こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
今回は127話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
127話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 恩人との約束
私がリューディガーと向かった場所は、平民が暮らす地域だった。
もう少し正確に言うと、貧民街からは離れているものの、ラムガートの最下層に住む人々の区域だ。
馬車の窓から見えるものは、質素な住居が並び、道路の整備もあまり良くなかった。
ヴィンターヴァルトの豪華な馬車や、王家の馬車は目立ちすぎるため、今回は目立たない普通の馬車が選ばれた。
しかし、この馬車自体も古びているため、見た目はあまり良くない。
リューディガーはこんな場所に私が足を踏み入れることが不満らしく、私の隣で何度も落ち着きなく体を揺らしていた。
「どう考えても、ここは私一人で来ても大丈夫な気がします。ユディットさんが・・・」
「リューディガーさん一人で来たら、警戒されるかもしれませんよ」
私はクスッと笑った。
どんなに私の目にゴマ粒ほどの存在でも、私の家の忠犬が他人の目には城の護衛犬に見えることは理解している。
「彼に親切にしてもらったのは私なので、私から直接感謝の挨拶をするのが筋でしょう。それに、こういう場所は慣れているんですよ。正直に言うと、私の家の庶民的な住まいよりも不満はありません」
「でも・・・」
「おや、もう着いたみたいですね」
リューディガーが何か言いかける前に、馬車がガタリと止まった。
リューディガーは何とも言えない顔で睨んだが、大人しくドアを開け、私に手を差し出して助けてくれた。
もしかすると、私が護衛なしで飛び降りるのではと恐れて、先手を打ったのかもしれない。
私は一軒の家の前に立ち、住所を確認する。
「クラベット27番地」
ここで間違いない。
私は深呼吸をし、意を決して手を伸ばし、「コンコン」とノックした。
ドアをもう一度ノックするか迷っていたその時、ついに中から応答が聞こえてきた。
「どなたですか・・・?」
わずかに開いた扉の隙間から、不安そうな目をした黒髪の痩せた少女がこちらを見上げていた。
やはりリューディガーを連れてきて正解だった。
私はできるだけ害のないように見せるために、柔らかい微笑みを浮かべる。
「こんにちは、クロエ」
しかし、クロエの目に浮かんだ警戒心は容易に消えなかった。
それどころか、初めて見る私が名前を呼ぶと、むしろその警戒心がさらに高まったようだ。
考えてみると、私の人生は決して人から好意を持たれるものではなかったことに改めて気付いた。
『まずは視線を合わせることからよ』
私はその場に膝をつき、クロエと同じ目線で向き合う。
そして、にこりと笑いながら手を差し出した。
「初めまして。私は君のお父さんの友達だよ」
「私のお父さん? 」
クロエは半信半疑の様子で目を細め、差し出された手を握ることなく、ただじっと見つめるだけだった。
私がきちんとした服装で来たにもかかわらず、どうやら平民には見えなかったらしい。
彼女は戸惑ったように笑いながら手を引っ込めた。
闘病中なのか、クロエの頬はこけており、腕も細く頼りなげな様子だ。
一目見ただけでも、健康状態が思わしくないことが分かった。
それでも、その瞳は星のように輝いていて、「お父さん」という言葉に一瞬だけ警戒心を解いたかのようだった。
しかし、それもすぐに元通りになり、彼女は再び壁を作る。
「お父さんは、少し仕事に出かけていて・・・まだ帰ってきていません。」
もしかして、彼女はマクスの死を知らないのだろうか?
私は困惑しながら、背後に控えるリューディガーに目を向けた。
リューディガーは控えめに頷いた。
それが「事情は察している」と伝えたいのだと理解する。
おそらく、父親が戻ってこない理由をそのまま伝えるのは得策ではないということだろう。
この年齢の子どもでさえ、正直さよりも自分の弱みを隠すことを学んでいる。
そうでなければ、この過酷な世界で生き残れないのだ。
口の中に苦味が広がった。
私は気を取り直し、話題を変えることにした。
「そっか。それじゃあ、お母さんはいつ頃帰ってくるのかな?」
「・・・すぐ戻ってくると思います」
「クロエ、それまで私たちが一緒にここで待っていてもいいかい?」
クロエは警戒の色を見せながらも、緩やかに顔を上げる。
まだ完全に心を開いたわけではないようだが、ふと何かが頭をよぎった私は、思い出したように口を開いた。
「そうだ、お父さんが君に残したプレゼントを持ってきたんだ」
「プレゼント・・・?」
クロエは少し驚いたように、自然と手を差し出す。
彼女の小さな手にそっと置かれたのは、マクスが特別に作った真珠のブローチだった。
「これ・・・お父さんが、私に?」
クロエはその小さな手でブローチを大切に握りしめ、まるで失いたくないものを守るように胸に抱きしめた。
私はその様子をじっと見守りながら、胸に込み上げる感情を必死に抑えた。
そして穏やかな声で再び言葉を紡いだ。
「それじゃあ、しばらくここで待っていよう。お母さんが戻ってくる頃には、きっと笑顔で迎えられるよ」
「・・・いえ、どうぞお入りください」
そう言って扉が開いた。
警戒心の強い小さな子どもが扉を開けてくれたことに感謝しながら、私は慎重にマクスの家に足を踏み入れる。
外観から想像した通り、家の中も質素で控えめだ。
ただし、クロエのベッド周りはまるで心を込めて手入れされたかのように整然としている。
しばらくすると、ヘター夫人が戻ってきた。
事前に王室からの連絡で事情を聞いていたが、私自身がここに来るとは思っていなかったようで、彼女は驚きを隠せない様子だった。
「王女殿下がこのような場所までお越しになるとは・・・」
「いえ、これはぜひ訪れるべきことでした。もしご主人が無事でなかったら、大事になっていたはずです」
私の言葉にヘター夫人は唇を引き結び、目を伏せる。
疲労の色が濃い彼女の目には、さまざまな感情が入り混じっているようだった。
希望と不安、そして悲しみが複雑に絡み合い、ついには涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
私は彼女をそっと見守りながら、その背後にある状況を思った。
娘の治療費を捻出するために、不法な手段に手を染めざるを得なかった彼女たち家族の重い現実が、そこにはあった。
夫が家族を守り、命を犠牲にして娘の治療費を残してくれたという知らせを聞いたとき、彼女が感じた途方もない虚しさは計り知れなかった。
「改めてお礼申し上げます」
私は深々と頭を下げ、感謝の意を伝える。
それが少しでもヘター夫人に私の真心を届けられることを願って。
その後、私はヘター夫人とクロエとともに多くの話を交わした。
主に彼女たちの生活状況について耳を傾けることが中心に。
マクスと交わした約束は、クロエが完治するまで責任を持つということだ。
しかし、目の前の環境を見る限り、とてもそのまま放置することはできない。
さらに、マクスが生存しているかのようにクロエが嘘をついていたことも気がかりだった。
『やはり、この環境は女性二人が暮らすには適していない』
そう考えた私は提案した。
「もっと安全な住居に移るのはいかがですか? 私が所有している空き家があります。賃料はいただきませんので、どうぞ安心してお使いください」
「クロエの治療費を負担していただくだけでも十分すぎるのに・・・。本当に申し訳ありません」
「いえいえ。医師が頻繁に訪れるにしても、もっと広々とした場所にいた方が良いでしょう。何よりも環境が病気の治療には適していませんから・・・クロエのことを考えてください、奥様」
「・・・そうですね」
悩んだ末にヘター夫人は頷いた。
大きな決断を下したという安堵に、私は小さく息をついた。
私は家の提供をはじめ、自分にできる最大限の方法で問題を解決しようと努力していた。
ほんのわずかな時間だったが、その瞬間、マクスに負った借金は金銭では到底返せないものだと感じた。
果たしてマクスが望んでいた見返りとなったのだろうか。
それは私には分からなかった。
ユディットとルカが助かったのはマクスがいたからですよね。
クロエの病気が早く治ることを願っています。