こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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146話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- キャッチボール③
「そうだよ!ただ力任せに投げるだけじゃないんだ。さあ、よく見ててね。あそこにある木を正確に狙ってみせるから。」
私は衝動的に、遠くにある木を指さして宣言した。
木との距離は大体15メートルほどに見える。
ソフトボールのピッチ距離である14メートルより少し長いが、キャッチャーミットに比べて広々とした木の幹を思えば十分に余裕があった。
約3メートルほど離れた場所からボールを投げていた子どもたちは、その距離感に驚いて口をぽかんと開けた。
ただルカだけが冷静に尋ねた。
「僕が受け取ろうか?」
「いや、今回は本気で投げてみたいから。」
私の本気度を察したルカは素直に手を挙げて後退した。
私は真剣に構えを取り、足を地面にしっかりと踏みしめ、グローブに軽く触れた。
私はボールを二度振り投げた。
集中していると、視界の中心に木の幹がはっきりと見えてきた。
息を整え、投げるタイミングを見計らった瞬間、私は大きく腕を振り下ろした。
「フッ!」
短い気合の声とともに、ボールは私の手を離れ、勢いよく飛び出していった。
ボールは速いスピードで直線的な軌道を描きながら前方へ進み、狙い通り木の幹をめがけて一直線に向かった。
その軌道は正確でスピードも申し分なかった。
もう少しで木の幹に命中する、というところで——
バキッ!
耳をつんざくような音が響いた。
軌道の途中で何かがボールの進路を遮った。
私が顔をあげて確認すると、そこには不意に現れた人影が立っていた。
その姿に私の顔は凍りついた。しかもその相手は……。
「リュ、リューディガーさん!?」
「お、伯父さん!?」
どうしてここに!?
突然の出来事に混乱して声を上げる私。
リューディガーは少し驚いた表情を浮かべつつも、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。
幸い大きな怪我はなさそうだったが、空き地で偶然出くわすにはあまりにもタイミングが悪かった。
まさに「全力投球」の直撃を受けてしまったリューディガーの頭に、痛みの余韻が残っているのは明らかだった。
私は顔が青ざめ、手にしていたグローブを地面に落とし、急いでリューディガーの元に駆け寄った。
「大丈夫ですか、リューディガーさん?どうして急にそこに出てきたんですか!」
しかし、地面に倒れ込んだリューディガーは何も答えなかった。
目の焦点が定まらず、完全に意識が混乱している様子に、私の心臓は一気に冷え込んだ。
「リューディガーさん、しっかりしてください!リューディガーさん!」
私は必死に彼の名前を呼び続けた。
しかし、私の呼びかけにも反応せず、リューディガーはそのまま力なく横たわっているだけだった。
その様子に、私は完全にパニックに陥った。
どうすればいいのか全く思い浮かばず、頭が真っ白になる。
混乱しながらも、彼をなんとか支えようと手を伸ばしていた時、先に冷静さを取り戻したルカが素早く行動に移った。
「医者を呼んできます!」
ルカがその場を飛び出して医者を呼びに行ったおかげで、リューディガーの容態が悪化する前に医者が到着することができた。
しかし、リューディガーが一向に正気を取り戻さないので、具体的にどこが悪いのか、どうしてこうなったのか、全く分からないままだった。
そのため、不安感だけがどんどん増していった。
このままリューディガーが植物人間になったりしたらどうしよう。
この状況をどう受け止めていいのか分からず、私はただ茫然とするばかりだった。
他の誰かだったら、心を落ち着けられたかもしれない。
しかし、もしこれが偶然ではなく、彼自身が意図して行動した結果だったら……?
リューディガーの目をじっと見つめると、その目には涙が浮かんでいた。
私はその場に崩れ落ち、そっと彼の顔に触れた。
「一体どうして、あんなことを……」
後で少女たちから聞いた話によると、リューディガーは予定より早く家に戻り、庭の様子を確認していたらしい。
そして、私がいる場所を尋ねた後、「ちょっと彼女を驚かせよう」と思いついたのだとか。
予定よりも早く帰ってくることで驚かせようと考えたようだが、彼の計画は結果として、あのような事態を引き起こしてしまった。
しかし、問題は彼が現れたタイミングと場所だった。
なぜ、ちょうど私が全力で投球しているその瞬間に、あの場所へ向かってきたのだろう?
リューディガーが現れた道では、私たちがいた庭の後ろが見事に隠されていた。
まさに盲点と言える場所。
私たちの話し声が聞こえたとしても、どこで何をしているのかを見通すことはできなかっただろう。
だからこそ、私がどこを目がけてボールを投げているのかを、リューディガーは全く知らなかったはずだ。
これほど運命が皮肉なことがあるだろうか。
神のいたずらと言わざるを得ない。
私は、自分が存在していることさえ気づかずに、神の手のひらの上で踊らされているような気分だった。
「……これ以上リューディガーさんの状態が悪化したらどうしよう……」という不安が頭をよぎった。
神という神を全て呼び寄せて祈らなければ間に合わないのではないかという焦りが胸を占めた。
「どうかリューディガーさんを正気に戻してください」と、手を握り締めて、必死に神に祈りを捧げた。
信じて祈るしかなかった。
私の祈りが天に届いたのだろうか。
しばらく何の反応もなかったリューディガーが、ついに微かに声を発した。
「……うん……」
その微かな声が、まるで奇跡の鐘の音のように響き、希望の光をもたらした。
私は慌てて医者を呼びました。
「医者!医者!」
私の外見が相当な緊迫感を醸し出していたのか、ルカがソファでびくっと目を覚まし、隣室で待機していた医者もすぐに部屋に駆け込んできました。
「何か問題でも起きましたか?」
「准将が意識を取り戻したようです。精神を取り戻された模様です。」
期待のあまり、私は思わず息をのんだ。
しばらくして、リューディガーの指先がわずかに動き、その瞳が震えるように揺れながら開く。
焦点が定まらない灰青色の瞳がぼんやりと現れた。
彼は何度か瞬きを繰り返し、その様子を見て私はこらえていた涙が一気にあふれ出した。
私はリューディガーの手を握り、心配そうに尋ねました。
「リューディガーさん、大丈夫ですか?」
すると、私の手の下にあったリューディガーの手が大きく震えた。
リューディガーの目はゆっくりと私に向けられた。
「大丈夫」という返答を期待していた私は、安心させるような笑顔を浮かべる準備をしていたが、彼から返ってきたのは私の質問に対する答えではなく、どこかぎこちない視線。
何だろう?
彼の瞳には明らかに何かを尋ねるような鋭い光が宿り、私は狼狽しながら彼の視線を追った。
リューディガーの目は私を通り越して、背後に立っている医師を見据えていた。
彼は静かな声で口を開いた。
「……これはどういう状況なのか?」
「准将、あなたは奥様が投げたボールに当たったのです。覚えていますか?」
医師は視線を慎重に彼へ向けながら尋ねた。
リューディガーがどれほど冷静を装おうとしているのかは分かっていたが、それでも不安げな気配は隠せなかった。
私が尋ねた質問には答えないまま、彼は医師に状況を確認するような態度をとった。
何かが間違っている予感が強く押し寄せた。
医師の表情が一瞬険しくなり、その目が一瞬の迷いを見せた。
リューディガーの眉間に深い皺が寄り、不機嫌そうに呟いた。
「准将?奥様?一体何のことを言っているんだ。私の現在の階級は大尉だ。まだ見習いだろう。」
彼の言葉はまるで冷たい水を浴びせられたように感じられた。
その発言は違和感に満ちていた。
そして、まるで……。
「どうやら……准将は一時的な記憶喪失に陥っているようです。」
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