こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

97話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 世界樹④
世界樹が叫んだ。
「ただの幻想だったんじゃない!」
魔塔主は性格が悪そうな笑みを浮かべた。
「お前たち程度を片付けるのに、わざわざメテオなんて面倒な魔法を使うわけないだろ?」
ともあれ、中央平原には再び平和が戻ってきた。
大河に関する事情を聞いた族長ドワーフは、驚きを隠せなかった。
「子どもが裏返るなんて…そんな信じられないことが本当に起こるなんて……。」
世界樹もオラカンも同意するかのように、首を縦に振った。
『こいつらの妄想のほうがよっぽど信じられないよ。』
族長のひどいアザを見たフィローメルは、言葉を呑み込んだ。
運石の代わりに、大魔法使いの強烈な平手打ちが彼の頭の上に落ちたようだった。
族長ドワーフはその傷をそっとなでながら言った。
「ともかくフィローメル嬢に感謝を。幻だったとはいえ、メテオの脅威から守ってくれたからな。」
「私たちを助けてくれて、父のこともちゃんと説得してくれたじゃない。」
説得というのは、ドワーフたちが毎年魔塔に送っている鉱物に関する話だった。
フィローメルが言い出すと、ルグィーンは即答した。
「ああ、それ? もういい。保管する場所もないし、もう送るのはやめてって伝えようと思ってたところだ。」
それが理由だったのだ。
「はは、これでやっとひと息つける!」
族長はすっきりした顔で、また煙草のように長い葉巻を吸い込んだ。
ルグィーンが呪縛にかけられていた魔法も解かれたおかげで、彼はようやく自由に自分の授業を行えるようになった。
族長はフィローメルをじっと見つめた。
「手の甲を少し見せてくれるか?」
「私の手の甲ですか?」
「そうだ。ささやかだが、恩人に報いねばならん。」
フィローメルが戸惑いながらも手を差し出すと、彼は指先で軽くその手の甲に触れた。
触れた部分からぽかぽかとした温もりが広がっていく。
彼女の手の甲に淡い白い曲線のような印が浮かび上がったかと思うと、すぐに消えていった。
「これ……何ですか?」
「我々がそなたに贈る、称号と呼び名だ。」
「はい。」
呼び名と称号?
それに似た言葉を前にも聞いたことがあった。
確かに、妖精女王セレピアネがこう言っていた。
「あなたに妖精の加護を授けます!明るい未来があなたの前に広がりますように。そして称号もお与えしましょう。」
後でルグィーンにその意味を尋ねたが、彼は「大したことじゃないから気にしなくていい」と言って話を終わらせた。
族長の目が輝いた。
「おお。すでに額には別の称号の印があるな。」
「額……?」
フィローメルが不思議そうな表情を浮かべると、隣にいたオラカンがそっと手鏡を差し出してくれた。
『これまた何なのよ!』
丸い額の中央には、白い花の形をした紋様が浮かんでいた。
かつてセレフィアネが「チュッ」とキスをした、その人物のものだ。
「妖精族の紋章じゃないか!どれどれ、何と書かれているのか……」
普通の花の模様でも読み解けるように、ヤン族長は目を細めてそれを確認した。
「“妖精族の恩人。多くの者を危機から救った守護者”……うわぁ、かなり高いランクの妖精たちからこの程度の称賛を受けたのなら、とてつもないことをしたに違いない。」
恥ずかしそうに、フィローメルは頭をかいた。
「そんな大したことではなかったんですが……。あ、ところで族長さんは何て書いてくれたんですか?」
「ドワーフ族の恩人。そして……白い悪魔を服従させた勇者。」
「誰が誰を服従させたって?」
ルグィーンのいる方向に目をやりながら、族長はしばし躊躇して答えた。
「さっき見たところ、フィローメル嬢には逆らえないようでしたよ。世界樹様の果実まで持っていったのを見て納得しました。」
種族が違えば、世界を見る視点も異なるようだ。
「……称号はともかくとして、“加護”って何ですか?」
「一種の祝福を授ける概念で……まあ、大した力ってわけじゃないけど、無いよりマシってことさ!」
良いことは良いことなので、とりあえず受け取っておくことにした。
フィローメルは族長との話を終えると、ルグィーンと世界樹のある方へ向かった。
世界樹はフィローメルの姿を見るなり、彼女の背後にそっと隠れてしまった。
「ちょっと、この狂った人間から私を守って!そしたら勇者の資格をあげるから!」
そばで驚いた騎士が叫んだ。
『今日はやけに勇者を探すやつが多いな……。』
フィローメルはそう考えながら、手の中の火花を消してルグィーンをなだめた。
「焦らないでください。世界樹様に聞くことがあるでしょう?」
魔法使いは「チッ」と舌打ちして、火を消した。
ウサギがフィローメルの肩にぴょんと飛び乗った。
「よくやった、人間!約束通り、勇者の資格を与えよう。」
どこからともなく、巨大な木の枝の一本がすっと近づき、彼女の頭に何かを載せた。
枝の葉と枝で編まれた冠だった。
「……ありがとうございます。」
勇者になるつもりはなかったが、それでもこれも受け取っておくことにした。
「でも、私に聞きたいことって何?勇者は歓迎するけど、狂った人間は顔を2つにしてからにしてくれよ。」
フィローメはようやく中央平原までやってきた理由を口にした。
「もしかして、他の世界についてご存知ですか?とても古い本で見た話なのですが……」
世界樹はしばらく黙り込んだ。
「異世界、異なる世界……。本当に久しぶりに聞く言葉だな。」
「ご存知なのですか?」
「昔、そういう話が世間に広まったことがあったな。他の世界から侵入者が来るかもしれないから注意しろ、って。」
「滅びの予言ってこと?」
「そう!」
ウサギは誇らしげに肩をピンと張った。
「その予言を受け取った神官が、ずっと私のそばに仕えていた。私もあのころは今より小さな木でしたけど。」
「ほかの世界ってどんな世界なんですか?侵入者ってどんな奴なんです? 人間ですか?」
フィロメルの質問に、世界樹はやや困ったような表情を浮かべた。
「ごめんなさい、私も詳しくはわかりません。」
「そっか……。」
ため息が漏れた。
「代わりに、他の世界を**“覗き見る”方法なら知っているぞ!」
「……覗き見るってどういうことですか?」
「そうさ!その方法を使えば、自分の目で直接、他の世界がどんな場所か見られるんだ。ただし、準備物が必要だけどね。」
「どんな準備物なんですか?」
「他の世界から来た生物や媒介物、そして昔その神官が神から授かった聖遺物が必要なんだ。」
世界樹は話している途中で首をかしげた。
「そういえば、その聖遺物なら神官が亡くなったときに、私が保管してたと思うけど……どこだったかな?」
「よく思い出してみてください。」
「まるで昔のことのようだな……」
ルグィーンの手から再び火花が上がった。
「このたくさんの枝のうち、一本でも焼ければ記憶が戻るかもしれないだろ?」
「やめて!この狂った人間!」
新たに認められた勇者の助けでかろうじて滅亡を免れた世界樹は嘆いた。
「まったく、なんてことだ。神はどうしてあんな狂った人間にあんなに大きな力を与えたんだ……」
ルグィーンは鼻で笑った。
「神がくれたって?私の力は、私が優れているからこそ手にしたものさ。」
ウサギは責任を感じ、明日の朝までに聖物を見つけ出すと宣言して本来の姿に戻った。








