こんにちは、ピッコです。
今回は42話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
42話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自分にできること⑧
ルースの指示に従い、カリプス城の使用人たちは15人の負傷者を馬車に乗せた。
治癒魔法を受けた人たちは、下女たちが作ってくれたお粥と薬茶を飲んで、完全に気力を回復して小屋を修理する仕事を手伝い始める。
伐採者が居住する小屋は計8軒。
その中で4軒の壁が壊れたので急いで修理をしなければ今夜の寒波に打ち勝つことができないだろう。
彼らは木をのこぎりで切り、大きな金づちを打ち始めた。
マックはその力強い騒音の中でルースの説明を欠かさず聞こうとする。
「綺麗な布に強いお酒をたっぷりつけて、傷を軽く拭いてください。正確な理由は
わかりませんが、こうすると傷が腐敗することが少なくなります」
「さ、酒に傷がく、腐らないようにするな、何かが入っているのでしょうか?」
「そうかもしれませんね。お酒自体も腐りにくいですから」
彼は最も小さく細い針に糸を通して同意した。
「南方の治療術なので、原理は正確に明らかになっていません。彼らによると、傷はきれいに維持しなけれはならず、血を流すことはどんな場合でも良くなく、患者の体は冷たすぎてもいけないし、熱くしてもいけないそうです。最初は笑わせる話だと思ったのですが。南方の治療法に従った時の結果が良かったですね。確かに、癒しの魔法のようなものではありませんが、それでもこのような状況ではかなり役に立つ知識です」
彼は何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も針を縫う。
マックは自分の背中が針に刺されているかのように身をよじった。
「このように、一針縫って決着をつけ、もう一針縫って決着をつけ、傷口をつなぎ合わせると、後で縫い目を抜く時のほうがずっと楽です。一度やってみますか?」
マックは激しく首を横に振る。
臆病者のように見えるのは嫌だったが、到底人の肌を針で刺す勇気が出なかった。
「革靴を縫うのとあまり変わりません」
突然革靴になった衛兵が藁の上にうつぶせになったまま、弱音を立てた。
ルースはそれをすっかり無視し、傷をゆっくりと縫っていく。
マックは彼が教えてくれた通り、リネンに強い酒をつけて血が滲む度にきれいに拭いてあげ、結び目を結ぶと火に焼けたハサミで糸を切ってあげた。
「最後に、傷を早く癒すこの膏薬を塗って包帯を巻いてあげれば終わりです」
ルースが最後の一針を締めて糸を切り取った後、傷の上にねばねばした粘液質の薬物を塗った。
よほど痛かったのか、傷を縫う間、静かに伏せていた衛兵が我慢できずに泣き声を出す。
「ま、魔法使い様・・・、癒しの魔法をかけていただけませんか。背中に火がついたようです」
「悪いけど、今日はもう魔法が使えない。魔力が尽きたんだ」
「そんな・・・」
「少しだけ我慢して。ほとんど終わったから」
ルースが傷口に軟膏を丁寧に塗った後、長く切った布を傷口の上にしっかりと巻いてくれた。
「二日に一度ずつ薬を塗ってあげて布を磨けば十日以内にきれいに治るだろう」
そして、軟膏を小さな瓶に取り、衛兵に渡した。
衛兵が小さく感謝するとつぶやきながら薬瓶を受け取った。
マックは道具を持ってルースと一緒に次の患者のところに向かう。
彼が傷を縫う間、マックは薬草を混ぜた水を負傷者の口に汲み入れ、布を長く裂いて包帯を作り、糸と針に強い酒をたっぷりつけて渡すなど、細かい仕事を手伝った。
生まれて初めてのことだったにもかかわらず、マックは落ち着いた指示のおかげで落ち着いて仕事を進めることができた。
彼女はルースが折れた手足をまっすぐに合わせると、添え木を当て布で巻いてしっかりと固定させ、豚のように膨らんだ足首には熱いおしぼりで湿布をした。
ついにすべての負傷者の処置が終わった時は疲労困懲して指一本動かすことも難しい状態に。
マックは火鉢の近くに座り込んで疲れた体を暖める。
いつの間にか日は暮れて外は真っ暗だった。
今日中に城に戻れるだろうか。
このような不気味なところで夜を明かすと考えると、疲れが倍に増加するようだった。
心配で顔を曇らせていると、いきなり木で作った器が視界に入ってくる。
「これをどうぞ」
マックは驚いた顔で近づいてきた男を見上げた。
少し前に彼女を城に戻そうとした若い騎士が湯気の立つスープの器を持って立っていたのだ。
「うさぎの肉のシチューです。お城の料理ほどでなくても、結構食べられます」
ぼんやりと瞬きはかりしていたマックは、おずおずとそれを受け入れる。
昼食も食べられなかったので、ひどくお腹が空いていたのだ。
「あ、ありがとうございます」
「いいえ。さっきは・・・」
とろりとしたスープを一口すくって口に入れると、彼はためらいながら話し始めた。
マックはぐっと緊張する。
一体また何を言おうとしているんだろう。
すると、騎士は思いがけず彼女に頭を下げた。
「さっきは申し訳ありませんでした。奥様の言うとおり、私が生意気でした」
マックはスプーンを口にくわえたまま、ほんやりと騎士の頭を見つめる。
まさか頭を下げるとは想像もできなかったのだ。
彼女は急いでボウルを置き、手を振った。
「いいえ、違います。あの、私こそ・・・、その・・・、過度にえ、鋭敏に振舞って・・・、ご、ごめんなさい」
「謝らないでください。私が先に奥様に無礼を働いたじゃないですか。奥様の態度には行き過ぎがありませんでした」
騎士の言葉にマックは頬を赤らめる。
こわばっていた肩から安堵感によって力が抜けた。
「そ、そう言って、言ってくれて・・・、ありがとうございます」
恥ずかしそうに言った言葉に騎士の表情が少し妙になる。
何を話せばいいのか迷っているような表情だった。
その気まずい空気に戸惑っていると、外に出ていたルースがちょうど兵舎の中に入ってきた。
彼は彼女の横に立っている騎士を見て、片方の眉をつり上げる。
「カロン卿、何か問題でもおありですか?」
「いいえ、ただ・・・、奥様に無礼を犯したことを謝っていました」
魔法使いはしばらく怪謗な顔をしたが、さらに深くは問わなかった。
彼は火鉢の前に近づき、明かりで手を暖めながらゆっくりとため息をつく。
「城壁の向こうに隠れている魔物がないか、偵察に出ていた騎士たちが今帰ってきました。奥様はもうお城にお帰りになってください」
「ル、ルースは?」
「私は今日一日ここに泊まらなければならないようです後にでも熱が上がる人ができるかも知れないし・・・、魔力が回復すれば、何人かもっと治療してあげることもできるでしょう」
マックはしばらくためらった。
疲れ果てたので、お城に帰ってベッドの上に横になりたい気持ちが切実だったが、一人で帰るにはとても申し訳なかったのだ。
「わ、私も今日はここで・・・」
「奥様はやるだけされました。これくらいで十分です」
ルースは彼女の言葉を遮り、断固として吐き出した。
マックはもしかして自分が邪魔をしているからだろうか、と顔を引き締めた。
ルースは彼女の不安そうな様子を読んだかのように穏やかな笑みを浮かべる。
「奥様が民家で一夜を過ごしたという事を後でカリプス卿が知ったら、大変な事になるでしょう。騎士たちに護衛を頼んでおいたので、お城に戻ってゆっくり休んでください。その方が私たちの心も楽です」
「私が奥様を護衛します。」
そばに立っていた若い騎士、カロン卿が割り込んできた。
マックはもう頑固になることができず、大人しくうなずく。
正直、こんな人里離れたところで、魔物の死体燃やすにおいを嗅ぎながら一晩を明かしたくはなかった。
彼女は嫌なふりをして2人の使用人が引いてきた馬車に乗り込んだ。
騎士が馬を引いてきて馬車の横に立つと、やがて馬車がゆっくりと動き出した。
彼女はガタガタする座席の上に背中を丸めて座り、安堵のため息をつく。
緊張が解けると、疲労が大雨のように降り注いだ。
マックは火の前に座った猫のように膝を抱えて座り、うとうとした。
22年の人生で一番疲れた一日だった。