こんにちは、ピッコです。
今回は22話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
22話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 無実の罪②
事情を聞いた騎士たちは、「猫も杓子も同行する」と話した。
リプタンは興奮して暴れる騎士たちを断固として制止した後、ウスリンとエリオット、そしてルースと3人の従騎士だけを連れてクロイソ城に向かう。
凍りついた大地の上に馬を走らせている間に、彼の内部では不安と怒りが吹き荒れていた。
リプタンは馬が疲れて倒れるまで無慈悲に拍車をかけ、小川に至ってようやく休息を許す。
「ところで・・・、クロイソ公爵がカリプス卿の義父をどのようにして見つけたのでしょうか?」
馬の背中から鞍を下ろしていたエリオットが、ふと慎重に口を開いた。
リプタンは水筒を取り出して口を濶した後、重く沈んだ声で答える。
「私の内密調査をしたのだろう」
クロイソ公爵家は東部はもちろん、西大陸一帯に広く情報網を構築していた。
公爵家と取引中の商人たちに調査を依頼すれば、自分の過去史ぐらいは簡単に調べられるだろう。
自分が傭兵団に所属していたことはよく知られている事実だから、彼らに聞いた可能性も高い。
「公爵領から逃げ出した混血児に関して調べたら、家族ぐらいは難なく見つけられるだろう」
リプタンは自分の自己満足とクロイソの悪毒さに歯ぎしりをした。
「単に金貨を狙った誰かが濡れ衣を着せられたのかもしれません」
「それなら、あのうるさいやつを兵営まで連れてきて、落として行く理由がないじゃないか」
片方に座ってジャーキーでお腹を満たしていたウスリンがぶっきらほうに反論する。
エリオットは静かに口をつぐんだ。
彼らは重い沈黙の中、兵糧でお腹を満たし、再び馬に乗って移動し始めた。
そのように最小限の休息を取り、馬を駆り立てたおかげで、5日後に公爵の荘園に着くことができた。
リプタンはまず義父の小屋を調べる。
引き裂かれた扉の中に入ると、壊れた家財道具とひっくり返った火鉢、床の片隅に絡まっている真っ黒な毛布が順に目に入った。
リプタンは冷気が流れる冷たい小屋の中を見回り、騎士たちに指示を出す。
「村に下りてここに住んでいた他の人たちはどこに行ったのか調べなさい。義父の妻が幼い女の子を連れているだろう」
「分かりました」
騎士たちが村に向かって走っていく姿を見守っていたリプタンは、すぐに残った部下たちを率いて丘を登った。
クロイソ城の門番は待っていたかのようにドアを開ける。
リプタンは門の中に入り、鋭い目つきであたりを見回した。
板金鎧を着た騎士たちが城壁の周りに幾重にも陣取っており、グレートホールとつながった広い道の左右には普段よりさらに多くの数の警備兵が並んでいた。
多分に脅威を与えようという意図だ。
「どのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
本城の前に着くと、執事長が前に出て彼らを迎えてくれた。
リプタンは馬の上から降りて冷たく吐き出した。
「公爵閣下にお会いしたい」
「前もって連絡もせずに、こうやってお越しになっては困ります」
執事の冷たい返事にウスリンがカッとなって前に出てきた。
リプタンは片手を差し出して彼を制止し、繰り返し告げる。
「閣下にお会いしたい」
「・・・」
執事が傲慢な目つきをしてゆっくりと身を向けた。
「少々お待ちください」
それから彼らを入り口にぽつんと立たせたまま、ふらりとホールの中に入ってしまった。
露骨な冷遇にウスリンの顔が荒々しく歪む。
「王の奉神をこんなふうにもてなす方法なんてない!」
彼の抗議にドアを守って立った騎士が鼻で笑う。
「何の御馳走を求めているんですか?クロイソ城がいつでも出入りできる宿だと思っているのですか?」
「私たちは国王陛下の・・・!」
「やめろ、ウスリン」
「・・・っ!」
ウスリンはリプタンの冷たい声に口を固く閉ざした。
彼もやはり頭のてっぺんまで怒りが込み上げてきたが、義父の命をめぐって公爵と交渉をしなければならないかも知れない状況で、強硬に出ることは何もなかった。
彼は執事が出てくるのを黙々と待った。
公爵は彼らを半日間門の前に立たせた後になってようやく接見を許可した。
「こちらへどうぞ」
執事は待たされたことに対する形式的な謝罪の一言も言わずに彼を待合室に案内する。
リプタンはいらだちを表に出さないように必死だった。
「残りの方々はここで待っていてください」
執事が接見室の前に立って言った。
リプタンは騎士たちに軽く目配せした後、執事について部屋の中に入る。
ろうそくで明かりを灯した豪華な部屋の真ん中に、絹の服を着た公爵が優雅に座っていた。
彼の左右には武装した護衛騎士が彫像のようにそびえ立っており、一方の壁面には3人の使用人がそれぞれ酒瓶と食べ物が入った盆を持って待機している。
リプタンは彼らの前を通り、油を塗ったマホガニーの机の前に近づいた。
ようやく羊皮紙を覗き込んでいたクロイソ公爵がゆっくりと頭を上げる。
「それで・・・」
汗と埃で汚れた彼の顔を。色あせた青い瞳で軽蔑のように目を通した公爵がのろのろと後の言葉を続けた。
「レムドラゴン騎士団団長が私の城には何のために来たのか?」
しらを切る姿にリプタンはこぶしを握りしめた。
「私が何のために来たのか、公爵閣下もよくご存じではありませんか」
「私は占い師ではない。君がどういうわけで私の城に押しかけたのか私がどうやって分かるのか」
公爵が生意気に言い返し、使用人に空の杯を差し出す。
若い使用人が急いでやってきて、グラスにワインを注ぎ込んだ。
リプタンはその姿を睨みつけ、ついつい険悪に吐き出してしまう。
「閣下がある小作農を泥棒と誤認して監獄に入れたという話を聞きました」
「・・・」
公爵はワインで唇を潤し、眉をひそめる。
リプタンは最大限沈着もっともらしく後口をつないだ。
「彼の家から出た金貨は、私が渡したものです。今すぐ彼を釈放してください」
「まったく何を言っているのか分からないな」
公爵が最後までしらを切った。
「私の刑務所には100人以上の囚人が閉じ込められている。彼らの中で誰のことを言っているのか分からないが、皆正当な裁判を受けて監獄に入れられた人たちだ。君が私に囚人たちを釈放しろと言うなんて訳が分からないね」
「ロバンという名の小作農です」
リプタンは自制心をかき集めるためにしばらく息を引き取った。
「もう一度裁判をしてください。私がその人のために証言をします。十分な証拠と証言なしに絞首刑を下すのは・・・」
「レムドラゴン騎士団の団長は実に暇なのだね」
公爵は彼の言葉を断ち切り、皮肉を言うように薄く唇をひねった。
「一介の小作農のためにそんな苦労をするなんて」
リプタンは喉まで上がってきた悪口を飲み込んだ。
公爵が窮地に追い込まれたネズミで遊ぶ猫のように余裕のある身振りで杯をくるくる回しながら話を続ける。
「悪いけど、そんなつもりはないね。私は君のように暇な人ではない。一度下した判決を覆すつもりはない。そんなことを許しては、一日中裁判長の前に座っていなければならないだろう。そうなれば誰も私の判決を尊重しないだろう。私がどうしてそんな危険を甘受しなければならないのか?」
「閣下の便宜のために、何の罪もない人の命を奪っていくつもりですか?」
「罪があるかないかは私が判断することだ!」
公爵が鋭く射止めた。
「私の領主民は領主である私の決定に従わなければならない。それは国王陛下も干渉できない私の固有の権限だ!君が何の資格で干渉するのか?」
「その人は・・・!」
声を荒げていたリプタンは、ふと言葉を止めた。
一度も口にしたことのない単語がぎこちなく口の外に流れる。
「その人は・・・、私の父です。裁判をやり直すつもりがないなら、私がその人の保釈金を払います。必要であれば、賠償金も支払います。私の父を解放してください」
「ああ、それは残念だ」
公爵は驚いた様子もなく平然と答えた。
「本当に残念だ。しかし、すべての囚人は公平に扱わなければならない。君の父親だからといって例外を設けるわけにはいかない。盗みをした者は、もれなく絞首刑に処さなければならないね」
リプタンは怒りを抑えきれずテーブルを叩きつけ、油を塗ったマホガニーのテーブルがへこんだ。
威嚇的な行動に護衛たちが一斉に剣を抜いた。
しかし、リプタンは彼らには目も向けず、公爵に向かって険悪に吠えた。
「私から何を求めているのですか!?」
公爵の顔から笑みが消える。
彼はベルベットついた椅子の背もたれに肩をもたせかけ、冷たく問い返した。
「本当に分からなくて聞いてるのかな?」
「だから・・・、あなたの代わりにドラゴン討伐に出なければ私の義父を殺すということか?」
「聞き苦しい」
公爵は怒りに満ちた目で彼をにらみつけた。
「君は私の寛大な提案を断ることで私と私の家を侮辱した。そして今は私の城に攻め込んで生意気に私の囚人を釈放しろと言っている!私がどこまで君の無礼を我慢しなければならないのか?」
「ふざけるな!あなたは私を脅迫するために、私の罪のない義父を刑務所に入れた!」
「無礼だぞ!」
護衛たちがこれ以上我慢できないように、剣を彼の喉仏まで突きつける。
リプタンは鋭い刃が動脈の真上を向いているのを無視し、燃えるような目で公爵を睨みつけた。
クロイソ公爵の顔も怒りで歪んでいる。
だが、彼はすぐに毒の中に入ったネズミー匹があがきをすることを持って怒るのも品位のないことだと思ったのか、生意気な顔に戻ってきた。
「君が何と言おうと関係ないね。君の小作農の父は、明日すぐに絞首刑に処されるだろう」
リプタンは再びこぶしでテーブルを叩きつける。
クロイソ公爵は彼の猛烈な勢いにもびくともしなかった。
誰かが自分を傷つける可能性自体を考えていないようだ。
公爵はだるそうにつぶやいた。
「それが嫌なら、私の心を変えるような提案をしてみなさい」
「私が・・・、あなたに代わって遠征に出たら、私の義父を解放してくれますか?」
「君がそうしたいのなら」
公爵はワインを一口飲み、少し間をおいて言った。
「罪人一人を赦免してあげられないこともない。婿のためにその程度もできないと?」
リプタンはぎゅっと目を閉じる。
心の片隅で悪魔が小さな声で「仕方ないのではないか」と、「もう受け入れろ」とささやいた。
リプタンは自分自身に嫌悪感を覚え、手のひらから血が流れるように拳を握る。
まずは時間を稼がなければならない。
「この場ですぐに決定を下すことはできません。私はすでに国境に陣取っていなさいという国王陛下のお命を賜りました。少なくとも陛下にご相談の上・・・」
「勝手にすればいい」
公爵が気乗りのしない返事をした。
「しかし、処刑は予定通り進める。私が君を待ってあげる理由がない」
リプタンは殺気立った目で彼を睨んだ。
公爵は平然とそのまなざしを受ける。
「今この場で決定を下すように。二度のチャンスはない。明日には君の小作農の父は絞首台に首がかかるだろうし、私は他の領主に私の娘と結婚できる栄光を与えるだろう。必ずしも君でなければならないわけではないんだよ」
「・・・」
リプタンは顔をゆがめた。
怒りと屈辱、そして言葉では説明できないあらゆる複雑な感情が彼の中で渦巻く。
暗闇の中ですすり泣いていた義父と、恐怖に陥ったマクシミリアン・クロイソの顔が順に頭の中に浮かんだ。
彼は歯を食いしばって言った。
「・・・分かりました」
公爵は疑い深く目を細める。
「私の提案を受け入れるという意味か?」
リプタンは生まれて初めて誰かを残酷に切り倒したいという衝動にかられた。
「はい」
彼は軽蔑のまなざしで公爵を見下ろし、一字一字力を入れて吐き出した。
「あなたの代わりに死地へ旅立ちます。これで満足ですか?」
公爵はあごを上げて傲慢な笑みを浮かべる。
「よく考えたね。もうすぐ姻戚になるから、君の無礼な態度に目をつぶるようにしよう」
それから門のそばに立った執事に向かって指示を出した。
「お客様を部屋にお迎えするように。疲れただろうから今日はこれで休みなさい」
「あの人から解放してください」
「結婚式が終わった後に赦免してやる。これは絶対に譲れない」
公爵がきっばりと言った。
リプタンは彼をにらみつけ、悪口をつぶやきながら振り返る。
翌日、クロイソ公爵は夜が明けるやいなや結婚式を準備した。
自分が心を変える暇を与えずに、すぐに仕事を進めるつもりのようだ。
リプタンは檻の中の動物のように不安そうに部屋の中をうろつく。
義父を助けるために部下に重い荷物を負わせたという罪悪感が襲ってきた。
彼らが自分の利己的な選択を非難していたら、むしろ気楽だっただろう。
しかし、部下たちはクロイソ公爵に怒りを燃やしても、彼の決定に対しては一言の不平も言わなかった。
リプタンは椅子に座り込んで、ずきずきとした頭を抱える。
騎士団長としての責任を優先するなら、義父に背を向けるのが正しかった。
しかし、到底そうすることができなかった。
二度もあの人を捨てるわけにはいかない。
リプタンは目をぎゅっと閉じる。
あの女性の葬式があった日、闇の中ですすり泣いていた義父の姿が目の前にちらついた。
自分たちのために12年を浪費した人だ。
今になってやっと本当の家族を手に入れたのに、偽の息子のために命を落とすように放っておくことはできない。
リフタンがマックと結婚した理由が判明しましたね。
まさか養父を人質に取られていたとは・・・。
仮にリフタンが金貨を与えていなくても、養父は別の理由で人質に取られていたでしょうね。