こんにちは、ピッコです。
今回は82話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
82話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 防御魔法の特訓
客たちは、同盟提案を考慮するというあまり満足できない返事だけを聞いて、カリプス城を離れなければならなかった。
苦労して険しい山道を渡ってきた騎士たちは不満そうな様子だったが、リプタンは瞬きもしない。
彼はロベルン伯爵の心を焦がして、自分に最も有利な条件で同盟を結ぼうと決心したようだ。
ルースの話によると、身代金を上げてもらうにはリプタンに従う者がいないということだ。
マックは彼の無愛想で冷たい姿の裏に優れた交渉者がいることを知る。
リプタンは口数の少ない人らしくなく駆け引きが上手で、人を巧みに扱うこともできた。
その他にも夫には多様な姿が隠されている。
彼は優れた建築監督官であり、冷徹で公正な裁判官であり、卓越した技術者でもあった。
リプタンは兵士たちを訓練させ道路工事を監督することだけでなく、鍛冶屋たちが新しい武器を作り出すことにも関与し、領内のすべての問題をあまねく隙間なく調べている。
あの人がどのようにしてそのすべての仕事を引き受けているのか疑問に思うほどだ。
(そのおかげで、こうやって気楽に魔法を学ぶことができてるけど・・・)
マックは床に描かれた防御魔法式を見下ろしながら、心が乱れるため息をつく。
夫が早朝から夜遅くまで忙しなく忙しいおかげで、彼女は気楽に魔法の修練に熱中することができた。
彼に見つかるかと心配ではらはらしていたのが虚しくなるほどだ。
「これを好きにならないといけないのか・・・」
憂鬱なため息をつくと、そばで彼女が描いた魔法式を検査していたルースが、顔をしかめる。
「すべて準備ができたら早く試してみましょう」
初めて施行してみる魔法。
別の考えにふけっている暇はなかった。
「では・・・始めます」
彼女は魔法のスタイルが正しいかどうかを2度確認した後、慎重に魔法のスタイルを引き上げる。
公式に従って魔力を回転させると、空気が少しずつ揺れ、彼女の周りに青い光の透明な障壁が作られた。
ルースは目を細め、それを注意深く観察し、そこに立っているユリシオンに手招きする。
「さあ、攻撃してみてください」
少年が鞭に打たれたように肩を動かす。
「ほ、本当にやるべきですか?」
「もちろんです。そうしてこそ、シールドの強度を確認することができるじゃないですか」
ユリシオンはまるで気が気でないかのように後頭部を掻いた。
「別に私じゃなくても・・・」
「正式な騎士を相手に練習するわけにはいかないじゃないですか。私の攻撃では全然試験になりませんし」
ルースがこれ見よがしにローブをまくり上げて、自分の細い腕を差し出す。
男性としての自尊心など少しもないような態度に、ユリシオンは目を丸くした。
しかし、ルースは平然としている。
「さあ、そんなにぐずぐずしないで、早く攻撃してみてください」
「でも・・・騎士になる身でどうやって貴婦人に剣を・・・」
「真剣でもないじゃないですか。これは厳然たる夫人の安全のためのことです。万がーでも危険にさらされた時、この魔法が夫人の命を救うこともできます」
ユリシオンはルースの断固とした口調で乾いた唾を飲み込んだ。
彼は決然とした顔でマックの向かいに立つ。
「分かりました。それでは貴婦人・・・ちょっと失礼します」
マックは魔力を最大限に引き上げ、悲壮にうなずいた。
彼は木刀を高く振り上げる。
風を切る音が鳴り響いて、けたたましい音が聞こえてきた。
マックは目を見開く。
まるで薄氷が割れるように虚しく粉々になったシールドに、ユリシオンはまだ剣を回収する暇もなかった。
木刀が容赦なく彼女の額に突き刺さり、軽快な打撃音とともに目の前で火がつく。
マックは頭を抱えてみっともなく後ろに倒れた。
ユリシオンは甲高い悲鳴を上げた。
「貴婦人・・・!!」
目まぐるしい痛みに彼女はうんうんと足をばたつかせた。
おのずと涙がぽろぽろと流れ出る。
「うぅ、うぅ・・・!」
「ま、魔法使いさん!早く何とかしてください!貴婦人が・・・!貴婦人が怪我を・・・!」
領主の妻を殴った衝撃でパニック状態に陥ったユリシオンが、ルースの体をむやみに揺さぶった。
呆然としてぼんやりと見下ろしていた魔法使いが、ため息をつきながら彼女のそばにしゃがんだ。
「ちょっと、手をどかしてみてください。回復魔法をかけてあげます」
マックは涙を流しながらかろうじて手を離す。
ルースは情けない様子を隠すこともなく、舌打ちをしながら癒しの魔法をかけてくれた。
マックは羞恥心と恥ずかしさに顔を赤く染めて席から立ち上がる。
今にも穴を掘って隠れたい気持ちだ。
「だ、大丈夫ですか?まだ痛いのは・・・」
ユリシオンはそわそわと彼女の周りをうろつく。
マックはスカートについた土ぼこりを払い落とし、平気なふりをした。
「ああ、平気ですよ」
「本当に、本当に、本当に申し訳ありません。貴婦人に怪我をさせるなんて・・・」
「いいえ、違います。私の魔法が・・・ふ、不十分なせいですもの」
ほとんど忍び寄る声でつぶやくと、ルースが首を軽く振りながら容赦なく短剣を飛ばした。
「そのとおりです。私の人生でこんなに粗末なシールドは初めて見ます。むしろ羊皮紙を持って札を作ったほうがいいですね」
「は、初めてじゃないですか!二つ目は・・・これよりいいと思います」
かっとなって反論すると、ユリシオンの顔がすっかり青ざめる。
「これをまた・・・するつもりですか?」
「ええ、もちろんです。できるまで・・・練習します」
マックは断固として頭を上げて、魔法式を注意深く調べ始めた。
しかし、いったいどこから間違っていたのか、まったく分からなかった。
確かに教わった通りに魔力を回転させたのに、どうしてあんなにむなしく壊れてしまったのだろうか。
「魔力を過度にゆっくり回転させて、とんでもないほど強度が弱くなったのです。少なくとも今の3倍はスピードを上げてこそ、正常な防御膜の役割をするでしょう」
「い、今の・・・3倍ですか?」
「それとも魔力の産出量を2倍にするか」
マックは泣きべそをかいた。
「・・・どちらも難しいです」
「頑張ってみてください。少なくとも窓ガラスよりは硬くないとシールドと言えないじゃないですか。これはまあ、トンボの羽ばたきにも穴があきますね」
ルースが辛辣な酷評を吐き出し、青々とした顔をしているユリシオンに対する手をくるくると振った。
「ロバル様はもうお帰りになってもよろしいかと存じます。私一人だけでも十分です」
それから、地面から枝一本を拾い上げ、ハエでも追い払うように空中に向かって振り回す。
「今日の訓練は、これさえ防げば成功ということにしましょう」
小指の太さほどの木の枝を眺めながら、マックは意気消沈とうなずいた。
彼女は5回の試みの末、やっと飛んできた木の棒を止める。
しかしとても実戦で使うレベルではなく、苦心の末、彼らは違う種類の防御魔法を身につけることに結論を下した。
シールドを習うために数日間頭を抱えていたマックは肩をすくめたが、ルースは断固としていた。
合わない魔法を握っている余裕がないということだ。
彼は休む暇も与えず、すぐに床に新しい魔法式を描いて説明を始める。
「普遍魔法には2種類の防御魔法があります。無形の防御壁であるシールドとタイプの防御壁であるバリア。シールドはダメだからバリアーを習うしかないですね」
「それでは・・・魔法式を新しく、身につけなければならないんですか?シールドを覚えるだけで・・・1週間もかかったのに・・・」
「基本的な公式はシールドとほぼ同じなので、火を通すのにそんなに長くはかからないと思います。バリアに入る魔力はシールドの四分のーにしかなりません」
マックは目を細めて彼をにらみつけた。
「じゃ、じゃあなんで・・・最初からバリアーを教えてくれなかったんですか?」
「魔法式が何倍も複雑なんですよ。純粋に魔力だけを持って防御膜を形成するシールドとは違い、バリアはタイプの材料を変形させて防御壁を作り出す魔法です。物質の形を変える技術であるだけに、シールドよりはるかに難しい演算過程を経るのです」
ルースが棒を使って床にぎっしりと術式を書きながら言った。
マックはその言葉のように複雑極まりない魔法食を見下ろしながら、怯えた表情をする。
「その、ただシールドを・・・もっと練習するのはどうですか?続けていると・・・よ、良くなるかもしれないじゃないですか」
「奥様が十分な量の魔力を集めるなら、おそらくそうでしょう。しかし、そうなるには少なくとも1年はかかるでしょう。奥さんにはすぐに実戦で使える魔法が必要です。私が発つ前に学べることはすべて学んでおいたほうがいいじゃないですか」
マックは見ているだけでも頭の中で地震が起きそうな複雑な図形から目を離して彼を眺める。
「もしかして・・・王室から出征命令が出るのですか?」
「もうすぐそうなるでしょう。昨日電報が来ましたが、リバドンの状況が尋常ではないそうです。すでにオシリアの大神殿では対策を話し合っているはずです」
オシリアで下す結論は明らかだ。
各国に支援軍を要請してくるだろう。
マックは心配そうな目でルースをちらりと見た。
「リ、リバドンに行くのは・・・どれくらいかかりますか?」
「少なくとも1カ月はかかります。西北に2週間休まずに馬を走らせて国境を越えた後、船に乗ってさらに10日間移動しなければなりません。行く途中で魔物に遭遇すると、それよりも時間がかかるかもしれません」
想像するだけでも遠い旅路に自ずとため息が出た。
「け、険しい道のりでしょうね・・・」
「まったくその通りです。レクソス山脈で苦労しただけでうんざりするのに、またうんざりする遠征生活なんて!率直に言って、約10年間はアナトールでびくともせずに過ごしたかったです」
ルースは彼らしくなく肩をすくめて嘆いた。
確かに、部屋に行くのも面倒くさがる男が、その遠い道をどうやって行くのか少し心配だ。
しかも、領地ごとに魔物のために頭を悩ませているという。
リバドンまで順調な旅ではないだろう。
「ほ、本当に・・・少数の騎士たちだけで構成しても・・・大丈夫なのでしょうか?」
「リバドンを手に入れるためにアナトールを無防備にしておくわけにもいかないじゃないですか」
ルースは生意気に言い返し、魔法のような最後の計算式をささやいた。
「それに私たちだけでリバドンまで行くわけではありません。西北に移動しながら他の領地の騎士たちと合流するんです」
「他の・・・領地の騎士ですか・・・?」
「王の家臣はカリプス卿だけですか?王命によって領主ごとに騎士を派兵するので、かなり大きな規模の派兵部隊が構成されるでしょう。海外に志願軍を送る時は、ほとんどこのような手順を踏みます」
「そ・・・そうなのですね」
「ウエデンだけでなく、バルトとオシリアからも兵力を送ってくるでしょう。どれだけ多くの魔物が暴れようが、今年の秋が過ぎる前に決着がつくでしょう」
彼の自信満々な声にマックは少しリラックスする。
「それでは・・・遅くとも初冬あたりにはアナトールに戻って来られますね」
「どうかそうなることを切に願っています」
ルースは魔法の儀式を終え、手のひらをバタバタさせながら腰を伸ばした。
「これまでは奥さんが私の役割をある程度代わりにしていただく必要があります」
「もちろん・・・最善を尽くします」
彼女はプレッシャーで肩をすくめる。
「しかし、私一人では・・・手に負えない状況になるかもしれないじゃないですか。ルースが去る前にち、治療術師を・・・一人でも多く、手に入れるべきではないでしょうか?」
「それができるなら、そうしたでしょうね」
ルースは胸に腕を組んでため息をついた。
「今、リバドンで大騒ぎになっているじゃないですか。魔法使いたちの身代金が何倍も跳ね上がって、みんなリバドンに行こうと決心したようです。それに諸侯の間の魔法使い争奪戦まで激しさを増し、並大抵の補償でなければ、誰もアナトールに定着しようとしないでしょう」
マックは心配で顔を曇らせる。
彼女が思っている以上に世の中は大騒ぎになったようだ。
ルースは真剣な表情で彼女を見下ろす。
「だから私が去る前までに、できるだけ実力を向上させてください。そうしてこそ、少しでも安心して離れることができます」
「ど、努カ・・・します」
マックはクモの巣のように複雑に組まれた魔法式を見下ろしながら、力なく答えた。
ルースが励ますように彼女の肩をたたいては、徐々に魔法式の原理について説明し始める。
こんな訓練をリフタンに見られていたら、間違いなくマックは部屋から二度と出られなくなるのではないでしょうか?
遠征の方もモヤモヤしますね・・・。
ルースが離れる前に、マックはどこまで実力を高めることができるのでしょうか?