ニセモノ皇女の居場所はない

ニセモノ皇女の居場所はない【91話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【ニセモノ皇女の居場所はない】まとめ こんにちは、ピッコです。 「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介と...

 




 

91話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 昔の思い出②

国賓館、食堂。

フィローメルは皇帝と昼食を共にしていた。

“前にできなかったことを、今度こそやるために来たんだ。”

そう言ってユースティスが南宮に入ったのは、ちょうど30分前のこと。

‘前にできなかったこと’とは、昼食を一緒に取ることだった。

少し前、皇帝専用の書庫にユースティスが入れないようにとフィローメルが言ったのだ。

“ご一緒にお食事をどうぞ。今すぐ。”

その直後、彼女が腹を押さえて倒れたことで中断された食事を、今こそ果たそうと皇帝が自ら動いたのだった。

自分を皇帝宮に呼び寄せたわけではないとするフィローメルの言い訳に、皇帝は静かに穏やかな表情を浮かべていた。

「……まだ体が完全に治ってないのに、また倒れたりしたらどうするつもりなの?」

以前の仮病騒動のせいで、彼にとってフィローメルはとんでもない虚弱体質という印象がついたようだ。

彼女はそれを積極的に否定することもできなかった。

食事の雰囲気はとても静かだった。

器とフォークがぶつかる音がやけに大きく響いた。

「………」

「………」

二人は黙々と料理を口に運んだ。

『静かだからこそ、余計に静けさが気まずくて……』

これまで彼と食事をするときは、いつもエレンシアも一緒だったので、久しぶりに感じたのは“静けさ”だった。

幼いころのフィローメルは、皇帝の前でもぺらぺらとよく喋っていたが、歳を重ねるにつれて自然と口数も減っていった。

ふと、昔の記憶が蘇る。

9歳か10歳くらいの頃のことだった。

ある日、皇帝と夕食を一緒に取る予定だったが、皇帝に急用が入り、どうしても対応しなければならなくなったのだ。

幼いフィローメルは、広い食卓の前に一人ぽつんと残された。

「申し訳ないが、一人で食べてくれ。」

それが、皇帝の言葉だった。

しかし、フィローメルは頑なに料理に手をつけずにいた。

なぜならその日のメイン料理は、彼女が育てていたウナギで作られていたからだ。

当時フィローメルが住んでいた西宮の庭の池で育てていたウナギだった。

「育てていた」とは言っても、まだ幼い皇女が時々魚やご飯を投げてやった程度だったが、「フィローメルのウナギ」というタイトルが重要だった。

自分が直接育てたウナギまで献上するほど、あの子が皇帝を好み、尊敬しているという表現だったのだ。

『今思い返してみると、本当に必死だったな。』

でも、あの年齢の子どもの頭から出てきたアイデアだと思えば、どうしてそれが「必死じゃない」と言えるだろうか。

当時のフィローメルは、皇帝の好感を得ようとしていたのだった。

以前の行動とだいたい似たりよったりの振る舞い。

普段は太ったウナギを皇帝に食べさせようと、その想像にふふっと微笑んでいた幼い少女だった。

そんなウナギが、目の前で冷たくなっていくのを見て、幼いフィローメルの胸は痛んだ。

「陛下がいらっしゃるまで、私も食事はいたしません!」

意地になって給仕に強く言い張り、下働きの者たちを困らせた。

頭では従順でいるべきだと分かっていながらも行動がいつも伴わなかった時期だった。

幸いにも、皇女の食事を取れなかったという理由で彼らが咎められることはなかった。

あまりにもお腹が空いたフィローメルがスプーンとナイフを握ったからだ。

「それでもお腹を空かせて体を壊すことは非効率です。皇帝陛下に心配をかけるわけにはいきませんから。」

気を遣っていた食事が終わった後も、フィローメルは未練が残るのか、ずっと食卓の前に座っていた。

せっかく来たのだから皇帝を待っていこうと、顔だけでも一度見てから帰ろうという心づもりだった。

けれど、空腹はしっかりと満たされてしまい、じっとしていると眠気が襲ってきた。

びくっとしたフィローメルは、思わず息を飲んだ。

食器がぶつかる音に、いつの間にか眠っていたのに気づいたのはだいぶ時間が経ってからだった。

目を開けると、ユースティスが席に座って食事をしていた。

彼はすっかり冷めて身だけになったウナギをほぐしていた。

「起きたか。食事を終えたなら戻ればいいのに、なんで残ってまで苦労してるんだ。」

フィローメルは不安になった。

まずい料理を食べたと思われたらどうしようかと心配になった。

「陛下、もう冷めたのでお召し上がりにならないでください。侍従に新しい料理を出すようおっしゃったのに……」

「必要ない。」

「でも……」

彼女の引き止めにもかかわらず、皇帝は最後までウナギ料理を食べ続けた。

一片も残らないほどに。

『そんなこともあったっけ……』

一瞬ではあったが、そのとき彼が父のように感じられた。

フィローメルは奇妙な感情に陥った精神をすぐに取り戻した。

気を確かに持って。

もう過ぎたことだ。

彼女は、固く閉ざしていた口をようやく開いた。

「陛下。」

「どうした?」

「以前、私に仰りたいことがあるとおっしゃいませんでしたか? その、告白だと……」

「………」

彼から莫大な財産を譲り受けたあの日、エレンシアの登場によって聞けなかった言葉があった。

皇帝が自分に繰り返し関心を寄せる理由のひとつが、その“告白”である気がしてならなかった。

伝えたい言葉があるのに言えずにいるのなら、言いやすいようにきっかけを与えようとしたのだ。

しかし、ユースティスは険しい表情で沈黙を守っていた。

フィローメルはそっと不安になった。

どれほど大きな話をしようとして、こんなに間を取っているのか。

頭をフル回転させてみたが、それがどんな内容なのか、少しも見当がつかなかった。

告白?

そんな大げさな言葉まで持ち出して、私に言うことって何?

「実は君が……」

「にゃあーん」

ついに皇帝が口を開こうとしたその時、妨害者が現れた。

開いた扉から入ってきた猫が、そばに近づき、ぴょんとフィローメルの膝の上に飛び乗ったのだ。

『この人、またなんでこうなるの?』

ちょうどその時、皇帝の告白は止まった。

「……まあ、食事中だし、降りてもらおうか。」

彼女がぐったりした体をそっと押して猫を下ろそうとしたが、猫はぴょんとまた膝に飛び乗ってきた。

「降りてってば。」

もう一度下ろした。

ぴょん。しかしまた戻ってきた。

フィローメルの膝を自分の指定席かのように堂々と占領する猫は、しっぽを優雅に揺らしていた。

『どうしてだろう。今まで一度も膝に乗ってきたことなかったのに。』

フィローメルは細めた目で猫を見下ろしながらつぶやいた。

「猫を飼っていたのだね。」

皇帝の視線に引かれてフィローメルの視線も猫へと移った。

そして思えば、皇帝がルクァンを見るのは今回が初めてだった。

「そうです。」

「いつからだ?」

「ちょうど皇宮に戻ってきたばかりの時からです。」

「動物が好きだったとは知らなかったな。まあ昔も池のほとりでウナギを育てていたことはあったが。」

「……覚えていたのですか?」

まさかユースティスがまだそのことを覚えているとは思わなかった。

「そうだ。そのウナギで私に料理を作ってくれたではないか。」

「料理をしたのは料理長で、私はただウナギを用意しただけですけど……。」

「そのときのお前の姿が印象的だったよ。次は庭で野菜を育てて、サラダを作ってくれるって言ってたな。」

……そうだったっけ?

それはフィローメル自身も記憶にないことだった。

ナサールとパホンシカに会いに行ったときにも感じたが、皇帝は記憶力が非常に良い人物だった。

『だから私がサラダを作ったって?それは覚えてないな。』

ユースティスが言及したウナギ料理から始まった会話は、水の流れのように自然に続いていった。

「建国祭のとき、陛下が突然私を抱きしめたでしょう。どれだけ驚いたか分かりません。」

「そうか?気づかなかったよ。特に考えもなくやったことだったけど。」

「見ていた人たちは皆、仰天していました。」

ほとんどフィローメルが後継者として認められるために懸命に努力していた時期の出来事だった。

自分でも話しながら驚いていた。

何重もの仮面をかぶって自分を隠しながら生きてきたわけではない。

幼い頃、自分の計画が成功して皇帝に徐々に認められていくたびに嬉しくもあり、達成感もあった。

しかし夜ひとりになると、果てしない未来への恐怖が幼い彼女を襲ってきた。

昼間に感じた喜びはまるで洗い流されたように消えてしまった。

肯定的に捉えれば、楽しい記憶よりも辛い記憶の方が多かった。

そして楽しい記憶よりも、苦しい記憶がいつも先に思い出された。

まあ、否定的な記憶の方が肯定的な記憶よりも強烈なものだ。

それなのに、どうして何でもないかのように笑って話せるのだろう?

まるでその一片の記憶が、真の幸福でもあるかのように。

 



 

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