」
ユースティスはかなりの金額を使ったようだ。
そんな中、レクシオンは視線を落とし、静かに言った。
「私が作ったものではありませんが、持ち主があなたと知っていたら、もっと工夫を凝らしたでしょう。」
「大丈夫です。お気持ちだけ受け取ります。」
「まさか乗らないつもりですか?」
「返そうかと思っているんですが。」
「私が作った船ですよ? 一度も乗らずに終わるんですか? 絶対に一度は乗ってほしいです。」
「……」
ここまで言われたら、断り続けるのも難しいし、申し訳なくなる。
「分かりました。とりあえず乗ってみます。」
結局、レクシオンの強い視線に負け、フィローメルは船着場へと向かった。
すると、エレンシア皇女を相手にしても微動だにしなかった侍従が、フィローメルを見て驚いた。
「ですが、皇女様。この船はフィロメル様の所有物です。私の独断では、皇女様を乗せるわけにはいきません。」
エレンシアが反論した。
「でもこの船は、フィローメルが皇女であることを恐れて、お父様が贈ったものですよね。そうだとしたら、フィローメルにあげた贈り物ではなく、娘である皇女にあげた贈り物ということです。今の皇女は私なので、結局これは私のものと変わりません。」
彼女の言い分にも一理あった。
ある意味、正しいとも言えた。
エレンシアの後ろにいた貴族の少女三人も、フィローメルに対してあまり良くない視線を向けていた。
小型ボートに乗れる最大人数は四人までなので、エレンシアを除くと三人しか乗れないようだ。
三人とも高位貴族の令嬢だが、このような理由でフィローメルは彼女たちに近づかなかった。
エレンシアが意味深な表情でフィローメルを見つめた。
「どうですか? 私の言葉が間違っていましたか? もし違っていたら言ってください。聞きますよ。」
フィローメルは、ひどく面倒くささを感じた。
ここで、本の内容でもない船のことでエレンシアと言い争うのは避けたい。
そもそもレクシオンは、自分の作った船に乗ってもらえたら嬉しいとは言ったが、それを持っていってほしいとは言わなかった。
そこで、フィローメルはあっさりと言った。
「私は構いませんので、この船はエレンシア様が持っていってください。」
エレンシアは呆然とした表情を浮かべた。
「本気ですか?」
「はい。」
「私が持って行ってもいいんですか?」
「ええ。」
そう望んでいた船を譲ると言ったが、エレンシアは嬉しそうには見えなかった。
むしろ、悔しそうに譲渡した手が震えていた。
『本当に変な子ね。』
確実なのは、最初に会ったときは控えめな微笑みだけを見せていたエレンシアが、今では負の感情を表に出すのが上手になったということだ。
エレンシアは態度を変え、再び意味深な表情で言った。
「いいですね!フィローメルも賛成したことですし、私がこの船に最初に乗る人になります。それでもいいですよね?」
「お好きなように。」
エレンシアはフィローメルを一瞥すると、「ふん」と鼻を鳴らし、真っ先に船に乗り込んだ。
そして彼女の従者たちがその後に続いた。
魔力で動く船なので、人が操縦する必要はなかった。
フィローメルのそばにいた侍従は、「ダメです、ダメなんですが……」と小声で呟いたが、皇女一行を積極的に止めることはしなかった。
フィローメルは特に気にすることもなく、その光景を眺めていた。
『私は後で乗せてもらえばいいし。まあ、ダメだと言われたらこっそり乗ればいいか。』
だが、最後の従者が船に乗り込んだ瞬間――
ウィンウィン!
突然、耳をつんざくような警告音が鳴り響き、船がぐらりと揺れた。
「キャアアア!」
「これ、何よ!」
乗船者たちは悲鳴を上げながら、船上の設備に必死にしがみついた。
ドボン!
しかし、船が完全に傾き、皆が水中へと落ちてしまった。
近くにいた人々は大混乱に陥った。
「殿下!」
「大丈夫ですか?」
エレンシアは水中で慌てふためいていた。
「助けて! 誰か助けて!」
しかし、彼女の救助要請はすぐに止まった。
水の深さが自分の腰ほどしかないことに気づいたのだ。
一緒に水に落ちた他の従者たちは、慌てて自力で岸に上がった。
安全のため、皇宮の湖は外縁部が浅く、中心に向かうにつれて深くなる構造だった。
船着場が設置された場所は、当然ながら最も深い地点だ。
とはいえ、皇女が湖に落ちたという大事件に、人々は騒然としている。
そんな中、周囲の混乱をよそに、漁船に乗ったレクシオンが近づいてきた。
フィローメルは彼の方を振り向くこともせず、ただ尋ねた。
「これは一体どういうこと?」
「防衛機能です。所有者として設定された者以外が考えずに船を動かそうとすると、ひっくり返ってしまいますよ。」
エレンシア一行が水に落ちると、転覆していた小舟は乗員がいなくなったことで、ゆっくりと元の姿に戻っていった。
「……こうなることを予想していたんですね?」
初めから言わなかったのかという問いかけだった。
「フィルはそれほど乗りたがっていなかったし、殿下はどうしても乗るつもりのようだったので、もしかしたらこうなるかもと予想はしていました。」
レクシオンは特に悪びれる様子もなく答えた。
「なぜ事前に警告しなかったんですか?」
「説明書には明確に書かれていましたよ。きちんと読んでいなかった人は向こうの方ですし。それに、何より……面白かったじゃないですか。」
彼は狐のような微笑を浮かべた。
水に落ちてずぶ濡れになったエレンシアは、結局、自分の宮殿へと引き下がっていった。
後に聞いた話では、彼女は「大丈夫」と強がっていたものの、皇帝に連れられた侍医によって、深刻な病状が発覚したという。
フィローメルはレクシオンに「船の所有者を変更できないのか」と尋ねたが、「不可能だ」という答えしか返ってこなかった。
面倒くさくなった彼女は、仕方なくそのまま船を所有することにした。
『まあ、いざとなれば湖に浮かぶ家として使えばいいか。』
とはいえ、今のところは皇宮の湖に放置するしかなかったけど。









