こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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147話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 記憶喪失
医師は蒼白な顔で凍りついた。
確かに記憶喪失だという診断を下すのはためらうことだったが、彼の口からそれが告げられると、私の頭は混乱し、衝撃で体が震えた。
神様、リューディガーが正気を取り戻すようにと祈ったのに、それが叶っても記憶喪失だなんて、あんまりではありませんか!
(こんな時、どうすればいいの? 一時的な記憶喪失だとしたら……それでも元通りに戻る可能性はあるの? もしそうなら……記憶が戻るまでにどれくらいかかるのだろう?)
私は希望を捨てずに彼を見守り続けたが、その一方で否定的で悲観的な思いが心を覆い尽くしていくのを抑えられなかった。
(もし永遠に記憶が戻らなかったら……。いや、今のリューディガーは私をどう思うだろう? 以前の彼は……3年前のリューディガーはどんな人だった?)
リューディガーと初めて出会ってから、実に多くの出来事があり、彼は大きく変わった。
過去の彼を思い出そうとするのは簡単ではなかったけれど……以前のリューディガーは気品があり、愛そのもののような人だった。
彼は他人との関係においてまったく無関心で、社会性が欠如したソシオパスのように見えた。
果たして今のリューディガーが、再び私に良い反応を示すことがあるのだろうか?
わずかに疑問を感じざるを得なかった。
私の喉が大きく動いた。
他者に対するリューディガーの態度が突然目の前で露骨に表れた。
その冷徹さ、まるで鋭い刃のような態度が、もし私に向けられると考えたら、足元が崩れるような感覚に襲われた。
思わず笑顔を作ろうとしても、全く上手くいかなかった。
ドラマのように記憶喪失を題材にした話を軽い気持ちで見ていた時の自分が、今では情けなく思えた。
これが現実になると、あまりに辛すぎて腕を振り回したい衝動に駆られた。
「とにかく……私が叔父さんに状況を説明します。見たところ……最近の3年間の出来事を全く覚えていないようです。」
ルカが毅然とした態度で言葉を発した。
その後、ルカを見つめたリューディガーの目が大きく見開かれた。
「……ヨナス?」
リューディガーもまた、まったく記憶がないようだった。
今後何が起こるのかは全く予測がつかなかった。
しかし、それでもこの状況から目を背けるわけにはいかない。
私は覚悟を決めた。
「いや、一緒にいるよ。大丈夫だよ。」
「そんな顔をして言っても説得力がないよ。ちょっと休んだほうがいい。」
私の顔がどうなっているのか。
私は視線をそらし、壁に掛かった絵を見つめた。
血の気が引いた青白い顔で、驚いたように口を開けている自分の姿がそこに反射しているように感じた。
私は大きく深呼吸をした。
ルカの言葉を受け入れることにした。
今は少し休むべき時だ。
今の状況で最も困惑し、混乱しているのは、私以上にリューディガーに違いない。
記憶が完全にない状態で、自分が結婚していると主張され、さらに配偶者だと名乗る人間が現れたのだから。
さらに、過去のリューディガーは結婚には否定的な考えを持っていた。
いや、完全に反対していたわけではないとしても、少なくとも前向きではなかった。
その彼が、どれほど困惑しているかは想像に難くなかった。
そんな彼に対して、私の感情的な態度が彼をさらに混乱させることになるのは明白だった。
この場では冷静になることが最善の選択だ。
私は心を落ち着かせ、考えを整理することを決めた。
ルカの提案を受け入れた私は、席を立ち上がった。
「そうね。私も今、混乱しているから……お願い。」
「任せて。」
頑なにコケを引き抜くルカの眼差しが心配そうに私を見つめていた。
ルカに心配をかけたくないと思い、無理に笑顔を作ろうとしたが、口元は震えるばかりだった。
その時、リューディガーの視線を感じた。
「頑張れ」とでも言うように、彼は私を見守っていた。
突然にして、妻の顔くらいは覚えているだろうと思いたかったが、それすら自信が持てなかった。
だとしても、彼の視線に向き合わなければならないのだ。
避け続けるわけにはいかない。
しかし、どうしても彼の顔を見る勇気が湧かなかった。
かつて私を温かく見つめてくれていたその目が、今どう変わっているのか想像するだけで怖くなった。
彼が私を冷たい目で見たり、軽蔑したりしたらどうしようという考えが頭をよぎるたび、体が硬直してしまう。
『彼が怒ったり、冷たく突き放したりしたらどうすればいいんだろう?』
頭の中には、小説やドラマ、漫画で描かれる記憶喪失による後悔の数々が浮かび、次から次へと最悪の事態を想像していた。
『だから、あまりにも多くを知りすぎるのも良くないんだろうな。ただ、不安が募るだけで……。』
もちろん、リューディガーが物語の中の後悔する登場人物のように振る舞うという保証はどこにもなかった。
しかし、そうしないだろうという確信もなかった。
そんなことは記憶喪失によるドラマにありがちな展開で、冷静かつ理性的な結論には程遠いのに。
幸いなことに、リューディガーが私との関係を信じていなかったとしても、その微妙な仕草や態度からくる証拠や手がかりが山のようにあった。
安心、不安、心配、困惑、それらすべての感情が一度に押し寄せ、私の心は乱れた。
足元の地面は平らなのに、感情に揺さぶられて足がすくむような感覚だった。
唇を強く引き結び、込み上げる動揺を飲み込みながら、私は混乱した心をできるだけ抑えようと努めて部屋を出た。
最後までリューディガーに視線を向けることなく、逃げるように。
そんな私の背中に、リューディガーの視線がまるで追いすがるように長く伸びているように感じた。
それはきっと気のせいだろう。
私はその場で彼を見送った。
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