こんにちは、ピッコです。
「死んでくれと言われて」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
２７話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最初の協力③
翌日。
今日はリンが大公の業務を手伝う初日だった。
朝から準備万端な態度で大公の執務室を訪れたが、彼女に与えられた業務は予想通りのものだった。
「今日はまず文字を全部暗記して、そのあと文法の勉強をしなさい、ヤナ。そして最後には毎回一枚の問題集を解くことになる。」
「はい。」
まさか本気でゴレド語の勉強をこんなに本格的に始めることになるなんて。
文法の授業の先生は、他でもない領主本人だった。
短い授業が終わると、問題用紙を受け取ったヤナは最初の問題から目を通した。
〈以下の質問に対して答えをゴレド語で記述せよ〉
そこにはすべてゴレド語でこう書かれていた。
- 父親の名前
- 母親の髪の色
- 祖父の年齢
- あなたの趣味
『えっ？』
解読は問題なかったが、あまりにも突拍子もない単語がヤナを戸惑わせた。
祖父？
『ヤナに兄がいるって？』
この問題集は、完全にヤナ専用に作られたものだった。
だから、いい加減な問題が載っているはずがなかった。
『でも、ヤナは庶子じゃないか。』
つまり、ヤナに兄が存在するとすれば、彼女は間違いなく妾腹の子であるしかなかった。
なのになぜ一度も会ったことがないのだろう？
親族の集まりの試験のときでさえ、顔を見たことがなかった。
もしかして、トゥスレナ城の外で暮らしているのだろうか。
『……そういえば、私はヤナの家族のことを全然知らないな。』
くだらない親戚たちの名前なら覚えていても、父方・母方の本家の名前は知らなかった。
どうあれ、これまで見聞きした家内のごたごたを思えば、その兄とヤナの関係もあまり良くないだろうと予想された。
『……まあ、とりあえずスルーしよう。あとでオルガに聞けばいいや。』
そのまませっせと問題を解き続け、ついに最後の問題にたどり着いた。
〈上記の文法を使って、一日の出来事を四文でまとめなさい〉
あぁ、日記？別に難しくないじゃん。
『だいたい昨日のことを書けばいいのかな？』
少し考えた後、リンは文章を書き始めた。
集中して書き進めていたリンだったが、不意に誰かの気配を感じ、顔を上げた瞬間、
鼻先まで近づいてきた領主と目が合った。
「わ、びっくりした！」
ドキドキする心臓が喉元から飛び出しそうだった。
「ハハ、驚いたか？」
クスクスと笑いながら領主は彼女に話しかけた。
「さてと……かなり上手に書いたな、ヤナ。『葡萄の洞窟の香りが素晴らしいです。私の部屋でも葡萄の香りを嗅ぎたいです。仮の部屋にはいつも果物が用意されていて幸せです。』……」
リンの頬が桃色に染まった。
いや、どうしてそれを本人の前で読まなければならないのか。十四歳の羞恥心も考慮してほしい。
文章を読み上げた大公が彼女に尋ねた。
「別館では果物をあまり食べなかったのか？」
「え、ええ……。」
リンはすぐには答えられなかった。
『私は食べられなかったけど、ヤナはたまに食べていたかも。』
不確かな情報を大公に伝えたら、後々面倒なことになるかもしれない。
リンは話題を変えようと、自分が書いていた文章を領主に見せた。
「これも見てください、おじいさま。間違ってるところがないか気になって。」
「……リン。」
何かを言おうと口を開いた領主だったが、すぐに小さく息をつき、リンの頭を撫でた。
「これからは、果物をいくらでも好きに食べていい。ただし、誰かが邪魔をしたら必ず私に言いなさい。果物以外のことでも、何か嫌なことをされそうになったら必ず報告するんだ。わかったな？」
「はい？はい、そうします！ありがとうございます！」
「それにしても、チェフとは随分仲良くなったみたいだな。」
「チェフですか？ええ、まあ……あ、ちょうどここにもチェフについて書いた文があります！慣用表現を使って『チェフの顔はクッションだ』って書いたんですよ。思ったよりも──」
トントン。
突然のノックに、二人の視線がドアへ向かった。
「業務中に失礼します、大公様。ルーセン・パネルと申します。」
ルーセン・パネル？誰？
『領館の人間か？』
大公がドアを開けると、銀髪の中年男性が現れた。
ルーセンは控えめに礼をし、用件を伝えた。
「ロマン様からのご命令で、午後二時にヤナ嬢をお迎えするよう言われておりましたが、時間になりましたので失礼ながらノックさせていただきました。」
……ああ。
『もうそんな時間か？ 随分早く感じるな。』
笑みを堪えたリンは、こっそり時計を確認する。
時計はちょうど午後2時10分を過ぎていた。
「ふむ。もうおやつの時間か？休憩を取らせずにすまなかったな、ヤナ。行って休んでこい。」
領主が手にしていた問題用紙を机に置こうとした、そのときだった。
「いいえ。ヤナお嬢様のためにも、いま大事なお知らせがあるとお呼びしたのです。」
その凛とした声に、部屋の空気が一変した。
驚いた顔でヤナを見た領主が、ルーセンに尋ねる。
「大事な知らせだと？」
「ヤナお嬢様がニナベルお嬢様の持ち物に手を出したようでして……。」
「手を出した？いや、ニナベルの物を盗ったのか？」
短く息を呑んだヤナは、彼女ができる最も驚いた表情を浮かべながら、訴えるように言った。
「違います！私は絶対にリナベルお姉様のものを盗ったことなんてありません、お祖父様。そんなの泥棒みたいなものでしょう？私は一度だって他人のものを欲しがったことなんて……」
「それなら、何か誤解があったようだな。そんなに怯えることはない。さあ、降りておいで。このお祖父様が一緒に行こう。」
……え？
『大公と一緒に行くなんて、予定にないんだけど。』
戸惑いながらもヤナは大公の手を握った。
大きくてしっかりとした温もりが伝わると、幼いヤナの体に安堵が広がるのを感じた。
このおかげで、物事がもう少しスムーズに進みそうな気もしたが――
『思ったより子どもたちに優しい性格だな。それにしてもヤナは、なぜ一度も領主に助けを求めなかったんだ？』
そもそも接触すること自体が難しかったとしても、領主とは同じ空間にいたはず。
もし助けを求めようとすればできたはずだ。
なのに──
……やはり、弱みか。
『ヤナはロマンに弱みを握られているんだ。』
そんなパターン、よくある、よくある。
『一体どんな弱みを握られてるんだろう？』
リンは領主の手をぎゅっと握りしめ、足早に歩みを進めた。
