こんにちは、ピッコです。
今回は44話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
44話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 自分だけの可能性②
ルースはしばらく黙っていた。
マックはその沈黙に気まずくて目を丸くする。
何も言わずに彼女が書いておいた羊皮紙の山を几帳面に調べていたルースがふと吐き出した。
「いっそ魔法を習ってみたらどうですか?」
マックは彼の言葉を一気に理解できず、目をパチパチさせる。
ルースは自分の提案に興奮したかのように立ち上がった。
「治療術を学ぶくらいなら、魔法を学んだほうがずっといいです。奥様が癒しの魔法を使えるようになれば、私の負担も減るでしょう!」
彼は全く自分の都合のいい提案であることを隠さなかった。
マックは眉をひそめて反論する。
「ま、魔法は・・・、と、とても複雑で、あの、精巧な計算を経なければならない・・・、高度な学問だそうですね。わ、私としてはですね、力不足です」
「確かに、高位魔法を身につけるには長い研究過程と訓練を経なければなりません。しかし、普遍魔法なら話が違います。基本的なマナ親和力さえあれば、数年間の教育と訓練課程を通じていくつかの魔法を習得することができます」
「普遍魔法ってな、何ですか?」
「すべての無属性魔法を指す言葉です。簡単な治癒魔法や回復魔法、空中浮揚などの些細な魔法がこれに属します」
ルースはまるで治癒魔法や、回復魔法、空中浮揚が足し算引き算でもあるかのように大したことないように話した。
マックは消極的な笑みを浮かべる。
「はあ、できれば・・・、い、いいけど・・・、何年もかかることじゃないですか。治療術を学んだほうだ、すぐに役に立つ・・・」
「マナ親和力を育て、数学と古代語、そして基礎学問を学ぶのに何年もかかるということです。奥様は弱いですが、すでにマナ親和力を持っていて、古代語と数学もできるので、魔法を身につけるための基本的な素養はすでに備えているわけです。数力月だけ訓練すれば、簡単な魔法くらいは習得できるはずです」
マックは彼の絶え間ない説得にひそかに期待が揺らいでいるのを感じた。
本当に自分が魔法を使えるのだろうか。
彼女は震える視線で彼を見上げる。
「あ、あの、本当に・・・、わ、私がま、魔法をま、学べると思いますか?」
「やってみて損することはないじゃないですか」
その言葉が正しかった。
マックは勇気をかき集める。
「お、教えてくれれば・・・、い、一生懸命に学びます!」
「いいでしょう。では、明日の正午過ぎに図書館に来てください。魔法を習うのに
必要なものを用意しておきます」
ルースは軽快に話し、本棚に歩いて行き、分厚い2冊の本を取り出した。
「これらの本が魔法を理解するのに役立つでしょう。時間があるたびに時々読んでおいてください」
彼女はわくわくして本を抱きかかえて図書館を出る。
生まれて初めて見つけた自分だけの可能性に心臓が痛くなるほど走った。
マックは期待で夜明けまで眠れなかった。
彼女はろうそくに頼って目の下が黒くなるまでルースが渡した本を読む。
一つは魔法の概要に関するもので、もう一つは魔法の原理を理解しやすく解説したもの。
思ったより難しくない内容に、マックは自分にもできるという期待で胸を膨らませた。
本当に魔法使いになるかもしれない。
彼女は手の平で火を噴き出し、魔物を打ち破り、風雨を起こしてアナトールを侵略しようとする敵を見事に掃いてしまう自分の姿を頭の中に描いてみた。
リプタンが感心すると言って、自分をぎゅっと抱きしめる光景も浮び上がった。
彼が自分を誇りに思う姿を想像するだけでも自然に唇が開き、にやにやと笑いが流れてしまう。
魔法ができるようになれば、リプタンが遠征に出る時に一緒に行けるかもしれない。
彼女は魔物を見て気絶したこともすっかり忘れて、ベッドにうつぶせになって足をバタバタさせた。
胸が一杯に希望に膨らんだ。
しかし、その魂の抜けた幻想は、翌日正午、彼女に劣らず、精一杯浮いた顔をして現れたルースによって無残に破られることに。
マックは魔法使いが興奮した顔ですらすらと吐き出す冗長な講義を間きながら、大きな石版の上に描かれた複雑な魔法式を茫然と見下ろした。
魔法の概念について賢学的な言葉を吐き出したルースは、今や魔法式がとのような.原理で稼動するのか、熱い説明を浴びせ始める。
まるで他国の言葉を間いているようだった。
「いかがですか?理解できましたか?」
彼がついに長々とした説明を終えたとき、マックは挫折と失望でその場ですすり泣くところだった。
マックの泣き顔になった顔を見て、ルースが訳が分からないというように眉をひそめる。
「私の説明に難しい部分がありましたか?」
「む、難しくないぶ、部分がありませんでした」
マックはしょんぼりとつぶやいた。
「や、やっぱり・・・、あの、私にはむ、無理だったようです」
「まったく、そんな態度では困ります」
ルースは彼女の消極的な態度に不満そうにつぶやいた。
「執拗に食い込む癖をつけなければなりません。理解できない時は、理解できるまで食い下がるべきです」
諦めるのに慣れた人にはあまりにも無理な要求だった。
マックは目を丸くして、自信のない顔でうなずく。
ルースはしわくちゃになったような優しい声で言った。
「一つ一つ説明しますので、理解できない時はすぐに話してください。何度でももう一度説明しますから」
「わ、わかりました」
ルースは石版に描いた絵を消し、また簡単な絵を描き始めた。
「自然界には目に見えない力が存在しています。これを魔法使いたちは「マナ」と呼んでいます」
マックはすぐに羊皮紙に書き取る。
ルースは彼女が書き終わるまで待ち、それから説明を再開した。
「魔法使いは自然界に存在するマナを体の中に引き込んで蓄積する訓練をします。この時、体の中に引き込んで濃縮させた「マナ」を「魔力」と呼びます」
「な、何が・・・、ち、違うのですか?」
「混用して使うこともありますが、厳密に区別すると性質が違います。マナが自然界に平衡状態で存在する安定した気だとすれば、魔力は人間や魔物が人為的に内部を積み上げたかなり不安定な性質を持つ気ですよね。マナは自然界の法則を従おうとして、魔力は自然界の法則に逆らう性質があります」
「よ、よく・・・、分かりません」
「これを見てください」
彼は手を空中に広げた。
「今、この空間のマナは完璧なバランスを保っています。非常に「自然な」状態ですね。でも、こうやって・・・」
彼は指を弾いた。
すると、空中に拳ほどの大きさの炎が燃え上がる。
「私の魔力を投入して、この空間のマナが成し遂げた均衡状態を壊しました。これが魔法です。自然界の立場から見ると、これは非常に不自然な状態ですね。本来この空間には炎も、光も、熱気もあってはなりません。そのため、自然はこの不自然な状態を解消するために一定の圧力をかけます。この力を魔法使いたちは抗魔力と呼びます。ウイザードが自然界に投入した魔力を除き、再び「自然な状態」に・・・、つまり、「理にかなった状態」に進もうとする力です。この力によって・・・」
彼が手を下ろすと、炎がはらりと消えた。
「魔法はずっと続かず、このように消えるのです」
「この前、ま、魔法式がないとま、魔法が使えないと言っていませんでしたか?」
「今起こした火も魔法式を通じて発動したのです。魔力が材料というと、魔法式は調理法というか。この空間の中にどのような経路でどれだけの魔力を投入すればどれだけの炎が起きるかという、具体的な技術書がまさに魔法式です。魔法使いになるためには、体の中に十分な量の魔力を着実に蓄積しなけれはならず、そのように蓄積した魔力を魔法式に従って精巧に扱う方法を学ばなければなりません」
彼女は息をする暇もなく忙しく彼の説明を書き取っていく。
ルースは目を細めて尋ねた。
「ここまでは理解できましたか?」
「り、理解はできますが・・・」
マックは机の上に積んでおいた本を見つめて陰鬱な表情をする。
「その・・・、魔力をせ、精巧に扱うほ、方法とか・・・、ま、魔法式の原理とかが・・・、む、難しすぎてふ、複雑なんです」
「それではその部分は、これから一つ一つ説明しましょう」
彼が頭を掻きながら、どうしようもないかのように持ってきた書籍であり、魔法式の図案をぐるぐる巻いて、再び袋の中に入れた。
「まずはマナを集めて魔力を扱う練習からしましょう。さあ、これを受け取ってください」
彼は小さなポケットから透明な石を取り出した。
「これは何ですか?」
「マナや親和力を育てる時に使う魔石です。周囲のマナを引き込んで、かすかな熱を出す性質がありますよ。それを握って石の周りに流れるマナの微細な動きを感知する練習をしていると、マナの親和力も強化され、マナの流れにも敏感になります。まず、それで練習しながら・・・、ここ、これらの本をすべて読んできてください。魔法式の原理を理解するには、数学だけでなく自然科学や幾何学、元素理論や測量学も勉強しなければなりません」
彼が片腕に持つにも重そうな厚い本を3冊も差し出した。
マックは一握りにもならない自信が余すところなく酸化されて消えることを感じた。
紙にぎっしり詰めた文字を見ると、心が一気に折れた。
私に本当にできるかな・・・。
マックは昨夜の空想を思い出して,やる気を取り戻そうとする。
魔法を使う自分を誇らしげに見つめるリプタン。
魔法使いたちが着る素敵なローブを着て、彼と一緒に冒険に出るマクシミリアン。
リプタンと一緒に山や野原を旅する自分の姿を想像すると、自ずと肩に力が入った。
彼女は固く決心して魔石を受け取る。