こんにちは、ピッコです。
「死んでくれと言われて」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

24話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 探検
考えがぐるぐると巡っていたヤナの頭は、ジハードの一言でぴたりと止まった。
「ヤナ。」
「はい?」
「2年前に私が君にした約束を覚えているか?」
「ええ。」
「もうその準備がすべて整ったようだ。約束どおり、私と一緒にレテ城へ行くつもりはあるか?」
リンは口をぽかんと開けたまま、ジハードを見上げた。
いま、何て言ったの?
『レテ城って……ジハードが皇室から爵位と領地を授かったって場所?』
あまりにも唐突な申し出だったため、記憶にもない二年前の約束を引っ張り出されても、簡単には口を開けなかった。
だがそれとは別に、ジハードとヤナの関係についての疑念が一気に晴れる瞬間でもあった。
『そういう約束をしてたのか。だからジハードはヤナに気を配ってたんだな。』
いぶかしげな目でジハードを見つめると、彼のこめかみがわずかにぴくりと動いた。
「反応が薄いな。約束を覚えていないのか?それともレテ城に行く気がないのか?」
両方だった。
表情を保つためにそっと顎をさすったリンは、迷った末にこう答える。
「……あのときは、ただのお世辞だと思っていました。」
「戸惑ったってことか。いいだろう。ならば時間をやろう。本気で考えてみるんだ。」
考えるべきことがこんなにたくさんあるなんて。
このままだと髪の毛が全部抜け落ちてしまうんじゃないかと思った。
・
・
・
チクチクする。
だらしなく体を伸ばし、だらけた態度で薬草たちを眺めながら、リンは心の中でつぶやいた。
どれもこれも刺々しく見えた。
もちろん、そんなリンの本音を夢にも思わないジハードは、真剣な表情で薬の効能について説明を続けた。
「左から順に、活力を高める薬、血をきれいにする薬、心を落ち着かせる薬、消化を助ける薬……」
「あの・・・、これを全部持って行って食べろってことですか?」
「お前、こんなこともできずに、どうやって体調を改善するつもりだ? 死ぬか生きるか、結局は運を天に任せるっていうのか?」
「健康っていうのは基本的に、いい肉と規則正しい運動……」
「学もなく体を酷使するだけの無知な騎士どもと同じことを言うな。天の恵みで命拾いしたくせに、三度も死にかけたお前が、肉と運動だけで回復できるとでも?全くもって子供じみた浅はかな判断だ。」
ちっ、じゃあもういいよ。
十四歳が十四歳らしく考えるのが罪かよ?
『前に送った薬もまずくて食べられないって言ってたのに。』
それより悪い連中が寄ってたかってきたらしい。
リンが不機嫌そうな顔で聞き流していた間も、ジハードは根気強く薬の種類や摂取タイミングを一つ一つ丁寧に覚えさせた。
リンは助けを求めるような目で大神官を見つめた。
大神官は式典が終わるやいなやリンの部屋を訪れ、治療済みの傷跡を確認した。
「赤みが残らないって言ってなかったか?子どもの顔に傷跡が残ったら大変だ。最高級の軟膏を手配しよう。ひと月もあれば消えるはずだ。」
リンはその言葉を聞いた瞬間、自分が刃物で切られたのではないかと疑った。
しかし、いずれにせよ大神官のリンを見る目には一切の迷いがなかった。
今この瞬間も。
『お願いだからやめてよ、おじいさま。もともと苦いものもあんまり飲み込めないのに、あれ全部食べたら死んじゃう!』
内心で泣きそうだった彼女の様子を見て、大執事が遅れてジハードを制止した。
「ふむ。あの小さな身体に無理に詰め込んだら、逆効果になるかもしれんな。むしろ選んで集中したほうがいいのではないか、ジハード?」
「そんな時間はありません。私が付き添っている間に、少しでも健康になってもらわないと、結局死んでしまいますから。」
ロマンチックな配慮とは無縁だと陰で言われる評判を持つ彼だったが、普段は適度に感情を押し隠しているはずだった。
ところが、どうしたわけかこの時ばかりは大執事の表情が一瞬、陰った。
「いっそヤナを私に預けてください。水に溺れたらすぐ引き上げるように、しっかりと見守りますから。」
「……お前がどうしてそんなことを言うんだ?」
「これまで見てきた中で、今年が一番ひどかったように見えたからです。父上の目にもそう映りませんか?」
リンは、大人たちの会話に無関心なふりをしながらも、薬草を見つめつつ、耳をそばだてた。
「家の中があまりにも無秩序だったことを思い知らされたよ。」
「今になってそう思えるなら幸いです。十数年も過去に囚われ続けていたのですから、今こそは荒れた屋敷を整理し、外に出て本当に見るべきものを見ていただきたいと思います。」
「お前はいつになったらその口の悪さを直す気なんだ?」
「私はもともとお世辞ができません。これからもできないでしょう。」
『それでも私を引き止めるとは、たいしたものだな。』
仕方ない。
どうあっても、この家の中でヤナを本気で気にかけているのは、ジハードと大執事だけだ。
リンを隣に座らせたまま、しばらく沈黙していた二人の大人たちは、ようやく午後になってから寝室を出た。
赤く腫れた傷口の治療を受けながらも、リンはジハードの提案を真剣に悩んでいた。
他の誰でもない「ヤナ・トゥスレナ」を思えば、これ以上平和な選択肢はないように思えたからだ。
『でも、よく考えると本当にそうとも言い切れない。』
何より、ヤナに関してまだ解き明かされていない疑問が多すぎる。
『ヤナは本当に自ら天上花の実を食べたのだろうか?なぜ私は死んでから30年も経った今、ヤナの身体の中で目を覚ましたんだ?ヤナの魂はまだこの身体の中で生きているのだろうか?』
このすべてが解決しないまま出発することになれば、その後ヤナやリンが思いもしない災難に巻き込まれるかもしれない……いや、むしろもっと悪い状況を招きかねなかった。
「お嬢様、あの話聞きましたか?さっき、ウリ城のブライト騎士団が親善試合で優勝したそうです。褒賞として、ブライト騎士団全員が一日休暇をもらったそうですよ。」
言われなくても知っている。
窓の向こう、かすかに見える演武場で、ブライト騎士団の旗がはためいていたのだから。
「本当にうらやましいです。どこかで設営大会みたいなの、開かれないですかね……。」
試験が終わったら、チェフ、彼も戻ってくるのだろうか?
「戻ろうか?」
「はい?」
「チェフ、彼の部屋がどこにあるのか……いや、この機会に本館の内部構造も説明しておこう。ねえ、従兄たちの部屋の場所を教えてくれない?広すぎて寂しいよ。」
「14年もここで過ごしていたのに、まだ寂しいんですか?まったく。ちょっと待ってくださいね。まず1階は……」
本館の構造をすべて覚えているリンは、急いで梱包された箱を抱え、寝室を出た。
小さな顔に大きな包帯を巻いているせいで少し不便そうだったが、それ以外は問題なかった。
『貴賓は別館じゃなくて本館2階の東側回廊で過ごしているって言ってたよね?』
だが、東側回廊へと向かう途中で出会ったのは、嬉しくない顔だった。
「ニナベルお姉様。」
「ああ……ヤナだったのね?どこへ行ってたの?まさかここで一人で休んでたわけ?」
最初の用事はすべて済ませたが、休むどころではなかった。
ニナベルは、列をなす後衛の騎士たちを少し押しのけながら進み、理解できないという表情で話を続けた。
「騎士たちは我が家門の名を高めるために努力しているのに……どれだけ疲れて面倒でも、自分だけ休んではいけない。それでも羨ましいよ、ヤナ。あなたみたいに、何の責任感も義務感も持たず、気楽に生きたい。人々の期待に応えるって、どんなに頑張っても簡単じゃないからね。」
純粋さと活力に満ちたニナベルの日常には、そのような影も見当たらなかった。
「ちょうどいいところだった!これ、ニナベルの部屋に持っていってくれない? 試験に出場したバトルロム・ビアンを覚えてる?あの騎士が、さっき試合で優勝したんだって、ニナベルのために……。」
まるで歌うように愛らしくそっと話す声だった。
そんな少女を見守る護衛騎士たちの視線は、春の陽光のように温かかった。
本当に不思議なことだ。
誰かにとっては命を賭けてでも守りたい存在であり、また誰かにとっては口を塞ぎたくなるほど憎たらしい悪口を吐く存在だなんて。
「ニナベルの衣装が少し汚れてたの、それも拭いてあげて。それから、ニナベル専用の展示場に保管しておいて。すごくたくさんあるから混乱するかもしれないけど、適当に中に入れておいてね。ニナベルは騎士たちにお祝いしてあげてって……お願い、うん?」
リンは目の前に差し出された小さな荷物を受け取った。
天まで突き刺さるように高い窓を持つ騎馬兵舎、そのぼんやりとした瞳で景色を見つめる姿だった。
心の中で無表情を保っていたリンの口元にわずかな微笑みが浮かんだ。
明らかな兆候をつかんだ。
「そんなふうにして、ヤナの自尊心をずっと傷つけてきたの?」
「……え?」
あっけらかんと明るかったニナベルの笑顔に、わずかに陰りがさした。
だがリンは気に留めず、さっと銅像を持ち上げた。
まるでその銅像を使って何か良い計画が思いついたかのようだった。
「いいわ。ヤナに預けて。ニナベルお姉さん、じゃあね。」
少し離れたところで、ニナベルを背にして1階へ降りていった。
どこからか甘酸っぱい夏の果物の香りが漂ってきた。
『……ブドウの匂い?』
銅像の使い道について頭をめぐらせながら、リンはその香りに誘われるように外へ出る。
香りの源は本館の東側、長く伸びた一面のブドウのトンネルだった。
『きれいだな。』
たわわに実った紫色の果実は、宝石のように輝いていた。
荒れ果てた別館の裏庭とは違い、本館の庭園はどこを見ても絵のように豊かで優雅だった。
こんなに美しい景色を見て育ったというのに……この家の子供たちはどうして皆そろって歪んでしまったのだろう?
噴水のそばまで歩いてきたリンは、ブドウの実を摘んで食べようかどうか悩んでいた。
「取ろうとしてたの?」
「うん?」
突然の声に振り向くと、トンネルの奥から長い赤い靴を履いた少女が歩いてきた。
『フレンヒルディ。』
周囲を警戒しながらも、フレンヒルディはリンにそっと近づき、小声でささやいた。
「本館に無知なお前のために警告してやるけど……こっちのブドウ洞窟トンネルは、昼夜を問わず人通りが多いから気をつけろよ。今みたいに見つかるかもしれないからな。むしろ海底にでも捨てた方がいいんじゃないか?海は深くて広いから、永遠に隠しておけるぞ。誰も入ってこれないからな。」
……何の話?
『私がこの銅像で仕返しすると思ってるの?』
妙に真剣なその言葉に、フレンヒルディの表情も真面目そのものだったので、リンは怒る気にもならなかった。
リンが無言で見つめ続けるのが気まずかったのか、フレンヒルディはバツが悪そうに視線をそらした。
「な、何だよその顔。勘違いするな。マリウスが口止めしてくれた件に対してのお礼なんだ。別に、警戒してるわけじゃないからね。私に警告するふりして親しいふりなんてしたら、すぐにバレるからね。今までみたいに、来たふうにすらしないで、話しかけてもダメ。知ってるふりもしないで。わかった?」
自分だけぷんぷん怒って本館に戻っていったフレンヒルディ。
「恩返し?」
マリウスとフレンヒルディはきっと親戚同士なのに。
恩を返さないといけないほど仲が悪いのかな。
まあ、祖父の性格を考えれば、親戚同士でも仕方ないかもしれない。
『それでも運河の底はかなり泥だらけだったな。』
リンは、影が濃く落ちるブドウのトンネルの中を進み、小さな石像の下に身を潜めた。
『えっと、似たような大きさの石像が……あっ!あった。』
そして人が多く集まる道を選び、大胆に庭園のあずまやを見渡せる川辺のほうへ駆けていった。
その後、他人の視線を意識して隠すふりをしながら、飾り石を川に落として立ち上がった。
まるで何もなかったかのように。
これで準備は完了。
リンはオルガの説明を思い出しながら、3階にあるニナベルの空間へと入った。
『ものすごく広くて豪華……。』
ヤナの部屋とは比べものにならないほどの広いリビングと寝室が見える。
目を凝らしてあちこち見回していたリンは、リビングの一角の壁に並べられたクラシックな展示スペースを見つけた。
感謝状、表彰像など、ニナベルのものと思われる品がずらりと並んでおり、一つや二つくらいなくなっても誰にも気づかれないだろうと思った。
探検もこれで終了。











