こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

71話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 誕生日パーティー③
そんな何気ない会話を交わしていた時、招待を受けていない来客の姿が見えた。
「こんにちは!」
南宮の庭園に一人で現れたエレンシアが、明るい声で挨拶をする。
皇女の登場に、そこにいた全員が席を立った。
フィローメルはエレンシアの隣に歩み寄り、挨拶した。
「帝国の小さな太陽にお目にかかれて光栄です。」
「フィローメル、お誕生日おめでとう!」
「大したことではありません。本当の誕生日でもないんですから。」
すると、エレンシアは何の変哲もない微笑みで答えた。
「それでも、おめでとうございます。生まれて初めて、自分の誕生日ではない日に祝福を受けることになりますね。」
一瞬で雰囲気が冷え込んだ。
エレンシアには、遠回しな皮肉を無邪気に言う才能があった。
フィローメルは微笑みを崩さずに答えた。
「ところで、ここに何のご用でしょうか?皇女殿下に招待状を送った覚えはないのですが。」
エレンシアはわずかに傷ついた表情を浮かべた。
「ひどいです!私、ずっとフィローメルが招待状を送ってくれるのを待っていたのに、私にだけくれないなんて!」
「欲しいとおっしゃってくだされば、差し上げたのに。」
「私たちの間柄なら、言わずとも当然受け取ってくださると思っていました。」
「申し訳ありません。皇女様のような高貴な方を、このような質素な宴会にお招きするのは失礼かと存じまして……。」
「そうですね。確かに質素……。」
彼女がくるりと振り返ると、フィローメルの氷の彫刻が目に入った。
満開の花々と他の彫刻もあり、これを質素と言うのは難しいほどの宴会だった。
しかし、フィローメルの宴会を華やかだと認めたくないのか、エレンシアは咳払いをして、
話題を変えた。
「とにかく、フィローメルの宴を見て、私も良いアイデアを思いつきました。」
フィローメルは、なぜか不安な気持ちになりながら、一方の眉をひそめてエレンシアを見つめた。
「私ももうすぐ誕生日の宴を開こうと思います!私の誕生日はすでに過ぎましたが、ここでは祝ってもらっていませんよね。だから、大々的に開くつもりです。特に、ここにいる皆さんも漏れなく招待します!」
やはり。
エレンシアの宣言に、令嬢たちは戸惑いの表情を浮かべた。
招待もされていない場に現れただけでなく、自分の宴を宣伝するとは。
なんという厚かましさだろう。
しかし、無礼を働いているのが、他ならぬ彼女だった。
皇女の前では誰も軽率な態度を取れなかった。
『これはどうしたものか……。』
フィローメルは、エレンシアにすでに疎まれている身であり、わざわざ無礼を働くつもりはなかった。
だが、この場にいる他の者たちは違った。
彼らは皇女の目の届かない場所で、ぎこちなく立ち尽くしていた。
誰もが沈黙する中、エレンシアはナサールを鋭く見つめ、問いかけた。
「ナサールは、私の宴に出席しますわよね?」
ナサールは胸に手を当て、深々と頭を下げた。
「陛下、申し訳ありません。その日はあいにく予定があり、参加の栄誉を賜ることは叶わないかと存じます。」
ナサールは、エイブリドン家らしく完璧な礼儀をもって応じた。
表情も本当に残念そうに見える。
ただ、一つ問題があるとすれば……。
エレンシアは、まだ宴の日時について何も言及していないという点だ。
エレンシアが慌てて叫んだ。
「ナサールは、私の宴がいつ開かれるのか知らないじゃないですか!」
「これは、失礼しました。しかし、私は今後1年間、すべての日に予定が入っております。」
「そんなのありえない!」
「事実です。」
ナサールがあまりにも自然に断るので、フィローメルは「本当にそうなの?」と一瞬疑問に思った。
もちろん、どれだけ忙しくても彼に毎日予定があるはずはない。
『違うの……?幼い頃は勉強のスケジュールがびっしり詰まっていたような気がするけど。』
一瞬、驚きを隠せなかったエレンシアは、怒りを滲ませて足を鳴らした。
「後悔するわよ!私の誕生日パーティーは兄にお願いしてとても盛大で華やかにするつもりなの!来ないと絶対後悔するわ!」
「申し訳ありません。」
もちろん、ナサールにはその言葉は響かなかった。
「この宴とは違って、大きなホールで開かれる予定よ!式典ももっと華やかにして、宮廷楽団も呼ぶつもりです。やっぱり宴なら楽団がないと、本物の宴とは言えませんよね。」
その後も、エレンシアは自分の宴の素晴らしさについていくつか語ったが、誰も賛同する者はいなかった。
その時、誰かが口を挟んだ。
「ええと、ご貴族の皆さまがお話し中に失礼ですが、お伝えしなければならないことがありまして……。」
いつから庭園にいたのか分からないが、一人の侍従が頭をかきながら立っていた。
エレンシアが苛立った声で問い詰めた。
「何よ!」
「し、失礼します、皇女殿下!」
「何なの!」
侍従が恐る恐る口を開いた。
「えっと、現在、皇宮の楽団が門の前で待機しています。レディ・フィローメルが許可してくだされば、宴会に華やかな演奏を添えられます。」
「何?皇宮の楽団?どうしてここに?」
エレンシアが鋭く問い詰めた。
「そ、それが……陛下がレディ・フィローメルの宴の話を聞き、皇宮の楽団をお送りになりました。祝辞の言葉とともに……。」
エレンシアの美しい眉がはっきりとつり上がった。
「本当に、ひどい!」
不満げな表情の彼女は、それだけ言い残し、庭園から姿を消した。
しかし、本当に恥ずかしい思いをしているのはエレンシアだ。
『雰囲気をめちゃくちゃにして……。』
フィローメルは小さくため息をついた。
幸いなことに、エレンシアが壊してしまった雰囲気を取り戻すため、宮廷楽団の奏者が演奏を始めた。
美しい旋律が宴の場に広がると、人々は戸惑っていた皇女の登場を忘れ、音楽に没頭していった。
フィローメルは、周囲の人々が楽団の演奏を楽しんでいる間に、そっと席を立った。
少し奇妙に思った。楽団が登場したタイミングが、どんなに偶然だとしても、あまりにもぴったりすぎる。
『エレンシアが楽団について話し始めたときに、まるで計ったように現れるなんて、そんなことがあり得るの?』
予想外の場所から答えが返ってきた。
庭園の片隅の木の上で発見されたジェレミアが、素直に白状したのだ。
「え?あれ?俺がやったんだ。」
フィローメルは、木の上の彼を見上げながら尋ねた。
「どうやって?」
「実はさ、レクシオンがあの侍従に指示を出してたんだよ。皇宮の楽団をここに配置しろって。」
初めて聞く話だった。
「本当は、宴が終わるまでそうしておくはずだったんだけど、俺が中に戻る気配がないのを見て、適当に指示を解除したんだ。頭に衝撃を与えれば、簡単に解けるよ。」
「それで、侍従の額に赤い痣ができていたんですか?」
しかし、重要なのはそこではなかった。
「でも、レクシオンはなぜそんな呪いをかけたんですか?」
「それはルグィーンが……。」
「ルグィーンですか?なぜ?」
意外な答えを聞いて、フィローメルは困惑した。
「……まあ、いろいろあるんだよ。」
しかし、ジェレミアは納得できる答えを聞けず、その後も問い詰めたが、相手は固く口を閉ざしていた。
『あの人はいつも話し始めては途中でやめるんだから。』
フィローメルは、小さく肩をすくめた。








